【LSA:ライフスペースアセスメント】評価方法と得点の計算方法

評価法
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「Life space assessment(LSA)」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

生活空間は外出した範囲のみならず、頻度や自立状況を包含した外出行動の指標になります。生活空間の狭小化は、身体機能や日常生活活動能力の低下、虚弱の発生、死亡リスクの増加を招くことが示されています。また、生活空間はADLの低下に先立って狭小化し、将来のIADL低下の予測因子となり得ます。

   

以上のことから地域在住高齢者については、 Life space assessment(LSA)を活用して生活空間を定量化していくことが重要となります。また、生活空間が狭小化しているのであれば、生活空間を拡大させるような準備や取り組みを行う必要があります。

  

Life space assessment(LSA)の重要性が高いことについてはご理解している方が多いかと思います。しかし、実際に使用できるかというと使用したことがない方が大半だと思います。そんな方のために、こちらの記事をまとめました。

  

今までにLife space assessment(LSA)を一度も使用したことがない人でも、この記事を読むことで明日からの臨床で活用することができるようになることを目標にします。特に、下記のポイントを理解できるようにします。

   

  • 生活空間とADLの関連性
  • 行動範囲の評価について
  • Life space assessment(LSA)とは
  • 評価方法と採点方法について

   

こちらの記事が活動性の評価、生活空間の評価、退院時支援などに少しでもお力添えになれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

近年は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の知識や技術の定着における手段も多様化しております。以前は職場内の勉強会であったり、外部の研修会に参加するなどが一般的でありましたが、現在では働き方改革、ライフワークバランスなどの用語が浸透したことも有り、昔ほど「勉強しなさい。」と言われることはなくなったと思います。

  

しかし、医療職として、患者様や利用者様の未来を預けられた療法士として、やはり知識のアップデートは必要だと思います。何より、新しい知識や技術を取り入れていった方が、自分自身が療法士として充実した日々を送ることに繋がるはずです。そこで、今の時代にあった勉強方法は何だろうか?という話になりますが、そんな人の味方になってくれるのが「リハノメ」です。

    

「リハノメ」は時間にとらわれず、電車などの通勤中、お昼休みの手が空いた時間、寝る前のちょっとした時間、つまり「隙間時間」で動画を閲覧し、知識や技術をアップデートすることができます。忙しい現代人に適した学習形態、気軽に始められる価格設定にもなっているため、是非一度ご利用してみてはいかがでしょうか?

    

地域在住高齢者のADLが低下する要因

現在、活力のある高齢社会に向け、高齢者が自立した地域生活をできる限り継続可能とするための効果的な予防重視型施策が介護保険制度に求められています。

日本の高齢者に対する縦断的疫学調査で把握された生活機能障害の発生は、日常生活動作(ADL)では、1 年半から 2 年後で約 5%、3 年後で 8%、6 年後では24%と報告されています。

ADLより高度な生活機能で、地域で独立した生活を営む上で必要な手段的日常生活動作(IADL)の自立低下の発生は 1 年半から 2 年後で約10%と報告されています。この結果から、IADLはADLよりも自立度の低下をきたす可能性が高いことが推測されます。

地域在住高齢者の障害発生に関しては国内外でその危険因子の検討が進んでおり、ADL障害発生の早期には行動範囲の制限が生じていると報告されています。また、地域在住高齢者が寝たきりに陥る過程の検討によると、歩行能力の障害によって日常の行動範囲が狭まることが最大の問題であると考えられております。

確かに歩行能力が保たれた高齢者であっても、閉じこもりのような状態ではADLが低下していくことを容易に想像することができます。因みに閉じこもりとは、「寝たきりなどでないにもかかわらず、1日のほとんどを家の中で過ごし、日々の行動範囲が家の中か庭先ぐらいで、週に1回も外出しない状態」のことをいいます。

すなわち、高齢者が自立した地域生活をできる限り継続可能とするためには、移動能力の評価とは別に行動の把握が必要になります。

行動範囲の評価について

行動範囲の評価は1980年代から始まり「日常の 活動で一定期間に移動した範囲」を生活空間 (life space)と称した尺度の開発が試みられてきました。現在までに開発された生活空間の代表的尺度として、Life space assessment(LSA)が 挙げられます。

