FRTのやり方を図解|カットオフ・MDC・記録用紙PDF

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FRTのやり方は「第3中手骨頭・無効条件・本番3回平均」を統一します

FRT(Functional Reach Test)は、立位で足部の位置を変えずに、前方へどこまで手を伸ばせるかを距離で示す評価です。壁側の上肢を肩関節90°屈曲位にし、握りこぶしを作って、第3中手骨頭の移動距離を測定します。

結果は、練習2回後に行う本番3回の平均値です。一歩、足部位置のずれ、踵挙上、壁やメジャーへの接触、身体介助が生じた試行は採用しません。この記事では、準備、測定手順、無効条件、記録方法、カットオフ、MDC、配布用記録シートまでを整理します。

FRTの標準的なやり方

FRTで数値をぶれにくくするポイントは、測定点、足部条件、無効条件、試行回数を毎回そろえることです。まずは、次の早見図で実施ルールの全体像を確認してください。

FRTの測定点、無効条件、試行回数、記録例をまとめた早見図
FRTは、第3中手骨頭、足部固定、無効条件、本番3回平均を統一して実施します。

1.壁とメジャーを準備する

  • 壁へ水平に固定できるメジャーまたは定規を用意します。
  • 被検者の肩の高さを目安に、メジャーを水平に設置します。
  • 被検者は壁の近くに立ちますが、身体を壁へ接触させません。
  • 転倒に備え、検者はリーチ動作を妨げない位置で見守ります。

検者が身体を支える必要が生じた場合、その試行は測定値として採用できません。外部支持なしの立位保持が難しい場合は、標準的な立位FRTを無理に実施せず、別の評価方法を検討します。

2.開始姿勢と測定点をそろえる

  • 壁に近い側の上肢を使用します。
  • 肩関節を90°屈曲し、肘関節を伸展します。
  • 手は握りこぶしにします。
  • 開始位置の第3中手骨頭を記録します。
  • 両足底を床へ接地し、測定中に足部位置を変えないよう説明します。

再評価では、使用する上肢、足幅、履物、メジャーの高さ、声かけを前回とそろえます。初回測定時に条件を記録しておくと、担当者が変わっても比較しやすくなります。

3.一歩を出さずに最大前方リーチする

  1. 「足を動かさずに、できるだけ前へ手を伸ばしてください」と説明します。
  2. 被検者は、足部の位置を変えずに最大限前方へリーチします。
  3. 最大到達位置の第3中手骨頭を記録します。
  4. 開始位置と最大到達位置の差を、リーチ距離として算出します。

前方へ手を伸ばす過程では、体幹前傾、股関節屈曲、足関節運動などの姿勢戦略が生じます。原著で中心となる条件は、固定した支持基底面を保ち、一歩を出さないことです。

体幹回旋や上肢の高さの変化が大きい場合は、毎回同じ方向へリーチできるよう再説明し、動作所見も記録します。これらを施設独自の無効条件とする場合は、標準的な手順とは別の院内ルールであることを明記してください。

4.練習2回後に本番3回を測定する

  • 練習:2回
  • 本番:3回
  • 結果:本番3回の平均値

練習試行の距離は結果に含めません。本番3回の合計を3で割り、平均値を記録します。最大値だけを採用すると、偶発的に大きく伸びた試行の影響を受けるため、経時比較では平均値で統一します。

一歩・足部移動・踵挙上・接触が生じた試行はやり直します

固定した支持基底面や外部支持なしという条件が崩れた場合、その試行は採用せず、休憩後にやり直します。

FRTで試行をやり直す主な条件
確認事項 判断 理由
一歩前または後ろへ足を出した やり直す 支持基底面が変化するため
足部の位置がずれた やり直す 開始時と異なる支持基底面になるため
踵が浮いた、または足底が床から離れた やり直す 足底接地の条件から外れるため
壁やメジャーへ接触した やり直す 外部支持の影響を受けるため
検者が身体を支えた 中止またはやり直す 身体介助なしの条件から外れるため
体幹前傾や股関節屈曲が生じた 直ちに無効とはしない 前方リーチに伴う姿勢戦略として生じるため

