周径から体積(容積)を推定する方法:区間固定でブレない浮腫モニタリング(結論)
周径を「点」から「体積」に変えると、増減の解釈が一気に楽になります。 評価 → 記録 → 再評価の流れを復習する( PT キャリアガイド #flow )
浮腫・腫脹は、周径が 1 点だけだと「どこが増えたのか」「全体として増えたのか」が読みづらいことがあります。そこで有効なのが、周径を複数点で測って体積(容積)を推定する方法(切頭円錐法)です。
結論としては、①区間(測る間隔)を固定し、②同じランドマークで周径を取るだけで、体積の増減が“再現性のある指標”になります。数式はあくまで裏方で、臨床の勝ち筋は運用の標準化です。
関連:評価スケールの全体像
評価の全体像(各領域の入口)は 評価ハブ にまとめています(本文内インライン内部リンクは本項のみ)。
体積推定が効く場面(周径だけだと迷うとき)
体積推定は「点の周径」では判断が割れやすい場面で特に役立ちます。
- 全体として増えた/減ったを 1 つの数値で残したい(介入前後の比較)
- 測定点が複数あり、どこを主指標にするか迷う
- リンパ浮腫や術後腫脹で、左右差の定量を共有したい
- 「周径は少し変わったが、全体としては?」を説明しやすくしたい
一方で、忙しい現場で毎回の測定点がブレると、体積もブレます。先に「測り方の標準化(区間固定)」を作るのが最優先です。
切頭円錐法(体積推定)の考え方:数式より “同じ区間”
四肢をいくつかの区間に分け、各区間を切頭円錐(台形の円錐)とみなして体積を足し合わせます。考え方はシンプルで、必要なのは区間の長さ( h )と、その区間の両端の周径( C1 / C2 )です。
- 周径から半径への換算:
r = C / ( 2π ) - 区間(切頭円錐)の体積:
V = ( πh / 3 ) × ( r1² + r2² + r1×r2 )
現場で大事なのは、式よりも「 h を毎回同じにする」ことです。間隔が変わると、体積は同じ足し算にならず比較が難しくなります。
区間長(測る間隔)は何 cm がいい?(結論:まず 4 cm )
結論としては、迷ったら 4 cm 間隔が標準です。時間を短くしたい場合は 8 cm や 12 cm を検討しますが、局所的な変化を拾いにくくなるリスクがあります。下肢リンパ浮腫では、 4 cm 間隔と 8 cm / 12 cm 間隔の比較(一致度・信頼性)を検討した報告もあります。
| 区間長 | メリット | 注意点 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 4 cm | 局所変化を拾いやすい/標準として使われやすい | 測定点が増え、時間がかかる | 導入期、悪化/改善の判定が重要な時期 |
| 8 cm | 時間短縮しつつ、全体の増減を追いやすい | 局所の腫脹中心を取りこぼす可能性 | 外来で反復、在宅で継続、マンパワーが限られる場面 |
| 12 cm | 最短で運用できる | 変化に鈍感になりやすい(局所変化の見落とし) | 粗く “全体の方向” だけ見たいとき(例:長期フォローの一部) |
現場の詰まりどころは「最初に間隔を決めないまま測り始める」ことです。まずは 4 cm か 8 cm のどちらかを固定し、同じ間隔を守るだけで比較が成立します。
測定の準備:ランドマークと条件を先に固定する
体積推定は、周径測定の “ブレ要因” を引き継ぎます。最低限、次の条件を毎回そろえてください。
| 項目 | 固定の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 時間帯 | 同じ時間帯(例:午前の介入前) | 日内変動(活動量・重力)で体積が動きます |
| 体位 | 仰臥位/座位などを固定 | 静水圧が変わり末梢に水分が移動します |
| 安静 | 測定前に 5〜10 分の安静 | 直前の歩行・運動で一時的に増減します |
| 圧迫条件 | 着衣・包帯の有無/外した場合は “外してからの時間” を記録 | 外した直後は値が大きく動くことがあります |
手順:体積推定を “運用” できる 6 ステップ
- 測定範囲を決める(例:足関節〜膝下、手関節〜肘など)。
- 起点のランドマークを決める(例:内果、橈骨茎状突起など)。
- 区間長( 4 cm / 8 cm )を決めて固定する。
- 起点から区間長ごとにマーキングし、各点で周径を測る。
- 各区間を切頭円錐として体積を計算し、合計体積を出す。
- 次回も同じ条件・同じ区間で測り、体積差( ΔV )を評価する。
コツは「点を増やす」より先に、起点と区間長を固定することです。ここが揃うと、同じ数値が “同じ意味” になります。
記録テンプレ(そのまま使える表)
体積推定は「周径の列」と「合計体積」を並べると、説明と引き継ぎがスムーズです。
| 日付 | 時間帯 | 体位 | 区間長 | 起点(ランドマーク) | 周径( cm ) | 合計体積( mL / cm³ ) | 所見メモ(圧痕・熱感・疼痛・圧迫) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ____/__/__ | 午前・午後 | 仰臥位・座位 | 4 cm / 8 cm | 例:内果 | 例: 0 cm=____.__ / 4 cm=____.__ / 8 cm=____.__ … | ____ | 例:圧痕 2+/包帯あり(外して 30 分後) |
| ____/__/__ | 午前・午後 | 仰臥位・座位 | 4 cm / 8 cm | (同上) | (同上) | ____ | 例:熱感なし/疼痛 NRS 2/離床後 |
