【脳卒中機能評価法: SIAS とは?】 22 項目の評価と読み方

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脳卒中機能評価法: SIAS とは? 22 の評価項目で “ 障害像 ” を見える化する

SIAS( Stroke Impairment Assessment Set )は、脳卒中の “ 機能障害( impairment )” を 22 項目で系統立てて把握する評価です。運動麻痺だけでなく、筋緊張・感覚・可動域・疼痛・体幹・高次脳・健側機能まで含めて、患者さんのボトルネックを早く特定できます。

ポイントは、合計点で単純に良し悪しを決めるよりも「どの領域が落ちているか」を地図のように捉えることです。急性期〜回復期の経過で “ 介入の優先順位 ” を決めたいときに役立ちます。

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SIAS で何がわかる?臨床での “ 使いどころ ”

SIAS の強みは、麻痺の重症度だけでなく「麻痺以外(感覚・疼痛・体幹・高次脳・健側)で活動を止めている要因」も同時に拾える点です。リハの初期評価で “ 全体像 ” をつかみ、週単位での変化を同じ枠組みで追うのに向きます。

一方、上肢・下肢の運動機能をより細かく段階づけたいときは、目的に応じて他スケールも併用します。たとえば、運動麻痺の変化を “ 運動学習の観点 ” で細かく追いたい場合は、 BRS と FMA の違い(比較・使い分け) を押さえておくと、評価設計が速くなります。

SIAS の位置づけ(目的別の使い分け早見)
目的 SIAS が得意 併用を検討しやすい例
ボトルネックの特定 運動+非運動(感覚・体幹・高次脳・健側)を同時に俯瞰 ADL: BI / FIM など
経過のフォロー 同一項目で “ 領域ごと ” の変化を追える 重症度: NIHSS / CNS など
運動麻痺を精密に追う 大枠の把握(麻痺+周辺要因) 上肢: FMA /下肢:歩行関連指標など

運用のコツ: “ 条件固定 ” と “ 記録の粒度 ” が結果を左右する

SIAS は、同じ条件で繰り返すほど価値が上がります。評価は 1 回で完結させるより、入院時(または介入開始時)→ 1 〜 2 週ごと → 退院前(または節目)と、同じタイミング・同じ姿勢・同じ介助量で “ 変化の理由が説明できる形 ” に残します。

記録の粒度は「合計点」より「領域(運動・体幹・感覚など)と代表項目」を優先すると臨床が回ります。たとえば、歩行が伸びないときに “ 下肢麻痺 ” だけを見てしまうと、体幹や健側支持の問題を見落としやすいため、領域横断で原因を探すのがコツです。

SIAS の 22 項目(領域別の見取り図)

SIAS は 22 項目で構成され、各項目は 0 〜 5(または 0 〜 3 )の段階で評価します。ここでは “ 項目名と領域 ” を整理し、臨床で迷いやすいポイントは次の節でまとめます。

※評価の具体的な実施方法・判定基準は、原典(評価表)に準拠して運用してください。この記事では、臨床での設計と解釈に焦点を当てます。

SIAS の領域別まとめ(項目名と配点レンジ)
領域 代表項目(例) 配点レンジ 臨床での見方
麻痺側:上肢運動 上肢近位/手指 0 〜 5 巧緻性より “ 随意性の立ち上がり ” を押さえる
麻痺側:下肢運動 股/膝/足関節(タップ) 0 〜 5 立位・歩行の伸び悩みは “ 体幹・健側支持 ” も同時に確認
筋緊張・反射 腱反射/筋緊張 0 〜 3 “ 伸張反射優位 ” か “ 固さ(短縮)優位 ” かを分けて考える
感覚 触覚/位置覚 0 〜 3 運動の学習効率や恐怖回避に影響しやすい
関節可動域 肩関節/足関節 0 〜 3 “ 使える可動域 ” と “ 出せる可動域 ” を区別して解釈
疼痛 疼痛 0 〜 3 運動の阻害因子(回避・代償)になっていないかを見る
体幹 腹筋/垂直性 0 〜 3 “ 立ち上がり・移乗・歩行 ” の土台。早期に点検する
高次脳・言語 視空間認知/言語 0 〜 3 安全管理と自主練の質に直結。指示理解も含めて評価
健側機能 健側大腿四頭筋/握力 0 〜 3 代償の中心。 “ 支える力 ” の低下は活動全体を止める

解釈の基本: “ 合計点 ” より “ 落ち方のパターン ” を読む

SIAS は、麻痺が重いと運動項目が低得点で並びやすい一方、感覚・疼痛・体幹・健側などは “ 介入で動きやすい領域 ” が残ることがあります。先に “ 伸びしろがある領域 ” を押さえると、早期から練習量と成功体験を作りやすいです。

また、麻痺側の得点だけで説明がつかない場合は、健側機能や高次脳(視空間・言語)を見直します。評価のメモは「何ができないか」より「何ができる条件が揃うと通るか(姿勢・支持・注意)」を残すと、次の介入が決まりやすいです。

