10 m 歩行テスト( 10MWT )は「測り方の固定」と「変化の読み方」をそろえる記事です
10MWT は、コース条件と記録ルールを固定すると、再評価で使える数字になります。 歩行速度評価の全体像を見る このページの手順を見る / 10 m 歩行と 6MWT の違いを見る
10 m 歩行テスト( 10 meter walk test: 10MWT )は、歩行速度( m/s )を定量化し、移動能力の把握、外出レベルの層別化、介入前後の変化判定に使う代表的なアウトカムです。この記事では、助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 mで統一し、臨床で迷いやすい「やり方」と「解釈」を 1 本で整理します。
答えることは、10 m 計測方式の SOP ・カットオフ・ MCID / MDC ・よくある誤りです。答えないことは、 4 m/ 6 m/ 10 m の測り分け総論や持久性評価の深掘りで、その部分は親記事や比較記事に分けます。
最短まとめ( 30 秒で運用できる 5 点)
| 項目 | 統一ルール | 記録ポイント |
|---|---|---|
| コース | 助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m(全長 14 m ) | 0 m/ 10 m をテープで明示します。 |
| 開始・停止 | 先行足が 0 m 線を越えた瞬間に開始、 10 m 線を越えた瞬間に停止 | 判定基準(つま先など)を施設内で固定します。 |
| 速度条件 | 至適(通常)→ 最大(できるだけ速く) | 指示文を固定します。 |
| 試行回数 | 各 2 回 → 平均 | 短縮時は理由を残します。 |
| 比較の前提 | 補助具・靴・路面・介助量・声かけを固定 | 変えたら条件変更ありと記録します。 |
図解:10 m 歩行テストの測り方と判断の全体像
評価のやり方( SOP )
施設内で手順をそろえるほど、 10MWT は「比較できる数字」になります。とくにブレやすいのは、コース長、開始・停止の判定、補助具の条件です。最大速度は予備能の把握に役立ちますが、転倒リスクが高い場合は至適速度のみでも運用できます。
| 項目 | 推奨 | 備考 |
|---|---|---|
| コース | 全長 14 m(助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m ) | 床テープで 0 m/ 10 m を明示します。 |
| 計測基準 | 先行足が 0 m 線を越えた瞬間に開始、 10 m 線を越えた瞬間に停止 | 判定基準(つま先など)を固定します。 |
| 速度条件 | 至適(通常)・最大(できるだけ速く) | 順序は至適 → 最大を推奨します。 |
| 試行回数 | 各 2 回 → 平均 | 1 回しか測れない場合は理由を残します。 |
| 補助具 | 日常使用中の物品は使用可 | 杖/装具/歩行器など種類と条件を記録します。 |
| 見守り | 安全確保の見守り(非接触)は可 | 身体介助が入った場合は比較条件が変わるため明記します。 |
| 段階 | やること | 指示文 |
|---|---|---|
| 1 | 説明・安全確認 | 「このコースは助走のあとに 10 m を計ります。 0 m から 10 m の間だけ時間を測ります。」 |
| 2 | 至適速度 × 2 回 | 「いつもの速さで歩いてください。」 |
| 3 | 最大速度 × 2 回 | 「安全に気をつけながら、できるだけ速く歩いてください。」 |
| 4 | 記録・換算 | 速度 = 10 m ÷ 時間(秒)。各条件 2 回の平均を採用します。 |
| 5 | 併記事項 | 補助具・靴・路面、疼痛/息切れ、休憩の有無、介助量、特別な声かけを記載します。 |
結果の解釈(カットオフ・ MCID ・ MDC )
10MWT は「速かった/遅かった」で終わらせず、どの外出レベルに近いか、その変化が誤差を超えたかまで読むと実務で使いやすくなります。まずは 0.4 / 0.8 m/s のカテゴリーで現在地を見て、次に MCID / MDC で変化量を判断します。
| 速度( m/s ) | 機能レベルの目安 | 臨床メモ |
|---|---|---|
| < 0.40 | 家屋内歩行が中心 | 移動の安全性、介助量、環境調整を優先します。 |
| 0.40–0.79 | 限定的な地域歩行 | 補助具最適化や持久性向上で外出幅を広げやすい帯です。 |
| ≥ 0.80 | 地域歩行に近いレベル | 屋外課題、段差、方向転換、二重課題へ進めやすくなります。 |
| 用語 | 意味 | 目安 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| MCID | 患者にとって意味がある変化 | 汎用の目安として 0.05 m/s(小)/ 0.10 m/s(大) | 外出や ADL 目標と合わせて読みます。 |
| MDC | 測定誤差を超えた確かな変化 | 疾患や初速で変わる | 「改善した気がする」を数字で確かめるときに使います。 |
| 脳卒中の補足 | 病期や初速で解釈が変わる | 重度低速群では 0.16 m/s 程度の MCID 報告あり | 脳卒中では疾患別データを優先して判断します。 |
汎用の 0.05 / 0.10 m/s は便利ですが、脳卒中では初速で MDC がかなり変わります。したがって、退院前後や介入前後を説明するときは、可能なら疾患別の値で読むほうが安全です。
| 層(至適速度) | MDC(速度) | 読み方(実務) |
|---|---|---|
| < 0.40 m/s | 約 0.05 m/s | 低速群は小さな差でも意味を持ちやすく、環境設定の影響も大きい帯です。 |
| 0.40–0.80 m/s | 約 0.11 m/s | 屋内中心から地域歩行へ近づくかを説明しやすい帯です。 |
