SIASの評価方法|22項目と配点【早見表】2025

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評価
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この記事でわかること(結論)

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、脳卒中の機能障害を22項目・最大76点で評価します。まずは「評価方法」→「22項目の詳細」の順にご覧ください。採点は初回のパフォーマンスを原則とし、疼痛・理解困難・既存障害で評価不能の際は理由を所見に明記します。

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▶ SIAS の概要(慶應リハ)

結論・早見表(SIAS の全体像)

SIAS の評価領域と内訳(22項目・最大76点)
領域 項目 配点 要点
運動(上肢)① 上肢近位(膝・口)0–5膝→口の一連動作(3回)。
② 上肢遠位(手指)0–5母指→小指の屈曲/小指→母指の伸展。
運動(下肢)③ 下肢近位(股関節)0–5座位で股屈曲(3回)。
④ 下肢近位(膝伸展)0–590°屈曲位→伸展(3回)。
⑤ 下肢遠位(足パット)0–5踵接地で背屈・底屈→高速背屈。
筋緊張⑥ 上肢筋緊張0–3肘の他動屈伸で判定。
⑦ 下肢筋緊張0–3膝の他動屈伸で判定。
腱反射⑧ 上肢腱反射(上腕二頭筋/三頭筋)0–3左右差・クローヌス。
⑨ 下肢腱反射(膝蓋腱/アキレス腱)0–3左右差・クローヌス。
感覚⑩ 上肢触覚(手掌)0–3綿棒などの軽刺激。
⑪ 下肢触覚(足底)0–3同上。
位置覚⑫ 上肢位置覚(母指/示指)0–3他動で上下方向の弁別。
⑬ 下肢位置覚(母趾)0–3他動で上下方向の弁別。
関節可動域⑭ 肩外転(他動)0–3角度閾値で採点。
⑮ 足関節背屈(膝伸展位・他動)0–3角度閾値で採点。
疼痛⑯ 疼痛(脳卒中由来)0–3由来の限定に注意。
体幹機能⑰ 垂直性0–3座位保持と修正可否。
⑱ 腹筋0–345°後傾からの起き上がり。
高次脳機能⑲ 視空間認知0–3テープ中央指示(ずれ量)。
⑳ 言語(失語)0–3構音障害は除外。
健側機能㉑ 握力0–3握力計でkg記録。
㉒ 健側大腿四頭筋力0–3座位で膝伸展筋力。

評価方法(手順)

  1. 体位・準備:標準体位を取り、必要時は安全のための最小限介助を可。
  2. 実施順:上肢運動→下肢運動→筋緊張→腱反射→感覚→位置覚→ROM→疼痛→体幹→高次脳→健側。
  3. 採点:原則は初回反応で判定。規定回数がある項目は明示回数を実施。
  4. 注記:鎮痛・せん妄・既存障害など評価に影響する要因は所見に明記。

各項目の詳細(定義・手順・配点)

運動機能

① 上肢近位(膝・口テスト)|0–5

手順:座位において患肢の手部を対側膝(大腿)上より挙上し、手部を口まで運ぶ。肩は90°まで外転、その後膝上まで戻す。3回繰り返す。肩・肘に拘縮がある場合は可動域内での連動をもって課題可能と判断。

定義
0まったく動かない
1肩のわずかな動きがあるが手部が乳頭に届かない
2肩肘の共同連動があるが手部が口に届かない
3課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
4課題可能。軽度のぎこちなさあり
5健側と変わらず。正常
② 上肢遠位(手指テスト)|0–5(1A/1B/1Cを含む)

手順:手指の分離運動を母指→小指の順に屈曲小指→母指の順に伸展

定義
0まったく動かない
11A: わずかな動き または 集団屈曲可能/1B: 集団伸展が可能/1C: 分離運動が一部可能
2全指の分離運動可能なるも屈曲伸展が不十分
3課題可能(全指の分離運動が十分な屈曲伸展を伴って可能)。中等度〜著明なぎこちなさ
4課題可能。軽度のぎこちなさ
5健側と変わらず。正常
③ 下肢近位(股関節テスト)|0–5

