10 m 歩行テスト(10MWT)のやり方とカットオフ【助走 2 m/計測 10 m】

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10 m 歩行テスト(10MWT)のやり方とカットオフ【10 m 計測・助走 2 m】

評価が伸びるほど「記録の型」と「再評価の回し方」で差がつきます。 評価 → 介入 → 再評価の型を 3 分で確認する ※臨床スキルの伸ばし方・学び直しの順番を整理したページです(内部リンク)。

10 m 歩行テスト(10 meter walk test:10MWT)は、歩行速度( m/s )を定量化し、移動能力・転倒リスク・在宅復帰の見通し・予後の層別化に用いられる代表的アウトカムです。本稿は「計測区間 10 m」+「助走 2 m」のプロトコルで統一し、やり方( SOP )と解釈(カットオフ/ MCID / MDC )を実務粒度で整理します。

関連:歩行速度の「測り方の固定( 4 m/ 6 m/ 10 m )」と、しきい値・変化量の読み方は、歩行速度( gait speed )評価まとめ(親記事)に集約しました。

最短まとめ(30 秒で運用できる 5 点)

10MWT を“比較できる数字”にする最小セット
項目 統一ルール 記録ポイント
コース 助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m(全長 14 m ) 0 m/ 10 m をテープで明示。
開始・停止 先行足が 0 m 線を越えた瞬間に開始、 10 m 線を越えた瞬間に停止 判定基準(つま先等)を施設内で固定。
速度条件 至適(通常)→ 最大(できるだけ速く) 指示文を固定(下表)。
試行回数 各 2 回 → 平均 短縮時は理由を明記。
比較の前提 補助具・靴・路面・介助量・声かけを固定 変えたら「比較不可」の前提を残す。

図解:助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m(計 14 m )

10 m 歩行テスト:計測 10 m(助走 2 m・減速 2 m) 助走 2 m の後、0–10 m を計測。先行足が 0 m 線を越えた瞬間に開始、10 m 線を越えた瞬間に停止。至適→最大を各 2 回、同一条件で評価。 10 m 計測方式|助走 2 m → 10 m 計測 → 減速 2 m 至適・最大を各 2 回(平均)。開始=0 m 通過、停止=10 m 通過。 助走 2 m ⏱ 計測区間 10 m(0–10 m) 減速 2 m -2 m 0 m 10 m 12 m 開始:先行足が 0 m 線を越えた瞬間に計測開始 停止:先行足が 10 m 線を越えた瞬間に計測停止 手順:至適 ×2回 → 最大 ×2回(各平均)/ 速度 = 10 m ÷ 時間(秒)/ 補助具・靴・路面を同条件で固定 rehabilikun blog|10 m Walk Test Protocol
10 m を計測する標準セットアップ(助走 2 m・減速 2 m/全長 14 m )
10 m 歩行テストのコース設営例(助走 2 m・計測 10 m・減速 2 m)
実測コース例:0 m/ 10 m を明示し、左右に 2 m の助走・減速を確保

評価のやり方(SOP)

以下の手順を施設内で統一すると、経時比較の信頼性が高まります。転倒リスクが高い場合は「最大速度」を見送り、至適のみで安全に運用します(施設 SOP/主治医指示を優先)。

セットアップ(環境・準備物)
項目 推奨 備考
コース 全長 14 m(助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m ) 床テープで 0 m/ 10 m を明示。混雑・勾配なし。
計測基準 先行足が0 m 線を越えた瞬間に開始10 m 線を越えた瞬間に停止 判定(つま先等)を固定し、迷いを消す。
速度条件 至適(通常)・最大(できるだけ速く) 順序は至適 → 最大を推奨。
試行回数 各 2 回 → 平均 短縮時は「 1 回」「理由」を明記。
補助具 日常使用中の物品は使用可 杖/装具/歩行器など種類と条件を記録
見守り 安全確保の見守り(非接触)は可 推進力が加わる介助は原則不可。やむを得ない接触は記録。
手順と指示文(患者向け定型)
段階 やること 指示文
1 説明・安全確認 「この線からあの線まで10 mを歩きます。助走でスピードに乗せ、0–10 mの間だけ時間を計ります。」
2 至適速度 × 2 回 いつもの速さで歩いてください。」
3 最大速度 × 2 回 「安全に配慮しつつ、できるだけ速く歩いてください。」
4 記録・換算 速度 = 10 m ÷ 時間(秒)。各条件 2 回の平均を採用。
5 併記事項 補助具・靴・路面、痛み/息切れ、休憩の有無、介助量、声かけを記載。

結果の解釈(カットオフ・MCID・MDC)

10MWT は「速度」を直接出せるため、活動レベルの層別化や、介入後の変化判定(誤差を超えた変化か)に向きます。最大速度は予備能の把握に有用で、至適との差は介入テーマ(歩容・筋力・有酸素能・デバイス調整)を示唆します。