| > 0.80 m/s | 約 0.21 m/s | 速い層ほど速度のばらつきも出やすく、変化判定は厳しめになります。 |
現場の詰まりどころ|数字は合っていても比較が壊れる 3 パターン
10MWT で一番多い失敗は、ストップウォッチの押し遅れより条件のズレです。とくに、 4 m/ 6 m/ 10 m が混在する、靴や補助具が変わる、 1 回測定と平均値を混ぜる、の 3 つで比較の意味が崩れます。
- よくある誤り( OK / NG 早見 )で、ズレやすい場面を先につぶす
- 結果の解釈で、 MCID / MDC の読み方を固定する
- 距離ごとの測り分けで迷うときは 歩行速度( gait speed )評価まとめに戻る
よくある誤り( OK / NG 早見)
| 場面 | NG | OK | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 開始・停止 | だいたいの位置で押す/止める | 先行足が 0 m/ 10 m 線を越えた瞬間に統一 | 判定基準(つま先など)を固定して書きます。 |
| 助走・減速 | 助走なしで 10 m を計測する | 助走 2 mで巡航に乗せてから計測する | プロトコル(全長 14 m )を明記します。 |
| 試行回数 | 日によって 1 回/ 2 回が混在する | 各 2 回 → 平均で統一する | 短縮時は理由(疲労・疼痛など)を残します。 |
| 条件固定 | 靴・補助具・路面が毎回違う | 同じ靴・補助具・環境で反復する | 変えた場合は条件変更ありと記録します。 |
| 声かけ | 毎回違う励ましや急かしが入る | 至適/最大の指示文を固定する | 特別な声かけをしたら残します。 |
ダウンロード(記録シート)
院内での運用をそろえたいときは、10 m 歩行テスト 記録シート( A4 ・ 1 枚 )を使うと、条件固定と再評価メモを 1 枚で残せます。
PDF プレビューを開く
ミニ FAQ( 10 m 歩行テスト )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
なぜ「助走 2 m → 計測 10 m → 減速 2 m」にするの?
立ち上がり直後の加速と停止前の減速の影響を切り分け、巡航に近い歩行速度を取りやすくするためです。大事なのは「この方式で固定すること」で、再評価でも同じ条件を再現します。
開始・停止はどのタイミングで押せばいい?
先行足が 0 m 線を越えた瞬間に開始し、 10 m 線を越えた瞬間に停止します。足のどの部位で判定するかも、施設内で統一するとブレが減ります。
杖や装具、歩行器は使ってよい?
日常使用中の補助具は使用可です。重要なのは、種類と条件を記録し、再評価でも同条件をそろえることです。
1 回しか測れない場合はどうする?
疼痛、疲労、循環動態などで 2 回測れないことはあります。その場合は 1 回であることと理由を明記し、前回の平均値と単純比較しないようにします。
MCID と MDC はどう使い分ける?
MCID は「患者にとって意味がある変化」、 MDC は「測定誤差を超えた確かな変化」です。まず MDC を超えたかを確認し、そのうえで外出や ADL の目標に照らして MCID 的に意味があるかを考えると整理しやすいです。
次の一手
参考文献
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- Perera S, Mody SH, Woodman RC, Studenski SA. Meaningful Change and Responsiveness in Common Physical Performance Measures in Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2006;54(5):743-749. https://doi.org/10.1111/j.1532-5415.2006.00701.x
- Tilson JK, Sullivan KJ, Cen SY, Rose DK, Koradia CH, Azen SP, et al. Meaningful Gait Speed Improvement During the First 60 Days Poststroke: Minimal Clinically Important Difference. Phys Ther. 2010;90(2):196-208. https://doi.org/10.2522/ptj.20090079
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- Cheng DK, Nelson M, Brooks D, Salbach NM. Validation of stroke-specific protocols for the 10-meter walk test and 6-minute walk test conducted using 15-meter and 30-meter walkways. Top Stroke Rehabil. 2020;27(4):251-261. https://doi.org/10.1080/10749357.2019.1691815
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- Studenski S, Perera S, Patel K, Rosano C, Faulkner K, Inzitari M, et al. Gait Speed and Survival in Older Adults. JAMA. 2011;305(1):50-58. https://doi.org/10.1001/jama.2010.1923
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


