医療保険と介護保険の訪問リハの違い【結論】
医療保険と介護保険の訪問リハビリテーションは、対象者、算定要件、医師の指示、計画書、給付調整の扱いが異なります。要介護・要支援認定を受けた利用者では、原則として介護保険の訪問リハビリテーションを検討しますが、医療保険で算定できる例外もあります。また、訪問看護ステーションから PT・OT・ST が訪問する場合は、制度上の訪問リハビリテーションとは別のサービスです。
この記事では、2026 年の制度を踏まえ、医療保険と介護保険の訪問リハの違い、要介護認定者に対する例外、訪問看護からのリハとの区別、指示書・計画書、保険選択の確認手順を整理します。PT・OT・ST が制度上の確認事項を把握するための記事であり、個別の請求可否を確定するものではありません。
最初に確認するのは、①どのサービスから訪問するか、②要介護・要支援認定の有無、③そのサービスで医療保険を適用できる条件です。退院直後、難病、急性増悪などの情報だけで保険種別を決めず、現行の給付調整規定と算定要件を確認します。
まず3つのサービスを区別する
訪問で PT・OT・ST がリハビリテーションを提供する場合でも、訪問リハビリテーションと訪問看護では制度上の位置づけが異なります。保険種別を判断する前に、提供するサービスを確認してください。
| 区分 | 制度上の位置づけ | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 医療保険の訪問リハ | 医科診療報酬の C006「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」 | 医師の診療・指示、医学的必要性、算定要件、介護保険との給付調整 |
| 介護保険の訪問リハ | 訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション | 要介護・要支援認定、医師の診療・指示、訪問リハ計画、ケアプランとの整合 |
| 訪問看護からのリハ | 訪問看護の一部として PT・OT・ST が訪問 | 訪問看護指示書、訪問看護計画、訪問看護に関する保険適用条件 |

※図版は実務上の確認順序を示したものです。STEP 3 に示す医療保険の例外は、すべての訪問サービスに共通する条件ではありません。特別訪問看護指示書や精神科訪問看護などは訪問看護に関する規定であり、医療保険の C006 の算定条件とは区別してください。また、図版にある「医学的必要性が高い」という説明だけで医療保険の適用が決まるわけではありません。
要介護認定がある場合は、どちらの保険を使う?
要介護・要支援認定を受けた利用者では、介護保険の訪問リハビリテーションが基本となります。ただし、医療保険の C006「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」についても、給付調整上の例外が設けられています。
ここで重要なのは、要介護認定の有無だけで判断せず、サービス種別と医療保険の算定条件を組み合わせて確認することです。
| 利用者の状況 | 基本的な考え方 | 追加確認 |
|---|---|---|
| 要介護・要支援認定なし | 医療保険の訪問リハの対象となるか確認する | 医師の診療・指示、医学的必要性、C006 の算定要件 |
| 要介護・要支援認定あり | 介護保険の訪問リハを基本として検討する | 介護保険サービスの利用条件、ケアプラン、医師の診療・指示 |
| 要介護認定があり、急性増悪等を認める | 医療保険の例外に該当するか確認する | C006 の給付調整規定、頻回訪問の必要性、算定期間 |
| 訪問看護ステーションを利用する | 訪問看護として医療保険・介護保険を判断する | 対象疾病等、特別訪問看護指示書、精神科訪問看護などの適用条件 |
医療保険の C006 で確認する例外
医療保険の C006「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」は、要介護被保険者等について、原則として算定できません。ただし、厚生労働省の給付調整告示では、入院中以外の患者で、急性増悪等により一時的に頻回の訪問リハビリテーション指導管理が必要な場合の例外が示されています。
関連する給付調整通知では、こうした例外について、6 月に 1 回、14 日間に限り算定できるとされています。
実際には、急性増悪等の医学的状況、頻回訪問が必要な理由、医師の診療・指示、算定期間、過去の算定状況などを確認する必要があります。
なお、上記の「6 月に 1 回、14 日間」という条件は、要介護被保険者等に対する医療保険の訪問リハに関する給付調整上の取扱いです。訪問看護の特別訪問看護指示書に基づく訪問と同じ制度ではありません。
