関節可動域(ROM)測定のやり方|基本軸・記録・中止基準

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関節可動域( ROM )測定のやり方|軸・条件・記録を揃える

関節可動域( ROM )測定では、角度だけでなく、測定肢位・基本軸・移動軸・近位固定・代償の扱いを揃えることが重要です。同じ条件で測定し、角度と痛み・反応を一緒に記録すれば、担当者が変わっても再評価しやすくなります。

この記事では、PT・OT向けに、ROM 測定の基本手順、ゴニオメーターの合わせ方、AROM / PROM の使い分け、2022 年の標準測定法と 2025 年の日本理学療法学会連合版関節可動域評価指針の位置づけ、記録方法、中止基準、A4 記録シートまで整理します。

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ROM 測定のやり方|5 ステップで進める

ROM 測定は、安全確認 → 測定条件を決める → 軸を合わせる → 関節を動かして角度を読む → 条件と反応を記録する流れで進めます。最初から全関節を埋めるのではなく、評価目的に必要な関節と運動方向を選ぶことが先です。

ROM 測定の基本フロー
段階 確認すること 次の判断
① 安全確認 疼痛、術後制限、医師指示、炎症、不安定性 終末域まで測定してよいか決める
② 条件設定 対象関節、運動方向、測定肢位、固定 今回採用する測定条件を決める
③ 軸合わせ 関節軸、基本軸、移動軸、骨指標 ゴニオメーターを再現できる位置に合わせる
④ 測定 角度、疼痛、代償、終末域の反応 どこまでが目的とする可動域か判断する
⑤ 即時記録 肢位、方法、角度、痛み、代償 同条件で再評価できる形に残す
ROM測定の基本フロー。測定前、条件固定、測定、記録の流れと中止の目安を整理した図
ROM 測定は、条件を揃えて測定・記録し、同じ条件で再評価できる形にします。

ゴニオメーターの合わせ方|基本軸・移動軸・固定を分けて考える

ゴニオメーターは、単に関節の上へ置くのではなく、関節軸を基準に基本軸と移動軸を合わせて角度を読みます。関節ごとに定められた測定肢位と軸が異なるため、対象となる運動方向の標準測定法を確認してから測ります。

  1. 測定肢位を作る:対象となる関節運動に定められた肢位を基本にします。
  2. 骨指標を確認する:基本軸・移動軸を再現するためのランドマークを確認します。
  3. 関節軸を合わせる:ゴニオメーターの中心を対象となる関節運動の軸へ合わせます。
  4. 基本軸を合わせる:身体側の基準となる線へ固定側のアームを合わせます。
  5. 移動軸を合わせる:動く身体部位の基準線へ移動側のアームを合わせます。
  6. 近位部を固定する:骨盤、体幹、肩甲帯など、目的外の動きが角度へ混ざらないようにします。
  7. 角度を読む:代償が始まった位置、疼痛、終末域の反応と合わせて記録します。

測定値が変わったときは、角度そのものより先に肢位・軸・固定・代償が前回と同じか確認します。条件が違えば、数値の差をそのまま改善・悪化とは判断できません。

測定前チェック|安全と目的を 30 秒で確認する

測定前には、何のためにどの関節を測るのかを決めます。ROM は全関節を一律に測ることが目的ではなく、動作制限や治療方針について立てた仮説を確認するために選択します。

ROM 測定前の最小チェック(成人・一般)
確認項目 確認内容 その場で決めること
目的 歩行、更衣、起き上がり、移乗など 優先して測る関節と方向を決める
疼痛 安静時痛、運動時痛、防御性収縮 終末域まで確認できる状態か判断する
禁忌・制限 術後制限、医師指示、脱臼リスク、荷重制限など 許容される運動範囲と方法を確認する
測定条件 肢位、支持、固定、使用する測定器 再評価でも再現する条件を決める

AROM と PROM|同じ「ROM」でも分けて記録する

AROM(自動関節可動域)と PROM(他動関節可動域)は、得られる情報が異なるため、混在させずに記録します。AROM は本人が随意的に動かせる範囲を確認し、PROM は他動的に得られる可動範囲と終末域の反応を確認します。

