片脚立位テストは条件固定で読む静的バランス評価です
片脚立位(開眼)テストは、道具なしで実施できる静的バランス評価です。この記事では、測定条件、終了条件、左右どちらを採用するか、年齢別の目安、15 秒基準の読み方を、現場でそのまま使える形に整理します。
結論からいうと、片脚立位は「何秒立てたか」だけで判断せず、上肢位置、視線、靴・装具、終了理由、代償所見までそろえて記録することが重要です。再評価で比較できるように、施設内で条件と採用値ルールを固定して運用しましょう。
片脚立位の記録シート PDF を開く
片脚立位は、秒数だけでなく、測定条件・終了理由・代償所見をそろえて残すことで再評価に使いやすくなります。記事の内容に合わせて、A4 1 枚で使える記録シートを用意しました。
右支持・左支持の秒数、採用値ルール、靴・装具条件、終了理由、代償所見、再評価メモを 1 枚にまとめられる形式です。印刷して使用する場合は、評価前に施設内の採用値ルールを決めてから記入すると、比較しやすくなります。
片脚立位で決めるのは秒数・左右差・代償の 3 点です
片脚立位(開眼)テストは、片脚支持でどれだけ立位保持できるかを測る評価です。静的バランス、下肢支持性、姿勢制御の低下を簡便に把握でき、離床、歩行練習、転倒リスクのスクリーニング前後で使いやすい検査です。
ただし、秒数だけで「安全」「危険」と決めるのは不十分です。臨床では、左右差、終了理由、体幹側屈や膝ロックなどの代償、恐怖心や疼痛、靴・装具条件を合わせて読むことで、介入や環境調整につなげやすくなります。
やり方は上肢位置・視線・終了条件を先に固定します
測定前に、上肢位置、視線、足を上げる高さ、靴・装具の条件、上限時間を決めます。評価者は後方から側方に立ち、ふらついたときにすぐ支えられる位置で見守ります。
| 手順 | 実施内容 | 固定する条件 | 終了条件 |
|---|---|---|---|
| 1. 準備 | 両脚立位で姿勢を整える | 床面、靴・装具、上肢位置、視線 | 開始前にふらつきが強い場合は見送り |
| 2. 開始 | 片脚を床から離して計測する | 開眼、正面視、上限時間 | 遊脚が床につく、支持脚が動く、介助が必要 |
| 3. 左右測定 | 右支持・左支持を測定する | 左右の順番、試行回数、休息時間 | 上限到達、または安全確保が必要な状態 |
| 4. 記録 | 秒数と終了理由を残す | 採用値ルール、代償所見、介助量 | 条件変更時は別条件として記録 |
左右どちらを採用するかは、目的により変わります。リスク側を拾いたい場合は「短い方」、最大能力を見たい場合は「良い方」、介入前後の変化を追う場合は「左右の秒数を併記して同じ採用値ルール」を使います。
年齢別目安は判定ではなく説明の起点にします
日本整形外科学会が紹介している地域在住高齢者の調査では、開眼片脚起立時間の平均は 65 歳代 44 秒、70 歳代 31 秒、75 歳代 21 秒、80 歳代 11 秒とされています。対象集団や測定上限で値は変わるため、絶対的な合否判定ではなく、説明や再評価の目安として使います。
年齢別目安を見るときは、秒数に加えて「前回より条件は同じか」「左右差は広がっていないか」「代償が増えていないか」を確認します。とくに疼痛、恐怖心、足部変形、装具変更がある場合は、秒数だけで能力低下と決めつけないことが重要です。
| 年代 | 平均の目安 | 臨床での読み方 |
|---|---|---|
| 65 歳代 | 44 秒 | 比較的保持しやすい年代。左右差と代償の有無を見る |
| 70 歳代 | 31 秒 | 加齢変化が出やすい。前回値との変化を重視する |
| 75 歳代 | 21 秒 | 転倒群との差を意識し、歩行・TUG などと合わせて読む |
| 80 歳代 | 11 秒 | 短時間化しやすい。環境調整や介助条件も同時に検討する |
15 秒未満は単独診断ではなくリスク目安として扱います
開眼片脚起立 15 秒未満は、運動器不安定症の運動機能評価で使われる基準の 1 つです。ただし、運動器不安定症は運動器疾患の有無や日常生活自立度なども含めて判断されるため、片脚立位の秒数だけで診断するものではありません。
臨床では、15 秒未満を「転倒リスクや移動能力低下を疑う目安」として扱います。15 秒を下回った場合は、TUG、歩行速度、疼痛、足部・膝・股関節の状態、恐怖心、生活場面での転倒歴を合わせて確認し、介入や環境調整の優先度を決めます。
| 結果 | 読み方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 15 秒以上 | 一定の静的保持は可能 | 左右差、代償、歩行中のふらつき |
| 15 秒未満 | リスク側として追加評価を検討 | TUG、歩行速度、転倒歴、疼痛、恐怖心 |
| 測定不能 | 評価前の安全確保が優先 | 支持物、介助量、起立・立位保持の可否 |
現場の詰まりどころは測定条件と記録のズレです
片脚立位は簡便な一方で、条件が少し変わるだけで秒数が動きます。再評価で比較できない場合は、能力変化ではなく、上肢位置、靴・装具、視線、終了条件、採用値ルールが揃っていない可能性があります。