Life space assessment(LSA)とは活動を生活範囲という概念で捉え、対象者の生活範囲を居室内、敷地内、近隣、町内、町外の 5 段階に分類し、各範囲での移動の有無と頻度、自立度によって過去 1 ヵ月間の個人の活動量を得点化し評価する指標になります。120 点満点で、得点が高いほど生活の幅が広い事が示されます。

Life space assessment(LSA)とは

Life space assessment(LSA)は日本語で言えば「生活空間の広がり」を点数化する評価尺度になります。評価の最大の目的は、直近 1 か月間における対象者の行動範囲を調べることになります。

Life space assessment(LSA)における生活空間(Life space)とは、 活動を実施するため日常的に外出した距離によって規定されます。そのため、Life space assessment(LSA)では生活空間を Life space 0 から Life space 5 までの6段階で区分しております。

  • Life space 0:寝室
  • Life space 1:住居内
  • Life space 2:居住空間のごく近くの空間
  • Life space 3:自宅近隣
  • Life space 4:町内
  • Life space 5:町外

Life spaceの定義は人々によって様々だとは思いますが、こちらの評価尺度では、Life space 3 の近隣についてを自宅から 800m 以内の距離としています。同様に、Life space 4 の町内についてを住居から800m以上〜16 km未満、Life space 5 の町外を住居から16km以上と規定しております。

しかし、これらの近隣や町内・町外の意味合いについては、対象者が感じたままで回答してもらって問題ないとされています。対象者が回答に困った時だけ、上記の目安を提示します。

Life space assessment(LSA)については日本理学療法士教会も資料を出しておりますので、こちらの資料も参考になると思います。

Life space assessment(LSA)の評価項目

Life space assessment(LSA)の評価項目は Life space 1(生活空間レベル1) から Life space 5 (生活空間レベル5)までの5段階で、各範囲での移動の有無と頻度、自立度についてを採点する形式となっております。

Life space 1(生活空間レベル1)

  • a:この 4 週間、あなたは自宅で寝ている場所以外の部屋に行きましたか。①はい ②いいえ
  • b:この 4 週間で、上記生活空間に何回行きましたか。 ①週 1 回未満 ②週 1〜3 回 ③週 4〜6 回 ④毎日
  • c:上記生活空間に行くのに、補助具または特別な器具を使いましたか。 ①はい ②いいえ
  • d. 上記生活空間に行くのに、他者の助けが必要でしたか。 ①はい ②いいえ

Life space 2(生活空間レベル2)

  • a:この4週間、玄関外、ベランダ、中庭、(マンションの)廊下、車庫、庭または敷地内の通路などの屋外に出ましたか。①はい ②いいえ
  • b:この 4 週間で、上記生活空間に何回行きましたか。 ①週 1 回未満 ②週 1〜3 回 ③週 4〜6 回 ④毎日
  • c:上記生活空間に行くのに、補助具または特別な器具を使いましたか。①はい ②いいえ
  • d:上記生活空間に行くのに、他者の助けが必要でしたか。①はい ②いいえ

Life space 3(生活空間レベル3)

  • a:この4週間、自宅の庭またはマンションの建物以外の近隣の場所に外出しましたか。①はい ②いいえ
  • b:この 4 週間で、上記生活空間に何回行きましたか。①週 1 回未満 ②週 1〜3 回 ③週 4〜6 回 ④毎日
  • c:上記生活空間に行くのに、補助具または特別な器具を使いましたか。①はい ②いいえ
  • d:上記生活空間に行くのに、他者の助けが必要でしたか。①はい ②いいえ

Life space 4(生活空間レベル4)

  • a:この4週間、近隣よりも離れた場所(ただし町内)に外出しましたか。①はい ②いいえ
  • b:この 4 週間で、上記生活空間に何回行きましたか。①週 1 回未満 ②週 1〜3 回 ③週 4〜6 回 ④毎日
  • c:上記生活空間に行くのに、補助具または特別な器具を使いましたか。①はい ②いいえ
  • d:上記生活空間に行くのに、他者の助けが必要でしたか。①はい ②いいえ

Life space 5(生活空間レベル5)

