腎機能の見方|BUN・Cr・eGFRを新人PT向けに解説

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結論|BUN・Cr・eGFRだけでリハビリの可否は決めません

BUN・Cr・eGFRを確認したときに重要なのは、「高い・低い」で運動負荷を決めることではありません。新人PTは、急性の変化か慢性的な低下か、筋肉量の影響はないか、尿量・体液量・血圧・症状・電解質などに変化がないかを順に確認します。

特にeGFR低値だけを理由に一律に運動を制限する考え方は適切ではありません。この記事では、BUN・Cr・eGFRの意味と限界、急性腎障害(AKI)を疑う変化、サルコペニア・長期臥床患者での注意点、リハビリ前に次に確認する項目まで、新人PT向けに整理します。

最初に押さえるポイント
  • eGFRが低いだけで運動中止とは判断しない
  • 単発値より「いつから、どの程度変化したか」を確認する
  • Crは筋肉量の影響を受けるため、低値でも腎機能が良好とは限らない
  • 急なCr上昇や尿量低下では、eGFRの数字よりAKIの可能性を優先して考える
  • リハビリでは検査値と症状・バイタル・体液状態を合わせて確認する
BUN・Cr・eGFRを確認した後に、症状、バイタル、急性か慢性か、体液状態などを確認してリハビリ時の対応を整理する図
腎機能データを見た後の確認フロー。eGFRなどの検査値だけで運動可否を決めず、症状・循環動態・体液状態・経時変化を合わせて判断します。

腎機能データを見たら、まず「急性か慢性か」を確認します

腎機能データで最初に確認したいのは、数値の絶対値より時間軸です。同じeGFR 30 mL/min/1.73m²でも、以前から同程度で安定している患者と、数日前まで60だった患者では意味が異なります。

CKD(慢性腎臓病)は、腎臓の構造または機能の異常が3か月以上持続している状態として評価されます。一方、短期間でCrが上昇した場合や尿量が低下した場合は、AKIなど急性の変化を考える必要があります。[2], [3]

腎機能データを見たときの最初の整理
確認すること 見るポイント 次の行動
過去値 数日前・数週間前・数か月前のCr、eGFR 急な変化か、以前からの低値かを分ける
尿量 減少していないか、普段との差がないか 急性変化が疑われる場合は医療チームへ共有する
体液状態 浮腫、体重変化、口渇、摂取量、出納 脱水・体液過剰の可能性を他所見と照合する
全身状態 血圧、脈拍、呼吸、倦怠感、めまい、息切れ 検査値より臨床状態の変化を優先して対応する

2026年の腎臓リハビリテーション診療ガイドラインでは、非透析CKD患者にも運動療法が提案されています。短期的に運動療法が腎機能を悪化させる明確な証拠は示されておらず、CKDやeGFR低値そのものを「運動してはいけない理由」として扱わないことが重要です。実際の運動内容は、年齢、併存疾患、身体機能、循環動態、治療方針などを踏まえて個別に決めます。[1], [2]

BUN・Cr・eGFRの違い|「何を示すか」と「限界」を分けて見ます

BUN・Cr・eGFRはすべて腎機能評価で目にする指標ですが、同じ意味ではありません。新人PTは、各値を暗記するより、その値だけでは何が分からないのかまでセットで押さえると判断しやすくなります。

BUN・Cr・eGFRの見方と次に確認する項目
項目 主に見ること 解釈上の注意 次に確認すること
BUN 尿素窒素の血中濃度 腎機能だけでなく、脱水、蛋白摂取、異化亢進、消化管出血などの影響を受ける Cr、摂取量、尿量、体液状態、全身状態
Cr 糸球体濾過機能を推定するための代表的な指標 筋肉量、食事、薬剤などの影響を受ける。筋肉量が少ないと低く出やすい 前回値、変化した期間、筋肉量、尿量、薬剤
eGFR Crなどから推算した糸球体濾過量 「測定値」ではなく推定値。Crが不安定な急性期や筋肉量が極端な患者では誤差が大きくなる 過去のeGFR、Crの推移、筋肉量、尿所見、臨床状態

