脳卒中ガイドライン 2025 の変更点| PT 実務と記録用紙

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脳卒中ガイドライン 2025 の変更点| PT 実務の読み方

この記事は、脳卒中ガイドライン 2025 で PT が明日から何を変えるかを短時間で整理するための総論です。結論からいうと、今回の読みどころは VII 章(亜急性期以後のリハビリテーション診療) にあり、手技名を覚えることよりも、反復量・対象選択・安全・再評価 をどう標準化するかで差が出ます。

このページで答えるのは、歩行・上肢・嚥下で何が変わったかと、院内でどう回すかです。急性期治療の細かな適応、各機器の詳細設定、算定の話までは深掘りせず、各論は兄弟記事へ分けます。

評価や介入の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。今の職場で教育体制がない、相談相手がいない、教材に触れにくい、見本となる先輩が少ないと感じるなら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。

評価 → 介入 → 再評価 の型を、現場で再現できる形で整えたい方へ。 PT キャリアガイドを見る ※同一タブで開きます。

VII 章を先に押さえる| 改訂の要点早見表

まずは PT に関係が深い変更点 だけを横並びで確認します。ここでは「何が推奨されたか」よりも、現場でどの判断を固定するか に読み替えておくと、運用がぶれにくくなります。

脳卒中ガイドライン 2025:PT が先に見る変更点の要約
領域 変更点の要約 PT 実務で先に決めること
歩行 頻回な歩行訓練が軸です。加えて、 BWSTT 、高強度歩行、トレッドミル、エクソスケルトン型歩行補助ロボット、 FES 、 VR 、認知運動二重課題の位置づけが整理されました。 歩行の目標を 速度 / 耐久性 / 実環境 のどれに置くかを先に 1 つに絞ります。
上肢 反復課題練習が軸のまま、ロボット、 BCI 、神経筋電気刺激、 VR 、 tDCS 、 rTMS などの妥当性が整理されました。 手段を選ぶ前に、何の課題を増やしたいか を決めます。
嚥下 嚥下訓練が軸です。頭部挙上訓練、頚部・舌の抵抗運動訓練、呼吸筋訓練に加え、 rTMS 、 tDCS 、咽頭部への経皮的電気刺激などの位置づけが整理されました。 訓練 / 代償 / 刺激 / 栄養ルート を分けて共有します。
痙縮・疼痛 痙縮では新規手段の解説が補強された一方、一定の結論に至らない領域もあります。疼痛では鍼治療の記載が追記されています。 「効くか」だけでなく、 ADL ・移動・痛み のどこを変えたいかを明文化します。
運用全体 今回の更新は、個別機器の導入よりも 対象選択・用量・安全・再評価 をセットで扱う流れが読みどころです。 1 行記録テンプレ を作り、週 1 回以上の同条件再評価を固定します。

VII 章を PT 実務に落とす 5 分フロー

この章の使い方は、①評価を固定 → ②目的に合わせて手段を選ぶ → ③用量と安全を残す → ④同条件で再評価 の順です。ここを逆にして、機器名から入ると運用が崩れやすくなります。

1)評価束を先に固定する

ガイドライン本文が 10 m 歩行速度 / TUG / 5STS / SPPB / BBS をセットで指定しているわけではありません。ここでは、院内で条件固定しやすい 当ブログの最小セット例 として示します。

PT 向け院内最小セットの例(当ブログの運用テンプレ)
みること 固定条件 最低限残すもの
歩行速度 10 m 歩行速度(通常 / 最良) 靴、補装具、歩行補助具、助走、測定区間 速度、補助具、介助量
移動の切替 TUG イス高、方向転換条件、開始合図 所要時間、ふらつき、見守り / 介助
下肢機能 5STS 、 SPPB 、 BBS イス高、手の使用可否、測定順 回数 / 点数、代償、疲労

大事なのは、項目数を増やすことではなく、同条件で繰り返せることです。まずは 3 ~ 5 指標に絞り、週 1 回以上の同条件再評価を固定してください。

2)歩行は「頻回 + 目的別追加手段」で読む

歩行障害では、頻回な歩行訓練 が土台です。そのうえで、亜急性期では バイオフィードバックを含む電気機器、 BWSTT 、高強度歩行訓練 が整理され、歩行可能例では トレッドミル、目的に応じて エクソスケルトン型歩行補助ロボット、 FES 、 VR 、認知運動二重課題 が位置づけられています。

実務では、最初に 速度を上げたいのか、歩行距離を伸ばしたいのか、実環境での安定性を高めたいのか を決めます。ここが曖昧なまま手段を足すと、記録も再評価も散りやすくなります。

3)上肢は「反復課題が軸、追加手段は目的で選ぶ」

上肢機能障害では、特定動作の反復を含む訓練 が軸です。ロボットを用いた訓練は勧められ、 BCI は妥当、中等度〜重度では神経筋電気刺激、さらに VR 、 tDCS 、 rTMS なども妥当と整理されています。

ただし、ここで大切なのは「何を使うか」より、把持、到達、操作、持続 のどこを伸ばしたいかです。手段は反復課題を成立させるための補助として位置づけると、導入の判断がぶれにくくなります。

