SOAPカルテの書き方は「S→O→A→P」の4行で整理する
SOAPは、診療記録を「訴え→事実→解釈→次の一手」の順に整理するための型です。文章を長く書くことよりも、誰が読んでも患者さんの状態、判断の根拠、次回の対応を追えることが重要です。
この記事では、PT・OT・STが迷いやすいS・O・A・Pの線引きを中心に、記載例、A4記録シート、OK・NG例、提出前の確認ポイントをまとめます。まずは、1つのSに対して必要なOを選び、Oを根拠にAを書き、Aへの対応をPにする流れを押さえてください。

SOAPとは
SOAPとは、S(Subjective:主観的情報)、O(Objective:客観的情報)、A(Assessment:評価)、P(Plan:計画)の頭文字を並べた診療記録の枠組みです。
リハビリの現場では、同じ患者さんにPT・OT・ST、看護師、医師など複数の職種が関わります。そのため、SOAPでは「自分が分かる記録」ではなく、ほかの職種が読んでも判断の流れを追える記録にすることが大切です。
| 項目 | 意味 | 記載する内容 |
|---|---|---|
| S | 主観的情報 | 本人・家族の訴え、希望、不安、目標 |
| O | 客観的情報 | 測定値、検査結果、観察した事実 |
| A | 評価・判断 | Oを根拠にした問題点、原因、リスクの判断 |
| P | 計画 | 次の対応、介入内容、頻度、再評価方法 |
SOAPを項目ごとに解説
SOAPを書くときの基本は、各欄の役割を混ぜないことです。特に「SとOが混ざる」「Aが感想になる」「Pが抽象的になる」の3点で記録が崩れやすくなります。
S(Subjective):主観的情報
Sには、本人や家族の訴え、希望、不安、価値観、生活上の困りごとなどを記載します。医療者の解釈を加えず、本人が伝えた意味内容を短く残すことが基本です。
- 「歩くと左膝が折れそうで怖い」
- 「家のトイレまで1人で行きたい」
- 「階段を上ると息が苦しくなる」
家族や介護者から得た情報を記載する場合は、「妻より聴取」「長女より聴取」など、情報源も明記します。
Sが長くなるときは、会話をすべて書き起こすのではなく、「困っていること」「起きる場面」「本人の希望」に絞ると整理しやすくなります。
O(Objective):客観的情報
Oには、測定値、検査結果、観察した動作、介助量、使用した福祉用具など、第三者が確認しても同じように捉えられる事実を記載します。
- バイタルサイン
- TUG、BBS、5回立ち上がりテストなどの結果
- 歩行距離、介助量、使用物品
- 姿勢、動作、呼吸状態
- 転倒や中止に関わる安全所見
すべての評価結果を並べるのではなく、Sに対して必要な情報を選ぶことが重要です。迷った場合は「数値1つ+観察1つ+安全1つ」の3点を目安にすると、Aへつなげやすくなります。
SOAPのOが長くなりやすい場合は、以下の記事で数値・観察・安全の3点に絞る方法を確認できます。
A(Assessment):評価
Aは、Oで確認した事実に対して、医療者がどのように評価・判断したかを書く欄です。所見を繰り返すのではなく、「何が問題か」「なぜそう考えたか」「何を優先するか」を1〜2文でまとめます。
書きにくい場合は、次の型に当てはめてください。
Aの基本テンプレート
主な問題は( )である。根拠はOの( )であり、( )を優先する必要がある。
たとえば、Oに「方向転換時のふらつき」と「TUG 18秒」がある場合、Aでは単に数値を繰り返すのではなく、「現時点での単独歩行は転倒リスクが高い」と判断します。
Aを短くまとめる具体例は、以下の記事で詳しく解説しています。
P(Plan):計画
Pには、Aで示した問題や判断に対して、次に何を行うかを具体的に記載します。「継続」「経過観察」「自主トレ指導」だけでは、実施内容や再評価方法が読み手に伝わりません。
最低限、以下の要素を含めると計画が具体化します。
- 目的
- 実施する内容
- 量・回数・頻度
- 安全上の条件や中止基準
- 再評価する指標と時期
たとえば、「立ち上がり練習を継続する」ではなく、「立ち上がり練習10回×2セットを見守り下で実施し、1週間後に5回立ち上がりテストで再評価する」と書きます。
