頸部の整形外科テスト一覧|神経根症・TOSの選び方【PDF・Excel】

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頸部の整形外科テスト一覧|神経根症とTOSの選び方

頸部の整形外科テストは、1つの陽性所見だけで診断を決めるためのものではありません。上肢への放散痛やしびれがある場合は、まず頸椎神経根症を疑う所見を組み合わせ、その所見だけでは説明しにくいときにTOSや末梢神経障害、肩疾患などの鑑別へ進みます。

この記事では、Spurling、Distraction、ULTT 1、頸部回旋ROMを中心に、「最初に何を確認するか」「TOSを疑ったらどう進むか」「再評価で何を残すか」を整理します。各テストの細かな角度や手順ではなく、頸部〜上肢症状に対する評価の組み立て方を確認したいPT・OT向けの親記事です。記事と同じ流れで使えるPDF・Excel記録シートも用意しています。

まずはここから|頸部〜上肢症状の評価を組み立てる

最初に決めるのは「どの特殊テストをするか」ではなく、症状が頸部神経根由来らしいのか、別の原因も考える必要があるのかです。初回評価では必要な所見を組み合わせ、再評価では変化を追いやすい1〜3項目へ絞ります。

頸部から上肢症状の評価フロー。問診と安全確認、神経学的所見、神経根症の評価、TOSなどの鑑別、再評価の流れを示した図版
頸部〜上肢症状では、まず神経根症を整理し、説明しきれない場合にTOSや末梢神経障害、肩疾患などを検討します。
  1. 問診:頸部の動きで症状が変わるか、上肢挙上や腕の位置で変わるか、放散痛・しびれ・脱力があるかを確認する
  2. 安全確認:進行性の神経症状、脊髄障害、外傷、血管性病変などを疑う所見がないか確認する
  3. 神経学的所見:筋力、感覚、腱反射を確認し、神経根レベルとの整合を見る
  4. 神経根症を疑う:Spurling、Distraction、ULTT 1、患側頸部回旋ROMを組み合わせて読む
  5. 説明しきれない:TOS、末梢神経障害、肩疾患など別の要因を鑑別する
  6. 再評価:症状の部位・質と、変化を追いやすい1〜3項目を固定する

「初回から1〜3個しか行わない」という意味ではありません。初回は診断仮説を整理するために必要な所見を確認し、その後の再評価では介入による変化を追いやすい項目へ絞る、という使い分けです。

特殊テストの前に確認したい安全所見

頸部〜上肢症状では、特殊テストより先に通常の筋骨格系評価として進めてよい症例かを確認します。重篤な病態が疑われる場合は、症状を強く誘発する特殊テストを追加することより、必要な医学的評価へつなぐことを優先します。

  • 新規または進行性の明らかな筋力低下がある
  • 歩行障害、バランス低下、手指巧緻動作低下など脊髄障害を疑う所見がある
  • 外傷後で骨折や不安定性が疑われる
  • 通常の筋骨格症状では説明しにくい全身症状がある
  • 腫脹、色調変化、循環障害を疑う症状など血管性病変の可能性がある

これらは特殊テストの陽性・陰性で除外するものではありません。問診と基本的な身体所見から疑い、必要に応じて医師への相談や追加評価を検討します。

頸部整形外科テストの記録シート|PDF・Excel

頸部テストは「陽性・陰性」だけでは、再評価時に何が変わったのか比較しにくくなります。そこで、今回の記事と同じ問診・安全確認 → 神経学的所見 → 神経根症4所見 → TOS補助所見 → 再評価の順番で記録できるA4記録シートを用意しました。

PDFは印刷して手書きするとき、Excelは院内や自分の運用に合わせて入力・編集したいときに使えます。初回評価ですべてを埋めることより、再評価で同じ条件を比較できるように残すことを優先してください。

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頸部の整形外科テスト一覧|目的から選ぶ

テスト名から選ぶのではなく、何を確認したいのかから選びます。特に頸椎神経根症では、単独テストではなく病歴・神経学的所見・複数テストの一致を確認することが重要です。