BUN高値だけで「脱水」と決めない

BUNは腎機能低下で上昇しますが、脱水、蛋白摂取量、異化亢進、消化管出血などでも変化します。そのため、BUN高値=脱水=運動負荷を下げると直結させないことが重要です。

口渇、食事・水分摂取量、尿量、体重変化、血圧、浮腫、Crなどを合わせて、何がBUN上昇に関与している可能性があるかを整理します。

Crは「値」と「変化量」の両方を見る

Crは腎機能評価で頻用されますが、正常範囲内かどうかだけでは十分ではありません。急性変化では、患者本人のベースラインからどれだけ変化したかが重要です。

たとえば、短期間にCrが0.6 mg/dLから0.9 mg/dLへ上昇した場合、0.9 mg/dLという数字だけを見ると目立たないことがあります。しかし、変化量は0.3 mg/dLであり、変化した時間によってはKDIGOのAKI定義に該当し得ます。[3]

eGFRは腎機能の「推定値」と理解する

eGFRはCKDの重症度を整理するうえで重要ですが、血清Crなどを用いて計算された推定値です。特にCrが短期間に変化している患者では、安定状態を前提とするeGFRの解釈に注意が必要です。[5]

したがって、リハビリ前にeGFRが前回より低下していても、まず「eGFRが何ポイント下がったか」だけで判断せず、元になったCrがいつ、どの程度変化したかを確認します。

eGFRの区分|低値の程度と慢性経過を分けて考えます

KDIGOでは、GFRをG1〜G5に分類します。ただし、1回のeGFRだけでCKDと判断するわけではありません。CKDでは3か月以上の持続性や、アルブミン尿など他の腎障害所見も含めて評価します。[2]

KDIGOによるGFRカテゴリー
カテゴリー eGFR(mL/min/1.73m²) 説明
G1 90以上 正常または高値
G2 60〜89 軽度低下
G3a 45〜59 軽度〜中等度低下
G3b 30〜44 中等度〜高度低下
G4 15〜29 高度低下
G5 15未満 腎不全

このカテゴリーはCKDの評価や予後予測に重要ですが、「G4だからリハビリ中止」のような運動可否の区分ではありません。同じG4でも、慢性的に安定して運動療法を継続している患者と、新たな循環不安定や急性腎障害を認める患者では対応が異なります。

急なCr上昇・尿量低下ではAKIの可能性を確認します

短期間で腎機能が変化している場合は、慢性CKDのステージよりも急性腎障害(AKI)の可能性を優先して確認します。

KDIGOでは、次のいずれかを満たす場合をAKIと定義しています。これはAKIを評価する医学的基準であり、そのままリハビリ中止基準を意味するものではありません。[3]

  • 48時間以内に血清Crが0.3 mg/dL以上上昇
  • 7日以内に血清Crが基礎値の1.5倍以上へ上昇
  • 尿量が0.5 mL/kg/時未満の状態が6時間以上持続

PTがAKIを診断するわけではありません。ただし、前回値と比較してこのような変化を認めた場合は、単に「eGFRが低い患者」として扱わず、いつから変化したのか、尿量や循環状態に変化がないかを確認し、医療チームへ共有することが重要です。

AKIが疑われるときの注意

急性期はCrが変化途中にあり、Crを用いたeGFRが実際の腎機能変化を正確に反映しにくい場合があります。eGFRの数字だけを追うのではなく、Crの時間的変化、尿量、循環・体液状態、治療内容を優先して確認します。

サルコペニア・長期臥床ではCr由来eGFRを過信しません

リハビリテーション領域で特に注意したいのが、筋肉量が少ない患者のCrとeGFRです。Crは筋肉由来の代謝産物であるため、長期臥床、るい痩、サルコペニア、四肢切断、脊髄損傷などではCrが低くなり、Crから計算するeGFRが実際より高く推算されることがあります。[2], [4]

