起立性低血圧の評価方法|起立試験とリハ中の対応

臨床手技・プロトコル
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起立性低血圧の評価は「条件固定・起立試験・症状確認」をセットで行います

起立性低血圧(orthostatic hypotension:OH)は、一般に臥位から立位へ移行したあと3分以内に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上持続して低下する状態です。

ただし、リハビリ中の判断は血圧低下だけでは決められません。臥位での安静時間、起立後の測定時点、心拍数、症状、支持性、安静後の回復を同じ条件で確認することが重要です。

この記事では、起立性低血圧を疑ったときの開始前確認、起立試験、結果の見方、当日の対応、記録方法を順番に整理します。原因をその場で断定するのではなく、転倒や失神を防ぎながら次の評価・相談につなげましょう。

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起立性低血圧の判定基準|立位3分以内の血圧低下を確認します

一般的な起立性低血圧は、臥位から立位へ移行したあと3分以内に、次のいずれかを認める場合に該当します。

  • 収縮期血圧が20mmHg以上低下する
  • 拡張期血圧が10mmHg以上低下する

判定には、立位前の臥位血圧と、立位後の血圧との差を用います。1回の測定値だけでなく、血圧低下が持続しているか、症状を伴っているかも確認します。

起立性低血圧を評価するときに確認する項目
確認項目 確認する内容 実務上の意味
血圧 臥位から立位後のSBP・DBPの変化 OHの判定基準に該当するか確認する
心拍数 起立に伴うHRの変化 循環反応や原因探索の参考にする
症状 めまい、眼前暗黒感、悪心、脱力感、冷汗など 転倒・失神危険性と当日の対応を判断する
出現時点 起立直後、1分、3分、その後 早期または遅れて出現する変化を把握する
回復 座位・臥位へ戻したあとの症状と血圧 中止後の経過と報告の必要性を判断する

血圧低下があっても症状が出ない場合があります。反対に、基準を満たさなくても、めまいや失神前兆が強い場合は安全確保を優先してください。

開始前チェック|数値より先に危険症状と起立との関連を確認します

測定を始める前に、胸部症状、呼吸困難、意識状態などを確認します。危険症状がある場合は、起立試験を続けず、安全な体位で安静を確保して施設の手順に従って報告します。

起立試験を始める前に確認する6項目
確認項目 見るもの 実務のポイント
危険症状 胸部不快感、強い呼吸困難、意識低下、失神前兆 認める場合は起立せず、安全確保と報告を優先する
起立との関連 端座位・立位で悪化し、臥位で改善するか 症状が出た体位と時点を記録する
反復パターン 朝、食後、排泄後、入浴後、服薬後など 同じ場面で繰り返すか確認する
薬剤 降圧薬、利尿薬、α遮断薬など 薬剤名を断定材料にせず、服薬時刻を共有する
体液量に関する情報 口渇、尿量低下、発熱、下痢、嘔吐、食事摂取量 脱水や体液量減少が疑われる場合は共有する
立位の安全性 下肢支持性、介助量、失神歴、転倒歴 必要に応じて複数名介助やベッドサイドで実施する

測定準備|安静時間・腕の高さ・カフサイズをそろえます

起立試験では、体位変換前後の血圧差を比較します。安静不足や腕位置の違いがあると、変化が測定誤差なのか循環反応なのか判断しにくくなります。

同じ患者の経過を追う場合は、安静時間、測定肢、腕の高さ、血圧計、測定時刻を可能な範囲でそろえてください。

起立試験でそろえたい測定条件
条件 条件が異なる場合の問題 そろえ方
安静時間 直前の移動や運動による変動が残る 臥位で5分程度安静にしてから測定する
腕の位置 心臓より低い位置では高めに測定されやすい 枕やタオルで上腕を心臓の高さに近づける
カフサイズ 上腕に合わないカフでは誤差が生じる 上腕周囲径に適したカフを素肌に装着する
測定中の会話 測定値の再現性が低下する 説明は事前に行い、測定中は会話を控える
測定機器 機器間差が経時変化に含まれる 可能なら同一機器を使用し、使用機器を記録する
測定時刻 日内変動や食事・服薬の影響を比較しにくい 時刻と食事・服薬との関係を記録する

起立試験の方法|臥位5分・立位1分・立位3分でBP・HR・症状を確認します

実務では、臥位で安静にしたあと基準値を測定し、立位後1分と3分を目安に血圧・心拍数・症状を確認します。

立位直後に症状が出た場合は、予定した測定時点まで無理に立位を続けません。安全な体位へ戻し、症状、血圧、心拍数、回復状況を確認します。

起立試験の基本フロー。臥位で5分安静にした後、立位1分と立位3分で血圧・心拍数・症状を確認し、結果に応じて続行、負荷調整、中止・相談を判断する
図:起立試験の基本フロー。血圧だけでなく、心拍数・症状・支持性・回復もあわせて確認します。
ベッドサイドで行う起立試験の基本手順
手順 体位 時点 測定項目 観察項目
1 臥位 安静5分後 BP・HR・症状 意識状態、呼吸、胸部症状、顔色
2 立位 起立後1分 BP・HR・症状 めまい、眼前暗黒感、悪心、冷汗、支持性
3 立位 起立後3分 BP・HR・症状 症状の持続、増悪、会話量、介助量の変化
4 臥位または座位 中止・終了後 BP・HR・症状 症状と循環状態が回復するか

