ロンベルグ試験とは?やり方・陽性の意味|小脳性失調との違い

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ロンベルグ試験は「開眼では保てるが、閉眼すると著明に崩れるか」をみます

ロンベルグ試験(Romberg test)は、両足をそろえた立位で開眼と閉眼の姿勢保持を比較する神経学的なベッドサイド検査です。開眼では立位を保てるのに、閉眼すると動揺が著明に増える、踏み出す、転倒しそうになる場合はロンベルグ徴候陽性を考えます。

古典的なロンベルグ試験では、特に深部感覚の障害による感覚性失調を考える手掛かりになります。ただし、「閉眼で揺れた=後索障害」「揺れた方向=前庭障害の患側」と単独で決める検査ではありません。

この記事では、ロンベルグ試験のやり方、陽性の意味、何秒みるか、小脳性失調との違い、前庭障害との関係、陽性後に追加する評価、カルテ記録例まで整理します。ポイントは、陽性・陰性で終わらず、次に何を確認するかまでつなげることです。

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ロンベルグ試験とは?視覚を外したときの姿勢保持の変化を確認します

立位姿勢の保持には、主に視覚、体性感覚、前庭感覚から得られる情報が使われます。ロンベルグ試験では、開眼で立位を確認したあとに閉眼し、視覚による代償を使いにくくしたときに姿勢保持がどの程度変化するかを観察します。[1-3]

深部感覚が低下していても、開眼中は視覚を使うことで身体の位置を補正し、立位を保てる場合があります。しかし閉眼すると視覚による代償が使えなくなり、身体動揺や踏み出しが急に増えることがあります。

そのため、古典的なロンベルグ徴候は、後索障害や大径感覚線維を障害する末梢神経障害などを含む感覚性失調を考える手掛かりとして利用されてきました。[1,2,5]

ロンベルグ試験を理解するための3つの感覚入力
感覚入力 立位保持での役割 ロンベルグ試験での考え方
視覚 身体と周囲の位置関係を把握する 閉眼によって視覚による代償を使いにくくする
体性感覚・固有感覚 足底からの入力や関節位置、身体の動きを把握する 感覚性失調では閉眼によって不安定さが表面化しやすい
前庭感覚 頭部運動や重力に対する情報を提供する 姿勢保持に関与するが、古典的ロンベルグ試験だけで前庭障害を特定しない

ロンベルグ試験のやり方|まず開眼で安全に立てるか確認します

ロンベルグ試験では、いきなり閉眼させるのではなく、まず開眼で閉脚立位を安全に保てることを確認してから閉眼へ進むことが基本です。

ロンベルグ試験の基本的な実施手順
手順 実施内容 観察するポイント
1 安全な場所で両足をそろえて立つ 足位、履物、装具、支持物の有無を確認する
2 上肢位置を決め、開眼で保持する 身体動揺、踏み出し、介助の必要性を確認する
3 安全を確保して閉眼する 開眼時より動揺がどの程度増えるかを比較する
4 著明な動揺・踏み出し・転倒傾向があれば中止する 破綻までの時間、動揺、踏み出し、介助量を確認する
5 開眼と閉眼の差を整理する 陽性・陰性だけで終わらず追加評価につなげる

足位、上肢位置、履物、観察時間などには複数の実施方法があります。経過を追う場合は、一度採用した条件を次回もそろえることが重要です。条件が変わると、患者の変化なのか手技の違いなのか判断しにくくなります。

また、開眼の時点で閉脚立位を安全に保てない場合は、無理に閉眼へ進みません。その時点での立位能力を記録し、他のバランス評価や原因評価へ切り替えます。

ロンベルグ試験は何秒?30秒は正常・異常の絶対基準ではありません

ロンベルグ試験では「何秒できれば正常か」が疑問になりやすいですが、30秒保持できれば正常、30秒未満なら異常という統一されたカットオフがあるわけではありません。

実施方法によって30秒や60秒など異なる観察時間が用いられており、ロンベルグ試験には足位や上肢位置を含めた手技上のばらつきもあります。[1,2] そのため、時間だけで陽性・陰性を判定するのではなく、開眼と閉眼の差を中心に解釈します。

