mRSとは?評価方法と2・3・4の違い【PDF付】

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mRSとは?評価方法と判定のポイント

modified Rankin Scale(mRS)は、脳卒中後の全体的な障害度や生活上の依存を0〜6で示す評価尺度です。判定で重要なのは、杖や歩行器の使用そのものではなく、歩行や身の回り動作に他者の身体介助・声かけ・監視が不可欠かを確認することです。

この記事では、mRS 0〜6の目安、mRS 2・3・4の違い、見守りや歩行補助具の扱い、入浴介助で迷う場面、評価手順、記録例を整理します。A4記録シートPDFも掲載しているため、評価時点と判定根拠をそろえて記録できます。

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mRSスコア0〜6の目安

mRSは、症状の有無から常時介護の必要性までを段階的に確認します。特に重要な境界は、0と1では症状、1と2では発症前の活動、2と3では生活管理への援助、3と4では歩行・基本的な身の回り動作への人的援助です。2, 3, 7

modified Rankin Scale(mRS)0〜6の目安
スコア 判定の目安 確認するポイント
0 脳卒中による症状がない 自覚症状と他覚的な神経症状の有無を確認する
1 症状はあるが、通常行っていた仕事や活動を続けられる 症状があっても、発症前の主要な役割や活動に制限がないかを確認する
2 発症前の活動には制限があるが、自分の生活管理は他者の援助なしで行える 仕事、家族内の役割、趣味などは制限されても、食事の準備や買い物などを自分で管理できるかを見る
3 生活管理に何らかの援助が必要だが、歩行は他者の援助なしで行える 簡単な食事の準備、家事、金銭管理、近隣への外出、買い物などで援助が必要かを確認する
4 歩行または基本的な身の回り動作に、他者の援助が必要 食事、トイレ、日常的な整容、歩行に身体介助・声かけ・監視が必要かを確認する
5 常時介護が必要 介護者が常に対応できる状態でいる必要があるか、臥床中心や失禁があるかを確認する
6 死亡 死亡日と評価予定時点を明確にする

杖・装具・歩行器を使うだけではmRS 4になりません。歩行補助具を使用していても、他者の身体介助、言葉による指示、監視なしで移動できれば、「介助なしの歩行」として扱えます。3

mRS 3と4の違い|人的援助が不可欠かで分ける

mRS 3と4を分ける中心的な問いは、歩行または基本的な身の回り動作に、他者の援助が不可欠かです。単に転倒が心配、家族が付き添っている、歩行補助具を使用しているという事実だけでは判定できません。

構造化面接では、援助に身体介助だけでなく、言葉による指示や客観的な危険を防ぐための監視も含めます。一方、「脳卒中後だから念のため誰かがいたほうがよい」という一般的な心配だけでは、不可欠な援助とはみなしません。3

mRS 2・3・4の判定フロー。身の回り動作への援助、生活管理への援助、発症前活動の制限を順番に確認する
mRS 2・3・4は、身の回り動作、生活管理、発症前活動の順に確認すると整理しやすくなります。
mRS 3と4で迷いやすい場面
確認場面 mRS 3に寄る状態 mRS 4に寄る状態
歩行 杖や歩行器を使用しても、他者の身体介助・指示・監視なしで移動できる 支持、誘導、継続的な声かけ、客観的な危険を防ぐための監視が不可欠
見守り 家族が念のため付き添っているが、必要時には一人で安全に実行できる 見守りがなければ転倒、逸脱、手順の中断など具体的な危険が生じる
食事 食事の準備や配膳は他者が行っても、食べる動作は一人で行える 食べる動作に身体介助、指示、監視が不可欠
トイレ 移動、衣服操作、後始末を含めて一人で完結できる 一連の工程のいずれかに他者の援助が不可欠
日常的な整容 洗顔、整髪、歯磨きなどを一人で行える 日常的な整容に身体介助、指示、監視が不可欠
生活管理 買い物、簡単な食事の準備、金銭管理、近隣への外出などに援助が必要 生活管理だけでなく、歩行または基本的な身の回り動作にも援助が必要

入浴介助だけでmRS 4になるとは限らない

Wilsonらの構造化面接では、mRS 4を確認する日常的な整容として、洗顔、整髪、歯磨きなどを扱い、入浴、シャワー、髭剃りは除外しています。したがって、入浴だけ一部介助だからmRS 4とは自動的に判定しません。3

