リハビリ中止時の記録方法|カルテ記載例と報告・再開時の確認項目

制度・実務
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リハビリ中止時の記録は「状態・判断・対応・共有・次回方針」で整理する

リハビリ中止時のカルテには、「体調不良のため中止」だけでなく、何が起き、なぜ中止し、その後どう対応したかを残します。基本は「状態・判断・対応・共有・次回方針」の5点です。発熱、血圧異常、SpO2低下、疼痛、めまいなどで中止・短縮した場合も、この順番で整理すると判断経過が伝わりやすくなります。本記事では、PT・OT・ST向けに、NG記録と改善例、実施前中止と途中中止の違い、医師・看護師への報告、次回の再評価項目を具体的に紹介します。

なお、本記事は中止時のカルテ記載を中心に解説します。実際の中止・継続判断では、患者状態、医師指示、施設の安全管理基準を優先してください。急変が疑われる場合は、記録よりも安全確保と緊急対応を優先します。

中止時のカルテに残したい5つの項目

リハビリ中止時の記録では、症状や測定値だけでなく、中止判断の根拠とその後の対応を残します。次の担当者が「何が起き、次に何を確認すればよいか」を理解できることが重要です。

リハビリ中止時のカルテ記録5点セット。状態、判断、対応、共有、次回方針の順に確認項目と記録例を整理した図解。急変時は安全確保と緊急対応を優先する。
リハビリ中止時のカルテ記録5点セット。状態・判断・対応・共有・次回方針の順に整理します。図中の数値や記録例は説明用であり、一律の中止・再開基準ではありません。
リハビリ中止時の記録5点セット
項目 記録する内容 記載例
① 状態 症状、測定値、出現した場面 端座位でめまいを訴える
② 判断 中止・短縮・内容変更の理由 症状が持続したため離床を中止
③ 対応 休息、体位調整、再測定、緊急対応など 臥位へ戻し、血圧と症状を再確認
④ 共有 報告先、報告内容、確認した指示 病棟看護師へ症状と測定結果を共有
⑤ 次回方針 再評価項目、再開可否の判断方法 次回は症状と血圧を再評価し、離床可否を判断

この5点セットは、診療報酬上の一律の記載義務を示すものではなく、安全な情報共有を目的とした実務上の整理方法です。電子カルテの専用欄に記録済みの情報は、施設の運用に従って重複を避けながら、必要な判断経過を残します。

リハビリ中止時のNG記録と改善例5選

中止時の記録で避けたいのは、「中止」「体調不良」「痛みあり」など、理由が広すぎる表現だけで終わることです。改善する際は、症状や測定値に加えて、中止した場面、判断、対応を簡潔に記載します。

以下は、カルテの書き方を示す架空の記録例です。数値は一律の中止基準や再開基準を意味しません。また、実際に確認していない測定値、報告、指示内容を記録してはいけません。

リハビリ中止時のNG記録と改善例(架空例)
場面 情報が不足する記録 改善例
発熱 発熱のため中止 開始前T 37.8℃、強い倦怠感あり。本日の離床を見送り、病棟看護師へ共有。次回は体温・全身状態・診療方針を確認する。
血圧高値 血圧高く中止 歩行開始前BP 180/96mmHg、頭痛の訴えあり。歩行練習を見送り、医師へ報告。指示を確認し、次回の実施可否を判断する。
疼痛 痛みあり中止 立位時に右膝痛NRS 7/10を訴える。荷重練習を中止し、安静時の疼痛を再評価。次回は疼痛の経過と荷重可否を確認する。
SpO2低下 SpO2低下で中止 室内気での歩行中、SpO2 88%、息切れ増強。歩行を中止し、安全な姿勢で休息。測定状態を確認して再測定し、SpO2 92%。看護師へ経過を報告。次回は呼吸状態と医師指示を確認する。
めまい めまいあり中止 端座位で浮動性めまいを訴える。離床を中止して臥位へ戻し、血圧と症状を再評価。看護師へ共有し、次回は体位変換時の症状を確認する。

SpO2低下時は測定条件も確認する

SpO2低下を記録する際は、可能な範囲で酸素投与条件、測定部位、測定値の安定性、末梢循環の状態、体動などを確認します。酸素投与中であれば、確認したデバイスや設定流量なども記録します。

体動や末梢循環不良などによる測定誤差が疑われる場合は、測定状態を確認して再測定します。ただし、呼吸困難、チアノーゼ、意識状態の変化などがある場合は、再測定だけに時間を費やさず、患者の安全確保と必要な緊急対応を優先します。

なお、SpO2の数値だけで中止・再開を一律に判断することはできません。患者の基礎疾患、通常の酸素化状態、医師指示、症状、院内基準を合わせて判断します。

実施前の中止と実施途中の短縮は分けて記録する

リハビリ開始前に見送った場合と、実施途中に中止した場合では、記録の重点が異なります。実施していない内容を実施済みとして記録しないこと、実際の実施状況と記録を一致させることが基本です。

実施前中止・途中中止・内容変更の記録ポイント
状況 記録の重点 注意点
実施前に中止 開始前の状態、見送り理由、報告、次回方針 実施していない訓練を実施済みとして記録しない
途中で中止 中止前の実施内容、症状の出現場面、対応、報告 実施内容・時間と中止理由の整合性を確認する
内容を変更 変更理由、変更後の内容、実施後の状態 全面中止と内容変更を混同しない