AROM と PROM の整理
方法 主に確認すること 観察するポイント
AROM 本人が随意的に動かせる範囲 角度、疼痛、代償、運動の滑らかさ、恐怖
PROM 他動的に到達できる範囲 角度、疼痛、防御性収縮、終末域の抵抗

AROM が PROM より小さい場合でも、それだけで原因を確定することはできません。疼痛、筋力、運動制御、恐怖、理解、神経学的要因などを追加で確認します。同様に、PROM の終末域所見だけで制限組織を断定せず、疼痛や他方向の ROM、筋緊張、診療情報と合わせて解釈します。

2022 年標準法と 2025 年学会連合版はどう使い分けるか

国内で ROM を測定するときは、まず日本リハビリテーション医学会・日本整形外科学会・日本足の外科学会による 2022 年改訂の「関節可動域表示ならびに測定法」を標準的な測定法として確認します。

一方、理学療法の実践では、患者の状態によって標準法で指定された肢位を取ることが難しい場合があります。日本理学療法学会連合は、このような臨床場面で 3 医学会による測定法を補う目的で、2025 年に「日本理学療法学会連合版 関節可動域評価指針」を公開しています。

ROM 測定法を確認するときの位置づけ
資料 位置づけ 実務上の使い方
3 医学会
2022 年改訂
国内の標準的な関節可動域表示・測定法 基本となる運動名称、測定肢位、基本軸・移動軸、参考可動域を確認する
日本理学療法学会連合版
2025 年
理学療法場面で標準法を補う評価指針 標準法での測定が難しい場面で、別法や推奨される測定方法を確認する

別法を使った場合は、標準法で測定した値と区別できるよう、採用した肢位・軸・方法を記録します。測定方法を変えたまま前回値と単純比較しないことが重要です。

なお、2022 年 6 月に公表された修正では、図表などの表記上の誤りが修正されましたが、数値や定義の修正はありません。施設内の資料を使う場合も、修正後の内容を基準にしておくと安心です。

ROM の記録方法|条件+角度+反応を 1 行で残す

ROM は「右肩屈曲 120°」だけでは、次回の担当者が同じ条件を再現できません。最低限、関節・方向+肢位・方法+角度+疼痛・代償などの反応を一緒に記録します。

ROM 記録で揃える最小セット
記録項目 書き方(例) ポイント
肢位・固定 背臥位・骨盤固定あり 前回と異なる条件は明記します。
AROM / PROM 右 110°( A )/ 125°( P ) 自動と他動を混在させません。
疼痛 100°付近から前方痛 部位と出現角度があると比較しやすくなります。
終末域所見 125°で firm 終末域まで安全に評価できた場合に記録します。
代償 110°から体幹伸展あり 代償が始まった角度も有用な情報です。

記録例:右肩屈曲、背臥位。AROM 110°、PROM 125°。100°付近から前方痛。AROM 110°以降で体幹伸展代償あり。PROM 125°で終末域を確認。

参考可動域|「届かなければ異常」とは判断しない

参考可動域は、ROM を解釈するときの目安であり、そこへ到達しなければ一律に異常と判定するためのカットオフではありません。測定条件、その人に必要な動作、疼痛や術後制限などと合わせて判断します。

2022 年の標準測定法には関節ごとの参考可動域が示されています。また、2025 年の日本理学療法学会連合版関節可動域評価指針では、理学療法の実践を想定した評価方法が整理されています。

再評価では「参考値に近づいたか」だけでなく、同じ条件で角度が変化したか、疼痛や代償がどう変わったか、目的とする動作へつながったかを確認します。

ROM 測定の中止・相談目安|終末域を取り切ることを優先しない

ROM は最大角度を取るために無理に押し込む検査ではありません。強い疼痛、明らかな不安定感、術後制限、神経症状などが出た場合は、角度測定より安全を優先します。

ROM 測定の中止・相談目安
状況 中止・再確認する所見 対応
疼痛の急激な増悪 強い疼痛、表情変化、防御性収縮、症状の急増 その方向への測定を中止し、疼痛が出た角度・部位・条件を記録します。
明らかな不安定感・機械症状 抜ける感覚、ロッキング、強いキャッチ、不安の増大 追加のストレスを避け、必要に応じて他所見と合わせて共有・相談します。
術後・外傷後の制限 術式や医師指示で禁止された方向・角度 術後プロトコルや医師指示を優先し、許容範囲のみ確認します。
炎症症状の増悪 疼痛・熱感・腫脹などの明らかな悪化 終末域までの測定を優先せず、状態を再評価します。
神経症状の増悪 しびれ、放散痛、脱力感などの新規・増悪 誘発する方向を中止し、症状の分布と条件を記録して共有します。

