医療保険リハと介護保険リハの併用・移行|同一疾患と 13 単位の考え方

制度・実務
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医療保険リハと介護保険リハの移行は「同一疾患」と「生活期の支援」で整理します

医療保険リハと介護保険リハの関係は、PT / OT / ST が外来・退院支援・訪問連携で迷いやすい制度テーマです。特に、標準的算定日数を超えた患者、要介護・要支援認定を受けた患者、外来リハから通所リハ・訪問リハへ移る患者では、「医療保険で続けられるのか」「介護保険へ移行すべきか」「同じ疾患で併用できるのか」を整理する必要があります。

この記事では、令和 8 年度改定時点の公式資料と介護保険 Q&A をもとに、医療保険リハと介護保険リハの違い、併用・移行で見るポイント、標準的算定日数と月 13 単位、患者説明、情報提供、記録例を整理します。まず疾患別リハの全体像を確認したい場合は、疾患別リハビリテーション料の 5 区分 もあわせて確認してください。

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医療保険リハと介護保険リハの違い

医療保険リハは、疾患や手術、急性増悪などを起点に、医学的な治療・機能回復を目的として実施されるリハビリテーションです。代表例として、心大血管疾患、脳血管疾患等、廃用症候群、運動器、呼吸器の疾患別リハビリテーション料があります。

一方、介護保険リハは、要介護・要支援認定を受けた利用者に対して、生活機能、活動、参加、在宅生活の継続を支援するリハビリテーションです。通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーションなどが主な受け皿になります。

医療保険リハと介護保険リハの基本整理
項目 医療保険リハ 介護保険リハ 現場で見るポイント
主な目的 医学的治療、機能回復、疾患別の改善 生活機能、活動、参加、在宅生活支援 治療中心か、生活支援中心かを整理する
主な対象 疾患別リハの対象患者 要介護・要支援認定を受けた利用者 介護認定の有無と疾患別リハの期間を確認する
実施場面 入院、外来、医療機関でのリハ 通所リハ、訪問リハ、介護予防リハ 退院後・外来継続・在宅支援の流れを確認する
記録の軸 診療録、実施計画書、効果判定 リハ計画書、会議、生活課題、目標共有 医療から介護へ情報がつながる形にする

併用可否は「同一疾患等か」でまず考える

医療保険リハと介護保険リハで最初に確認したいのは、同一疾患等に対するリハビリテーションかどうかです。介護保険におけるリハビリテーションへ移行した日以降は、同一疾患等に係る医療保険の疾患別リハビリテーション料は算定できない整理が示されています。

ここでいう介護保険におけるリハビリテーションには、通所リハビリテーションや介護予防通所リハビリテーションが含まれます。通所リハ側でリハビリテーションマネジメント加算や短期集中個別リハビリテーション実施加算を算定していない場合でも、介護保険リハを受けているものとして扱う点に注意が必要です。

医療保険リハと介護保険リハの併用で確認するポイント
確認項目 見る内容 判断の方向性
同一疾患等か 同じ疾患・障害に対するリハか 同一疾患等なら医療から介護への移行整理が必要
介護保険リハを受けているか 通所リハ、訪問リハ、介護予防リハの利用状況 利用開始日と医療保険リハの算定日を確認する
別疾患の治療か 別の疾患・急性増悪・術後などがあるか 医学的必要性と対象疾患を分けて記録する
患者の希望 医療継続希望、介護サービス利用希望、不安 制度説明と選択肢の提示を記録する

標準的算定日数を超えたら月 13 単位と介護保険移行を確認する

疾患別リハビリテーション料には、心大血管疾患 150 日、脳血管疾患等 180 日、廃用症候群 120 日、運動器 150 日、呼吸器 90 日などの標準的算定日数があります。標準的算定日数を超えた場合は、原則として月 13 単位を上限に算定できる整理があります。

