起立性低血圧の運動療法・生活指導|離床・中止判断・PDF記録

臨床手技・プロトコル
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起立性低血圧の運動療法・生活指導とは?

起立性低血圧( orthostatic hypotension:OH )に対するリハビリでは、血圧が下がったことだけで離床を機械的に中止するのではなく、血圧・心拍数・症状・立位保持能力・回復のしかたを合わせて判断することが重要です。特に長期臥床や活動量低下がある患者では、過度な安静を避けながら、耐容能に応じて体位変換と活動を段階的に進めます。

本記事では、PT・OT・看護師が病棟で迷いやすい運動療法、前失神症状への対応、生活指導、起立時モニタリング、次回の再開条件、カルテ記録を整理します。定義や診断、起立試験の基本は親記事に分け、このページでは「実際にどう動かし、どこで戻すか」に絞って解説します。

まず起立性低血圧の評価・診断から確認したい方へ。
起立性低血圧の評価方法を確認する

まずここだけ( 1 分サマリー )

  • 離床:長時間の臥床を避け、症状と循環反応を確認しながら、ベッド上 → 座位 → 立位 → 歩行へ段階的に進めます。
  • 血圧低下:20 / 10 mmHg の低下は OH の診断に用いる基準であり、それだけを一律の離床中止基準にはしません。症状、絶対血圧、回復、全身状態を合わせて判断します。
  • 前兆時:軽い症状で安全に姿勢を保てる場合は下肢筋を使った対抗手技を検討し、強いふらつき・視野暗転・反応低下などがあれば座位または臥位へ戻します。
  • 記録:起立前条件 → BP / HR → 症状 → 対応 → 回復 → 次回条件を同じ順番で残します。
起立性低血圧で離床を継続・中断・再開するときの判断フロー
起立性低血圧では、20 / 10 mmHg の血圧低下だけで判断せず、症状・絶対血圧・回復を合わせて離床の継続・中断・再開を判断します。

起立性低血圧の記録シート PDF

起立性低血圧では、血圧値だけでなく症状・対応・回復・次回の開始条件を一緒に残すことが重要です。下の記録シートでは、起立前条件から評価、対応、再評価までを A4 1 枚で確認できます。

記録シート PDF を開く

ベッドサイドでは、起立前条件 → 起立時 BP / HR → 症状 → 対応と回復 → 次回条件、の順で残すと職種間で共有しやすくなります。

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プレビューできない場合は PDF を開く からご確認ください。

起立性低血圧は背景要因で介入の優先順位が変わる

起立性低血圧は原因によって対応が異なるため、運動を始める前に神経因性、循環血液量低下、長期臥床・活動量低下など、どの要因が関与していそうかを確認します。厳密な鑑別診断をリハ職だけで行うのではなく、その日の介入より先に確認すべき原因がないかを見るための整理です。

起立性低血圧で確認したい背景要因と介入の優先順位
背景要因 確認のヒント リハでの優先事項
神経因性 PD・MSA などの自律神経障害、起立時の HR 上昇が乏しい、臥位高血圧、朝や食後の症状 症状が出る時間帯の把握、体位変換、対抗手技、腹部圧迫などの非薬物対応を個別に組み合わせる
循環血液量低下 摂取不足、脱水、出血、発熱、下痢、利尿薬など 離床量を増やす前に原因確認と医師・看護師への共有を優先する
長期臥床・活動量低下 長期入院、術後安静、フレイル、下肢筋活動の低下 過度な安静を避け、耐容能に応じて座位・立位・歩行を段階的に増やす

離床はベッド上から歩行まで段階的に進める

起立耐容能が低い患者では、一気に歩行まで進めるよりも、どの体位で症状や循環反応が崩れるかを確認しながら一段ずつ進める方が次回の負荷設定につながります。日数や回数を固定するのではなく、患者ごとの反応を基準に進行します。

起立性低血圧での段階的離床の考え方
段階 実施例 確認すること 次の判断
開始前 安静時の状態、服薬変更、摂取量、脱水徴候、転倒リスクを確認 BP / HR、症状、意識、呼吸状態、直近の変化 急性変化や原因調整が必要なら離床より共有を優先
Step 1 背上げ、ベッド上での足関節運動や下肢筋収縮 めまい、悪心、冷汗、視覚症状、BP / HR 安定すれば座位へ、症状が強ければ前段階へ戻す
Step 2 端座位から立位へ段階的に移行 起立時 BP / HR、症状、立位保持能力、支持物の増加 軽い症状なら休息・再評価、強い前失神症状なら座位または臥位へ戻す
Step 3 短距離歩行から開始し、耐容能に応じて活動量を増やす 歩行中の症状、BP / HR、疲労、回復時間 次回も再現できる開始条件と負荷量を記録する

