遂行機能障害ドリル初級 10 問|OT が 20 分で回す記録シート付き
遂行機能障害ドリルは、課題を増やすより「どの要素を見たい課題か」を固定すると、評価と介入を整理しやすくなります。本記事では、OT が現場で回しやすい初級 10 問を、目標設定・計画・実行・自己修正の 4 要素で整理しました。
初回は 10 問すべてを実施するより、4〜6 問を同条件で反復し、完遂率・脱線回数・自己修正回数を比較します。この記事では、初級 10 問の選び方、20 分での運用、採点、中級へ進む判断までを一連で確認できます。
この記事で決めること
この記事で決めることは、「どの初級課題を選び、何を記録し、いつ中級へ進むか」です。対象は、遂行機能障害が疑われる患者に対して、評価〜介入〜記録を同じ流れで回したい OT です。
一方で、神経心理学的検査の詳細や高難度の生活課題は深掘りしません。全体像は 遂行機能障害ドリル総論、負荷を上げた課題は中級記事へ分けて整理しています。
20 分で回す標準手順
初級 10 問は、「目標設定 → 課題選択 → 実施 → 振り返り」を 20 分で回すと比較しやすくなります。毎回課題を変えるより、支援量・制約・時間を固定する方が、変化を説明しやすくなります。
| 手順 | 内容 | 目安時間 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 本日の主目標を 1 つ決める | 2 分 | 目標の具体性 |
| 2 | 初級 10 問から 4〜6 問を選ぶ | 1 分 | 要素の偏り |
| 3 | 同条件で実施する | 12〜15 分 | 完遂率・脱線・自己修正 |
| 4 | 振り返りと次回調整を記録する | 2〜3 分 | 負荷を上げる条件/戻す条件 |
遂行機能障害ドリル初級 10 問
初級 10 問は、目標設定・計画・実行・自己修正の 4 要素で整理します。初回は苦手要素を広く探すより、主問題に近い要素を 1〜2 個に絞ると、比較しやすい記録になります。

| No. | 要素 | 設問・課題 | 合格目安 | 観察ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 目標設定 | 「今日 10 分で達成すること」を 1 文で書く | 目的・条件・到達点を含む | 目標の具体性 |
| 2 | 目標設定 | 3 つの候補目標から優先度 1 位を選び、理由を述べる | 理由が課題に一致する | 選択根拠の妥当性 |
| 3 | 計画 | 5 手順カードを正しい順に並べる | 4/5 以上正答 | 順序づけの安定性 |
| 4 | 計画 | 同じ作業を「急ぐ日/丁寧な日」で 2 通り計画する | 条件に合わせて手順変更できる | 柔軟な計画変更 |
| 5 | 計画 | 10 分以内で終えるために、先に行う 3 手順を選ぶ | 優先順位が妥当 | 時間配分の見立て |
| 6 | 実行 | 計画どおりに 6 手順を実施する | 完遂率 80% 以上 | 開始遅延・脱線回数 |
| 7 | 実行 | 軽い割り込み 1 回後に元手順へ復帰する | 1 分以内に復帰 | 復帰の速さ |
| 8 | 実行 | 時間・順序の 2 制約を守って課題を完遂する | 制約違反 1 回以内 | 制約下の安定性 |
| 9 | 自己修正 | 実施後チェック表で自分のミスを 2 つ挙げる | ミス同定 2 件以上 | 気づきの質 |
| 10 | 自己修正 | 次回の再発予防策を 1 つ決めて実行計画を書く | 具体策と実行場面を明記 | 修正の実行可能性 |
採点は 0〜2 点でそろえる
採点は複雑にせず、各設問を 0〜2 点で評価します。総得点だけで判断せず、どの要素で失点したかを優先して確認してください。
| 点数 | 基準 | 次回調整 |
|---|---|---|
| 0 | 実施困難、または課題が成立しない | 支援を増やす/条件を易しくする |
| 1 | 部分達成。支援があれば成立する | 同条件で反復する |
| 2 | 自立して達成できる | 軽度に負荷を上げる |
中級へ進む判断
中級へ進む目安は、主対象要素で 2 点が安定し、自己修正が自発的に出ていることです。完遂率だけで進級すると、支援依存が残ったまま難易度だけ上がることがあります。
崩れた場合は、手順数を減らす、制約を 1 つ外す、割り込みを除くなど、条件を 1 段階戻します。複数条件を同時に変えると、何が影響したか判断しにくくなります。
| 指標 | 中級へ進む目安 | 未到達時の対応 |
|---|---|---|
| 完遂率 | 80% 以上が 2 回連続 | 手順数を減らして反復 |
| 脱線回数 | 1 回以内で安定 | 刺激量・制約を調整 |
| 自己修正 | 自発修正が 1 回以上 | チェック表支援を追加 |
初級 10 問 記録シート
初級 10 問の記録は、同じシートでそろえると比較しやすくなります。採点だけでなく、完遂率・脱線・自己修正を同形式で残すと、次回の負荷調整を説明しやすくなります。
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現場の詰まりどころ
- ページ内:よくある失敗
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- 関連:遂行機能障害ドリル総論
最も多い詰まりは、課題を増やしすぎて比較不能になることです。初級段階では、少数課題を同条件で反復し、支援量・制約・時間をそろえて比較する方が、変化を説明しやすくなります。