ただし、標準的算定日数を超えた外来患者では、単に「13 単位で続ける」だけでなく、介護保険によるリハビリテーションの適用があるかを評価し、患者の希望に基づいて介護保険サービスを受けるために必要な支援を行うことが重要です。PT / OT / ST は、医学的必要性、改善見込み、生活課題、介護認定の有無をセットで確認します。

標準的算定日数と医療・介護移行の整理
区分 標準的算定日数 超過後の見方 介護保険との接点
心大血管疾患リハ 150 日 医学的必要性と月 13 単位を確認 生活期の運動継続・再発予防支援を検討
脳血管疾患等リハ 180 日 機能改善、ADL、生活課題を確認 通所リハ・訪問リハ・生活支援へ接続
廃用症候群リハ 120 日 廃用の改善見込みと継続理由を確認 在宅生活での活動量維持を検討
運動器リハ 150 日 疼痛、可動域、歩行、ADL の改善度を確認 生活動作・外出・運動習慣の支援へつなぐ
呼吸器リハ 90 日 呼吸状態と活動耐容能を確認 在宅での息切れ管理・活動支援を検討

介護保険リハへ移行を検討するタイミング

介護保険リハへの移行は、標準的算定日数を超えた日だけで急に考えるものではありません。退院前、外来リハ継続中、要介護認定の申請中、生活課題が明確になった時点で、早めに移行の見通しを共有しておくことが大切です。

特に、医療保険リハで身体機能は改善してきたものの、屋外歩行、家事、復職、外出、転倒予防、介助量軽減などの生活課題が残る場合は、介護保険リハや地域サービスとの接続を検討します。移行は「医療リハの終了」ではなく、支援の場を生活期へ移すプロセスとして説明すると伝わりやすくなります。

介護保険リハへの移行を検討しやすい場面
場面 見るポイント PT / OT / ST の関わり
退院前 退院後の生活課題、介護認定、家族支援 退院前情報提供、ケアマネ連携、目標共有
外来継続中 標準的算定日数、改善度、通院負担 介護保険リハの適用確認、患者説明
生活課題が中心 家事、外出、転倒予防、活動量低下 通所・訪問リハで扱う目標へ翻訳する
要介護認定あり 介護保険サービスの利用状況 同一疾患等の医療リハとの関係を確認する

情報提供では BI・FIM・生活目標をつなぐ

医療保険から介護保険のリハビリテーションへ移行する利用者については、一定の様式による情報提供が介護保険側のリハビリテーション計画書として扱われる場合があります。介護保険最新情報の Q&A では、ADL 評価項目の Barthel Index について、情報提供を行う医師と受ける医師の事前合意がある場合、FIM で代替できるとされています。

情報提供では、点数や単位数だけでなく、病前 ADL、退院時 ADL、FIM / BI、リスク、介助方法、生活課題、本人・家族の希望、医療機関でのリハ目標を整理します。介護保険側がすぐに支援を始められるよう、評価結果を「生活で何に困るか」に変換して渡すことが重要です。

医療保険から介護保険リハへ渡したい情報
情報項目 書く内容 介護保険側で使いやすい形
ADL 評価 BI、FIM、歩行、移乗、更衣、排泄など 生活場面での介助量に変換する
リスク 転倒、疼痛、血圧、呼吸、嚥下、認知面 中止基準や見守りポイントを明記する
目標 医療機関での到達度と残課題 通所・訪問リハの生活目標へつなぐ
本人・家族の希望 通院負担、外出希望、家事、復職、介助負担 ケアプランやリハ会議で共有しやすくする

患者説明では「医療で見られない」ではなく「生活期へ支援をつなぐ」と伝える

医療保険リハから介護保険リハへの移行では、患者が「リハビリを切られる」と受け取ってしまうことがあります。説明では、医療保険リハの標準的算定日数、月 13 単位、介護保険サービスの選択肢、自己負担、通所・訪問の違いを、患者の生活目標に沿って伝えることが大切です。