運動療法は下肢筋ポンプと起立耐容能を段階的に使う

起立性低血圧に対する運動では、長期臥床を避けて体力を維持するとともに、下肢筋収縮を利用して静脈還流を補助しながら起立活動へつなげることが基本です。ただし、実施時間や回数をすべての患者に固定するのではなく、症状、原疾患、運動耐容能、転倒リスクに合わせます。

  • ベッド上:足関節運動、下肢筋の反復収縮など、症状が出にくい姿勢から始める
  • 座位・半臥位:急な体位変換を避けながら下肢運動や全身持久力訓練へ進める
  • 立位:立位保持時間よりも、症状と回復を確認しながら安全に反復する
  • 歩行:短距離から開始し、症状が出た体位・時間・活動量を次回条件へ反映する

運動中に頻回な体位変換で症状が誘発される場合は、姿勢変換を減らす、座位・半臥位で実施するなど、運動方法を調整します。

前兆時の対抗手技は「安全に実施できるか」を先に判断する

軽い立ちくらみなどがあり、本人が意識清明で安全に姿勢を保てる場合には、下肢交差、殿筋・大腿筋の収縮、つま先立ちなどの physical counter-maneuvers が症状軽減に役立つ場合があります。

一方、視野暗転、強いふらつき、反応低下、支持性低下など失神や転倒が切迫している場合は、立位のまま手技を続けることより安全に座位または臥位へ移行することを優先します。バランス障害や認知機能低下がある患者では、立位での対抗手技そのものが転倒リスクになる点にも注意します。

生活指導は「いつ悪化するか」から個別に組み立てる

起立性低血圧の症状は一日中一定ではありません。起床後、食後、高温環境、入浴後、長時間立位など、どの場面で症状が出るかを先に把握して生活指導を合わせることが重要です。

起立性低血圧の主な非薬物対応と確認事項
対応 考え方 確認事項
体位変換 急な起き上がりを避け、臥位 → 座位 → 立位へ段階的に移行する どの体位で症状が出るか、回復にどの程度かかるか
水分・塩分 循環血液量を保つために有用な場合がある 心不全、腎機能障害、肝疾患、食事・水分制限などの指示を優先する
腹帯・弾性着衣 腹部や下肢への血液貯留を抑える目的で使用を検討する 適応、皮膚状態、末梢循環、サイズ、装着可能性を確認する
食事 食後に症状が出る場合は、少量頻回食や食事内容、活動時間の調整を検討する 症状が出るまでの時間と食事量・内容を記録する
高温環境 高温・入浴などによる血管拡張で症状が悪化する患者では活動条件を調整する 入浴前後や室温の高い環境での症状を確認する
就寝時の頭側挙上 神経因性 OH や臥位高血圧を伴う場合に検討されることがある 一律に実施せず、臥位血圧や治療方針を含め医師と確認する

起立時は BP / HR と症状をセットで確認する

起立性低血圧の評価では、一般に仰臥位で安静後の BP / HR と、起立後の BP / HR・症状を比較します。OH の診断では起立後 3 分以内の血圧低下が基準となり、1 分時点の測定は起立直後の早い反応を把握するうえで役立ちます。

  1. 起立前:安静時 BP / HR、症状、体位、食事・服薬など測定条件を確認する
  2. 起立後:1 分・3 分など施設で決めた時点の BP / HR と症状を記録する
  3. 症状:めまい、悪心、冷汗、視覚症状、反応低下、支持性の変化を見る
  4. 回復:座位・臥位や休息後に症状と BP / HR がどう戻るか確認する

収縮期血圧 20 mmHg 以上または拡張期血圧 10 mmHg 以上の低下は OH の診断に用いる基準ですが、それだけをリハビリの一律中止基準とはしません。症状、絶対血圧、意識、胸部症状、呼吸状態、転倒リスク、回復の有無を合わせて負荷継続・中断・再開を判断します。