次に多いのは、完遂率だけを見て自己修正を見落とすことです。遂行機能障害では、ミスに気づいて戻れるかが生活場面への汎化に関わります。脱線回数と自己修正回数を固定して残してください。
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よくある失敗
初級ドリルで失敗しやすい場面は、課題そのものより運用条件のぶれにあります。次の表で、原因と対策を先に固定しておくと、担当者が変わっても記録を比較しやすくなります。
| 失敗 | 理由 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 主目標を複数設定する | 評価軸が拡散する | 1 セッション 1 目標に限定する | 本日の主目標 |
| 課題を毎回変更する | 比較条件が崩れる | 同課題を 2〜3 回反復する | 同条件実施の有無 |
| 支援を入れすぎる | 完遂率だけ高く見える | 自己修正を待つ時間を確保する | 自発修正の回数 |
| 中級へ早く進める | 判定基準が曖昧になる | 完遂率・脱線・自己修正で判断する | 進級理由の明記 |
記録の型
記録は、課題名だけでなく「条件・支援量・脱線・自己修正・次回調整」を残すと、次回の比較に使いやすくなります。以下の型を使うと、初級から中級への判断も説明しやすくなります。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 条件 | 初級 No. 1・3・6・9 を実施。制限時間 15 分、口頭支援は開始時のみ。 |
| 結果 | 完遂率 75%。No. 6 で手順逸脱 1 回、No. 9 でミス 1 件を自己同定。 |
| 解釈 | 計画の順序づけは成立するが、実行中の脱線後に自己修正が遅れる。 |
| 次回 | 同条件で反復し、No. 9 のチェック表を先に提示して自己修正の自発化を確認する。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 10 問を毎回すべて実施すべきですか?
毎回すべて行う必要はありません。初回は 4〜6 問に絞り、同条件で 2〜3 回反復して変化を比較する方が実務では使いやすくなります。
Q2. どの設問から始めるとよいですか?
開始遅延や目的の曖昧さが目立つ場合は No. 1〜3、実施中の脱線が目立つ場合は No. 6〜8、振り返りが弱い場合は No. 9〜10 を優先します。
Q3. 記憶障害が強い患者にも使えますか?
使えますが、主症状の切り分けが先です。記憶障害が主因で手順保持が難しい場合は、遂行機能の課題として扱いすぎず、外的補助や手順提示を調整してください。
Q4. 改善が見えない場合はどうしますか?
課題を増やす前に、手順数・制約・支援量・時間のどれか 1 つだけを調整し、再度同条件で比較してください。
Q5. 中級 10 問との違いは何ですか?
初級は目標設定・計画・実行・自己修正の基本要素を確認する段階です。中級は割り込み、複数制約、時間圧を加え、生活場面に近い崩れ方を確認します。
次の一手
初級 10 問の運用が安定したら、総論で型を確認し、中級 10 問で割り込み・制約・自己修正の負荷を 1 つずつ上げていきます。
参考文献
- Cicerone KD, Goldin Y, Ganci K, et al. Evidence-Based Cognitive Rehabilitation: Systematic Review of the Literature From 2009 Through 2014. Arch Phys Med Rehabil. 2019;100(8):1515-1533. doi: 10.1016/j.apmr.2019.02.011 / PubMed: 30926291
- Jeffay E, Ponsford J, Harnett A, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part III: Executive Functions. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):52-64. doi: 10.1097/HTR.0000000000000834 / PubMed: 36594859
- Fishman KN, Ashbaugh AR, Swartz RH. Goal Setting Improves Cognitive Performance in a Randomized Trial of Chronic Stroke Survivors. Stroke. 2021;52(2):458-470. doi: 10.1161/STROKEAHA.120.032131 / PubMed: 33467876
- Skidmore ER, Holm MB, Whyte EM, et al. The feasibility of meta-cognitive strategy training in acute inpatient stroke rehabilitation: case report. Neuropsychol Rehabil. 2011;21(2):208-223. doi: 10.1080/09602011.2011.552559 / PubMed: 21391121
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