SIAS の “ つまずきやすいパターン ” と次アクション
よくある詰まり 見落としやすい要因 次アクション(例)
下肢の点数が伸びないのに歩行は改善しない 体幹の垂直性/健側支持の弱さ 立位練習を “ 支持の条件 ” から組み直す(課題難度を調整)
上肢の随意が出るのに日常で使えない 疼痛・可動域制限/感覚低下 “ 痛み回避の動き ” を減らす設計(可動域・痛みの管理を優先)
運動は少し改善しているのに自主練が進まない 視空間認知/指示理解のズレ 練習の手順を “ 1 つずつ ” に分割し、成功条件を固定して反復
移乗が安定しない 健側筋力低下(支持が持たない) 健側の “ 支える力 ” を短時間・高頻度で底上げ(疲労管理込み)

よくある失敗: SIAS が “ ただの点数 ” になってしまう原因

SIAS は “ 点数化できる ” 反面、評価条件がブレると、得点の変化が介入効果なのか条件差なのか分からなくなります。特に、介助量や姿勢(端座位の支持、立位の支持)、指示の出し方が変わると結果が動きやすいです。

もう 1 つの失敗は、低得点領域だけを追い続けて “ 成功体験の回路 ” を作れないことです。低得点は大切ですが、先に伸びる領域(疼痛・可動域・体幹・健側)を整えると、麻痺側の練習も “ 通る条件 ” が揃いやすくなります。

SIAS 運用で起きやすいミスと対策
ミス 何が起きる? 対策
評価条件(姿勢・介助量)が毎回違う 点数変化の解釈ができない “ 条件メモ ” を固定(座位支持、手すり有無、声かけの要点)
合計点だけで比較する ボトルネックが見えない 領域別に “ 落ち方 ” を読む(体幹・感覚・健側を含める)
低得点領域だけに固執する 練習が通らず停滞しやすい 伸びやすい領域から “ 通る条件 ” を作ってから麻痺側へ

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. いつ SIAS を取るのが良いですか?

入院・介入開始時に “ 全体像 ” を作り、その後は 1 〜 2 週ごとなど同じ間隔で追うと、変化と介入のつながりが見えやすいです。急性期は状態変動が大きいため、条件(姿勢・介助量)をメモして固定するほど、経過の比較が安定します。

Q2. 合計点はどのくらい重視すべきですか?

合計点は “ 目安 ” として便利ですが、臨床で効くのは「どの領域が落ちているか」と「落ち方のパターン」です。運動が低くても体幹や健側が保たれていれば、早期から活動量を作れることがあります。

Q3. 運動項目が 0 に並ぶとき、何から介入しますか?

運動の随意が乏しい時期ほど、体幹・疼痛・可動域・健側支持など “ 練習が通る条件 ” を先に整えると進みやすいです。練習量と成功体験が作れると、麻痺側の学習も乗りやすくなります。

Q4. なぜ健側機能(大腿四頭筋・握力)を測るのですか?

健側は活動の “ 代償の中心 ” で、支持や移乗の安定性に直結します。健側の低下があると、麻痺側の回復があっても活動が伸びにくくなるため、早期に点検する価値があります。

Q5. 「改善した」と判断するコツはありますか?

点数の変化だけでなく、同じ条件で取れているか(姿勢・介助量・指示)を必ず確認します。項目単位で “ 何ができる条件が揃ったか ” をメモしておくと、次の介入へつなげやすいです。

おわりに

SIAS は「安全の確保 → 条件固定 → 22 項目で障害像を地図化 → ボトルネック介入 → 再評価」というリズムで回すと、チーム内の共通言語になりやすい評価です。面談準備チェックと職場評価シートも一緒に整えておくと動きやすいので、必要なら /mynavi-medical/#download も活用してみてください。

参考文献

  • Chino N, Sonoda S, Domen K, Saitoh E, Kimura A. Stroke Impairment Assessment Set ( SIAS ). Jpn J Rehabil Med. 1994;31(2).( J-STAGE ) PDF
  • Tsuji T, Liu M, Sonoda S, Domen K, Chino N. The stroke impairment assessment set: its internal consistency and predictive validity. Arch Phys Med Rehabil. 2000;81(7):863-868. doi: 10.1053/apmr.2000.6275. PubMed: 10895996
  • Liu M, Tsuji T, Sonoda S, Domen K, Chino N. Psychometric properties of the Stroke Impairment Assessment Set ( SIAS ). Neurorehabil Neural Repair. 2002;16(4):339-351. doi: 10.1177/0888439002239279. PubMed: 12462765
  • Domen K, Saitoh E, Sonoda S, Chino N, Kimura A. Stroke Impairment Assessment Set ( SIAS ). (2) Reliability and validity of motor function assessment items of SIAS. Jpn J Rehabil Med. 1993;30(5):310-314. doi: 10.2490/jjrm1963.30.310
  • Seki M, Hase K, Takahashi H, Liu M. Comparison of three instruments to assess changes of motor impairment in acute hemispheric stroke: the SIAS, the NIHSS and the CNS. Disabil Rehabil. 2014;36(18):1549-1554. doi: 10.3109/09638288.2013.854840. PubMed: 24236495

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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