強い前失神症状や全身状態の悪化では活動を中断する

起立中に失神、反応低下、強いふらつき、視野暗転、胸部症状、著明な呼吸苦などを認めた場合は、運動継続より安全確保を優先します。座位または臥位へ戻し、必要に応じて下肢を挙上し、症状・BP / HR・意識・呼吸状態の回復を確認します。

数値だけでなく、「休息しても戻らない」「症状が増悪する」「前回より低負荷で同じ反応が出る」といった経過も重要です。離床全般の中止・再開基準については、別記事で詳しく整理しています。

現場で迷いやすい4つの場面

起立性低血圧では、「危ないから毎回中止」「血圧だけ測って終わる」といった運用になりやすいため、どこで崩れ、何をしたら戻り、次回どこから始めるかまで記録することが重要です。

起立性低血圧リハビリの詰まりどころと対応
場面 迷いやすいこと そろえる情報
離床開始 血圧が低いだけで実施可否が決まらない 基準値、症状、直近の変化、服薬、脱水、全身状態を確認する
起立時 20 / 10 mmHg 下がったため自動的に中止してしまう 血圧低下量だけでなく、症状・絶対血圧・支持性・回復を見る
前兆時 対抗手技を続けるか座らせるか迷う 軽症か、失神・転倒が切迫しているかを先に判断する
次回 「起立時めまいあり」だけで次の負荷が決められない 体位 → BP / HR → 症状 → 対応 → 回復 → 次回開始条件を残す

チームでは「悪化条件」と「次回条件」を共有する

起立性低血圧への対応は PT / OT だけでは完結しません。リハ職は起立耐容能や活動時反応を評価し、看護師は起床・食事・排泄・入浴など日常生活場面の症状を確認し、医師は原因疾患や薬剤、循環血液量、臥位高血圧などを含め治療方針を調整します。

申し送りでは「OHあり」だけでなく、いつ・どの体位で・どんな症状が出て・何をすると改善したかを共有すると、その日の離床条件を合わせやすくなります。

カルテは「条件 → 反応 → 対応 → 回復 → 次回」で書く

起立性低血圧の記録では、単に「血圧低下あり」「めまいあり」で終えず、次に担当する人が開始条件を再現できるようにします。

記載例:「2026-03-24 朝食前。腹帯装着あり。仰臥位安静後 BP 138 / 82 mmHg、HR 72 / 分。起立 1 分で BP 114 / 74 mmHg、軽度ふらつきあり。座位休息後に症状消失。再度端座位から開始し、立位 30 秒まで実施。次回も朝食前、同条件で端座位から開始し、起立時症状と BP / HR を再確認する。」

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

血圧が 20 / 10 mmHg 下がったらリハビリは中止ですか?

一律に中止とは限りません。20 / 10 mmHg の低下は OH の診断に用いる基準です。リハ中の継続可否は、症状、絶対血圧、意識、支持性、胸部・呼吸症状、休息後の回復なども合わせて判断します。強い前失神症状や全身状態の悪化があれば活動を中断します。

起立 1 分と 3 分はどちらを測ればよいですか?

OH の診断では、仰臥位安静後と起立後 3 分以内の血圧変化を確認します。1 分値は起立直後の早期反応や症状を把握するために有用です。病棟では測定時点を決め、BP / HR と症状を同じ条件で比較できるようにしてください。

食後に起立性低血圧が悪化する場合はどうしますか?

食後に症状が再現する場合は、食事量・内容と症状が出る時間帯を確認し、その時間帯の強い立位負荷を避ける、活動時間を変更する、少量頻回食を検討するなど個別に調整します。

前兆時は対抗手技と座位移行のどちらを優先しますか?

本人が意識清明で安全に姿勢を保持できる軽い症状であれば、下肢筋を使った対抗手技を試せる場合があります。視野暗転、強いふらつき、反応低下、支持性低下などがあれば、手技より座位または臥位への安全な移行を優先します。

次の一手

OHそのものの評価・診断を確認した後、「どこで離床を中断し、どう再開するか」をさらに整理したい場合は、離床全般の STOP / RESTART の考え方へ進んでください。


参考文献

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  • van der Stam AH, Shmuely S, de Vries NM, Bloem BR, Thijs RD. The Impact of Head-Up Tilt Sleeping on Orthostatic Tolerance: A Scoping Review. Biology (Basel). 2023;12(8):1108. doi: 10.3390/biology12081108

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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