現場では「周径の列が長くて見づらい」問題が起きます。その場合は、周径は別紙(または別行)に退避し、記録の主役を合計体積(と前回差)にすると運用が続きます。
よくある失敗と対策(OK / NG 早見)
| NG | 起きやすい問題 | OK(対策) |
|---|---|---|
| 区間長( 4 cm / 8 cm )が毎回違う | 体積が同じ土俵で比較できない | 初回に区間長を決め、以後は固定(変更したら “変更日” を明記) |
| 起点(ランドマーク)が曖昧 | 全点がズレて、体積差が誤差になる | 起点を骨指標で固定し、必要なら写真やスケッチで残す |
| メジャーの張力がバラバラ | 数 mm の差が積み上がり体積差が誇張される | 皮膚に接触まで、食い込みは NG / 2 回測って差が出るなら再測定 |
| 時間帯・体位が揃っていない | 日内変動で “改善/悪化” を誤解 | 可能な限り同条件。揃わない日は条件(離床後など)を必ず記録 |
| 局所の腫脹中心を外している | 周径は変化しているのに体積が動かない | 中心点を起点にする/中心 ± 10 cm を追加して追う |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 体積推定は、毎回計算しないと意味がない?
A. 毎回でなくても大丈夫です。まずは “同じ区間で周径を取る” 運用が成立するのが先です。慣れてきたら、介入前後や週 1 回など、必要な頻度で体積を計算すると、負担を増やさずに指標の価値を上げられます。
Q2. 4 cm と 8 cm 、どっちを選べばいい?
A. 導入期は 4 cm が無難です。時間がネックで継続できないなら 8 cm に落として “同条件で続ける” 方が強いです。変更する場合は、変更日を記録し、以後はその区間長で固定してください。
Q3. テープと機器( Perometer など )、どちらが良い?
A. 機器は再現性の面で有利になりやすい一方、導入コストがあります。テープ法でも、区間固定・張力固定・条件固定ができれば、臨床フォローとして十分に機能します。まずテープ法の標準化を作り、必要性が高い領域で機器を検討する流れが現実的です。
Q4. 体積が増えたとき、まず何を見直す?
A. まずは “条件の違い” を疑います(時間帯、離床直後、圧迫を外してすぐ等)。次に、熱感・疼痛・圧痕性などの所見と合わせて解釈してください。条件が揃っていて増加が続くなら、介入量や圧迫、活動量の調整、必要時の連携(相談)を検討します。
参考文献
- Lennihan R Jr, Mackereth M. Calculating volume changes in a swollen extremity from surface measurements. Am J Surg. 1973;126(5):649-652. doi:10.1016/S0002-9610(73)80014-5. DOI
- Sharkey AR, King SW, Kuo RY, et al. Measuring Limb Volume: Accuracy and Reliability of Tape Measurement Versus Perometer Measurement. Lymphat Res Biol. 2018;16(2):182-186. doi:10.1089/lrb.2017.0039. DOI
- Jönsson C, et al. Circumferential Measurements to Calculate Lower Limb Volume in Persons with Lymphedema: What Segment Length Is to Be Recommended? Lymphat Res Biol. 2023. doi:10.1089/lrb.2022.0032. DOI
- Tidhar D, Armer JM, Deutscher D, et al. Measurement Issues in Anthropometric Measures of Limb Volume Change in Persons at Risk for and Living with Lymphedema: A Reliability Study. J Pers Med. 2015;5(4):341-353. doi:10.3390/jpm5040341. DOI
- Hidding JT, Viehoff PB, Beurskens CHG, et al. Measurement Properties of Instruments for Measuring of Lymphedema: Systematic Review. Phys Ther. 2016;96(12):1965-1981. doi:10.2522/ptj.20150412. DOI
著者情報
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
体積推定は「条件固定 → 起点固定 → 区間固定 → 周径測定 → 体積合計 → 同条件で再評価」の順で回すと、浮腫・腫脹の増減を説明しやすくなります。迷ったら、まずは区間長( 4 cm / 8 cm )を決めて固定するところから始めてください。
現場の記録や整理が詰まりやすいときは、面談準備チェックと職場評価シートをまとめた /mynavi-medical/#download も一緒に整えると、行動が止まりにくくなります。