30秒の考え方:30秒は臨床で採用できる観察時間の一例です。「30秒=正常値」ではありません。同じ患者を再評価する場合は、採用した観察時間をそろえて比較します。

例えば「開眼30秒は安定して保持できたが、閉眼後10秒で動揺が著明に増え踏み出した」という記録であれば、30秒という数字そのものよりも、視覚を外したことで姿勢保持が明らかに悪化したことに意味があります。

ロンベルグ陽性とは?開眼で保てて閉眼で著明に崩れる状態です

典型的なロンベルグ徴候陽性は、開眼では閉脚立位を保てるものの、閉眼すると著明に動揺する、踏み出す、または転倒しそうになる状態です。[1,2]

閉眼すると健常者でも身体動揺はある程度増えます。そのため、「閉眼したら少し揺れた」という所見だけで陽性と決めるのではなく、開眼時と比較して明らかな増悪があるか、支持基底面を保てなくなったか、転倒防止の介助が必要になったかを確認します。

開眼と閉眼の組み合わせからみたロンベルグ試験の解釈
開眼 閉眼 考え方
安定 大きな変化なし 典型的なロンベルグ徴候は認めにくい
安定 著明に悪化する ロンベルグ陽性を考え、まず深部感覚を追加評価する
開眼から不安定 閉眼でも不安定 典型的ロンベルグ陽性と単純に扱わず、小脳・前庭・筋力・疼痛など他の要因を確認する
開眼で保持困難 実施しない 安全を優先し、閉眼条件へ進まず別の評価へ切り替える

なお、ロンベルグ陰性であっても神経疾患やバランス障害そのものを否定できるわけではありません。ロンベルグ試験は、神経学的診察全体の一部として解釈します。[5]

ロンベルグ試験は陽性後の「次の一手」までつなげます

臨床で重要なのは「ロンベルグ陽性だった」で終わることではありません。開眼と閉眼の差を手掛かりに、次に確認すべき所見を絞るところまで進めます。

ロンベルグ試験の判定フロー。閉脚立位で開眼を確認し、閉眼時の変化からロンベルグ陽性を判断し、深部感覚・神経学的所見・歩行評価、小脳・前庭などの追加評価へ進む流れを示している。
ロンベルグ試験の見方。開眼と閉眼の差から、深部感覚・小脳・前庭など次に確認する評価へつなげます。図中の約30秒は運用例であり、絶対的な正常基準ではありません。
ロンベルグ試験から次の評価へ進む流れ
確認 所見 次の一手
1.開眼 閉脚立位を安全に保てる 閉眼条件へ進む
2.閉眼 動揺が著明に増える、踏み出す、転倒傾向が出る ロンベルグ陽性を検討する
3.深部感覚 位置覚・振動覚などに異常がある 感覚性失調を考え、神経学的所見を追加する
4.その他 感覚所見だけでは説明しにくい 小脳、前庭、筋力、疼痛、薬剤、注意・認知などを追加評価する

この順序で考えると、「閉眼で崩れたから前庭障害」「開眼から不安定だから小脳障害」と早い段階で原因を決めつけにくくなります。

ロンベルグ陽性なら、まず位置覚・振動覚など深部感覚を確認します

典型的なロンベルグ徴候がみられた場合は、まず関節位置覚や振動覚などの深部感覚を確認します。感覚性失調では、身体や関節の位置に関する情報が低下しているため、視覚を利用できる開眼では姿勢を補正できても、閉眼すると不安定さが増えやすくなります。

ロンベルグ陽性後に確認したい所見
評価 確認する内容 結果の使い方
関節位置覚 足趾や足関節などの位置・運動方向を識別できるか 深部感覚障害の有無を確認する
振動覚 骨突出部などで振動刺激を認識できるか 後索系や大径感覚線維の障害を考える材料にする
表在感覚 触覚などの左右差や遠位優位の感覚低下を確認する 感覚障害の分布を整理する
腱反射 低下・消失・亢進などを確認する 末梢神経や脊髄を含む神経学的所見と合わせる
歩行 歩隔、足部接地、方向転換、視覚依存性などを確認する 静止立位以外での失調を確認する

ただし、近年の研究でもロンベルグ試験単独の診断的な識別能力には限界が示されており、神経学的診察全体の中で解釈することが重要です。[5]

