- 結論|腎機能は eGFR だけでなく、症状・循環・推移で運動負荷を決めます
- 5 分フロー|腎機能低下時は「症状→バイタル→推移→区分→記録」で判断します
- 早見表|BUN・Cr・eGFR は「意味」より「当日の反映」をそろえます
- 当日判断テンプレ|通常・軽負荷・延期の 3 区分で記録します
- 中止・相談トリガー|止めどころを先に決めると安全です
- 現場の詰まりどころ|数値暗記より「確認順」と「相談の型」が重要です
- よくある失敗|eGFR だけで運動負荷を決めてしまう
- 記録の型|腎機能低下時は「所見・判断・変更点・相談」を残します
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|まずは 1 週間、3 区分判断で申し送りをそろえます
- 参考文献
- 著者情報
結論|腎機能は eGFR だけでなく、症状・循環・推移で運動負荷を決めます
BUN・Cr・eGFR は、新人 PT が「運動してよいか」「軽くするべきか」「今日は止めるべきか」で迷いやすい検査項目です。結論からいうと、腎機能の数値だけで介入可否を決めるのではなく、血圧・脈拍・呼吸状態・浮腫・尿量・倦怠感などの臨床所見と、検査値の推移を合わせて判断します。
この記事では、腎機能低下がある患者さんに対して、当日のリハビリを「通常」「軽負荷」「延期」の 3 区分で整理する方法を解説します。新人 PT・OT・ST が申し送りしやすいように、5 分フロー、早見表、中止・相談トリガー、記録例までまとめます。
5 分フロー|腎機能低下時は「症状→バイタル→推移→区分→記録」で判断します
腎機能低下時の判断は、検査値を見る前に全身状態を確認すると安定します。eGFR の低さだけで中止にするのではなく、倦怠感、息切れ、めまい、浮腫、尿量変化、起立時の血圧変動があるかを確認し、その後に BUN・Cr・eGFR の推移を見ます。
迷ったときは、通常実施に寄せるよりも「軽負荷」または「延期+相談」に切り替えます。判断順を固定すると、経験年数に関係なく報告の質が揃いやすくなります。

- 症状を確認する:倦怠感、息切れ、めまい、食欲低下、浮腫、尿量変化
- バイタルを再測定する:血圧、心拍数、SpO2、呼吸数、起立時変化
- BUN・Cr・eGFR の推移を見る:前回比、急変、主治医指示との整合
- 当日介入を 3 区分で決める:通常、軽負荷、延期
- 判断理由と相談内容を記録する:所見、負荷量、変更点、報告先
早見表|BUN・Cr・eGFR は「意味」より「当日の反映」をそろえます
新人教育では、腎機能の病態を深く説明する前に、各指標を当日のリハビリ判断へどうつなげるかを統一することが重要です。施設の運動制限基準や主治医指示がある場合は、必ずそちらを優先します。
以下の表では、BUN・Cr・eGFR を「何を疑うか」「何を確認するか」「どう負荷調整するか」に絞って整理します。
| 項目 | 主に見ること | 実務で確認する点 | 当日の反映 |
|---|---|---|---|
| BUN | 脱水、代謝、食事、全身状態の影響 | 口渇、尿量、食事量、発熱、倦怠感 | 脱水疑いがあれば軽負荷、補液や指示を確認 |
| Cr | 腎機能変化、急性悪化の可能性 | 前回値との差、急上昇、薬剤変更、尿量変化 | 急変時は延期を含め安全側に判断 |
| eGFR | 腎機能の推定値、慢性低下の程度 | 長期トレンド、急性増悪、症状との一致 | 低値だけで中止せず、症状ありなら負荷調整 |
当日判断テンプレ|通常・軽負荷・延期の 3 区分で記録します
腎機能低下時は、判断を「実施する/しない」の 2 択にすると迷いやすくなります。実務では、通常、軽負荷、延期の 3 区分に分けると、負荷量の調整と記録がしやすくなります。
| 区分 | 判断の目安 | 実施の要点 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 通常 | 症状なし、循環安定、急変トレンドなし | 通常プログラムを実施し、途中で自覚症状を確認 | 腎機能低下はあるが全身状態安定。通常負荷で実施。 |
| 軽負荷 | 倦怠感、浮腫、軽度の血圧変動など注意所見あり | 時間・強度・立位量を下げ、途中再評価を増やす | Cr 上昇傾向と倦怠感あり。軽負荷へ変更し、症状増悪なし。 |
| 延期 | 循環不安定、症状増悪、急性悪化疑い、説明困難な所見あり | 介入を見合わせ、安静確保、速やかに報告 | 起立時ふらつきと血圧低下あり。本日延期し看護師・主治医へ報告。 |
中止・相談トリガー|止めどころを先に決めると安全です
腎機能の場面では、検査値そのものより「介入中に何が起きたら止めるか」を共有しておくことが重要です。中止・相談トリガーを決めておくと、新人でも安全側へ切り替えやすくなります。
| トリガー | 観察ポイント | 次アクション |
|---|---|---|
| 循環が不安定 | 起立時の血圧低下、頻脈の持続、冷汗、めまい | 中止、安静、バイタル再測定、報告 |
| 呼吸状態が悪化 | 息切れ増悪、SpO2 低下、会話困難、呼吸数増加 | 中止、姿勢調整、呼吸状態確認、相談 |
| 体液所見が急変 | 浮腫増悪、尿量変化、急な体重増加の訴え | 軽負荷または延期、看護師・主治医へ確認 |
| 腎機能の急性悪化疑い | Cr 急上昇、BUN 上昇と脱水徴候、前回比での急変 | 延期を含め安全側に判断し、指示を確認 |
| 判断を説明できない | 症状、検査値、バイタルの整合が取れない | 単独判断せず、軽負荷または延期で相談 |
現場の詰まりどころ|数値暗記より「確認順」と「相談の型」が重要です