手順:座位にて股関節を90°より最大屈曲3回行い、必要なら座位保持のための介助は可。

定義
0まったく動かない
1大腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
2股関節の屈曲運動あり、足部は床より離れるが十分ではない
3課題可能。中等度〜著明なぎこちなさ
4課題可能。軽度のぎこちなさ
5健側と変わらず。正常
④ 下肢近位(膝伸展テスト)|0–5

手順:座位で膝関節を90°屈曲位→十分伸展(-10°程度まで)3回行い、必要なら座位保持の介助可。

定義
0まったく動かない
1下腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
2膝伸展あり、足部は床より離れるが十分ではない
3課題可能。中等度〜著明なぎこちなさ
4課題可能。軽度のぎこちなさ
5健側と変わらず。正常
⑤ 下肢遠位(足パットテスト)|0–5

手順:座位または臥位(座位は介助可)。踵を床につけたまま、足部の背屈⇄底屈を3回、その後できるだけ速く背屈を反復。

定義
0まったく動かない
1わずかな運動があるが前足部は床から離れない
2背屈運動あり、足部は床より離れるが十分でない
3課題可能。中等度〜著明なぎこちなさ
4課題可能。軽度のぎこちなさ
5健側と変わらず。正常

筋緊張

⑥ 上肢筋緊張(肘の他動屈伸)|0–3

手順:肘関節を他動で伸展・屈曲して筋緊張を評価。

定義
0上肢の筋緊張が著明に亢進
11A: 中等度(はっきりと)亢進/1B: 他動的筋緊張の低下
2軽度(わずかに)亢進
3正常。健側と対称的
⑦ 下肢筋緊張(膝の他動屈伸)|0–3

手順:膝関節の他動伸展・屈曲で評価。

定義
0下肢の筋緊張が著明に亢進
11A: 中等度亢進/1B: 他動的筋緊張の低下
2軽度亢進
3正常。健側と対称的

腱反射

⑧ 上肢腱反射(上腕二頭筋 or 上腕三頭筋)|0–3
定義
0反射が著明に亢進、または容易にクローヌス(肘・手関節)が誘発
11A: 中等度に亢進/1B: ほぼ消失
2軽度に亢進
3正常、健側と対称的
⑨ 下肢腱反射(膝蓋腱 or アキレス腱)|0–3
定義
0反射が著明に亢進、または容易にクローヌス(膝・足関節)が誘発
11A: 中等度に亢進/1B: ほぼ消失
2軽度に亢進
3正常、健側と対称的

感覚

⑩ 上肢触覚(手掌)|0–3
定義
0強い皮膚刺激もわからない
1重度あるいは中等度低下
2軽度低下、あるいは主観的低下。または異常感覚あり
3正常
⑪ 下肢触覚(足底)|0–3
定義
0強い皮膚刺激もわからない
1重度あるいは中等度低下
2軽度低下、あるいは主観的低下。または異常感覚あり
3正常

位置覚

⑫ 上肢位置覚(母指 or 示指)|0–3

手順:指を他動的に運動。

定義
0全可動域の動きもわからない
1全可動域の運動なら方向がわかる
2ROMの1割以上の動きなら方向がわかる
3ROMの1割未満の動きでも方向がわかる
⑬ 下肢位置覚(母趾)|0–3

手順:足趾を他動的に運動。

定義
0全可動域の動きもわからない
1全可動域の運動なら方向がわかる
2ROMの5割以上の動きなら方向がわかる
3ROMの8割未満の動きでも方向がわかる

※施設版シートの表現差が出やすい項目です(例:2=50%以上、3=10%未満など)。院内基準に合わせて調整してください。

関節可動域・疼痛

⑭ 上肢関節可動域(肩外転・他動)|0–3
角度基準
060°以下
190°以下
2150°以下
3150°以上
⑮ 下肢関節可動域(膝伸展位での足関節背屈・他動)|0–3
角度基準
0-10°以下
10°以下
210°以下
310°以上
⑯ 疼痛(脳卒中由来)|0–3