入浴介助がある場合も、歩行、食事、トイレ、日常的な整容、生活管理を分けて確認し、尺度全体の段階に沿って判定します。

mRS 2と3の違い|自分の生活管理を一人で行えるか

mRS 2と3の境界は、発症前と同じ活動ができるかではなく、自分の生活を管理するために他者の援助が必要かです。

mRS 2と3の判定境界
確認項目 mRS 2に寄る状態 mRS 3に寄る状態
発症前の活動 仕事、家族内の役割、趣味、社会活動の一部を行えない 活動制限に加えて、日常的な生活管理にも他者の援助が必要
簡単な食事の準備 時間はかかっても自分で準備できる 準備を他者へ依存し、一人では生活が成立しにくい
家事・金銭管理 必要な範囲を自分で行える 日常的な家事や支払いの管理に援助が必要
近隣への外出・買い物 必要時には一人で移動し、少量の買い物ができる 近隣への外出や買い物に他者の援助が必要

mRS 2では発症前の生活が完全に戻っていなくても、自分の生活管理は一人で行えます。mRS 3では歩行や基本的な身の回り動作は自立していても、生活を維持するために何らかの援助が必要です。

mRSが評価するものと限界

mRSは、筋力、感覚、失調、失語などを個別に採点する尺度ではありません。身体機能、認知・高次脳機能、日常活動、社会的な役割への影響を含め、現在の全体的な障害度を1つの段階で表します。4, 7

短時間で全体的な転帰を共有できる一方、どのADLでどの程度の介助が必要か、歩行速度や上肢機能がどの程度変化したかまでは分かりません。詳細な介助量はBIやFIM、機能障害はSIASなどの評価で補完します。

mRSを5ステップで評価する方法

mRSは重い状態から順番に確認すると、判定の抜けや段階の飛び越しを減らせます。評価者の印象だけで決めず、同じ順番で聞き取ることが重要です。

  1. 評価時点と発症前状態を固定する:発症後何日、退院時、外来時などを記録し、発症前から存在した制限を区別する
  2. 常時介護の必要性を確認する:介護者が常に対応できる状態でいる必要があればmRS 5を検討する
  3. 歩行と基本的な身の回り動作を確認する:食事、トイレ、日常的な整容、歩行に人的援助が不可欠ならmRS 4を検討する
  4. 生活管理を確認する:簡単な食事の準備、家事、金銭管理、近隣への外出、買い物に援助が必要ならmRS 3を検討する
  5. 発症前の活動と症状を確認する:生活管理が自立していれば、活動制限の有無でmRS 2、症状の有無でmRS 1または0を判断する

死亡している場合はmRS 6です。評価の聞き取りでは、本人だけで判断せず、必要に応じて家族、介護者、多職種記録から普段の状態を確認します。

mRS判定でよくある失敗

mRSの判定がブレる主な原因は、「介助」という言葉の意味を評価者間でそろえていないことです。

mRS判定でよくある失敗と修正方法
よくある失敗 問題点 修正方法
歩行器を使うのでmRS 4とする 歩行補助具と他者による援助を混同している 身体介助、声かけ、監視が不可欠かを別に確認する
見守りだからmRS 3とする 見守りが必須か、念のためかが不明 見守りなしで具体的な危険が生じるかを記録する
入浴介助だけでmRS 4とする 入浴と、mRS 4で確認する日常的な整容を混同している 食事、トイレ、日常的な整容、歩行を個別に確認する
買い物ができないのでmRS 4とする 生活管理への援助と基本的な身の回り動作への援助を混同している 歩行と基本的な身の回り動作が自立していればmRS 3を検討する
点数だけを記録する 次の評価者が同じ判定を再現できない 評価時点、人的援助の内容、発症前との差を併記する

mRSを3行で残す記録テンプレ

記録では、点数だけでなく、判定を分けた具体的な根拠を残します。「評価時点」「歩行・身の回り」「生活管理」の3行にすると、再評価や引き継ぎで比較しやすくなります。

mRS記録テンプレ
記録項目 記載する内容 記載例
評価時点・発症前状態 評価日、病期、発症前から存在した制限 発症後30日・退院時。発症前は屋外歩行、買い物とも自立
歩行・身の回り 歩行補助具、身体介助、声かけ、監視の有無と具体的な動作 屋内はT字杖で自立。食事、トイレ、洗顔、歯磨きは人的援助なし
生活管理・最終判定 生活管理で必要な援助と、その根拠に基づくmRS 買い物と金銭管理は家族の援助が必要。以上よりmRS 3

「見守りあり」とだけ書かず、見守りがなければどのような危険が生じるのか、または念のため家族が付き添っているだけなのかを区別して記載します。

mRS A4記録シートPDF

評価時点、聞き取り相手、移動条件、セルフケア、生活管理、判定根拠、再評価メモをA4 1枚に整理できる記録シートです。

本シートは記録補助用です。判定基準の全文を収載した公式用紙ではないため、最終判定は本文の判定軸や所属施設の運用規定と照合してください。

mRS記録シートPDFを開く(ダウンロード)

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よくある質問(FAQ)

各項目名をタップすると回答が開きます。

杖や歩行器を使っているとmRS 4ですか?