開始・終了時刻や実施内容が電子カルテの専用欄に記録されている場合は、施設の記録規程に従い、本文への不要な重複記載を避けます。一方、中止判断の根拠や実施後の対応が専用欄だけでは分からない場合は、経過記録などに補足します。

実施時間や算定単位の取り扱いは、リハビリ実施時間の記録方法で確認してください。

医師・看護師への報告は「誰に・何を・どう共有したか」を残す

中止時に医師や看護師へ報告した場合は、共有先と内容を記録します。「看護師へ報告」だけでは、どの情報が共有されたか分かりにくいためです。

報告内容は、患者の状態、症状が出現した場面、実施した対応、報告時点の状態を中心に整理します。必要に応じてSBAR(状況・背景・評価・提案)を活用すると、簡潔に伝えやすくなります。

リハビリ中止時の報告記録で残したい内容
項目 記載内容
報告先 報告した医師・看護師など
報告内容 症状、測定値、発生場面、中止後の経過
指示・対応 受けた指示、追加対応、再評価方針

急変が疑われる場合は記録より緊急対応を優先する

胸痛、急な意識状態の変化、重度の呼吸困難、急激な状態悪化などがみられる場合は、リハビリを中止して患者の安全を確保し、院内の緊急対応手順に従って速やかに応援要請・報告を行います。

緊急対応が必要な場面では、カルテ記載のために対応を遅らせてはいけません。対応後、確認できた事実に基づいて、発生状況、症状、実施した対応、報告先、受けた指示、経過を記録します。

報告の必要性や緊急度は、患者の疾患、重症度、医師指示、院内基準によって異なります。症状が持続・悪化する場合は、再評価と必要な対応につなげます。

再開条件は「再開予定」ではなく「再評価項目」を明確にする

中止時の記録では、次回のリハビリを無条件に再開するような表現を避けます。中止理由に応じて再評価する項目を残し、患者状態や医師指示を踏まえて再開可否を判断することが重要です。

中止理由別の再評価項目と次回方針の記録例
中止理由 再評価する項目 次回方針の記録例
発熱 体温、倦怠感、感染徴候、診療方針 全身状態と医師の方針を確認し、離床可否を判断する。
疼痛 疼痛部位、強さ、出現動作、安静時の状態 疼痛を再評価し、荷重練習の可否と負荷量を検討する。
SpO2低下 安静時SpO2、酸素投与条件、呼吸数、息切れ 呼吸状態と医師指示を確認し、歩行練習の再開可否を判断する。
血圧異常 安静時血圧、症状、体位変換時の変化 血圧と症状を再評価し、医師指示・院内基準に基づいて離床可否を判断する。
めまい 症状の持続、体位変換との関係、血圧など 原因評価と安全確認を行い、離床方法を再検討する。

「血圧が安定したら再開」「解熱後に再開」といった表現だけでは、判断条件が曖昧になる場合があります。必要に応じて医師へ確認し、再開時の観察項目や負荷量も共有します。

特にSpO2低下後の再開では、特定の数値への回復だけを条件とせず、呼吸困難の有無、酸素投与条件、患者の通常の酸素化状態、医師指示などを総合して判断してください。

よくある質問

「体調不良のため中止」だけでは不十分ですか?

中止判断の根拠が分かりにくいため、症状や確認した状態、実施した対応を補足することをおすすめします。ただし、電子カルテの別欄に必要な情報が記録されている場合は、施設の運用に従って重複を整理してください。

リハビリを途中で中止した場合、実施時間も本文に書く必要がありますか?

開始・終了時刻や実施内容が電子カルテの専用欄に適切に記録されている場合は、施設の記録規程に従い、本文への重複記載を整理できます。ただし、中止した場面や判断の根拠が分からない場合は、経過記録などに補足してください。算定の可否は、実際の実施状況と現行の算定要件に基づいて別途確認します。

中止が続く場合は毎回同じ記録でよいですか?

同じ理由で中止していても、その日の患者状態、症状の変化、対応、報告内容を確認して記録します。中止が続く場合は、医師や多職種と原因・治療方針・リハビリ計画を再検討することも重要です。

次の一手

リハビリ中止時の記録は、状態・判断・対応・共有・次回方針の5点を基本に整理すると、次回担当者が判断経過を確認しやすくなります。まずは部署内で中止時の記録に必要な項目を共有し、電子カルテの専用欄と経過記録の役割を整理してみてください。

関連する記録方法として、リハビリ実施時間の記録方法と、リハビリ拒否時のカルテ記載も確認できます。医学的な理由による中止、患者の拒否による未実施、実施途中の短縮を区別して記録することが重要です。

参考文献

  1. 日本リハビリテーション医学会. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン. ガイドライン資料(PDF).
  2. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 厚生労働省公式資料.

※本記事の記録5点セットと記載例は、臨床実務での情報整理を目的とした独自の例です。特定の診療報酬上の記載義務や、一律の中止・再開基準を示すものではありません。

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

2022年4月にrehabilikun blogを開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験を経て、現在は療養病院に勤務しています。

脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に、PT・OT・STが臨床で活用できる評価方法、実務手順、記録方法を発信しています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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