4)嚥下は「訓練を軸に、追加刺激は多職種で」

摂食嚥下障害では、嚥下訓練そのもの が土台です。そのうえで、 頭部挙上訓練、頚部の抵抗運動訓練、舌の抵抗運動訓練、呼吸筋訓練 が整理され、さらに rTMS 、 tDCS 、咽頭部への経皮的電気刺激、 rPMS などが位置づけられています。

PT の実務では、単独で抱え込むよりも、体位 / 呼吸 / 活動量 / 疲労 / 共有記録 を担当しながら、 ST ・医師・看護と「何を訓練し、どこで止めるか」を合わせる運用が重要です。

5)記録は 1 行テンプレで残す

ガイドラインを現場で使える形にするには、記録を増やしすぎないことが大切です。最初は 1 行で十分です。

VII 章を現場で回すための 1 行記録テンプレ
目標 介入 用量 安全 再評価
何を変えるか 何をしたか 分数 / 反復 / 歩数 中止・注意事項 次回も同条件でみる指標
歩行 20 分 + 方向転換課題 実働 18 分 / 620 歩 起立時ふらつき軽度、休憩 1 回 10 m 速度、 TUG

脳卒中ガイドライン運用の記録シート( PDF )

院内での共有を早く回したい方向けに、評価前の固定項目・採点記録・再評価メモを 1 枚にまとめた A4 記録シートを用意しました。まずは紙 1 枚で運用をそろえ、細かな欄は回り始めてから足すのがおすすめです。

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現場の詰まりどころ(よくある失敗)

先に よくある失敗立て直し手順 を確認しておくと、導入直後の空回りを減らせます。とくに歩行で用量が積みにくいときは、脳卒中歩行練習の用量設定をあわせて見ると、増やし方の順番をそろえやすくなります。

よくある失敗

脳卒中ガイドライン 2025 を現場に落とすときの失敗パターン
詰まりどころ ありがちな状態 起きやすい理由
機器名から入る ロボット / 刺激を導入したが、目標が曖昧 アウトカムより手段が先になっている
用量が残らない 「やった」記録はあるが、分数・反復・歩数が残らない 再評価で比較できず、増量の判断ができない
再評価条件がぶれる 靴・補装具・イス高・時間帯が毎回違う 改善か条件差かが判別しにくい
嚥下が単発対応になる 姿勢、活動量、疲労、訓練内容の共有が分断される 多職種で「何を続けるか」が揃っていない

立て直し手順

脳卒中リハ運用を立て直す最小手順
順番 やること ポイント
1 目標を 1 つに絞る 速度、耐久性、上肢課題、嚥下安全などを 1 つだけ選びます。
2 指標を 2 ~ 3 個に固定する 同条件で繰り返せるものに絞ると、教育もしやすくなります。
3 用量を数で残す 分数、反復、歩数のうち 1 つでも毎回残すと増量判断ができます。
4 安全と再評価日を同時に決める 中止基準と次回測定日を同じ場で決めると、運用が続きやすくなります。

明日から変える 3 点

  • VII 章は「手段の一覧」ではなく「目的 → 用量 → 安全 → 再評価」で読む
  • 評価束は 3 ~ 5 指標に絞り、同条件で週 1 回以上の再評価を固定する
  • 歩行・上肢・嚥下のいずれも、反復課題を軸に追加手段を選ぶ

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. まずどこを読めば、 PT 実務への影響をつかめますか?

A. まずは VII 章の改訂のポイント を読み、そのあと 歩行障害、上肢機能障害、摂食嚥下障害 の順に確認するのがおすすめです。全章を最初から通読するより、 PT に関係の深い変更点から押さえた方が、実務へ落とし込みやすくなります。

Q2. 10 m 、 TUG 、 5STS 、 SPPB 、 BBS はガイドラインが指定している評価束ですか?

A. いいえ。ガイドライン本文がこの 5 項目をセット指定しているわけではありません。この記事では、院内で条件固定しやすい最小セットの例 として提示しています。重要なのは項目名より、同条件で繰り返せることです。

Q3. ロボットや BCI 、 rTMS などは、使えるなら全部入れた方がいいですか?

A. そうではありません。先に決めるのは 何を変えたいか です。歩行速度、歩行耐久性、上肢の操作、嚥下安全など、アウトカムを 1 つに絞ってから、その達成に役立つ手段だけを選ぶ方が運用しやすくなります。

Q4. 記録は最低限何を残せばいいですか?

A. 最低限は 目標、介入、用量、安全、再評価 の 5 項目です。最初から細かくしすぎると続かないため、 1 行テンプレや配布している記録シートから回し、必要ならあとから項目を足してください。

次の一手


参考文献・一次情報( Vancouver 風 )

  1. 一般社団法人日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂 2025〕改訂項目. 2025. 公式 PDF
  2. 秋本高義, 中嶋秀人. 脳卒中ガイドライン 2021(改訂 2025)解説. 日大医誌. 2026;85(1):11-18. J-STAGE PDF
  3. Podsiadlo D, Richardson S. The Timed “Up & Go”: A test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi:10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x. PMID:1991946
  4. Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. doi:10.1093/geronj/49.2.M85. PMID:8126356
  5. Buatois S, Miljkovic D, Manckoundia P, et al. Five times sit to stand test is a predictor of recurrent falls in healthy community-living subjects aged 65 and older. J Am Geriatr Soc. 2008;56(8):1575-1577. doi:10.1111/j.1532-5415.2008.01777.x. PMID:18808608

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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