無効試行が続く場合は、疲労、恐怖感、疼痛、指示理解、立位保持能力を確認します。転倒の危険がある場合は、測定値を得ることよりも安全を優先して中止してください。

杖や手すりを使用した値は標準的なFRTと分けて扱います

標準的なFRTは、杖、歩行器、手すり、壁への接触などの外部支持を使用せずに行います。外部支持を使用すると安定条件が変わるため、既存研究の基準値、カットオフ、MDCをそのまま当てはめることはできません。

杖なしでは安全な立位保持が難しい場合は、立位FRTを無理に実施せず、座位mFRTや対象者の能力に合った別のバランス評価を検討します。

臨床上の経過観察を目的として、独自に杖使用下で前方リーチを測る場合は、標準的なFRTとは区別し、使用した支持物と条件を記録します。

記録例:前方リーチ18.0cm。T字杖支持下で実施した独自条件のため、標準FRTのカットオフとの比較は行わない。

FRTの記録は数値と測定条件を1行で残します

結果だけでなく、使用上肢、測定点、履物、試行回数、足部移動の有無を残すと、再評価の比較がしやすくなります。

記録例:FRT 21.3cm。右上肢、第3中手骨頭、靴あり。練習2回後に本番3回を実施し、平均値を採用。足部移動・踵挙上・接触なし。

姿勢戦略も評価へ生かす場合は、距離とは分けて記載します。

観察例:最大リーチ時に股関節屈曲と軽度の体幹回旋を認めた。足部位置と足底接地は保持できた。

FRTのカットオフは対象集団ごとの参考値です

FRTには複数のカットオフが報告されていますが、すべての対象者に共通する転倒判定値ではありません。対象集団、転倒歴の調査方法、疾患、測定条件によって値が異なるため、研究の対象を確認して解釈します。

FRTの代表的な基準・カットオフ
対象 報告値 解釈上の注意 出典
虚弱高齢者 18.5cm未満 30人を対象としたパイロット研究。感度75%、特異度67%であり、単独で転倒リスクを確定する値ではない Thomas 2005
パーキンソン病 31.75cm未満 45人を対象とした報告。感度0.86、特異度0.52であり、転倒歴、病期、薬効状態などと併せて解釈する Dibble & Lange 2006
健常成人・高齢者 年齢、性別、身長などで異なる 対象者に近い参照値を選び、同一条件での経時比較も併用する Duncan 1990Bohannon 2017

転倒リスクには、転倒歴、筋力、歩行能力、認知機能、視覚、薬剤、循環応答、住環境なども関係します。FRTがカットオフを下回ったことだけで、転倒するかどうかを判断しないでください。

MDCは測定誤差を超えた変化か判断する目安です

MDC(minimal detectable change)は、測定誤差を超えた可能性が高い最小変化量です。介護施設に入所している、またはデイケアサービスを利用している高齢者を対象とした研究では、次のMDC95が報告されています。

介護施設サービスを利用する高齢者におけるFRTのMDC
対象群 MDC95 実務での読み方
認知機能低下なし群 8.20cm 8.20cm未満の前後差には、測定誤差が含まれる可能性がある
軽度認知機能低下群 6.35cm 6.35cm未満の前後差には、測定誤差が含まれる可能性がある

この値は、すべての疾患や年齢層に共通するMDCではありません。対象集団や測定方法が異なる場合は、研究で示されたMDCを直接当てはめず、対象者に近い研究を確認します。

前後差がMDC未満でも、臨床的な変化がまったくないとは断定できません。リーチ時の恐怖感、姿勢戦略、疼痛、介助量、他のバランス評価などと併せて判断してください。

FRT記録シートPDFをダウンロードできます

FRT記録シートは、測定値と実施条件を同じ用紙へ残すためのA4・1枚のPDFです。院内で測定点、試行回数、無効条件を統一したい場合に使用できます。

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FRT低値では距離だけでなく、リーチが止まった理由を確認します