特に外来リハを長く続けている患者では、医療機関への信頼や安心感が強い一方で、生活場面の課題は通所リハや訪問リハの方が扱いやすい場合があります。「病院でのリハが終わる」ではなく、「生活の場で続けるために支援を切り替える」と説明すると、移行の抵抗感を減らしやすくなります。

医療保険リハから介護保険リハへ移行するときの説明例
避けたい説明 言い換え例 意図
医療保険ではもうできません 今後は生活の場で練習を続ける時期に入ります 終了ではなく移行として伝える
介護保険に変えてください 通所リハや訪問リハで、家で困る動作を練習できます 制度名ではなく生活上の利点を説明する
13 単位までです 医療で続けられる量に上限があるため、必要な支援を組み合わせます 単位数だけでなく支援設計を示す
デイケアに行ってください 外出、家事、歩行など、生活目標に合わせて選択肢を相談します 本人の希望を軸にする

現場の詰まりどころ:同一疾患・同一月・情報提供で迷う

医療保険リハと介護保険リハの移行でよくある詰まりは、「介護保険を持っているか」だけで判断してしまうことです。実際には、同一疾患等に対するリハか、標準的算定日数内か超過後か、介護保険リハをすでに利用しているか、別疾患の医学的リハが必要かを分けて確認します。

また、移行時の情報提供が不十分だと、介護保険側で目標設定やリスク管理をやり直すことになります。PT / OT / ST は、医療機関での評価をそのまま渡すだけでなく、生活目標、介助量、家屋環境、家族支援、本人の希望まで含めて共有すると、移行後のリハがつながりやすくなります。

医療保険リハと介護保険リハの移行でよくあるミス
よくあるミス なぜ問題か 対策
介護認定あり=すぐ介護保険と判断 同一疾患等か、医学的必要性があるかを見落とす 対象疾患、目的、利用中サービスを分けて確認する
13 単位で漫然と継続する 介護保険リハの適用評価や移行支援が抜ける 標準日数超過時に移行チェックを行う
情報提供が機能評価だけ 生活場面での課題が介護側に伝わらない ADL、生活目標、リスク、本人希望まで書く
患者説明が制度中心 リハ終了と受け取られ、移行の抵抗感が強くなる 生活期へ支援をつなぐ説明にする

5 分確認フロー:医療保険リハから介護保険リハへ移る前に見る順番

医療保険リハから介護保険リハへの移行は、制度名だけで判断せず、同一疾患等、標準的算定日数、介護保険リハの利用状況、医学的必要性、本人希望を順番に確認します。特に、外来リハを継続している患者では、医事課・療法士・医師・ケアマネで認識をそろえることが重要です。

以下の順番で確認すると、医療保険で継続すべきケースと、介護保険リハへ移行した方がよいケースを整理しやすくなります。

医療保険リハから介護保険リハへ移行するときの4ステップを示した図版
医療保険リハから介護保険リハへ移行するときの見方
医療保険リハと介護保険リハの 5 分確認フロー
順番 確認すること 判断の目安
1 介護認定・利用中サービスを確認 要介護・要支援、通所リハ・訪問リハの有無を見る
2 同一疾患等に対するリハか確認 同じ疾患なら医療・介護の関係を慎重に整理する
3 標準的算定日数と 13 単位を確認 超過後は介護保険リハの適用評価を行う
4 医学的リハの必要性を確認 急性増悪、別疾患、リスク管理が必要かを見る
5 本人希望と生活目標を共有 通所・訪問リハへつなぐ情報提供を準備する

記録例:外来運動器リハから通所リハへ移行を検討する場合

たとえば、運動器リハビリテーション料で外来リハを継続していた要介護認定ありの患者では、標準的算定日数、改善度、疼痛、歩行能力、生活課題、通所リハ利用の希望を整理します。疼痛や可動域の医学的治療が主課題なのか、屋外歩行、家事、活動量維持など生活期の課題が主になっているのかを分けて記録します。

