- ICIDH(国際障害分類)とは?|ICFに読み替えるための基礎と使いどころ
- まずここだけ|ICIDHからICFへ読み替える要点
- ICIDHとICFの違い|単純な「言い換え」ではありません
- ICIDH→ICFの読み替え5手順|元の文を分解して整理します
- 読み替えで迷いやすい2点|bとdを混ぜない・社会的不利を1語で残さない
- 読み替え早見|コードは元の記録だけで決めないことが重要です
- 読み替えの実例|「分かっていること」と「未評価」を分けます
- よくあるNG / OK|読み替えで崩れやすいポイント
- 5分で回す運用フロー|d→b / s→e→程度の順で整理します
- 記録シートPDF|ICIDHの記載をICFへ整理する練習に使えます
- 記録テンプレ|確認済みの情報だけを並べます
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|ICFそのものの書き方へ進む
- 参考文献
- 著者情報
ICIDH(国際障害分類)とは?|ICFに読み替えるための基礎と使いどころ
ICF全体から整理したい方へ
ICIDHは、WHOが1980年に公表した障害分類で、impairment(機能・形態障害)、disability(能力障害)、handicap(社会的不利)という観点から障害の結果を整理していました。現在は2001年にWHOで採択されたICF(国際生活機能分類)が国際標準ですが、古い文献や診療録、院内様式ではICIDHの用語が残っていることがあります。
重要なのは、ICIDHの3概念をICFへそのまま1対1で置き換えるのではなく、元の記載が何を表しているのかを心身機能・身体構造、活動と参加、環境因子へ分解して整理し直すことです。この記事では、その読み替え方を実例、NG / OK、記録シートまで含めて整理します。
まずここだけ|ICIDHからICFへ読み替える要点
ICIDHとICFは考え方そのものが異なるため、厳密な1対1対応ではありません。実務では、旧記録の意味を確認してからICFの構成要素へ分解します。
- ICIDH:impairment、disability、handicapという障害の結果を中心に整理する
- ICF:心身機能・身体構造、活動と参加、環境因子などの相互作用から生活機能と障害をとらえる
- 実務上の目安:impairmentはb / s、disabilityは主にdを検討する
- handicap:特定の1項目へ置換せず、参加上の問題と、それに関係する環境因子などへ分解する
- 読み替え方:まずdで生活上の課題を整理し、必要なb / s、eを関連づけると記録を組み直しやすい

ICIDHとICFの違い|単純な「言い換え」ではありません
ICIDHからICFへの変更では、名称だけでなく障害のとらえ方が変わりました。ICFでは活動と参加をdカテゴリー群で扱い、さらに環境因子を生活機能へ影響する構成要素として明示します。
| 観点 | ICIDH | ICF | 読み替えるときの考え方 |
|---|---|---|---|
| 中心の見方 | 疾病・障害の結果を整理する | 生活機能と障害を複数要素の相互作用としてとらえる | 旧用語を1語ずつ置換せず、内容を分解する |
| Impairment | 機能・形態障害 | b(心身機能)/s(身体構造) | 痛み、筋力、関節機能、身体構造など、実際の所見に応じて整理する |
| Disability | 能力障害 | d(活動と参加)が主な整理先 | 「何を行うことに問題があるか」を確認する |
| Handicap | 社会的不利 | 単純な1項目への対応ではない | 参加上の問題と、それに関係する環境因子などへ分解する |
| 環境 | 現在のICFほど独立して体系化されていない | e(環境因子)として分類する | 物理環境、人的支援、サービスなどが阻害因子か促進因子かを確認する |
ICIDH→ICFの読み替え5手順|元の文を分解して整理します
読み替えでは、ICIDHの名称からICFコードを機械的に決めません。まず元の記録が示している生活上の課題と、その背景を切り分けます。
- 元のICIDH記載を分ける:機能・形態上の問題、行為の問題、社会生活上の問題に切り分ける
- dを検討する:「何ができないか」「どの生活場面で困っているか」を活動と参加から整理する
- b / sを確認する:その課題に関係する心身機能・身体構造の所見を、実際に評価できている範囲で整理する
- eを確認する:補助具、物理環境、家族支援、サービスなど、生活機能へ影響する環境因子を分ける
- 必要なら程度を付ける:修飾子を使用する場合は、観察・評価した条件と根拠をそろえて記録する
読み替えで迷いやすい2点|bとdを混ぜない・社会的不利を1語で残さない
最も混乱しやすいのは、生活上の課題と、その背景にある心身機能を同じものとして扱うことです。たとえば「歩けない」という記載は、まず歩行という活動・参加の問題として整理し、そのうえで実際に確認された疼痛や筋力などをbへ関連づけます。
また、ICIDHの「社会的不利」はICFの特定の1カテゴリーに置き換えるものではありません。何への参加が制約されているのか、その状況へ物理環境、人的支援、制度やサービスなどがどう影響しているのかを分けて考えます。
読み替え早見|コードは元の記録だけで決めないことが重要です
以下は、ICIDH風の文章をICFの構成要素へ分解するときの例です。同じ「歩行困難」「更衣困難」でも、実際の評価結果や生活環境によってb / sやeは変わります。
| 元の記載 | 活動と参加(d) | 心身機能・身体構造(b / s) | 環境因子(e) |
|---|---|---|---|
| 膝痛で歩行困難 | d450(歩く)を検討 | 確認された膝痛はb280(痛み)など。関節可動性などは実際の評価所見がある場合に追加 | 歩行補助具を使用している場合はe120などを検討。建物環境は場所と内容を確認して分類する |
| 更衣ができず介助が必要 | d540(更衣)を検討 | 筋力、運動制御、関節機能など、実際に更衣へ影響している所見を確認して分類する | 自助具や家族からの支援など、実際に存在する環境因子を分類する |
| 外出できず地域生活が制限されている | 外出や地域生活の具体的な目的・場面に応じてdカテゴリーを選ぶ | 移動能力、運動耐容能など、確認された関連所見があれば分類する | 交通手段、建物環境、人的支援、サービスなど、実際の阻害・促進因子を確認する |
読み替えの実例|「分かっていること」と「未評価」を分けます
元の文:膝痛により歩行が困難で、通院にも支障がある。
元の文だけから整理できること:歩行の問題としてd450(歩く)、疼痛としてb280(痛み)を検討できます。一方、筋力低下、関節可動域制限、補助具、段差などは、この1文だけでは存在を判断できません。