つまり、「Crが低いから腎機能は良好」「eGFRが高いから問題ない」とは限りません。療養病棟や回復期など、筋肉量低下が目立つ患者では特に重要な視点です。

Cr由来eGFRの解釈に注意したい代表的な状況
状況 起こり得ること 確認したいこと
長期臥床・サルコペニア Cr低値、eGFRの過大評価 筋肉量、体重変化、過去の腎機能評価
四肢切断・脊髄損傷 筋肉量の違いによりCr由来推算値の精度が低下 他の腎機能指標や医師の評価
筋肉量が大きく増減した時期 Cr変化を腎機能変化と誤認する可能性 身体組成の変化、経時的な検査値
極端な栄養状態 Crを含む推算値の解釈が難しくなる 栄養状態、炎症、全身状態

KDIGO 2024では、筋肉量などCrに影響する非GFR要因が大きい状況で、シスタチンCやCr+シスタチンCを用いたeGFRなど、別の評価方法を検討する考え方が示されています。日本心臓リハビリテーション学会と日本腎臓リハビリテーション学会も、骨格筋量低値患者や運動療法実施患者でCr由来eGFRを解釈する際の注意を示しています。[2], [4]

腎機能値が変化していたら、次に6項目を確認します

BUN・Cr・eGFRの変化を認めたときは、腎機能データだけを見続けるのではなく、尿量・体液・循環・症状・電解質・治療内容へ確認範囲を広げます。

腎機能データ異常時にPTが次に確認したい項目
確認項目 具体例 確認する理由
1. 尿量 普段との差、減少、無尿に近い変化 急性腎障害や体液管理の変化を考える手がかりになる
2. 体液状態 浮腫、体重増減、口渇、摂取量、出納 脱水・体液過剰の両方を考える
3. 循環・呼吸 血圧、脈拍、呼吸数、SpO2、起立時変化 腎機能値より優先して対応すべき不安定性がないか確認する
4. 自覚・他覚症状 倦怠感、めまい、悪心、食欲低下、息切れ、意識変化 全身状態の悪化を検査値と照合する
5. 電解質 K、Na、Caなど 腎機能低下に伴う電解質異常が運動時リスクへ影響することがある
6. 治療・薬剤 補液、利尿薬、降圧薬、腎機能に影響する薬剤、透析予定 検査値変化の背景と当日の治療方針を確認する

特にKなどの電解質異常がある場合は、腎機能値とは別にリスクを評価する必要があります。Na・K・Caの読み方は、電解質異常の見方|新人PT向けNa・K・Caで整理しています。

リハビリへの反映|腎機能値ではなく「臨床状態の変化」で考えます

リハビリ前の判断では、eGFRやCrに独自のカットオフ値を設けて「実施・軽負荷・中止」と機械的に分けるのではなく、腎機能の経過と当日の臨床状態を統合することが重要です。

腎機能データをリハビリへ反映するときの考え方
状況 考え方 PTが確認すること
慢性的にeGFRが低いが状態は安定 eGFR低値だけを理由に一律に運動を制限しない 主治医方針、循環状態、身体機能、症状、普段の運動耐容能
短期間でCrが上昇 急性変化の可能性を考え、単独で負荷量を決めない 変化した期間、尿量、体液状態、治療内容、医療チームの評価
尿量減少や浮腫増悪を伴う 体液管理や急性腎障害を含めた評価を優先する 出納、体重、呼吸状態、血圧、医師・看護師からの情報
めまい・血圧低下・呼吸苦などを認める 腎機能値とは別に、症状と循環・呼吸状態を理由として介入を中断・再評価する バイタル再確認、安静時への回復、院内基準に沿った報告
筋肉量が著しく少ない Cr・eGFRが腎機能を正確に反映していない可能性を考える 身体組成、長期経過、シスタチンCなど他の評価の有無

重要なのは、「腎機能値が悪いから止める」のではなく、「何が変化していて、患者の状態にどのような影響が出ているか」を説明できることです。急性変化や全身状態の悪化を認める場合は、院内基準や医師の指示に従い、負荷を進める前に報告・相談します。