SOAPによるカルテの書き方:基本例
SOAPは、1つのSから必要なOを選び、Oを根拠にAを書き、Aへの対応をPへ落とし込むと整理できます。
記載日:2026年3月1日
診断名:廃用症候群
算定区分:医療保険
実施時間:10時00分〜10時40分
S(主観的情報)
「病棟の中を1人で歩いてもいいですか?」
O(客観的情報)
血圧124/68mmHg、脈拍68回/分、SpO₂ 97%。TUG 18秒、BBS 42/56点。歩行は見守り〜軽介助で、方向転換時にふらつきを認める。
A(評価)
移動能力は改善傾向だが、方向転換時の不安定性とTUG・BBSの結果から、現時点での病棟内自立歩行は転倒リスクが高い。見守り条件下での歩行安定化を優先する。
P(計画)
方向転換を含む歩行練習と立位バランス練習を継続する。病棟内移動は見守り条件を維持し、1週間後にTUG・BBSを再評価する。
疾患・場面別のSOAP記載例
ここからは、PT・OT・STが臨床で使いやすいように、疾患や場面ごとの記載例を示します。数値や介入内容をそのまま転記するのではなく、「SからPまでをどうつなぐか」を確認してください。
例1:脳卒中・回復期
S:「左膝が折れそうで怖い。立つ前から力が入ってしまう」
O:TUG 24.9秒。杖と短下肢装具を使用。5回立ち上がりテスト21秒。立位での左下肢荷重量38%。体幹前傾が乏しく、患側膝の保持が困難。
A:患側への荷重に対する恐怖と体幹前傾不足が、立ち上がり困難の主因と考える。成功体験を確保しながら、患側荷重と体幹前傾の学習を優先する必要がある。
P:鏡と体重計を用いた段階的荷重練習、体幹前傾の練習、立ち上がり練習を実施する。次回までに左下肢荷重量45%を目標とし、5回立ち上がりテストで再評価する。
例2:急性腰痛・外来
S:「朝起きたときの痛みが強い。長く座ったあとに立つと痛い」
O:起床時痛NRS 8/10。指床間距離20cm。座位前屈で疼痛を認める。神経学的異常所見は認めない。動作時に疼痛回避的な体幹固定がみられる。
A:屈曲方向への負荷に加えて、疼痛に対する回避的な動作が症状の持続に関与している可能性がある。過度な安静を避け、自己管理と段階的な活動再開を支援する必要がある。
P:症状に応じたセルフエクササイズを指導し、長時間座位後の立ち上がり方法を確認する。次回は起床時痛と前屈時痛を再評価する。
例3:COPD増悪後・在宅
S:「階段を上ると息が切れる。息が上がるのが怖くて家事を控えている」
O:mMRC 2。6分間歩行距離280m。SpO₂は室内気で94%から90%へ低下。呼吸補助筋の過活動を認め、口すぼめ呼吸は十分に定着していない。
A:持久力低下と非効率な呼吸パターンが、活動量低下の一因と考える。呼吸状態と酸素化を確認しながら、呼吸方法の練習と活動量の段階的な拡大が必要である。
P:口すぼめ呼吸を練習し、屋内歩行を10分/日から開始する。自覚症状とSpO₂を確認しながら運動量を調整し、次回は6分間歩行距離と労作時の呼吸状態を再評価する。
SOAP記録テンプレート
以下は、PT・OT・ST共通で使用できるSOAP記録テンプレートです。日付や実施者などの基本情報と、Pの再評価欄まで固定しておくと、記録の抜けを減らしやすくなります。
| 項目 | 記入欄・確認内容 |
|---|---|
| 患者ID・氏名 | |
| 日付・時間 | |
| 算定区分 | 医療保険・介護保険など |
| 実施時間 | 開始時刻〜終了時刻 |
| 実施者 | 氏名・署名 |
| S | 訴え、困りごと、目標、家族情報、情報源 |
| O | 数値1つ、観察1つ、安全1つを目安に、Sに直結する事実を書く |
| A | 問題点、根拠、原因の仮説、リスク、優先する対応を1〜2文で書く |
| P | 目的、内容、量・頻度、安全条件、再評価方法を書く |
| 説明・同意 | 本人・家族へ説明した内容、理解状況、同意の有無 |
| 再評価指標 | TUG、BBS、5回立ち上がりテスト、6分間歩行試験など |
SOAP記録シートPDF
印刷して使用できるA4・1枚のSOAP記録シートを用意しています。患者情報欄、S・O・A・Pの記入欄、再評価メモを1枚にまとめているため、手書き運用や新人教育、院内での記録方法の共有に使用できます。