立位できない場合

立位が安全に行えない場合は、端座位までの血圧・心拍数・症状の変化を確認します。ただし、臥位から端座位への測定は、標準的な臥位から立位への起立試験と同じ条件ではありません。

記録には「端座位で実施」と明記し、端座位の結果だけでOHを確定せず、立位評価の可否や追加評価をチームで検討してください。

結果の見方|血圧低下・心拍数・症状・回復を組み合わせます

起立試験の結果は、判定基準への該当だけでなく、症状の有無、心拍数の反応、立位を維持できた時間、安静後の回復を組み合わせて解釈します。

起立試験後に整理する所見と次の対応
所見 考え方 次の対応
判定基準を満たし、症状もある 症候性OHとして転倒・失神リスクを優先する 負荷を中止または調整し、経過を共有する
判定基準を満たすが症状がない 無症候でも立位・歩行中に変化する可能性がある 追加観察を行い、個人の反復パターンを確認する
基準未満だが症状が強い 測定時点や別の原因を含めた評価が必要 数値だけで続行せず、安全確保と共有を優先する
立位保持ができない 循環反応だけでなく運動・認知・支持性も影響する 安全な体位へ戻し、立位不能の理由を記録する
3分以降に症状が出る 通常の3分測定だけでは把握できない場合がある 医師への相談や追加の起立・傾斜試験を検討する

原因探索|神経因性・体液量減少・薬剤・廃用などを整理します

起立試験だけでOHの原因を確定することはできません。原因探索では、自律神経機能、脱水や出血、薬剤、循環器疾患、長期臥床などを整理します。

心拍数の変化は原因を考える手がかりになりますが、年齢、薬剤、不整脈、ペースメーカーなどの影響を受けます。心拍数の反応だけで神経因性OHを断定しないでください。

起立性低血圧の原因を整理する視点
整理軸 確認する情報 実務での対応
神経因性 自律神経障害を伴う疾患、心拍数反応、臥位高血圧 所見をまとめ、原因疾患と治療方針を医師へ確認する
体液量減少 発熱、下痢、嘔吐、食事・水分摂取、尿量、出血 摂取・排泄情報を看護師や医師と共有する
薬剤 降圧薬、利尿薬、血管拡張薬などと服薬時刻 自己判断で変更せず、症状との時間的関係を共有する
廃用・長期臥床 臥床期間、活動量、下肢筋力、座位・立位耐性 短時間の離床を段階的に反復し反応を記録する
循環器・その他 不整脈、心不全、貧血、感染症、内分泌疾患など 新規症状や回復不良があれば医学的評価につなげる

当日の対応|続行・負荷調整・中止を症状と安全性から判断します

リハビリを続けるかどうかは、OHの判定基準だけで一律に決めません。症状、意識状態、支持性、転倒危険性、血圧・心拍数の推移、安静後の回復、患者固有の指示を確認します。

起立試験後の対応を整理する目安
区分 状態の例 対応 記録する内容
続行を検討 症状がなく、支持性が保たれ、循環状態が安定している 反応を観察しながら段階的に進める 測定値、症状なし、実施した負荷
負荷調整 軽い症状や血圧低下があるが、休息で速やかに改善する 座位中心、短時間、休息を増やして再評価する 症状、回復までの時間、変更した負荷
中止・相談 失神前兆、意識変化、胸部症状、強い呼吸困難、立位保持困難 安全な体位へ戻し、安静、再測定、報告を行う 発症時点、症状、測定値、対応、回復状況

患者ごとの安静度、血圧管理目標、疾患、医師指示、施設の中止基準がある場合は、それらを優先してください。

非薬物対応|原因と禁忌を確認して組み合わせます

OHへの非薬物対応には、ゆっくりした体位変換、圧迫、飲水、食事や活動時間の調整などがあります。ただし、すべての患者に同じ方法を適用できるわけではありません。

OHに対する主な非薬物対応と注意点
対応 目的 確認事項
段階的な体位変換 急激な循環変化と転倒を避ける 背上げ、端座位、立位の各段階で症状を確認する
下肢・腹部の圧迫 下肢や腹部への血液貯留を抑える 皮膚、末梢循環、呼吸苦、装着方法を確認する
飲水・塩分調整 循環血液量を保つ 心不全、腎機能障害、嚥下障害、食事制限の指示を優先する
食後の時間調整 食後の血圧低下と転倒を避ける 食後症状の有無と食事量、実施時間を確認する
下肢筋収縮 筋ポンプ作用を利用する 立位前に足関節運動などを無理のない範囲で行う

