10m歩行テストの評価方法|測り方・計算・カットオフ・MCID/MDC

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10m歩行テスト(10MWT)の評価方法|測り方・計算・カットオフ

10MWTは、測定距離だけでなく「助走・開始判定・指示文・採用方法」をそろえると、再評価で比較できる数字になります。

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関連:10m歩行テストと6分間歩行テストの違い

10m歩行テスト(10 Meter Walk Test:10MWT)は、一定距離の歩行時間を測定し、歩行速度(m/s)を算出する評価です。移動能力の把握、地域歩行レベルの検討、介入前後や入退院時の変化確認などに使用されます。

測定自体は短時間で行えますが、助走距離、開始・停止のタイミング、至適歩行と最大歩行の指示、試行回数、補助具などが異なると、前回値との単純比較が難しくなります。

この記事では、院内で統一しやすい方法として、助走2m → 計測10m → 減速2mのコースを中心に、測定手順、歩行速度の計算方法、カットオフ、MCID・MDC、記録方法までを整理します。

評価結果を、記録・解釈・再評価までつなげたい方へ

臨床評価の進め方や、学びやすい職場環境を整理するための情報をまとめています。

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10m歩行テストのやり方|最初に押さえる5項目

10MWTを再評価で比較するには、次の5項目を固定します。測定方法を変えた場合は、数値だけでなく条件変更も記録してください。

10m歩行テストで比較できる記録を残すための3条件。コース、測り方、靴・補助具・介助量・路面などの測定条件を固定する
コース、測り方、測定条件をそろえると、前回からの変化を比較しやすくなります。
10m歩行テストの基本条件
項目 この記事で採用する方法 記録する内容
コース 助走2m → 計測10m → 減速2m 各区間の距離、床面
開始・停止 先行足が開始線・終了線を越えた瞬間 足部の判定基準
速度条件 至適歩行と最大歩行を分けて測定 指示文、実施した速度条件
試行回数 各2回を測定し、平均値を算出 各試行の時間、有効・無効
測定条件 靴、装具、補助具、介助量、声かけを統一 前回からの条件変更

10m歩行テスト記録シート|入力用Excel・印刷用PDF

10MWTでは、歩行時間だけでなく、助走距離、靴、装具、補助具、介助量、速度条件なども記録しておく必要があります。再評価で同じ条件を再現できるように、評価・再評価記録シートを用意しました。

Excel版では、各試行の時間を入力すると、平均時間と歩行速度が自動計算されます。前回の歩行速度を入力すると、今回との差も確認できます。印刷して手書きする場合はPDF版を使用してください。

10m歩行テスト 評価・再評価記録シート

パソコン入力にはExcel版、印刷して手書きする場合はPDF版をご利用ください。

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  • 至適歩行と最大歩行をそれぞれ2回記録できます。
  • 平均時間と歩行速度(m/s)を自動計算できます。
  • 前回値を入力すると、歩行速度の変化量を確認できます。
  • 助走・計測・減速距離、靴、装具、補助具、介助量を記録できます。
  • 無効試行、症状、中止理由、所見、次回確認を残せます。

図解|10m歩行テストのコース設定

10m歩行テストの助走2m、計測10m、減速2mと歩行速度の計算方法をまとめた図
助走2m、計測10m、減速2mの区間を固定し、開始線から終了線までの時間を測定します。

助走区間は、静止状態から歩き始めた直後の加速の影響を減らし、計測区間内で通常の歩行速度に近づけるために設けます。減速区間は、終了線の手前で対象者が減速することを防ぐために設けます。

歩行路の長さや助走距離には複数の方法があります。異なるプロトコルを混在させず、施設内で採用した方法を記録し、再評価でも同じ条件を使用することが重要です。

10m歩行テストの測定手順

準備・コース設定

10m歩行テストの準備項目
項目 設定 記録時の注意
歩行路 平坦で滑りにくい直線路 床材や実施場所を記録する
全長 助走2m+計測10m+減速2mの合計14m 距離を変更した場合は明記する
計測線 計測開始線と終了線を床テープで表示 足部のどこで通過を判断するか統一する
計測機器 ストップウォッチ 同じ測定方法を使用する
履物 普段使用している靴を基本とする 裸足、靴、装具の条件を記録する
補助具 日常的に使用している物品は使用可能 杖、歩行器、装具の種類を記録する
安全確保 必要に応じて近接見守りを行う 身体介助が入った場合は条件変更として残す