ロンベルグ試験と小脳性失調の違い|開眼時から不安定かを確認します

ロンベルグ試験は、小脳機能そのものを評価する検査というより、感覚性失調とその他の失調を整理する手掛かりとして理解すると分かりやすくなります。

感覚性失調では視覚による代償が働くため、開眼では比較的立位を保てても、閉眼によって著明に悪化することがあります。一方、小脳性失調では視覚だけで十分に補うことができず、開眼時から立位や体幹が不安定な場合があります。[2,4]

感覚性失調と小脳性失調の見方
確認項目 感覚性失調 小脳性失調
開眼立位 視覚で代償し比較的保てることがある 開眼時から不安定なことがある
閉眼による変化 著明に悪化しやすい 閉眼による追加の悪化が主所見とは限らない
感覚所見 位置覚・振動覚低下などを伴うことがある 感覚障害だけでは説明しにくい
追加評価 深部感覚、反射、歩行など 四肢協調運動、体幹、眼球運動、構音、歩行など

ただし、「開眼から不安定=小脳性失調」と断定することはできません。下肢筋力低下、疼痛、前庭障害、薬剤の影響、注意・認知機能、恐怖心などでも開眼立位は不安定になります。

小脳性失調を疑う場合は、指鼻試験、踵膝試験、反復拮抗運動、眼球運動、体幹失調、歩行などを組み合わせて評価します。[4]

前庭障害でも閉眼で悪化しますが、ロンベルグ試験単独では判断しません

姿勢保持には前庭感覚も関与するため、前庭障害でも閉眼によって立位が不安定になることがあります。しかし、硬く安定した床面で行う古典的ロンベルグ試験だけで、前庭障害の有無や障害側を特定することはできません。[3]

特に、硬い床での閉眼立位では足底・固有感覚からの入力を利用できます。一方、フォームなどの不安定な床面で閉眼すると、体性感覚からの情報も利用しにくくなり、前庭入力への依存度が高まります。[3]

前庭障害を考えるときの注意:ロンベルグ試験で身体が揺れた方向や踏み出した方向だけから、前庭障害の患側を決めないようにします。方向は観察所見として記録し、めまい、眼振、頭位との関係など他の所見と合わせて判断します。

前庭系の関与を疑う場合は、症状や目的に応じて眼振、頭位変換による症状、Head Impulse Testなどを追加し、ロンベルグ試験単独ではなく総合的に評価します。

安全管理|開眼で保てない場合は閉眼へ進みません

ロンベルグ試験は道具をほとんど必要としませんが、閉眼立位を行うため転倒リスクがあります。決めた時間まで立たせ続けることより、必要な所見を得た時点で安全に中止することを優先します。

ロンベルグ試験の中止・実施変更の目安
状況 対応 記録する内容
開眼から強いふらつきがある 無理に閉眼へ進まない 開眼での保持状況、動揺、介助量
閉眼後に踏み出し・転倒傾向が出る その時点で中止し身体を支持する 破綻までの時間、方向、介助量
めまい・悪心などが出現する 継続せず症状を確認する 症状、発症時点、関連する所見
強い恐怖心がある 無理に閉眼させない 実施困難となった理由

評価者は患者がバランスを崩したときにすぐ支持できる位置で見守り、周囲の障害物を除いて実施します。介助を行った場合は、その時点で保持時間だけを延ばすのではなく、介助を要したこと自体を結果として記録します。

カルテは「条件・開眼・閉眼・破綻様式・次の評価」を残します

ロンベルグ試験を「陽性」「陰性」だけで記載すると、あとからどのような状態だったのか分かりにくくなります。再評価につなげるには、実施条件、開眼・閉眼の状態、破綻様式、介助量、次に確認する評価をセットで残します。

ロンベルグ試験で残したい記録項目
項目 記録する内容 記載例
条件 足位、上肢位置、履物、装具 閉脚立位、上肢体側、裸足
開眼 保持時間、身体動揺、介助 開眼30秒保持、著明な動揺なし
閉眼 保持時間、動揺増大、踏み出し 閉眼10秒で左右動揺増大、右後方へ踏み出し
安全 介助量、症状、中止理由 軽介助で転倒予防、めまいなし
次の評価 追加する神経学的評価 足趾位置覚・振動覚を追加確認