FRTは前方へのリーチ距離を示しますが、低値になった原因まで特定できる評価ではありません。数値と動作観察を組み合わせ、必要な追加評価を考えます。

  • 転倒への恐怖感によって自発的にリーチを止めている
  • 足関節を使った前方への重心移動が少ない
  • 股関節や体幹を使った姿勢調整が少ない
  • 下肢筋力や立位保持能力が不足している
  • 肩関節可動域や疼痛がリーチを制限している
  • 指示理解や注意機能が測定へ影響している

FRTだけでバランス能力全体を判断することはできません。起立、歩行、方向転換、外乱への反応なども確認する場合は、TUG、SPPB、Berg Balance Scaleなど、評価目的に合う方法を組み合わせます。

立位が難しい場合は座位mFRTと使い分けます

座位mFRTは、立位FRTを椅子で代用するだけの方法ではなく、異なる測定条件で行う評価です。立位FRTと数値を直接比較せず、別のテストとして運用します。

座位mFRTの詳しいやり方を確認する

FRTのよくある質問

Q. 第3中手骨頭とはどこですか?

A. 握りこぶしを作ったときの、中指の付け根に相当する部分です。開始位置と最大リーチ位置を同じ部位で測ります。指先を測定点にすると、手指の伸ばし方による影響が加わります。

Q. 踵が少し浮いた場合もやり直しますか?

A. 足底接地を測定条件としている場合はやり直します。検者によって許容範囲を変えず、踵挙上や足底の離床が生じた試行は採用しない方法で統一します。

Q. 体幹前傾は無効になりますか?

A. 体幹前傾や股関節屈曲は、前方へリーチする際の姿勢戦略として生じるため、それだけで直ちに無効とはしません。一歩、足部移動、踵挙上、接触など、支持基底面や外部支持の条件が崩れていないかを確認します。

Q. 肩関節を90°まで上げられない場合も測定できますか?

A. 標準条件から外れるため、既存の基準値やカットオフとの単純比較は難しくなります。独自条件で経過を追う場合は、開始角度と測定部位を記録し、標準的なFRTとは区別してください。

Q. FRTだけで転倒リスクを判断できますか?

A. FRTだけでは判断できません。FRTは固定した支持基底面での前方リーチを捉える評価です。転倒歴、歩行、筋力、認知機能、薬剤、循環応答、環境などを含めて評価します。

次の一手

評価方法の全体像から整理する:評価ハブ

目的に合うバランス評価を選ぶ:歩行・バランス評価ガイド


参考文献

  1. Duncan PW, Weiner DK, Chandler J, Studenski S. Functional reach: a new clinical measure of balance. J Gerontol. 1990;45(6):M192-M197. doi:10.1093/geronj/45.6.M192. PubMed
  2. Weiner DK, Duncan PW, Chandler J, Studenski SA. Functional reach: a marker of physical frailty. J Am Geriatr Soc. 1992;40(3):203-207. doi:10.1111/j.1532-5415.1992.tb02068.x. PubMed
  3. Thomas JI, Lane JV. A pilot study to explore the predictive validity of 4 measures of falls risk in frail elderly patients. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(8):1636-1640. doi:10.1016/j.apmr.2005.03.004. PubMed
  4. Dibble LE, Lange M. Predicting falls in individuals with Parkinson disease: a reconsideration of clinical balance measures. J Neurol Phys Ther. 2006;30(2):60-67. doi:10.1097/01.NPT.0000282560.61909.8d. PubMed
  5. Bohannon RW, Wolfson LI, White WB. Functional Reach Test: reference values and clinically relevant changes from a systematic review. J Geriatr Phys Ther. 2017;40(1):36-42. doi:10.1519/JPT.0000000000000083. PubMed
  6. Ferreira S, Raimundo A, Marmeleira J, et al. Test-retest reliability of the functional reach test and the hand grip strength test in older adults using nursing home services. Ir J Med Sci. 2021;190:1587-1594. doi:10.1007/s11845-020-02492-0. PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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