参考:厚生労働省|要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合
疾患名や退院時期だけで保険は決まらない
「退院直後だから医療保険」「難病だから医療保険」「医学的管理が必要だから医療保険」といった判断は避けます。
例えば、退院直後で医療的な管理が必要な利用者であっても、要介護認定を受けている場合は、介護保険との給付調整を確認する必要があります。
また、難病や末期がんでは医療保険の訪問看護が適用される場合がありますが、そのことが医療保険の C006 の算定を直接認める条件になるわけではありません。
利用者の状態と、提供するサービスの制度上の要件を分けて確認することが重要です。
医療保険と介護保険の訪問リハを比較
医療保険と介護保険の訪問リハは、どちらも医師の医学的判断に基づいて実施されます。「医療保険は機能回復、介護保険は生活支援」と目的だけで二分するのではなく、対象者、算定要件、指示、計画、給付調整の違いを確認してください。
| 比較項目 | 医療保険の訪問リハ | 介護保険の訪問リハ |
|---|---|---|
| 制度 | 医科診療報酬 | 介護報酬 |
| 主な対象 | C006 の算定要件を満たす在宅患者 | 要介護・要支援認定を受け、サービスの利用条件を満たす利用者 |
| 医師の関与 | 診療に基づく指示・医学的管理 | 医師の診療・指示、訪問リハ計画への関与 |
| 計画・記録 | 医学的必要性、指示内容、実施内容、経過の記録 | 訪問リハ計画、目標、実施内容、評価・見直し |
| 主な連携先 | 主治医、看護師、医療・介護関係職種など | 主治医、ケアマネジャー、訪問看護、介護職など |
| 給付調整 | 要介護被保険者等では原則算定できず、例外条件を確認する | 介護保険サービスとして利用条件や他サービスとの調整を確認する |
医療保険の訪問リハで確認すること
医療保険の訪問リハでは、医師の診療・指示のもと、在宅患者に対するリハビリテーション指導管理を行います。
リハ職は、疾患名だけでなく、現在の病状、医学的リスク、生活機能、訪問の必要性、実施内容を確認します。
例えば、急性増悪後に頻回の訪問が必要と判断された場合でも、医学的必要性があることと、医療保険で算定できることは同義ではありません。C006 の算定要件と給付調整の両方を確認する必要があります。
介護保険の訪問リハで確認すること
介護保険の訪問リハビリテーションは、要介護・要支援認定を受けた利用者の居宅において、心身機能の維持・回復や日常生活の自立を支援するサービスです。
実務では、医師の診療・指示、訪問リハ計画、ケアプランとの整合を確認します。
例えば、歩行能力の改善を目標とする場合でも、単に歩行距離を延ばすだけでなく、トイレへの移動、屋内移動、玄関の出入りなど、具体的な生活行為につなげて評価します。
また、訪問介護、通所リハビリテーション、福祉用具、住宅改修など、他のサービスとの役割分担も重要です。
訪問看護ステーションからのリハは別制度
訪問看護ステーションから PT・OT・ST が訪問する場合は、訪問看護の一環としてリハビリテーションを提供します。
現場では「訪問リハ」と呼ばれることがありますが、制度上の訪問リハビリテーションとは異なります。訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書などの枠組みで管理する点が重要です。
訪問看護ステーションからの PT・OT・ST による訪問は、看護業務の一環として位置づけられます。看護職員との連携や、利用者の療養上の課題との整合を確認する必要があります。
| 比較項目 | 訪問リハビリテーション | 訪問看護からのリハ |
|---|---|---|
| サービス種別 | 訪問リハビリテーション | 訪問看護 |
| 医師の指示 | 訪問リハに関する医師の診療・指示 | 訪問看護指示書等 |
| 計画 | 訪問リハ計画書等 | 訪問看護計画書等 |
| 報告・連携 | 医師、ケアマネジャー、関係職種等 | 主治医、看護職員、ケアマネジャー等 |
| 保険適用 | 医療保険・介護保険それぞれの算定要件による | 訪問看護に関する医療保険・介護保険の給付調整による |
訪問看護で医療保険となる例外
要介護・要支援認定者に対する訪問看護は、原則として介護保険が優先されます。ただし、医療保険による訪問看護が認められる例外があります。
代表的なものは、厚生労働大臣が定める疾病等への該当、特別訪問看護指示書に基づく訪問、精神科訪問看護基本療養費の算定対象となる訪問などです。