追加で確認すること:どの程度歩けるのか、実際の環境では何が歩行を妨げているのか、通院時に必要な移動や交通手段は何かを評価します。その結果に応じて、必要なb / sやeを追加します。
記録例:d450 歩行に制限あり。b280 膝痛あり。歩行距離、介助・補助具、通院時の移動環境を追加評価し、関連する環境因子を整理する。
よくあるNG / OK|読み替えで崩れやすいポイント
ICFコードを増やすことより、どの情報を何として整理したのかが追える記録を優先します。
| 場面 | NG | OK | 記録のポイント |
|---|---|---|---|
| 生活上の課題 | 「歩けない」を心身機能だけで説明する | 歩行の問題をdで整理し、関連するb / sを分ける | 課題と背景因子を区別する |
| 社会的不利 | 「社会的不利あり」で終える | どの生活場面への参加が制限され、何が影響しているかを分ける | dとeを関連づける |
| 環境因子 | 段差、家族、制度を列挙するだけ | 実際の生活機能に対して阻害因子か促進因子かを確認する | 影響する対象のdとセットで考える |
| ICFコード | 元の1文だけから原因や環境のコードを推測する | 評価・聞き取りで確認できた内容だけを分類する | 未評価と確認済みを分ける |
| 程度 | 根拠なく修飾子を付ける | 観察条件や評価結果を確認してから程度を記録する | 同じ条件で再評価できる情報を残す |
5分で回す運用フロー|d→b / s→e→程度の順で整理します
以下はWHOが定めた必須記載順ではなく、旧記録を臨床で整理し直すための実務上のフローです。
- d:患者・利用者が何を行うことに困っているのかを具体化する
- b / s:その課題に関係する、確認済みの心身機能・身体構造を整理する
- e:その生活機能を阻害または促進している環境因子を確認する
- 程度:必要な場合は、観察条件と根拠をそろえて修飾子を検討する
- 次の一手:直接介入する要素、環境調整する要素、追加評価する要素を分ける
記録シートPDF|ICIDHの記載をICFへ整理する練習に使えます
ICIDHの文をICFの構成要素へ分解して整理するための、A4 1枚の記録シートです。古い記録を読み直すときや、カンファレンス前の情報整理、院内で読み替え方を共有するときに使用できます。
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記録テンプレ|確認済みの情報だけを並べます
コードを先に決めるのではなく、生活上の課題、関連する心身機能・身体構造、環境因子の順に整理すると、推測による記載を減らせます。
- 基本形:(日付)生活上の課題 d__。関連する b / s__。環境因子 e__(阻害 / 促進)。追加評価=__。計画=__。再評価=__。
- 短縮形:d__|関連 b / s__|環境 e__|未確認__|次=__
- カンファ用:今日の課題 d__、確認済み b / s__、環境 e__、追加確認__
よくある質問(FAQ)
ICIDHとICFの関係で迷いやすい点をまとめます。
Q1. ICIDHは今も使うべきですか?
現在、生活機能と障害を記述するWHOの国際標準はICFです。ICIDHは、古い文献・診療録・院内様式を理解するときや、旧来の表現をICFへ整理し直す場面で参照する位置づけになります。
Q2. ICIDHの「社会的不利」はICFでは何になりますか?
特定のICFカテゴリーへ1対1で置き換えるものではありません。どの生活場面への参加が制限されているのか、その状況に環境因子がどう影響しているのかを確認し、必要なdとeなどへ分解して整理します。
Q3. impairment・disability・handicapは、それぞれb / s・d・eと覚えてよいですか?
大まかな入口として、impairmentとb / s、disabilityとdの関係を理解することは役立ちます。ただし、ICIDHとICFは分類の考え方が異なるため、厳密な対応表として使うのは避けます。特にhandicapはeだけ、またはdだけへ単純に置き換えず、元の意味を分解してください。
Q4. PerformanceとCapacityはいつ付けますか?
活動と参加では、現在の実際の環境で行っていることをPerformance、一定・標準化された環境で実行できる能力をCapacityとして記述できます。数値は元のICIDH表現から推測せず、実際に評価した条件と根拠を確認してから付けます。
次の一手|ICFそのものの書き方へ進む
ICIDHの読み替えができたら、次は最初からICFで情報を整理する方法を確認すると実務につながります。
参考文献
- World Health Organization. International classification of impairments, disabilities, and handicaps: a manual of classification relating to the consequences of disease. Geneva: World Health Organization; 1980. WHO IRIS
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF. Geneva: World Health Organization; 2001. WHO
- World Health Organization. Towards a Common Language for Functioning, Disability and Health: ICF. Geneva: World Health Organization; 2002. WHO ICF Beginner’s Guide
- Stucki G, Cieza A, Ewert T, et al. Application of the International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF) in clinical practice. Disabil Rehabil. 2002;24(5):281-282. doi:10.1080/09638280110105222.
- Stucki G, Ewert T, Cieza A. Value and application of the ICF in rehabilitation medicine. Disabil Rehabil. 2002;24(17):932-938. doi:10.1080/09638280210148594.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