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SOAPのOK・NG記載早見表
SOAPでは、情報の正しさだけでなく、各欄の役割を混ぜないことが重要です。特にAとPは、抽象的な表現を具体的な判断や行動へ置き換えてください。
| 区分 | OK | NG |
|---|---|---|
| S | 本人・家族の言葉と情報源が分かる | 「不安そう」など、医療者の解釈だけを書く |
| O | 数値、観察事実、条件、介助量を書く | 「良い感じ」「かなり改善」など印象だけを書く |
| A | 問題点、根拠、優先する方針がつながっている | 所見を並べるだけで結論がない |
| P | 内容、量・頻度、安全条件、再評価方法が具体的 | 「継続」「経過観察」「自主トレ指導」だけで終わる |
SOAP記録で止まりやすいポイント
SOAPが書けない原因は、文章力よりも「どの情報をどこへ置くか」が決まっていないことにあります。まずは、詰まっている箇所を特定してください。
| 詰まりどころ | 起きやすい問題 | 最短の対策 |
|---|---|---|
| SとOが混ざる | 本人の訴えと測定結果の関係が分かりにくい | Sは意味内容、Oは確認した事実に分ける |
| Oが長い | 重要な情報が埋もれ、Aを書きにくい | 数値1つ、観察1つ、安全1つに絞る |
| Aが書けない | 所見の羅列で終わる | 主問題、根拠、優先する対応の順に書く |
| Pが抽象的 | 次回の担当者が同じ対応を再現できない | 量・頻度・再評価指標を最低1つ入れる |
| 安全面が弱い | 中止や報告の判断が追えない | Oに推移、Aに判断、Pに対応を書く |
| 再評価がない | 介入の効果を比較できない | Pに「いつ・何で見直すか」を書く |
迷ったときの3ステップ
- Sを1つに固定する:その日に最も重要な困りごとや希望を1つ選びます。
- Oを3点までに絞る:数値1つ、観察1つ、安全1つを目安にします。
- AとPを対にする:Aで挙げた問題に対し、Pで対応と再評価方法を書きます。
S・O・A・Pの線引きで迷う情報
- 痛みのNRSやVASは、数値で表していても本人の感じ方であるため、基本的にはSに記載します。
- TUG、BBS、6分間歩行試験などの機能テストはOに記載します。
- バイタルサイン、介助量、歩行距離、観察した動作はOに記載します。
- 家族や介護者から得た情報はSに記載し、情報源を明記します。
- 問題点、原因の推測、転倒や急変リスクの判断はAに記載します。
- 介入内容、頻度、中止条件、次回の再評価方法はPに記載します。
提出前のミニチェック
SOAPを書き終えたら、文章を増やす前に、必要な情報が抜けていないかを確認します。
- 日付、時間、実施者の記載がある
- Sに本人・家族の訴えや希望がある
- Oに数値、観察事実、条件がある
- AがOを根拠にした判断になっている
- PがAで示した問題への対応になっている
- 実施内容、量、頻度が分かる
- 必要な安全条件や中止基準が記載されている
- 次回の再評価指標と時期が分かる
- 本人・家族への説明や同意が必要な場合、その記録がある
- 訂正・追記は施設の運用ルールに従っている
rehabilikun Library|SOAP・診療記録を深く学ぶ本
SOAPは、S・O・A・Pの意味を覚えるだけでは十分ではありません。評価結果をどう解釈し、介入計画へつなげ、他職種に伝わる形で残すかまで学ぶことで、日々の記録が臨床推論と情報共有に役立つようになります。
リハビリテーションの「質」が上がるカルテの書き方
伝わるカルテの考え方から具体的な記載例まで学べる一冊です。SOAPの形式だけでなく、評価、臨床推論、目標設定、介入計画を記録へ落とし込む方法を整理したい方に向いています。
理学療法・作業療法のSOAPノートマニュアル
問題志向型診療記録の考え方をもとに、S・O・A・Pの役割を体系的に学べる書籍です。特にAとPのつながりを深く理解したい方や、SOAP記録の指導に関わる方に向いています。
よくある質問
各質問をタップすると回答を確認できます。
Q1.SOAPのフォームは毎回同じでよいですか?