ROM 記録シート|A4 PDF( v2026-03 )

担当交代や経時比較で条件がずれないように、測定条件(肢位・固定)、AROM( A )/ PROM( P )、疼痛、end feel、代償を 1 枚で記録できる A4 版です。初回評価と再評価で同じ項目を確認するときに使用できます。


ROM 記録シート( A4 PDF )を開く

ROM 測定でよくある失敗|数値がずれたら条件へ戻る

ROM が安定しないときは、ゴニオメーターの読み方だけを練習するのではなく、目的・肢位・軸・固定・代償・記録のどこが崩れたかを確認します。

ROM 測定で起きやすい失敗と修正ポイント
NG 起こる問題 修正
とりあえず全関節を測る 時間がかかり、結果を何に使うか不明確になる 評価したい動作や仮説から対象関節を選ぶ
骨指標を確認せず軸を合わせる 基本軸・移動軸が毎回ずれる 測定前にランドマークを確認する
AROM と PROM を混在させる 前回値との比較条件が分からなくなる 自動・他動を明記して別々に記録する
代償を含めたまま角度を読む 対象関節の変化ではない動きを改善と誤認する 近位部を固定し、代償開始角度も記録する
測定法を変えて数値だけ比較する 測定条件の差を変化量として扱ってしまう 別法を使った場合は方法を明記し、同条件で比較する

値が安定しないときの立て直し手順

  1. 目的を確認する:何を判断するための ROM かを言い直します。
  2. 測定法を確認する:対象関節・方向の標準的な肢位と軸を確認します。
  3. ランドマークを取り直す:基本軸・移動軸の基準を再確認します。
  4. 固定と代償を確認する:目的外の体幹・骨盤・肩甲帯の動きを確認します。
  5. 条件ごと記録する:再評価で同じ測定法を再現できるようにします。

ROM 測定でよくある質問

Q1.時間がないときは、どの関節まで測ればよいですか?

全関節を一律に測る必要はありません。現在困っている動作や治療方針に関係する関節を優先し、疼痛や拘縮が疑われる部位を追加します。スクリーニングで問題が見つかった部位を、その後の評価で詳しく測る方法でも構いません。

Q2.ROM は AROM と PROM のどちらを記録すればよいですか?

評価目的によって異なりますが、両方を確認した場合は混在させず別々に記録します。自動で出せる範囲と他動的に得られる範囲の差自体が臨床情報になるため、「ROM 120°」だけではなく、A / P または自動/他動を明記します。

Q3.標準法で指定された肢位が取れない場合はどうしますか?

まず 2022 年改訂の標準測定法を確認します。患者の状態によってその肢位で測定することが難しい場合は、日本理学療法学会連合版関節可動域評価指針などの別法を確認します。別法を採用した場合は、肢位・軸・測定方法を記録し、標準法の値と混同しないことが重要です。

次に確認する|終末域の抵抗まで評価する場合

ROM を測定したあと、他動運動の終末域で「なぜこの角度で止まるのか」「firm・hard・empty などをどう記録するか」まで整理したい場合は、end feel の見分け方と記録方法で確認できます。


参考文献

  1. 久保 俊一, 中島 康晴, 田中 康仁. 関節可動域表示ならびに測定法改訂について( 2022 年 4 月改訂 ). Jpn J Rehabil Med. 2021;58(10):1188-1200. doi: 10.2490/jjrmc.58.1188
  2. 日本リハビリテーション医学会・日本整形外科学会・日本足の外科学会. 2022 年 4 月改訂、関節可動域表示ならびに測定法の修正について. 2022 年 6 月. PDF
  3. 日本理学療法学会連合. 日本理学療法学会連合版 関節可動域評価指針. 2025 年 3 月. 公式ページ

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

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