歩行補助具を使用しているだけではmRS 4になりません。歩行に他者の身体介助、言葉による指示、監視が不可欠かを確認します。歩行補助具を使っても一人で移動できる場合は、mRS 3以下を検討できます。

歩行時に見守りが必要な場合はmRS 3と4のどちらですか?

見守りが客観的な危険を防ぐために不可欠なら、人的援助に含めてmRS 4を検討します。家族が念のため付き添っているだけで、必要時には安全に一人で歩ける場合は、見守りを不可欠な援助とは扱いません。

入浴だけ介助が必要ならmRS 4ですか?

入浴介助だけで自動的にmRS 4とは判定しません。食事、トイレ、洗顔・整髪・歯磨きなどの日常的な整容、歩行に人的援助が不可欠かを分けて確認します。

発症前から介助が必要だった場合はどう記録しますか?

発症前から存在した制限と、今回の脳卒中後に新たに生じた制限を分けて記録します。研究や施設によっては発症前mRSと評価時点mRSを別々に記録するため、所属施設の運用規定も確認してください。

mRSは電話でも評価できますか?

構造化した質問方法を用いれば、電話による評価も検討できます。mRS-9Qは、対面、電話、書面などによる評価方法が検討されています。本人の回答が不確かな場合は、普段の生活を知る家族や介護者からも確認します。5

mRSだけでADLの内容まで分かりますか?

mRSは全体的な障害度を1段階で示す尺度であり、個々のADL介助量までは分かりません。食事、移乗、トイレ、更衣などを詳しく確認する場合は、BIやFIMなどを併用します。

次の一手

mRSで全体的な障害度を確認した後は、評価目的に応じて評価尺度の全体像またはADLの詳細評価へ進みます。


参考文献

  1. Rankin J. Cerebral vascular accidents in patients over the age of 60. II. Prognosis. Scott Med J. 1957;2(5):200-215. DOI: 10.1177/003693305700200504 / PubMed: 13432835
  2. van Swieten JC, Koudstaal PJ, Visser MC, Schouten HJA, van Gijn J. Interobserver agreement for the assessment of handicap in stroke patients. Stroke. 1988;19(5):604-607. DOI: 10.1161/01.STR.19.5.604 / PubMed: 3363593
  3. Wilson JTL, Hareendran A, Grant M, Baird T, Schulz UGR, Muir KW, et al. Improving the assessment of outcomes in stroke: use of a structured interview to assign grades on the Modified Rankin Scale. Stroke. 2002;33(9):2243-2246. DOI: 10.1161/01.STR.0000027437.22450.BD / PubMed: 12215594
  4. Banks JL, Marotta CA. Outcomes validity and reliability of the modified Rankin scale: implications for stroke clinical trials. Stroke. 2007;38(3):1091-1096. DOI: 10.1161/01.STR.0000258355.23810.c6 / PubMed: 17272767
  5. Patel N, Rao VA, Heilman-Espinoza ER, Lai R, Quesada RA, Flint AC. Simple and reliable determination of the modified Rankin Scale score in neurosurgical and neurological patients: the mRS-9Q. Neurosurgery. 2012;71(5):971-975. DOI: 10.1227/NEU.0b013e31826a8a56 / PubMed: 22843133
  6. Bruno A, Close B, Switzer JA, Hess DC, Gross H, Nichols FT 3rd, et al. Simplified modified Rankin Scale questionnaire correlates with stroke severity. Clin Rehabil. 2013;27(8):724-727. DOI: 10.1177/0269215512470674 / PubMed: 23411790
  7. Broderick JP, Adeoye O, Elm J. Evolution of the Modified Rankin Scale and its use in future stroke trials. Stroke. 2017;48(7):2007-2012. DOI: 10.1161/STROKEAHA.117.017866 / PubMed: 28626052
  8. Saver JL, Chaisinanunkul N, Campbell BCV, Grotta JC, Hill MD, Khatri P, et al. Standardized nomenclature for Modified Rankin Scale global disability outcomes: consensus recommendations from Stroke Therapy Academic Industry Roundtable XI. Stroke. 2021;52(9):3054-3062. DOI: 10.1161/STROKEAHA.121.034480 / PubMed: 34320814

著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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