歩行速度の解釈(至適速度の層別化:目安)
速度(m/s) 機能レベルの目安 臨床メモ
< 0.40 家屋内歩行にほぼ限定( Household ) 環境調整・介助量の見直しを優先。
0.40–0.79 限定的な地域歩行( Limited community ) デバイス最適化・持久向上で上積みを狙う。
≥ 0.80 地域自立歩行( Community ) 買い物・外出の選択肢が広がる。
≥ 1.00 外出の安全域がさらに拡大 群衆回避・段差回避などの余裕が出る。
変化量の目安:MCID と MDC(解釈のコツ)
用語 意味 目安 使いどころ
MCID 患者にとって「意味がある」変化 小変化 ≈ 0.05 m/s、大きい変化 ≈ 0.10 m/s 目標設定(活動目標)とセットで使う。
MDC 測定誤差を超えた「確かな」変化 歩行速度で層別すると値が変わる(例:脳卒中) 「誤差の範囲か/介入効果か」を判定する。
脳卒中における 10MWT の MDC 例(層別:至適歩行)
層(至適速度) MDC(速度) 読み方(実務)
< 0.40 m/s 0.05 m/s 低速ほど「時間の誤差」は大きいが、速度の MDC は小さく見える。
0.40–0.80 m/s 0.11 m/s 退院前後で“誤差を超えた変化”を説明しやすい帯。
> 0.80 m/s 0.21 m/s 速い層ほど速度の MDC が大きく、変化判定は厳しめになる。

よくある誤り(OK/NG 早見)

10MWT がブレる原因と、つぶし方
場面 NG OK 記録ポイント
開始・停止 「だいたいこの辺」で押す/止める 先行足が 0 m/ 10 m 線を越えた瞬間に統一 判定(つま先等)を固定して書く。
助走・減速 助走なしで 10 m を計測 助走 2 mで巡航に乗せてから計測 プロトコル(全長)を明記。
試行回数 日によって 1 回/ 2 回が混在 各 2 回 → 平均で統一 短縮は理由(疲労/疼痛等)を書く。
条件固定 靴・補助具・路面が毎回違う 同じ靴・補助具・環境で反復 変えた場合は「条件変更」を明記。
声かけ 毎回違う励まし/急かし 指示文を固定(至適/最大) 特別な声かけをしたら残す。

おわりに

10MWT は「安全確認 → コース固定 → 開始/停止の統一 → 記録 → 再評価」の順で回すと、数字が“説明できるアウトカム”になります。迷いが出やすいのは、条件(靴・補助具・路面・声かけ)がズレたまま比較してしまう場面なので、まずは条件セットを固定して運用してみてください。

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ミニ FAQ(10 m 歩行テスト)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

なぜ「助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m」にするの?

立ち上がり直後の加速の影響を避け、安定した巡航速度で 10 m を測るためです。方式は施設内で固定し、再評価も同方式で行うと経時比較の信頼性が高まります。

計測の開始・停止はどのタイミング?足のどの部分で判定?

先行足0 m 線を越えた瞬間に開始、10 m 線を越えた瞬間に停止します。判定基準(つま先等)も施設内で統一します。

補助具や装具・歩行器は使ってよい?

日常使用中の補助具は使用可です。種類(杖・装具・歩行器など)と条件を記録し、再評価でも同一条件を再現します。

見守りや軽い接触(接触介助)は許される?

安全確保の見守り(非接触)は可。推進力が加わる身体介助は原則不可です。やむを得ず接触した場合は、その有無と理由を記録します。

MCID と MDC はどう使い分ける?

MCID は「患者にとって意味がある変化」、MDC は「誤差を超えた確かな変化」です。経時変化を説明するときは、まず MDC を超えたかを見て、その上で活動目標(外出・横断歩道など)に照らして MCID 的に“意味があるか”を判断すると整理しやすいです。

参考文献

  1. Shirley Ryan AbilityLab. 10 Meter Walk Test(RehabMeasures Database).
  2. Academy of Neurologic Physical Therapy (APTA). CORE MEASURE: 10 m Walk Test Pocket Guide.
  3. Perry J, Garrett M, Gronley JK, et al. Classification of Walking Handicap in the Stroke Population. Stroke. 1995;26(6):982–989. https://doi.org/10.1161/01.STR.26.6.982
  4. Perera S, Mody SH, Woodman RC, Studenski SA. Meaningful Change and Responsiveness in Common Physical Performance Measures in Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2006;54(5):743–749. https://doi.org/10.1111/j.1532-5415.2006.00701.x
  5. Hosoi Y, Kamimoto T, Sakai K, et al. Estimation of minimal detectable change in the 10-meter walking test for patients with stroke: a study stratified by gait speed. Front Neurol. 2023;14:1219505. https://doi.org/10.3389/fneur.2023.1219505
  6. Studenski S, Perera S, Patel K, et al. Gait Speed and Survival in Older Adults. JAMA. 2011;305(1):50–58. https://doi.org/10.1001/jama.2010.1923
  7. Bohannon RW. Comfortable and maximum walking speed of adults aged 20–79 years: reference values and determinants. Age Ageing. 1997;26(1):15–19. https://doi.org/10.1093/ageing/26.1.15

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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