枠組みは毎回同じで問題ありません。S・O・A・Pの順番を固定すると、記録時間の短縮や院内での書き方の統一につながります。ただし、記載する内容は患者さんの状態、介入目的、安全上のリスクに応じて変更します。
Q2.痛みのNRSやVASはSとOのどちらですか?
基本的にはSに記載します。NRSやVASは数値で表しますが、患者さん本人の痛みの感じ方を示す情報だからです。「安静時NRS 3/10、歩行後NRS 6/10」のように、測定した条件も添えると経過を比較しやすくなります。
Q3.バイタルが不安定だった場合はどこまで書きますか?
Oに数値と推移、Aにその数値をどう判断したか、Pに中止・報告・再評価の方針を記載します。数値だけで終わらず、中止した理由、誰へ報告したか、どの条件で再開を検討するかまで残すと判断の流れを追いやすくなります。
Q4.写真や動画はSOAPのどこに記載しますか?
一般的にはOを補足する客観的資料として扱います。保存場所や撮影目的が分かるように記載し、患者さんの同意、個人情報の取り扱い、院内の保存ルールに従って運用してください。
Q5.Aが所見の繰り返しになってしまいます。どう直しますか?
Oに記載した事実をすべて言い換えるのではなく、「最も重要な問題」「その根拠」「優先する対応」の3点に絞ります。まず結論を1つ決めてから、根拠となるOを1〜2点選ぶと短くまとめやすくなります。
次の一手
SOAPの全体像を理解したあとは、診療記録として必要な最低ラインと、書きにくいA・Pの具体的な型を確認すると、臨床で使いやすくなります。
記録の書き方だけでなく、教育体制や業務量も負担になっていませんか?
記録方法を整えても、添削を受けられない、人員が足りない、勤務時間内に書類業務が終わらない場合は、職場環境も整理する必要があります。
参考文献
- e-Gov法令検索. 医師法(昭和23年法律第201号)第24条. https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201
- 厚生労働省. 診療情報の提供等に関する指針の策定について(医政発第0912001号). https://www.mhlw.go.jp/
- 公益社団法人日本理学療法士協会. 理学療法士の職業倫理ガイドライン. https://www.japanpt.or.jp/
- Weed LL. Medical records that guide and teach. N Engl J Med. 1968;278(11):593-600. doi:10.1056/NEJM196803142781105.
- Aronson MD. The purpose of the medical record: Why Lawrence Weed still matters. Am J Med. 2019;132(11):1256-1257. doi:10.1016/j.amjmed.2019.03.051.
- Donnelly WJ, Brauner DJ. Why SOAP is bad for the medical record. Arch Intern Med. 1992;152(3):481-484.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・記録・プロトコルを発信しています。脳卒中、褥瘡・創傷ケアなどの領域で講師登壇経験があります。
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