| よくある失敗 | 起きること | 対策 | 記録に残す項目 |
|---|---|---|---|
| 上肢位置が毎回違う | 秒数が上下しやすい | 腰当て、体側などを施設内で固定する | 上肢位置 |
| 視線が定まらない | 注意配分で揺れが変わる | 正面の目標物を見る条件にそろえる | 視線条件 |
| 靴・装具条件が混ざる | 前回値と比較できない | 同条件で測定し、変更時は別条件で残す | 靴、装具、裸足 |
| 終了理由を書かない | 何が制限因子か分からない | 遊脚接地、支持脚移動、介助などを明記する | 終了条件 |
| 代償を見逃す | 「できた」の質が分からない | 体幹側屈、膝ロック、上肢反応も観察する | 代償所見 |
ここまで条件を整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
記録テンプレは 6 項目に絞ると再評価しやすくなります
片脚立位の記録は、秒数だけでなく、条件と終了理由をセットで残すと再評価に使いやすくなります。最低限、採用値ルール、左右秒数、測定条件、終了条件、代償所見、安全面の 6 項目をそろえましょう。
| 記録項目 | 記載例 | 運用の要点 |
|---|---|---|
| 採用値ルール | 短い方を採用 | 施設内で固定する |
| 左右秒数 | 右 18 秒/左 12 秒(上限 60 秒) | 左右差を必ず残す |
| 測定条件 | 裸足、腰当て、正面視、開眼 | 再評価時に同じ条件へそろえる |
| 終了条件 | 左支持:遊脚接地で終了 | 秒数の制限因子を残す |
| 代償所見 | 左支持で体幹右側屈、膝ロックあり | 秒数と質をセットで読む |
| 安全面 | 近接見守り、介助不要 | 見守り・介助量・中止理由を残す |
記録例:開眼片脚立位:右 18 秒、左 12 秒。上限 60 秒。裸足、両手腰当て、正面視で実施。左支持では体幹右側屈と膝ロックあり、遊脚接地で終了。短い方を採用し、再評価時は同条件で実施予定。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
左右どちらの秒数を採用すればよいですか?
施設ルールを固定することが最優先です。リスク側を拾う目的なら「短い方」、最大能力を確認する目的なら「良い方」を採用します。どちらの場合も、左右の秒数は必ず併記してください。
15 秒未満なら運動器不安定症と判断してよいですか?
片脚立位だけで診断するものではありません。15 秒未満は運動機能評価の基準の 1 つとして扱い、運動器疾患の有無、日常生活自立度、TUG、歩行状態、転倒歴などと合わせて判断します。
上限時間は 60 秒と 120 秒のどちらがよいですか?
臨床現場でリスク把握と再評価を目的にする場合は、上限 60 秒でそろえると運用しやすいです。研究や施設基準で別の上限を使う場合は、毎回同じ上限で記録してください。
靴や装具をつけたまま測ってもよいですか?
目的によります。日常生活場面の安全性を見たい場合は普段の靴・装具条件で測る選択もあります。ただし、裸足・靴・装具の条件が混ざると比較できないため、条件は必ず記録してください。
秒数が伸びたらバランス改善と判断できますか?
秒数の改善は重要な変化ですが、代償が増えていないか、終了理由が変わっていないか、歩行や方向転換の安定性に反映されているかも確認します。片脚立位は単独ではなく、他の評価と組み合わせて解釈します。
次の一手
- 全体像を整理する:静的バランス評価の全体像
- 感覚条件も確認する:ロンベルグテストの手順と解釈
参考文献
- 日本整形外科学会. 運動器不安定症. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mads.html
- 日本整形外科学会. 「運動器不安定症」とは. https://www.joa.or.jp/public/locomo/mads.html
- Michikawa T, Nishiwaki Y, Takebayashi T, Toyama Y. One-leg standing test for elderly populations. J Orthop Sci. 2009;14(5):675-685. doi:10.1007/s00776-009-1371-6. PubMed
- Springer BA, Marin R, Cyhan T, Roberts H, Gill NW. Normative values for the unipedal stance test with eyes open and closed. J Geriatr Phys Ther. 2007;30(1):8-15. doi:10.1519/00139143-200704000-00003. PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