スマホでは表を横スクロールできます。

頸部〜上肢症状で使う代表的な評価と役割
確認したいこと 代表的な評価 見方 次に確認すること
神経根症を支持する誘発所見 Spurling 頸部局所痛だけでなく、患者が訴えている上肢への放散症状が再現するかを見る 筋力・感覚・腱反射、他のクラスタ所見
神経根症を支持する軽減所見 Distraction 頸椎牽引によって上肢の神経根性症状が軽減するかを見る Spurling、ULTT 1、回旋ROMとの一致
神経系の機械的感受性 ULTT 1 陰性所見は神経根症の可能性を下げる材料になる。陽性だけで神経根症とは決めない 症状再現、構造的鑑別、他の神経根症所見
神経根症クラスタの一所見 患側頸部回旋ROM 患側への頸部回旋が60°未満かをクラスタの一所見として確認する Spurling、Distraction、ULTT 1
神経原性TOSを疑う補助所見 EAST(Roos)など 上肢挙上・反復動作で普段の症状が再現するかを見る。陽性だけでTOSとは判断しない 病歴、鎖骨上部の所見、他疾患の除外

頸椎神経根症を疑うとき|4つの所見を組み合わせる

頸椎神経根症では、Spurling、Distraction、ULTT 1、患側頸部回旋60°未満という4所見を組み合わせて読む考え方があります。単独テストだけで判断せず、問診と筋力・感覚・腱反射などの神経学的所見との整合も確認します。

Wainnerらの研究では、テスト項目のクラスタは単一のテストより神経根症を示すうえで有用で、ULTT Aは除外方向で特に有用な所見でした。その後のレビューでも、病歴や他の身体所見と一致する場合にはSpurlingやDistractionの陽性、ULTTの陰性が診断推論に役立つ可能性が示されています。2026年には、同じ4所見を用いた臨床予測ルールの独立外部検証も報告されています。

神経根症を疑う4所見の役割

頸椎神経根症を疑う4所見と臨床での役割
所見 主な役割 確認するポイント
Spurling 症状誘発 患者が普段訴えている上肢症状と同じ質の放散症状が再現するか
Distraction 症状軽減 牽引によって上肢への放散症状が軽減するか
ULTT 1 神経系の機械的感受性 陰性なら神経根症の可能性を下げる材料になる
患側頸部回旋 可動域所見 患側への回旋が60°未満か

「3つ陽性だから確定」「1つ陰性だから否定」と機械的に判断するものではありません。複数所見が一致するほど診断推論の材料は増えますが、病歴や神経学的所見を含む事前確率と合わせて解釈します。

Spurlingの実施条件や陽性判定を詳しく確認したい場合は、Spurlingテストのやり方と解釈で整理しています。

TOSを疑うとき|Roos陽性だけで判断しない

TOS、とくに神経原性TOSでは、単一の誘発テストだけで診断を決めないことが重要です。EAST(Roos)などは症状を再現する誘発手技として使用されますが、臨床テスト単独の診断精度を支持するエビデンスは限定的です。

2024年のINTOS Workgroupによるコンセンサスでは、神経原性TOSの診断で病歴と身体診察を重視し、EASTと鎖骨上窩でのTinel signなどを誘発手技として使用することが推奨されています。つまり、EASTを「使わない」のではなく、病歴・局所所見・他疾患の検討と組み合わせる補助所見として扱います。

TOSを疑ったときの3段階

  1. 病歴を確認:上肢挙上や反復動作、腕の位置で症状が増悪するか、頸部だけでは説明しにくい症状かを見る
  2. 誘発所見を確認:EASTなどで普段の症状が再現するか、鎖骨上部の局所所見やTinel signなどを確認する
  3. 他疾患を再確認:頸椎神経根症、末梢神経障害、肩疾患などで説明できないかを検討し、必要に応じて医学的精査へつなぐ

EASTやAdsonなどの陽性だけでTOSと判断したり、複数の誘発テストを陽性にすること自体を目的にしたりしないことがポイントです。

また、上肢の腫脹、明らかな色調変化、冷感など血管系の異常を疑う症状が目立つ場合は、神経原性TOSと同じ評価だけで進めず、血管性病変を含めた医学的評価を優先します。

記録の型|陽性・陰性より「何がどう変わったか」を残す

再評価で重要なのは、テスト名と陽性・陰性だけではありません。どの条件で、どこに、どのような症状が出て、条件を解除するとどう変化したかを残すことで、初回評価と介入後を比較しやすくなります。

  • Spurling:右伸展・右側屈・軸圧で、普段と同じ右上肢放散症状を再現。解除で軽減
  • ULTT 1:肘伸展を含む検査肢位で前腕橈側に普段の症状を再現。構造的鑑別によって症状変化あり
  • Distraction:頸椎牽引で右上肢放散症状が軽減

さらに、特殊テストとは別に患者が困っている生活上の動作を1つ固定しておくと、検査所見の変化と実生活の変化を分けて追えます。今回の記録シートにも、生活上の困りと次の行動を記録する欄を設けています。

