10MWT と 6MWT は「選ぶ目的」と「残す記録」で迷いません
結論:短い距離で歩行速度( m/s )をみるなら 10MWT 、一定時間で歩行耐久( m )をみるなら 6MWT が向きます。対象は「どちらを先に使うか迷う PT / OT / ST 」で、この記事を読む価値は目的・スペース・安全条件から 1 本を選び、再評価で残す記録まで決められることです。
このページで答えることは、どちらを選ぶか、なぜ同じ患者で結論がズレるか、何を条件固定して記録するかです。答えないことは、 10MWT のカットオフや MCID / MDC の詳細、 6MWT の中止基準の細部です。その部分は兄弟記事へ役割を分けます。
関連ハブ(同ジャンル回遊):歩行・バランス評価を “ 使い分け → 比較表 → 記録の型 ” で最短整理
まずは違いを 1 分で把握【比較表】
最初に分けるべきなのは、何を知りたいかです。速度が必要なのに 6 分をやる、耐久を見たいのに 10 m だけで済ませる、という “ 目的ズレ ” が一番もったいないです。
スマホでは表を横スクロールできます。下の表で、何を知りたいか → どちらを選ぶかを先に固定してください。
| 項目 | 10MWT( 10 m 歩行) | 6MWT( 6 分間歩行) |
|---|---|---|
| 主アウトカム | 歩行速度( m/s ) | 歩行距離( m )+症状( Borg 、 SpO₂ など) |
| 向く目的 | 転倒・ ADL の “ 即戦力 ” 指標、速度の変化検出 | 運動耐容能/歩行耐久、生活内移動(院内・買い物等)の見立て |
| 所要 | 約 3〜 5 分 | 約 6〜 10 分(準備・安全確認込み) |
| 必要スペース | 全長 14 m 前後が目安(助走・減速を含む) | 20〜 30 m 以上の直線回廊が理想 |
| ブレやすい点 | 助走・減速、開始/停止の基準、声かけ、補助具条件 | コース長、折り返し、声かけ標準化、中止基準、休憩の扱い |
| よくある “ ズレ ” | 速いが、長く歩くと失速する(耐久が拾えていない) | 距離は伸びたが、速度は上がっていない(スピード課題が残る) |
どっちを選ぶ?最短フロー【使い分け】
選定は 3 ステップで十分です。目的 → 制約 → 安全の順に固定すると、スタッフ間のブレが減ります。
- 目的:速度( m/s )が必要なら 10MWT、耐久( m )が必要なら 6MWT
- 制約:回廊が短い/時間がない → まずは 10MWT を “ 条件固定 ” で回す
- 安全:呼吸循環リスクや SpO₂ 低下が気になる → 6MWT で症状と合わせて評価する
症例別ミニ例: 10MWT と 6MWT の選び方( 3 例)
比較記事で一番価値が出るのは、「結局この症例ならどっち?」が 10 秒で決まることです。ここでは 3 例だけ、採用したテストと記録した条件セットを最小でまとめます。
症例 1:脳卒中(歩行はできるが “ 実用速度 ” が読めない)
選択:まず 10MWT を採用(速度で “ いまの実用度 ” を固定)。屋外・病棟内移動で失速が疑わしければ、次に 6MWT で耐久を追加します。
- 10MWT の記録(最低限):助走の有無、開始停止基準、補助具、装具、介助量、 2 回測定の平均 or 最速
- 判断のコツ:速度は出るのに転倒不安・疲労が強いなら、速度だけで “ 良い ” と言い切らず、耐久の追加が必要
症例 2:心不全(息切れ・ SpO₂ 低下が心配で “ 安全込み ” で見たい)
選択:6MWT を優先(距離だけでなく、症状と生体反応を “ セット ” で記録できる)。
- 6MWT の記録(最低限):回廊長、声かけルール、中止基準、休憩の扱い、補助具、酸素条件、開始前後の SpO₂/ HR/ Borg
- 判断のコツ:距離だけで “ 改善 ” とせず、同じ酸素条件・同じ声かけで比較できているかを先にチェック
症例 3:整形(疼痛で “ 速くは歩けない ” が、どの程度 “ 歩ける ” か知りたい)
選択:目的で分けます。痛みで速度が落ちる状態の “ 現状把握 ” なら 10MWT、買い物や通院などの移動耐久を見たいなら 6MWT です。
- 10MWT の記録(最低限):疼痛( NRS )のタイミング、歩行条件(靴・インソール・サポーター)、補助具、歩容のメモ
- 6MWT の記録(最低限):疼痛の推移、休憩の有無と時点、回廊長、声かけ固定、補助具条件
- 判断のコツ:“ 歩けた距離 ” と “ 痛みのコスト ” をセットで残すと、介入を決めやすい
同じ患者で結論がズレる理由
10MWT は “ 巡航に乗った短時間の速度 ” を拾いやすい一方、 6MWT は “ 継続した歩行での失速・息切れ・休憩 ” を拾いやすいです。つまり、速度が出ても耐久が崩れる人、距離は稼げても速度が上がらない人が出ます。
ここで大事なのは、「どちらが正しいか」ではなく、別の側面を見ていると理解することです。だからこそ、数字だけでなく条件固定を一緒に残しておく必要があります。
図でわかる: 10MWT と 6MWT の使い分け
表だけでは迷いやすい場合は、下の図で「速度を見るか、耐久を見るか」を先に固定してください。最初に全体像をそろえると、 10MWT と 6MWT の役割が混ざりにくくなります。
現場の詰まりどころ(よくある失敗と回避)
よくある失敗(一覧)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
失敗 1: 10MWT の開始/停止が毎回バラバラ
「だいたいこの辺」で押すと速度が簡単にズレます。先行足が 0 m/ 10 m 線を越えた瞬間など、判定基準をチームで固定し、記録欄にも残してください。
失敗 2:助走なし/助走距離が混在している
加速が混ざると比較が崩れます。助走を入れるなら “ うちは助走 2 m ” のように、全長と計測区間を固定して運用します。
失敗 3: 6MWT の声かけが人によって違う
声かけは距離に影響します。フレーズとタイミング(例: 1 分ごと)を決め、毎回同じ運用で比較できる形にしてください。
失敗 4: 6MWT の中止基準が曖昧で、実施の可否がブレる