具体的な運動療法や生活指導は、起立性低血圧の運動療法・生活指導で詳しく整理しています。

離床の進め方|短時間・段階的・反復を基本にします

立位耐性が低い場合は、長時間立ち続けるより、症状が出ない範囲の離床を短時間で反復します。一度に増やす要素は、座位時間、立位時間、立ち上がり回数、歩行距離のうち1つに絞ると反応を追いやすくなります。

起立性低血圧がある患者の段階的な離床例
段階 実施例 確認項目
1 背上げから端座位へ移行する 症状、顔色、BP、HR、座位保持能力
2 短時間の立位を休息を挟んで反復する 失神前兆、支持性、回復までの時間
3 短距離歩行と座位休息を組み合わせる 歩行中の症状、転倒リスク、循環反応
4 症状が少ない時間帯へ活動を調整する 朝、食後、服薬後などの日内変動

よくある失敗|測定条件と症状の記録が揃わないと比較できません

OHへの対応が担当者によって変わる主な原因は、測定条件、症状の表現、負荷調整の基準が共有されていないことです。

起立性低血圧の評価で起こりやすい失敗と対策
よくある失敗 問題 対策
血圧だけで判断する 失神前兆や支持性の低下を見落とす BP・HR・症状・立位能力をセットで記録する
起立後1分だけ測定する 3分までに生じる血圧低下を見落とす 安全に可能な場合は1分と3分を確認する
毎回の条件が違う 前回値との比較ができない 体位、安静時間、測定時刻、機器を記録する
端座位の結果を立位試験として扱う 標準的なOH判定と条件が異なる 端座位評価であることを明記する
「ふらつきあり」だけで終える 症状の程度や再現性を共有できない 眼前暗黒感、冷汗、悪心、支持増加などを具体的に書く
原因をその場で断定する 薬剤や疾患など複数要因を見落とす 観察事実と原因の推測を分けて共有する

記録方法|条件・BP・HR・症状・対応を1セットで残します

OHは日内変動や測定条件の影響を受けます。次回も同じ条件で評価できるように、体位、安静時間、測定時刻、血圧、心拍数、症状、対応をまとめて記録します。

起立試験の記録テンプレート
時点 体位 BP(mmHg) HR(/分) 症状・所見 対応
基準値 臥位・安静5分 ___/___ ___ ______ ______
起立後1分 立位 ___/___ ___ ______ ______
起立後3分 立位 ___/___ ___ ______ ______
対応後 臥位・座位 ___/___ ___ 改善・不変・増悪 ______

記録例:臥位5分後126/72mmHg、HR68/分、症状なし。立位1分104/64mmHg、HR76/分、軽い眼前暗黒感あり。立位継続を中止して臥位へ戻し、2分後に症状消失。担当看護師へ共有。

起立性低血圧の評価に関するよくある質問

Q1.起立後は1分と3分のどちらを測定しますか?

A.安全に実施できる場合は、起立後1分と3分の両方を測定します。一般的なOHの判定は、立位後3分以内の血圧低下を基準とします。症状が出た場合は、3分まで無理に立位を続けません。

Q2.端座位で血圧が下がればOHと判定できますか?

A.端座位での変化は循環反応を把握する参考になりますが、標準的な臥位から立位への起立試験とは条件が異なります。「端座位で実施」と記録し、端座位の結果だけでOHを確定しないようにします。

Q3.血圧が下がっても症状がなければリハビリを続けられますか?

A.無症状でも、歩行や長時間立位で症状が出る場合があります。血圧低下の程度、心拍数、支持性、患者固有の指示を確認し、必要に応じて負荷を調整します。

Q4.心拍数が上がらなければ神経因性OHですか?

A.起立時の心拍数上昇が乏しいことは神経因性OHを考える手がかりの一つですが、それだけでは確定できません。薬剤、不整脈、ペースメーカー、年齢などの影響も含めて評価します。

Q5.リハビリ中に失神前兆が出た場合はどうしますか?

A.立位や歩行を中止し、転倒を防ぎながら臥位などの安全な体位へ戻します。意識状態、血圧、心拍数、胸部症状、呼吸状態を確認し、施設の手順に従って速やかに共有してください。

まとめ|起立試験の条件と記録項目を固定することから始めます

起立性低血圧の評価では、臥位から立位後3分以内の血圧低下を確認します。ただし、リハビリ中の安全判断には、血圧だけでなく心拍数、症状、立位能力、安静後の回復を組み合わせる必要があります。

まずは臥位5分後・立位1分・立位3分のBP/HR/症状を同じ条件で記録してください。失神前兆、意識変化、胸部症状、強い呼吸困難などがある場合は、測定の完遂より安全確保と報告を優先します。

低血圧が起きた直後の対応は、バイタル変化の初期対応で確認できます。

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

参考文献

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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