頸部テストで起きやすい4つの失敗

頸部テストの失敗は、テスト数が少ないことより、陽性所見の意味を広く取りすぎることで起こりやすくなります。初回評価と再評価の役割も分けて考えます。

スマホでは表を横スクロールできます。

頸部〜上肢症状の評価で起きやすい失敗と修正
失敗 何が起きる 修正
Spurlingで頸部痛が出れば陽性とする 局所痛まで神経根症として扱いやすい 患者が普段訴えている上肢への放散症状が再現するかを確認する
ULTT 1陽性だけで神経根症とする 神経系の機械的感受性と神経根症を混同する Spurling、Distraction、回旋ROM、神経学的所見と合わせる
Roos陽性だけでTOSとする 頸椎神経根症や他の上肢疾患との鑑別が不十分になる 病歴・局所所見・他疾患の検討を含めて判断する
初回からテストを1〜3個だけに限定する 診断仮説を整理するための所見が不足することがある 初回は必要所見を確認し、再評価時に変化を追う1〜3項目へ絞る

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

Spurlingが陰性なら、神経根症は否定できますか?

Spurling陰性だけでは否定できません。Spurlingは陽性所見が神経根症を支持する方向で使いやすい一方、除外にはULTT 1を含む他の所見や神経学的評価も合わせて判断します。

ULTT 1が陽性なら、神経根症ですか?

ULTT 1陽性だけで神経根症とは判断できません。神経系の機械的感受性を示す所見として捉え、患者の症状再現、Spurling、Distraction、頸部回旋ROM、筋力・感覚・腱反射などと合わせます。

神経根症クラスタは何個陽性なら診断できますか?

陽性数だけで診断を決める使い方は避けます。複数所見が一致すると神経根症の可能性を高める材料になりますが、病歴や神経学的所見を含む臨床推論の一部として使用します。

Roosが陽性ならTOSですか?

Roos(EAST)陽性だけではTOSとは判断できません。普段の症状を再現する誘発所見として使い、病歴、鎖骨上部の所見、頸椎神経根症や末梢神経障害など他疾患の可能性と合わせて評価します。

初回評価と再評価で同じテストを全部行う必要がありますか?

必ずしも必要ありません。初回は診断仮説を整理するために必要な所見を組み合わせ、再評価では介入による変化を追いやすい1〜3項目を同じ条件で確認すると比較しやすくなります。

PDFとExcelの記録シートはどう使い分けますか?

印刷して手書きする場合はPDF、入力内容を編集・保存しながら運用する場合はExcelが使いやすいです。どちらも評価項目は同じなので、施設や記録環境に合わせて選んでください。

次の一手

頸部の整形外科テストは、数を増やすほど診断が正確になるわけではありません。まず病歴と神経学的所見を確認し、神経根症を疑う所見を組み合わせる → 説明できなければ他の病態を鑑別する → 再評価項目を絞るという順番を固定してください。

  1. 頸部以外も含めた全体像を確認する:整形外科的テスト一覧(部位別ハブ)
  2. 神経系の評価を深掘りする:ULTT 1の手順と陽性判定

参考文献

  1. Wainner RS, Fritz JM, Irrgang JJ, et al. Reliability and diagnostic accuracy of the clinical examination and patient self-report measures for cervical radiculopathy. Spine. 2003;28(1):52-62. DOI: 10.1097/00007632-200301010-00014 / PubMed
  2. Rubinstein SM, Pool JJM, van Tulder MW, et al. A systematic review of the diagnostic accuracy of provocative tests of the neck for diagnosing cervical radiculopathy. Eur Spine J. 2007;16(3):307-319. DOI: 10.1007/s00586-006-0225-6 / PubMed
  3. Grondin F, Cook C, Hall T, et al. An independent validation of a clinical prediction rule for the diagnosis of cervical radiculopathy with radicular pain. Braz J Phys Ther. 2026;30(3):101581. DOI: 10.1016/j.bjpt.2026.101581 / PubMed
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  5. Chim H, Hagan RR; INTOS Workgroup. Consensus recommendations for neurogenic thoracic outlet syndrome from the INTOS Workgroup. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2024;12(8):e6107. DOI: 10.1097/GOX.0000000000006107 / PubMed
  6. Blanpied PR, Gross AR, Elliott JM, et al. Neck pain: revision 2017. J Orthop Sports Phys Ther. 2017;47(7):A1-A83. DOI: 10.2519/jospt.2017.0302

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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