測定の流れ

  1. 対象者にコースと測定方法を説明します。
  2. 靴、装具、補助具、介助量を確認します。
  3. 助走区間の開始位置に立ってもらいます。
  4. 至適歩行では「いつもの速さで歩いてください」と伝えます。
  5. 先行足が計測開始線を越えた瞬間に計測を開始します。
  6. 先行足が計測終了線を越えた瞬間に計測を停止します。
  7. 終了線を越えたあとも減速区間まで歩いてもらいます。
  8. 必要な休息を取り、同じ条件で2回目を測定します。
  9. 最大歩行を測定する場合は、十分な安全確認後に同様の手順で実施します。
  10. 各速度条件の2回の時間から平均値を算出します。

対象者への指示文

至適歩行

「普段歩いている、いつもの速さで歩いてください。終了線を過ぎても、そのまま先まで歩いてください。」

最大歩行

「安全に気をつけながら、できるだけ速く歩いてください。終了線を過ぎても、そのまま先まで歩いてください。」

測定中の励ましや声かけが試行ごとに異なると、歩行速度へ影響する可能性があります。指示文と声かけの範囲を施設内で統一してください。

歩行速度の計算方法

歩行速度は、計測距離を所要時間で割って算出します。10m区間を測定した場合は、次の計算になります。

歩行速度(m/s)= 10m ÷ 所要時間(秒)

10m歩行テストの計算例
所要時間 計算 歩行速度
20秒 10÷20 0.50m/s
15秒 10÷15 約0.67m/s
12.5秒 10÷12.5 0.80m/s
10秒 10÷10 1.00m/s
8秒 10÷8 1.25m/s

ストップウォッチで測定した時間だけを残すよりも、歩行速度へ換算しておくと、異なる時期の比較や研究値との照合がしやすくなります。

至適歩行と最大歩行の違い

至適歩行と最大歩行の使い分け
項目 至適歩行 最大歩行
指示 いつもの速さで歩く 安全な範囲でできるだけ速く歩く
主な意味 日常生活に近い歩行能力 歩行速度の予備能力
活用場面 移動能力や地域歩行レベルの検討 能力上限や介入余地の検討
注意点 普段より速く歩かないよう指示を統一する 転倒、疼痛、循環・呼吸状態に注意する

最大歩行はすべての対象者に必須ではありません。転倒リスクが高い、疼痛や息切れが強い、循環動態が不安定などの場合は、至適歩行のみを測定し、その理由を記録します。

結果の解釈|カットオフ・MCID・MDC

10MWTの結果は、現在の歩行能力を層別化する視点と、前回からの変化が意味のあるものかを判断する視点に分けて考えます。

歩行速度0.4m/s・0.8m/sの目安

脳卒中後の歩行速度については、地域歩行能力を検討する目安として、0.4m/sと0.8m/sを用いた分類が広く知られています。

脳卒中後の歩行速度と地域歩行レベルの目安
歩行速度 歩行レベルの目安 臨床で確認すること
<0.40m/s 家屋内歩行が中心 介助量、移動の安全性、家屋環境
0.40〜0.79m/s 限定的な地域歩行 屋外距離、段差、横断歩道、持久性
0.80m/s以上 地域歩行に近いレベル 混雑、方向転換、二重課題、長距離移動

この分類は脳卒中者を対象とした報告に基づく目安です。歩行速度だけで実際の外出可否を決めず、歩行距離、転倒歴、認知機能、環境、交通状況なども合わせて判断してください。