移行を検討する場合は、医師の判断、療法士の評価、患者・家族の希望、ケアマネへの情報提供をそろえます。通所リハ側へは、単に「運動器リハ終了」と伝えるのではなく、現在の ADL、リスク、生活目標、継続してほしい練習内容を明確に渡すことが重要です。

医療保険リハから介護保険リハへの移行記録例
場面 記録例 補足
移行検討 右 TKA 術後の外来運動器リハを継続。疼痛は軽減し、屋内歩行は自立。今後は屋外歩行、買い物動作、活動量維持が主課題。 医療リハから生活期リハへ目的が移る理由を書く
患者説明 標準的算定日数と今後の支援量を説明。本人は通院負担があり、通所リハで外出練習と筋力維持を継続する希望あり。 制度説明だけでなく本人希望を残す
情報提供 BI 90 点。屋外歩行は杖使用で見守り。階段昇降は手すり使用で自立。転倒不安あり、買い物再開を目標に通所リハへ情報提供。 ADL、リスク、生活目標をつなぐ

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

医療保険リハと介護保険リハは併用できますか?

同一疾患等に対するリハビリテーションかどうかで整理します。介護保険におけるリハビリテーションへ移行した日以降は、同一疾患等に係る医療保険の疾患別リハビリテーション料は算定できない整理が示されています。別疾患や急性増悪などがある場合は、医学的必要性と対象疾患を分けて確認します。

介護保険を持っているだけで医療保険リハは使えなくなりますか?

介護認定があることだけで一律に判断するのではありません。対象疾患、標準的算定日数、介護保険リハの利用状況、同一疾患等かどうか、医学的必要性を確認します。ただし、標準的算定日数を超えた外来患者では、介護保険リハの適用があるかを評価し、必要な移行支援を行うことが重要です。

標準的算定日数を超えたら必ず介護保険リハへ移行ですか?

標準的算定日数を超えても、月 13 単位を上限に医療保険の疾患別リハを算定できる整理があります。ただし、外来患者では介護保険リハの適用評価や患者希望に基づく支援が求められます。医学的必要性、改善見込み、生活課題、介護保険サービスの利用可能性を合わせて判断します。

通所リハで加算を算定していなければ、医療保険リハを続けられますか?

通所リハビリテーションでリハビリテーションマネジメント加算や短期集中個別リハビリテーション実施加算を算定していない場合でも、介護保険におけるリハビリテーションを受けているものとして扱う整理が示されています。加算の有無だけでなく、介護保険リハの利用実態を確認します。

医療から介護へ情報提供するとき、FIM を使ってもよいですか?

介護保険最新情報の Q&A では、医療保険から介護保険リハへ移行する利用者に関して、Barthel Index の代替として FIM を用いる場合に限り変更可能とされています。ただし、様式変更には、情報提供する医師と情報提供を受ける医師との事前合意が必要です。

次の一手

医療保険リハと介護保険リハの移行を整理したら、まず 標準的算定日数と 13 単位の考え方 を確認し、どの時点で介護保険リハの適用評価が必要になるかを把握してください。疾患別リハの対象区分から確認したい場合は、疾患別リハビリテーション料の 5 区分 が親記事になります。

外来リハで運用する場合は、医師診察、実施計画書、療法士の観察記録が重要です。外来での算定整理は、外来リハビリテーション診療料 1・2 の違い もあわせて確認すると、制度全体のつながりが見えやすくなります。


参考文献

  1. 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定について. 2026.
  2. 厚生労働省. 保険診療の理解のために. 2026.
  3. 厚生労働省. 介護保険最新情報 Vol.1225「令和 6 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1)」. 2024.
  4. 厚生労働省. 介護保険最新情報 Vol.948「令和 3 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.2)」. 2021.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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