結論|MRI は「シーケンスの意味」を最小限おさえ、所見を当日判断へ翻訳するのが先です
MRI の学習で新人が止まりやすいのは、用語を覚えることが目的化してしまう点です。臨床では、画像の精密さそのものより「いまの患者に何が起きていて、当日介入をどう調整するか」を判断できることが価値になります。本記事は、PT・OT・ST が実務で使いやすい MRI 読影の最小フレームを整理します。
まずは「どのシーケンスで、どの所見を、どのリスク判断につなぐか」を固定してください。画像読影の全体フローは 新人向け画像読影ガイド、モダリティの選択基準は X 線・CT・MRI の使い分け比較 で確認できます。
新人が最初に確認する 5 点|MRI 読影の入口
最初に見るべき順番を統一すると、報告の質と介入判断の再現性が上がります。ここでは、詳細な神経放射線学ではなく、臨床カンファでそのまま使える確認順に絞ります。部署で同じ順番を使うことが、教育の最短ルートです。
確認順は、①撮像情報、②病変の局在、③時系列(急性/亜急性/慢性の示唆)、④臨床症状との整合、⑤当日介入の可否です。特に⑤まで言語化できるかが、読影を実務に変える分岐点になります。
- 撮像日・シーケンス・比較画像の有無を確認する
- 病変の局在(どこに、どの程度)を把握する
- 急性変化を疑う所見の有無を確認する
- 神経症状・バイタルと矛盾がないかを見る
- 当日介入を「通常 / 軽負荷 / 延期」で決める
シーケンス最小理解|T1・T2・FLAIR・DWI をどう使い分けるか
MRI はシーケンスごとの役割を最小限理解すると、読影の迷いが大きく減ります。全部を同時に覚える必要はなく、「何を見るための画像か」を先に押さえることが重要です。新人教育では、用語暗記よりも見方の順番を優先してください。
下表は、実務での使い分けに必要な最小比較です。詳細な病態解釈は医師の判断を前提にしつつ、PT・OT・ST は介入判断に必要な情報抽出に集中すると運用しやすくなります。
| シーケンス | 主な役割 | 新人がまず見る点 | 介入判断への反映 |
|---|---|---|---|
| T1 | 解剖学的な形態把握 | 萎縮や構造変化の全体像 | 長期的な課題設定の土台 |
| T2 | 水分変化の把握 | 高信号域の分布と広がり | 症状との関連を再確認し負荷調整 |
| FLAIR | 脳室周囲・皮質近傍の異常把握 | 慢性変化と新規変化の見分けの手掛かり | 再評価タイミングの設定 |
| DWI | 急性期変化の検出に有用 | 急性病変を疑う高信号の有無 | 当日介入強度の上限と相談要否 |
脳 MRI で見落としやすいポイント|相談トリガーを先に決める
見落としを減らすには、読む前に「どの所見なら必ず相談するか」を決めるのが有効です。基準が曖昧だと、同じ画像でも判断がぶれ、介入の安全域が不安定になります。新人には“相談してよい条件”を具体化して伝えることが重要です。
脳画像の基礎読影は 脳画像読影の記事 で補強し、モダリティ選択は比較記事で確認してください。MRI 各論では、相談トリガーを運用に落とすことを主目的にします。
- 前回画像と比べた新規変化が疑われる
- 神経症状の増悪と画像所見が整合する
- 急性期変化を示唆する所見がある
- バイタル変動や意識変化を伴っている
- 当日介入判断に迷う(通常/軽負荷/延期が決まらない)
所見をリハ介入に落とす|通常・軽負荷・延期の 3 区分で統一
画像所見を読んでも介入判断が書けないと、記録と実践が分離します。そこで、判断を 3 区分に固定し、所見とセットで 1 行記載する運用にしてください。これだけで申し送りの質が安定し、指導もしやすくなります。
重要なのは、正解を言い当てることではなく、根拠を添えて判断を共有することです。迷う場合は単独で決めず、相談を前提に安全側へ倒すルールを明文化しておくと運用が止まりにくくなります。
| 区分 | 判断の目安 | 実施の要点 | 記録例(要約) |
|---|---|---|---|
| 通常 | 急性悪化を示唆する情報が乏しい | 既定プログラムを実施し反応を観察 | 所見安定のため通常負荷で実施 |
| 軽負荷 | 注意すべき所見があり症状変動もある | 強度・時間を下げ、頻回観察で進行 | 所見を踏まえ軽負荷で実施し再評価 |
| 延期 | 急性悪化の可能性が否定できない | 実施せず相談を優先 | 安全性を優先し本日介入延期・相談 |
よくある失敗|新人教育でぶれやすい 3 パターン
教育でよくある失敗は、読影の正確さだけを評価して運用を評価しないことです。確認順、相談基準、記録様式がそろっていないと、学習しても現場で再現できません。まずは運用を標準化し、その上で読影精度を上げる順番が有効です。
比較記事 X 線・CT・MRI の使い分け と総論 新人向け画像読影ガイド を往復すると、選択と実装がつながります。
| 失敗パターン | 原因 | 改善策 |
|---|---|---|
| 用語暗記が先行する | 実務判断との接続不足 | 「当日判断を 1 行で書く」課題を先に設定 |
| 相談タイミングが遅れる | 相談トリガーが曖昧 | 相談条件をチェックリスト化 |
| 所見と介入が分離する | 記録様式が別々 | 所見→区分(通常/軽負荷/延期)を1セット化 |
よくある質問(FAQ)
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Q1. MRI は難しいので、まず何から覚えるべきですか?
A. まずは T1・T2・FLAIR・DWI の役割を「何を見るための画像か」で覚えるのが実務的です。細かな用語より、当日介入判断につなげることを優先してください。
Q2. DWI の所見があるとき、PT はどう判断すればよいですか?
A. 単独で断定せず、症状・バイタル・時系列を合わせて安全側で判断します。迷う場合は介入強度を下げるか延期し、上級者・医師へ相談する運用が基本です。
Q3. MRI 所見を記録にどう書けばよいですか?
A. 「所見の要約 → 当日区分(通常/軽負荷/延期)→ 次回方針」の順に 1 セットで記載すると、申し送りで使いやすくなります。
Q4. この記事はどの記事と一緒に読むべきですか?
A. まず総論の 新人向け画像読影ガイド で運用フローを確認し、次に 比較記事 で選択基準を固めると理解が深まります。
次の一手|この順で回すと運用が定着します
まずは本記事の「5 点確認」と「3 区分記録」を部署で 1 週間試し、申し送り時に同じ順番で報告してください。次に、比較記事でモダリティ選択を統一し、脳画像各論で読影精度を上げると、教育の再現性が高まります。
続けて読む:新人向け画像読影ガイド / X 線・CT・MRI の使い分け比較 / 脳画像読影 / 画像読影ハブ
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参考文献
- 日本医学放射線学会. 画像診断ガイドライン(総論・各論). 最新版.
- 日本脳卒中学会ほか. 脳卒中治療ガイドライン. 最新版.
- 日本神経学会. 神経疾患診療に関するガイドライン. 最新版.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

