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サイト管理者のリハビリくんと申します。

理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪
リハビリテーションの安全管理
リハビリテーションの安全管理を図るためには、どのような取り組みを行うことが効果的なのでしょうか。
そもそも、リハビリテーションは本質的にハイリスクの分野になります。対象者は身体に何らかの障害が生じており、移動機能を始めとする基本動作能力が低下していたり、合併症を複数抱えている方も少なくありません。
また、認知機能の低下や高次脳機能障害を呈するケースも多く、これらの場合には本人によるリスク管理が困難のなります。
その一方で、転倒や合併症のリスクを恐れ、リハビリテーションを実施しないと失われた機能は回復しないうえに廃用に陥るリスクが高くなります。リハビリテーションの安全管理の難易度は高いものになりますが、それを理解したうえで進めていくことが求められます。
リハビリテーションの安全管理では様々な客観的情報や、患者本人が示すサインを頼りに対応に努めます。バイタルサインだけが全てではありませんが、経験が浅いスタッフはまずはバイタルサインを通して経験を積むべきだと考えられます。
バイタルサインを英語で表現すると「vital signs:バイタルサインズ」となります。古典的、教科書的には、血圧・脈拍・呼吸数・体温の 4 つであることが知られており、最近では意識・尿量・SpO2 を加えてバイタルサインとしている教科書もあります。
しかし、本来バイタルとは「生命の、重要な」という意味であり、サインは「徴候、症状、訴え」とすると「サインズ」であるので、サインは複数あるということになり、患者から発せられるあらゆる生体の反応と解釈することができます。
すなわち、私たちは単に血圧や脈拍だけに注意を向けるのでなく、あらゆる生命兆候・サイン・訴えに関心をもって注意し、観察し、気づき、比較して安全で効果的なリハビリテーションを提供することが重要になります。その中で土肥・アンダーソンの基準はバイタルサインの変化を考慮した安全管理基準となっているため、リハビリテーションを実施するうえで1つの判断基準になります。
アンダーソン土肥の基準(運動中止基準)
本邦で最も一般的となっている安全管理基準は日本リハビリテーション医学会の「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」となっております。
このガイドラインは、古典的な「土肥・アンダーソンの基準」に倣って以下の4条件に分類されています。
- 積極的なリハビリテーションを実施しない場合
- 途中でリハビリテーションを中止にする場合
- いったんリハビリテーションを中止し、回復を待って再開
- その他の注意が必要な場合

積極的なリハビリテーションを実施しない場合
- 安静時脈拍 40回/分 以下または 120回/分 以上
- 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
- 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
- 労作性狭心症を有するもの
- 心房細動を有し、著しい徐脈または頻脈がある場合
- 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
- 著しい不整脈がある場合
- 安静時胸痛がある場合
- リハビリテーション実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
- 座位でめまい、冷や汗、嘔気などがある場合
- 安静時体温が38℃以上
- 安静時血中酸素飽和度90%以下
途中でリハビリテーションを中止にする場合
- 中等度以上の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛、頭痛、強い疲労感などが出現した場合
- 脈拍が 140回/分 を超えた場合
- 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
- 頻呼吸(30回/分以上)、息切れが出現した場合
- 運動により不整脈が増加した場合
- 徐脈が出現した場合
- 意識状態の悪化
いったんリハビリテーションを中止し、回復を待って再開
- 脈拍数が運動前の 30% を超えた場合。ただし、2分間の安静で 10% 以下に戻らないときは以後のリハビリテーションを中止するか、または極めて軽労作のものに切り替える
- 脈拍が 120回/分 を超えた場合
- 1分間に10回以上の期外収縮が出現した場合
- 軽い動悸、息切れが出現した場合
その他の注意が必要な場合
- 血尿の出現
- 喀痰量が増加している場合
- 体重が増加している場合
- 倦怠感がある場合
- 食欲不振時・空腹時
- 下肢の浮腫が増加している場合
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「土肥アンダーソンの基準」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事が土肥・アンダーソンの基準についての理解力向上をもたらし、リハビリテーション診療における安全管理に少しでもお力添えになれば幸いです!
参考文献
- 前田真治.リハビリテーション医療における 安全管理・推進のためのガイドライン.Jpn J Rehabil Med.VOL.44,NO.7,2007,p384-390.
- 高橋哲也.運動療法時のリスク管理の要点―適切な運動療法によりアクシデントを防ぐ―.理学療法の歩み.32巻,1号,2021年1月,p3-9.