カルテ記載例:閉脚立位、上肢体側、裸足で実施。開眼30秒保持可能、著明な動揺なし。閉眼10秒で左右動揺が著明に増大し右後方への踏み出しあり。軽介助で転倒予防。開眼・閉眼差が明確でありロンベルグ陽性を考える。足趾位置覚・振動覚を追加評価する。

この記録例の「30秒」は採用した観察時間を示したものであり、30秒保持できたこと自体を正常判定の根拠にしているわけではありません。

ロンベルグ試験のよくある質問

ロンベルグ試験は何秒できれば正常ですか?

特定の時間だけで正常・異常を決める統一されたカットオフはありません。30秒や60秒など複数の実施方法があります。採用した時間を記録し、開眼と閉眼の差、踏み出し、転倒傾向などを合わせて判断します。

閉眼すると少し揺れるだけでもロンベルグ陽性ですか?

閉眼すると身体動揺はある程度増えるため、少し揺れただけで直ちに陽性とはしません。開眼では保てていた立位が閉眼によって著明に悪化する、踏み出す、転倒しそうになるなど、明確な開眼・閉眼差があるかを確認します。

ロンベルグ陽性なら後索障害ですか?

後索を含む深部感覚系の障害は重要な原因ですが、ロンベルグ試験単独で障害部位を確定することはできません。末梢神経障害や前庭障害などでも異常となる可能性があるため、位置覚、振動覚、感覚障害の分布、反射、歩行などを追加して判断します。

ロンベルグ試験で小脳性失調は分かりますか?

ロンベルグ試験だけで小脳性失調を診断することはできません。小脳性失調では開眼時から不安定な場合があります。指鼻試験、踵膝試験、反復拮抗運動、眼球運動、体幹、歩行などを組み合わせて評価します。

前庭障害でもロンベルグ陽性になりますか?

前庭障害でも閉眼によって不安定さが増える場合があります。ただし、硬い床面で行う古典的ロンベルグ試験だけで前庭障害を特定することはできません。めまい、眼振、頭位との関係などを確認し、必要に応じて前庭機能評価を追加します。

開眼から立位が不安定な場合はどうしますか?

開眼で閉脚立位を安全に保てない場合は、無理に閉眼へ進みません。この場合は典型的なロンベルグ陽性・陰性の判定より、開眼時から不安定になる原因を評価することを優先します。

次の一手

ロンベルグ試験で「開眼は保てるが閉眼で崩れる」という所見を確認できたら、陽性・陰性の記録だけで終わらず、位置覚・振動覚などの深部感覚へ進みます。一方、開眼から不安定な場合や感覚所見だけで説明しにくい場合は、小脳、前庭、筋力、疼痛など別の要因を整理します。

閉脚立位より支持基底面を狭くした条件で静的バランスをみたい場合は、マン試験のやり方と判定もあわせて確認してください。


参考文献

  1. Forbes Kaprive J, Munakomi S, Cronovich HA. Romberg Test. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. Updated 2023 Aug 13. PMID: 33085334. PubMed / NCBI Bookshelf.
  2. Khasnis A, Gokula RM. Romberg’s test. J Postgrad Med. 2003;49(2):169-172. PMID: 12867698. PubMed.
  3. Halmágyi GM, Curthoys IS. Vestibular contributions to the Romberg test: testing semicircular canal and otolith function. Eur J Neurol. 2021;28(9):3211-3219. doi:10.1111/ene.14942. PubMed.
  4. Radmard S, Zesiewicz TA, Kuo SH. Evaluation of cerebellar ataxic patients. Neurol Clin. 2023;41(1):21-44. doi:10.1016/j.ncl.2022.05.002. PubMed.
  5. Anagnostou E, Kouvli M, Karagianni E, Gamvroula A, Kalamatianos T, Stranjalis G, et al. Romberg’s test revisited: changes in classical and advanced sway metrics in patients with pure sensory neuropathy. Neurophysiol Clin. 2024;54(5):102999. doi:10.1016/j.neucli.2024.102999. PubMed.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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