含めない:既往としての整形外科的(腰痛など)、内科的(胆石など)疼痛/過度でない拘縮伸張時のみの痛み

定義
0睡眠を妨げるほどの著しい疼痛
1中等度の疼痛
2加療を要しない軽度の疼痛
3疼痛の問題がない

体幹機能

⑰ 垂直性|0–3
定義
0座位がとれない
1静的座位で側方性の姿勢異常。指摘・指示でも修正されず、介助を要する
2静的座位で側方性の姿勢異常(傾き15°以上)があるが、指示でほぼ垂直位に修正・維持可能
3静的座位は正常
⑱ 腹筋|0–3

手順:車椅子/椅子に座り、殿部を前にずらして体幹を45°後方へ傾け背もたれにもたれる。大腿が水平になるよう検者が押さえ、体幹を垂直位まで起き上がらせる(抵抗は胸骨上部に付与)。

定義
0垂直位まで起き上がれない
1抵抗を加えなければ起き上がれる
2軽度の抵抗に抗して起き上がれる
3強い抵抗に抗して起き上がれる

高次脳機能

⑲ 視空間認知(テープ中央指示)|0–3

手順:長さ50cmのテープを眼前約50cmに提示し、中央を健側指で示してもらう。2回行い、中央からのずれが大きい方を採用。

ずれ量
015cm以上
15cm以上
23cm以上
33cm未満
⑳ 言語(失語)|0–3

注:構音障害は含めない

定義
0全失語。まったくコミュニケーションがとれない
11A: 重度感覚性失語(重度混合性失語を含む)/1B: 重度運動性失語
2軽度失語
3失語なし

健側機能

㉑ 握力|0–3

手順:座位で握力計の握り幅を約5cmに設定して計測。健側のkg数を記録

基準
00 kg
110 kg以下
210〜25 kg
325 kg以上
㉒ 健側大腿四頭筋力|0–3

手順:座位で健側の膝伸展筋力を評価。

基準
0重力に抗しない
1中等度に筋力低下
2わずかな筋力低下
3正常

合計点の読み方と臨床活用

合計点は最大76点(高いほど障害軽度)。ただし意思決定は領域内訳を優先します(例:手指低得点→巧緻ADL配慮、垂直性/視空間低得点→転倒・逸脱対策 など)。

所見から次アクションへ(例)
所見解釈次アクション例
②手指 1B/1C分離不十分把持/つまみ訓練、補助具(太柄・滑り止め)
⑰垂直性 1–2体幹中間位の破綻端座位中間位再学習、移乗時の誘導
⑲視空間 0–1半側無視傾向視覚スキャン訓練、掲示配置、歩行監視
⑯疼痛 0–1疼痛優位ポジショニング・鎮痛→再評価

判定で迷いやすいポイント(チェック)

  • 練習しすぎ厳禁:採点は初回反応で。
  • ROM条件:⑮は膝伸展位で足背屈を評価。
  • 疼痛の扱い:SIAS⑯は脳卒中由来のみ。整形/内科の既往痛は除外。
  • 言語:⑳は失語のみ(構音障害は別)。

評価の整理と並行して進めるなら、最短3ステップの転職フローを押さえておくと意思決定がスムーズです。

FAQ(よくある質問)

Q. SIAS と NIHSS / FIM の違いは?
A. SIASは機能障害、NIHSSは神経学的重症度、FIMはADL自立度に主眼があります。目的に応じて併用します。
Q. 実施時間の目安は?
A. 標準化されていれば約10分で可能です(回数規定のある項目は遵守)。
Q. 評価不能の扱いは?
A. 疼痛・理解困難・既存障害など理由を所見に記すうえで可能な範囲で採点します。

参考文献

  • Chino N, et al. Stroke Impairment Assessment Set (SIAS). Jpn J Rehabil Med. 1994;31:119–125.
  • Keio Rehab: SIAS 概要ページ.
  • 院内/施設配布のSIAS採点シート(本ページの各項目定義は、臨床配布版の表記差も考慮して整理)。
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