記録例|検査値・時間軸・併存所見・対応を残します

腎機能に関する記録では、BUN・Cr・eGFRの数字を並べるだけでは、なぜその対応を選んだのかが伝わりません。「どの値が、いつから、どのように変化し、他に何を認め、どう対応したか」を残すと再評価につながります。

腎機能データを確認したときの記録例
場面 記録例
慢性低下・状態安定 eGFRは慢性的に低値で前回から大きな変化なし。安静時血圧・脈拍・呼吸状態は安定し、浮腫・倦怠感の増悪なし。主治医方針を確認し、症状を観察しながら予定プログラムを実施した。
Crの急な上昇 前回採血と比較してCr上昇を認める。尿量について看護記録を確認し、当日の摂取量・血圧・浮腫の変化を確認。急性変化の可能性を考え、負荷を進める前に看護師へ情報共有した。
筋肉量低下あり 長期臥床および筋萎縮が目立つ。Cr低値・eGFR高値であるが、筋肉量の影響を受ける可能性があるため単独では判断せず、過去値および他の腎機能評価を確認した。
全身状態が変化 腎機能悪化傾向に加え、起立時めまい・血圧低下を認めたため運動を中断。臥位で再評価し、症状・バイタルと検査値の経過を看護師へ報告した。

記録では「腎機能低下のため中止」のような一文だけではなく、判断につながった具体的な所見を残すことが重要です。

よくある質問

Q1. eGFRが30未満ならリハビリは中止ですか?

A. eGFR 30未満だけを理由に一律に中止する基準ではありません。慢性的な腎機能低下なのか、急性変化なのかを確認し、症状、循環・呼吸状態、体液状態、治療方針を合わせて判断します。安定したCKD患者では、個別化した運動療法が推奨・提案されています。

Q2. Crが正常範囲なら腎機能は問題ないと考えてよいですか?

A. Crは筋肉量の影響を受けるため、特にサルコペニア、長期臥床、るい痩などでは低値となり、腎機能を良好に見せることがあります。患者本人の過去値や筋肉量、eGFR、必要に応じて他の腎機能評価を確認します。

Q3. BUNが高ければ脱水と考えてよいですか?

A. BUN高値だけでは脱水とは判断できません。腎機能低下のほか、蛋白摂取、異化亢進、消化管出血などでも変化します。摂取量、尿量、体重、血圧、浮腫、Crなどと合わせて解釈します。

次の一手|検査値を「運動可否」ではなく「次の確認」につなげます

BUN・Cr・eGFRを見たら、まず単発値だけで結論を出さず、過去値との比較→急性か慢性か→筋肉量の影響→尿量・体液・症状・電解質の順に確認してみてください。腎機能データをリハビリへ活かすポイントは、数値そのものから運動負荷を決めることではなく、患者に何が起きている可能性があるかを整理し、必要な確認・報告へつなげることです。

血液検査全体の確認順から整理したい場合は、生化学検査値の見方|新人PT向け血液検査データ総論をご覧ください。


参考文献

  1. Hoshino J, Sofue T, Usui T, et al. Executive summary of the clinical practice guideline for renal rehabilitation 2026: systematic reviews and recommendations of exercise therapies, nutritional therapies, and multidisciplinary care in patients with chronic kidney diseases. Ren Replace Ther. 2026;12:68. doi: 10.1186/s41100-026-00759-3
  2. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117-S314. doi: 10.1016/j.kint.2023.10.018
  3. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney Int Suppl. 2012;2(1):1-138. KDIGO公式PDF
  4. 日本心臓リハビリテーション学会, 日本腎臓リハビリテーション学会. 日本心臓リハビリテーション学会・日本腎臓リハビリテーション学会からの共同ステートメント:骨格筋量低値患者または運動療法実施患者における推定糸球体濾過量(eGFR)による腎機能評価について. 2018. 学会公式ページ
  5. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Clinical Measurements & eGFR Accuracy. Updated May 2025. NIDDK公式ページ

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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