  • a:この 4 週間、町外に外出しましたか。①はい ②いいえ
  • b:この 4 週間で、上記生活空間に何回行きましたか。①週 1 回未満 ②週 1〜3 回 ③週 4〜6 回 ④毎日
  • c:上記生活空間に行くのに、補助具または特別な器具を使いましたか。①はい ②いいえ
  • d:上記生活空間に行くのに、他者の助けが必要でしたか。①はい ②いいえ

日本理学療法士協会が作成したE-SASという評価バッテリーをご存知でしょうか。E-SASは介護予防事業「運動器の機能向上」の効果を、筋力やバランスといった運動機能のみによって評価するのではなく、参加者(高齢者)が活動的な地域生活の営みを獲得できたか、という視点から評価することを目的としたアセスメントセットになります。

Life space assessment(LSA)得点計算方法

E-SASは6つの指標を評価しますが、そのうちの1つに Life space assessment(LSA)があります。Life space assessment(LSA)の評価用紙を探している場合は、日本理学療法士協会が作成した E-SAS の評価用紙がございますので、こちらからpdfをダウンロードすることが可能になっています。

得点は 120 点満点で、得点が高いほど生活の幅が広い事が示されます。計算方法としては、Life space 1(生活空間レベル1)〜Life space 5(生活空間レベル5)までありますので、それぞれのレベルで計算したものを最終的に足し算して合計点を出すようなイメージになります。計算式は以下の通りです。

生活空間レベル1(a×b×cd)+ 生活空間レベル2(a×b×cd)+ 生活空間レベル3(a×b×cd)+ 生活空間レベル4(a×b×cd)+ 生活空間レベル5(a×b×cd)= 合計点

a の計算方法

この 4 週間で ○○ に行きましたか?という項目になります。回答の選択肢は ①はい ②いいえ のどちらかになりますが、②の場合は 0 点となります。計算式が a×b×cd となってますので、0点の場合、その生活空間レベルは 0 点ということになります。

「①はい」についてですが計算に気をつけたいポイントとなります。生活空間レベルによって点数が異なることを覚えておく必要があります。点数は以下の通りとなります。

  • レベル1:1点
  • レベル2:2点
  • レベル3:3点
  • レベル4:4点
  • レベル5:5点

b の計算方法

  • ①週 1 回未満:1点
  • ②週 1〜3 回:2点
  • ③週 4〜6 回:3点
  • ④毎日:4点

cとd の計算方法(一緒に計算)

  • cとdが 両方、「②いいえ」の場合:2点
  • c が「①はい」dは「②いいえ」の場合:1.5点
  • d が「①はい」cは「②いいえ」の場合:1点
  • cとd が両方「①はい」の場合:1点

推奨グレード(エビデンス)

地域理学療法診療ガイドラインによると活動性の評価として Life space assessment(LSA)の推奨グレードはAと高く評価されています。Life space assessment(LSA)の得点は身体機能、ADL、IADL、SF-12、GDS の成績と相関しており妥当性がある指標であると報告されています。

GDSについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【高齢者用うつ病評価尺度:GDS15についての記事はこちらから

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「Life space assessment(LSA)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が活動性の評価、生活空間の評価、退院時支援などに少しでもお力添えになれば幸いです!

Life space assessment(LSA)だけに留まらず、地域在住高齢者についてのアセスメントをすることは非常に重要なことになります。地域で生活する高齢者の社会的孤立の状況を評価する方法として、Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)という尺度がございます。LSNS-6 については、他の記事で詳しくまとめておりますので、興味があればご覧して頂けると幸いです☺️ 【LSNS-6:社会的孤立のスクリーニングについての記事はこちらから

参考文献

  1. 野村宗史,狹田純,藤田絵理,福原祐子,中元隆之.緩和ケア病棟において Life-Space Assessment による評価を用いて理学療法介入を実施した転移性脳腫瘍患者の一症例.理学療法の臨床と研究.第24巻,2015年,p53-55.
  2. 松田憲亮,宗形龍太朗,池田翔,中原雅美,永井良治,岡本龍児,池田拓郎.LSA スコア低得点化に関連する要因.理学療法科学.2015,30(6),p977–980.
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