MCIDとMDCの違い

MCIDとMDCの基本的な違い
指標 意味 臨床での使い方
MCID 対象者にとって意味があると考えられる最小変化量 生活目標や患者報告と合わせて変化の価値を考える
MDC 測定誤差を超えたと考えられる最小変化量 前回との差が測定誤差の範囲を超えたか確認する

高齢者の身体機能指標では、歩行速度の変化について、おおむね0.05m/sを小さな意味のある変化、0.10m/sを大きな意味のある変化として扱う報告があります。ただし、対象集団や測定方法によって異なるため、すべての患者へ一律に適用する値ではありません。

脳卒中後では、病期、初回歩行速度、使用したプロトコルによってMCIDやMDCが異なります。疾患別の値を使用する場合は、対象者と測定方法が参考文献の条件に近いか確認してください。

脳卒中後の10MWTにおける変化量の報告例
対象・条件 報告例 解釈上の注意
脳卒中発症後早期 MCIDとして約0.16m/sの報告 病期や初期速度によって意味が変わる
至適速度<0.40m/s MDC約0.05m/sの報告 低速群では環境や介助条件の影響も確認する
至適速度0.40〜0.80m/s MDC約0.11m/sの報告 測定条件をそろえたうえで変化を判断する
至適速度>0.80m/s MDC約0.21m/sの報告 初回速度が速い群では必要な変化量も大きくなる

解釈の順番:まず測定条件が同じかを確認し、次に測定誤差を超えた変化かを検討し、最後に生活場面で意味のある変化かを確認します。

10m歩行テストで記録する項目

カルテや評価表には、歩行速度だけでなく、数値を再現するための測定条件も記載します。

10MWTの最小記録セット
項目 記録内容 記載例
コース条件 助走、計測、減速距離 助走2m・計測10m・減速2m
速度条件 至適歩行または最大歩行 至適歩行
履物・装具 靴、裸足、装具の種類 運動靴、短下肢装具あり
補助具 杖、歩行器など T字杖使用
介助量 自立、見守り、身体介助 近接見守り、身体接触なし
試行結果 各試行時間、平均時間、歩行速度 12.8秒・12.4秒、平均12.6秒、0.79m/s
症状・所見 疼痛、息切れ、疲労、ふらつき、歩容 後半に右立脚時間短縮あり
条件変更 前回から変わった項目 前回は四点杖、今回はT字杖

記録例

10MWT:助走2m・計測10m・減速2m。至適歩行、運動靴、短下肢装具・T字杖使用、近接見守りで実施。1回目12.8秒、2回目12.4秒、平均12.6秒、歩行速度0.79m/s。接触介助なし。後半に右立脚時間短縮を認めた。次回も同条件で再評価する。

よくある測定ミスと対策

10m歩行テストがブレる原因
よくあるミス 起きる問題 対策 記録すること
助走なしで測定する 歩き始めの加速が結果に含まれる 助走区間を設け、毎回同じ距離にする 助走距離
開始・停止の判定が曖昧 検者によって時間が変わる 先行足が線を越えた瞬間など基準を固定する 使用した判定基準
終了線で止まるよう指示する 終了線の手前から減速する 終了線を越えて歩き続けるよう説明する 指示文
至適と最大を混同する 前回値と比較できない 速度条件を明記し、指示文を統一する 至適または最大
1回値と2回平均を比較する 採用方法の違いが結果へ影響する 試行回数と採用方法を固定する 各試行と平均値
補助具や靴が変わる 能力変化と条件差を区別できない 同条件で再評価し、変更時は明記する 補助具、靴、装具
強い励ましを加える 普段より速い歩行になる 試行中の声かけを統一する 特別な声かけの有無
疲労時に連続測定する 歩行能力より疲労の影響を測る 回復を確認してから次の試行を行う 休憩、疲労、息切れ

安全管理と中止の判断

最大歩行では速度を上げるため、至適歩行より転倒や症状増悪のリスクが高くなります。歩行自立度だけでなく、疼痛、循環・呼吸状態、認知機能、指示理解を確認してください。