事前に「中止のライン」と「休憩の扱い」を合意しておかないと、距離の解釈が難しくなります。呼吸循環リスクがある場合は、 SpO₂ と Borg をセットで見て “ 安全に回る型 ” を先に作ります。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の “ 型 ” をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
評価 → 記録 → 再評価 の “ 型 ” をまとめて整理したい方へ
PT キャリアガイドを見る記録と共有の型(ここだけ書けば再評価が成立)
比較記事のゴールは “ 再評価が回る状態 ” を作ることです。数値だけではなく、条件セットを一緒に残すと、カンファや申し送りが一気に楽になります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 記録項目 | 例 | なぜ必要? |
|---|---|---|
| 補助具・装具・靴 | T 杖、 AFO 、靴種 | 条件差で数値が簡単にズレる |
| 介助量 | 見守り/軽介助など | 改善が “ 能力 ” か “ 介助 ” か判別できる |
| コース条件 | 直線/折り返し、回廊長 | 6MWT の距離に影響しやすい |
| 声かけ | 固定フレーズ/タイミング | 励まし頻度で結果が変わる |
| アウトカム | 10MWT: m/s、 6MWT: m | 目的(速度/耐久)と一致しているか確認 |
| 症状(必要時) | Borg、 SpO₂、 HR | 安全と解釈(耐容能)を補完 |
比較記録シート(PDF)
「前回と今回の条件差をそろえて残したい」「 10MWT と 6MWT を同じ紙で比較したい」ときは、配布用の比較記録シートをそのまま使うと運用が安定します。院内での申し送りや再評価の共有にも使いやすいよう、基本情報 → 条件固定 → 比較記録 → まとめメモの順で整理しています。
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よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. どちらを先にやるのがおすすめですか?
迷う場合は、まず 10MWT で “ 速度 ” を条件固定して取るのが実務的です。そのうえで、息切れ・失速・屋外移動が課題なら 6MWT を追加して “ 耐久 ” を押さえると、介入の優先順位が決めやすくなります。
Q2. 6MWT の 30 m コースが取れません。どうしますか?
まずは回廊長と折り返し条件を固定し、「同じ条件で再評価できる」ことを優先します。時間やスペースの制約が大きい場合は、代替として 2 分間歩行テスト( 2MWT ) を検討し、声かけ・休憩・補助具条件を同じ発想でそろえます。
Q3. 杖や AFO、酸素はどう扱えばいいですか?
原則は “ 同じ条件で比較 ” です。変更した場合は、条件変更として別系列のデータとして扱い、変更理由(安全/疼痛/ SpO₂ 低下など)もセットで残します。
Q4. 10MWT は助走 2 m が必須ですか?
必須ではありませんが、助走あり/なしを混在させると比較が崩れます。採用するなら「全長・計測区間・開始停止基準」をチームで固定し、記録欄にも残してください。
Q5. 再評価はどれくらいの頻度で回すのがいいですか?
速度を主役で見たい時期は 10MWT を短いサイクルで、屋外移動や耐容能を見たい時期は 6MWT を少し長いサイクルで回すと運用しやすいです。重要なのは頻度そのものより、条件固定+同じ方法で繰り返すことです。
次の一手(運用に落とす)
数字を “ 使える評価 ” にするコツは、①目的を 1 つに絞る、②条件セットを固定する、③同じ手順で再評価に戻す、の 3 点です。まずは院内で「うちの測り方」を 1 枚に固定してください。
- 全体像から整える:運動機能(歩行・バランス)評価ハブ
- 実装をそろえる:6 分間歩行テストの手順(安全管理つき)
参考文献
- ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. doi: 10.1164/ajrccm.166.1.at1102
- Holland AE, Spruit MA, Troosters T, et al. An official European Respiratory Society/American Thoracic Society technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44(6):1428-1446. doi: 10.1183/09031936.00150314
- Moore JL, Potter K, Blankshain K, Kaplan SL, O’Dwyer LC, Sullivan JE. A Core Set of Outcome Measures for Adults With Neurologic Conditions Undergoing Rehabilitation. J Neurol Phys Ther. 2018;42(3):174-220. doi: 10.1097/NPT.0000000000000229
- Cheng DK, Nelson M, Brooks D, Salbach NM. Validation of stroke-specific protocols for the 10-meter walk test and 6-minute walk test conducted using 15-meter and 30-meter walkways. Top Stroke Rehabil. 2020;27(4):251-261. doi: 10.1080/10749357.2019.1691815
- Forrest GF, Hutchinson K, Lorenz DJ, Buehner JJ, VanHiel LR, Sisto SA, Basso DM. Are the 10 Meter and 6 Minute Walk Tests Redundant in Patients with Spinal Cord Injury? PLoS One. 2014;9(5):e94108. doi: 10.1371/journal.pone.0094108
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