腎機能低下時に詰まる原因は、BUN・Cr・eGFR の意味を知らないことだけではありません。多くは、確認順が毎回変わること、止めどころが決まっていないこと、相談時に何を伝えるかが整理できていないことです。
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- 相談内容を短文化するなら:離床中止時の SBAR 記録テンプレ
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よくある失敗|eGFR だけで運動負荷を決めてしまう
新人が陥りやすい失敗は、eGFR の数値だけを見て、通常実施・中止・延期を機械的に決めてしまうことです。腎機能は慢性低下と急性悪化で意味が異なるため、症状、循環動態、検査値の推移を合わせて判断します。
| NG パターン | 起きる理由 | 改善策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| eGFR のみで判断する | 全身所見を確認する前に数値だけを見る | 症状、バイタル、検査推移の順で確認する | 症状と循環所見を必ず併記 |
| 単発値で判断する | 前回値との比較が抜ける | 前回比、数日間の推移、急変の有無を見る | 前回値との差を短く記載 |
| 相談が遅れる | 中止・相談トリガーが決まっていない | 延期基準をチームで共有する | 相談時刻、相談先、返答を残す |
記録の型|腎機能低下時は「所見・判断・変更点・相談」を残します
記録では、検査値を並べるだけでなく、リハビリ判断にどう反映したかを残すことが大切です。次の担当者が同じ判断を再現できるように、症状、バイタル、検査値の推移、介入区分、相談内容を 1 セットで記載します。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 通常実施 | eGFR 低下はあるが、倦怠感・息切れなく、血圧・SpO2 安定。腎機能の急変トレンドなし。通常負荷で実施し、症状増悪なし。 |
| 軽負荷へ変更 | Cr 上昇傾向に加え、倦怠感あり。起立時血圧変動は軽度。立位練習量を減らし、座位中心の軽負荷で実施。終了後症状増悪なし。 |
| 延期・相談 | 起立時めまいと血圧低下あり。腎機能悪化傾向もあり、本日のリハビリは延期。看護師へ報告し、主治医指示確認を依頼。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. eGFR が低い患者さんは、必ず運動制限が必要ですか?
A. 必ずしも一律の運動制限にはなりません。慢性的に eGFR が低い場合でも、症状がなく循環動態が安定していれば、主治医指示の範囲で通常または軽負荷の介入を検討します。
Q2. Cr が前回より上がっていたら中止すべきですか?
A. Cr 上昇だけで即中止とは限りません。ただし、尿量変化、倦怠感、脱水徴候、血圧不安定などを伴う場合は、延期を含めて安全側に判断し、速やかに相談します。
Q3. 腎機能低下時の軽負荷では何を調整しますか?
A. 時間、強度、立位量、連続運動時間を下げます。途中で血圧、脈拍、SpO2、自覚症状を再確認し、変化があれば中止・相談へ切り替えます。
Q4. BUN が高いときは何を疑いますか?
A. 腎機能だけでなく、脱水、食事量、発熱、全身状態の影響も考えます。口渇、尿量、皮膚・粘膜、血圧変動、倦怠感を合わせて確認します。
Q5. 記録には何を残すと申し送りしやすいですか?
A. 「症状、バイタル、BUN・Cr・eGFR の推移、当日の判断区分、負荷変更、相談先」を残すと、次担当者が判断を引き継ぎやすくなります。
次の一手|まずは 1 週間、3 区分判断で申し送りをそろえます
今日からは、腎機能低下がある症例で「症状→バイタル→検査推移→通常/軽負荷/延期→記録」の順番を固定してください。チーム内で判断区分がそろうと、新人の報告が短くなり、安全側への切り替えも速くなります。
続けて読む:生化学検査値ガイド(総論) / 電解質異常の介入判断
参考文献
- KDIGO CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117-S314. doi: 10.1016/j.kint.2023.10.018
- Yamagata K, Hoshino J, Sugiyama H, et al. Clinical practice guideline for renal rehabilitation: systematic reviews and recommendations of exercise therapies in patients with kidney diseases. Ren Replace Ther. 2019;5:28. doi: 10.1186/s41100-019-0209-8
- Battaglia Y, Baciga F, Bulighin F, et al. Physical activity and exercise in chronic kidney disease: consensus statements from the Physical Exercise Working Group of the Italian Society of Nephrology. J Nephrol. 2024;37(7):1735-1765. doi: 10.1007/s40620-024-02049-9
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