10MWTの中止・変更を検討する状態
観察項目 中止・変更の目安 対応
バランス 著明なふらつき、転倒回避介助が必要 測定を中止し、介助条件を記録する
疼痛 疼痛増悪、歩容の著明な変化 休憩または中止し、症状を確認する
呼吸・循環 強い息切れ、胸部症状、気分不良 中止して必要な評価を行う
疲労 歩行継続困難、試行間で回復しない 試行回数を減らし、理由を記録する
指示理解 速度条件やコースを理解できない 説明・実演後に実施可否を再判断する

結果をリハビリへつなげる方法

歩行速度が遅いという結果だけでは、介入内容は決まりません。時間とともに歩数、歩容、補助具、症状を観察し、速度を制限している要因を考えます。

  • 歩数が多い:歩幅、立脚時間、推進力、恐怖心を確認する
  • 後半に減速する:持久性、疼痛、呼吸苦、集中力を確認する
  • 至適と最大の差が小さい:歩行速度の予備能力や安全性を確認する
  • 補助具変更で速くなる:安定性と効率の両面から補助具を再検討する
  • 速度は改善したが歩容が崩れる:速度だけでなく安全性と運動パターンを評価する
  • 数値が改善しても外出が増えない:持久性、環境、転倒恐怖、社会的要因を確認する

歩行速度は移動能力の一側面です。持久性を確認する場合は6分間歩行テスト、方向転換や多方向ステップを確認する場合はTUGやFSSTなど、目的に応じて他の評価と組み合わせます。

よくある質問

各項目名をタップまたはクリックすると回答が開きます。

なぜ助走区間と減速区間を設けますか?

歩き始めの加速と、終了線手前での減速の影響を計測区間から減らすためです。助走距離には複数の方法がありますが、再評価では同じ方法を使用してください。

計測開始と停止はいつ押しますか?

この記事では、先行足が開始線を越えた瞬間に計測を開始し、先行足が終了線を越えた瞬間に停止します。足部のどこで通過を判定するかも施設内で統一してください。

10m歩行テストは何回測定しますか?

この記事では、至適歩行と最大歩行をそれぞれ2回測定し、平均値を採用します。1回しか実施できない場合は、疲労や疼痛などの理由を記録し、前回の平均値と単純比較しないようにします。

杖、歩行器、装具を使用してもよいですか?

普段の移動で使用している補助具や装具は使用できます。種類や条件を必ず記録し、再評価では同じ条件をそろえてください。

至適歩行と最大歩行はどちらを測定しますか?

日常生活に近い歩行能力をみる場合は至適歩行を使用します。歩行速度の予備能力をみる場合は最大歩行も測定します。転倒リスクや全身状態によっては、至適歩行のみで構いません。

0.8m/s以上なら屋外歩行自立と判断できますか?

0.8m/sは脳卒中後の地域歩行レベルを考える目安の一つですが、屋外歩行自立を単独で決める値ではありません。持久性、転倒歴、段差、認知機能、交通環境なども合わせて判断します。

MCIDとMDCはどう使い分けますか?

MDCは前回との差が測定誤差を超えたかを考える指標、MCIDはその変化が対象者にとって意味のあるものかを考える指標です。対象集団と測定方法に合った値を使用してください。

Excel版とPDF版はどう使い分けますか?

Excel版は、時間を入力して平均時間、歩行速度、前回との差を計算する場合に向いています。PDF版は印刷して手書きで記録する場合や、院内で配布する場合に使用できます。

まとめ

10m歩行テストは、10m区間の所要時間から歩行速度を算出し、移動能力や介入前後の変化を確認する評価です。

再評価で比較するには、助走・計測・減速距離、開始・停止基準、至適・最大の指示、試行回数、補助具、靴、装具、介助量を固定する必要があります。

歩行速度は、10mを所要時間で割って算出します。結果はカットオフだけで判断せず、測定条件、MCID・MDC、歩容、症状、実際の生活範囲と合わせて解釈してください。

測定条件と再評価結果をまとめて残す場合は、入力・編集用ExcelまたはA4印刷用PDFをご活用ください。

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参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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