これらは訪問看護に関する規定であり、医療保険の C006「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」の例外条件ではありません。
また、特別訪問看護指示書が交付された場合でも、対象期間、交付条件、訪問看護の算定要件を確認する必要があります。
参考:厚生労働省|訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等
退院直後・急性増悪・難病で迷う場面
訪問リハの保険選択では、利用者の状態だけで判断すると誤りやすくなります。次の表は、実務上の確認事項を整理したものです。個別の算定可否を保証するものではありません。
| 場面 | 判断上の注意点 | 確認すること |
|---|---|---|
| 退院直後 | 退院直後という理由だけでは医療保険の適用は決まらない | 要介護認定、サービス種別、医師の指示、給付調整 |
| 急性増悪 | 医療保険の例外に該当する可能性がある | 急性増悪等の状態、頻回訪問の必要性、対象期間 |
| 難病 | 訪問リハと訪問看護の保険適用を同一に判断しない | 利用サービス、対象疾病、個別の算定要件 |
| 末期がん | 訪問看護の医療保険適用と C006 の算定条件を分ける | 病状、訪問看護の適用条件、訪問リハの給付調整 |
| 要介護認定申請中 | 認定結果や効力発生日によって給付関係の確認が必要 | 申請状況、暫定ケアプラン、保険者・請求担当への確認 |
判断例:要介護認定がある利用者の急性増悪
以下は制度確認の流れを示す架空の例です。
要介護 2 の利用者が在宅療養中に急性増悪し、医師が一時的に頻回の訪問リハビリテーション指導管理を必要と判断したとします。
この場合、要介護認定があるから医療保険は絶対に使えないと判断するのではなく、C006 の給付調整上の例外に該当するかを確認します。
確認するのは、急性増悪等の医学的状況、頻回訪問の必要性、医師の診療・指示、算定期間、過去の算定状況です。
一方、訪問看護ステーションから PT が訪問する場合は、C006 ではなく訪問看護の給付調整規定に基づいて判断します。
同じ利用者・同じ病状でも、提供するサービスが異なれば確認する制度も異なります。
指示書・計画書・記録で確認すること
保険選択を確認した後は、医師の指示、計画書、実施記録、他職種との情報共有を整理します。
必要書類や記載事項はサービス種別によって異なるため、すべての訪問サービスに同じ書式を当てはめないことが重要です。
| 書類・情報 | 主な確認内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 医師の診療・指示 | 訪問の必要性、病状、実施上の注意点 | サービスごとの指示要件を確認する |
| 訪問リハ計画書 | 評価、目標、介入内容、実施計画 | 生活課題と目標を対応させる |
| ケアプラン | 生活目標、サービスの役割分担 | 介護保険サービス全体との整合を確認する |
| 訪問看護指示書 | 訪問看護の必要性、指示内容 | 訪問リハの指示と混同しない |
| 訪問看護計画書・報告書 | 看護上の課題、支援内容、経過 | PT・OT・ST による訪問も看護計画と整合させる |
| 退院時情報 | 病状、ADL、リスク、生活上の課題 | 在宅での目標と安全管理へ反映する |
保険選択の確認記録例
保険選択で判断に迷った場合は、リハ職だけで算定可否を断定せず、確認した事実と相談先を記録します。
記録例(架空)
要介護 2。訪問リハビリテーションの利用を検討。急性増悪後であり、医師から一時的な頻回訪問の必要性について説明あり。医療保険 C006 の給付調整上の例外に該当するか、医事担当へ確認を依頼。ケアマネジャーへ現在の病状とサービス調整の必要性を共有。算定可否の確認後に提供体制を確定する。
記録では、制度上の判断が確定している事項と、確認中の事項を分けて記載します。
訪問リハの保険選択を5ステップで確認
実務では、最初から複雑な例外規定をすべて確認するのではなく、サービス種別から順番に整理すると判断しやすくなります。
| 順番 | 確認事項 | 次の判断 |
|---|---|---|
| 1 | どのサービスから訪問するか | 訪問リハか訪問看護かを分ける |
| 2 | 要介護・要支援認定の有無 | 介護保険優先の対象か確認する |
| 3 | 医療保険の例外条件 | サービスごとの給付調整規定を確認する |
| 4 | 医師の指示・計画書 | 必要な書類と実施条件を確認する |
| 5 | 算定可否と情報共有 | 請求担当等と確認し、関係職種へ共有する |
この5ステップは、保険選択の確認漏れを防ぐための独自の実務整理です。法令上の正式な判定フローではありません。
保険選択で避けたい3つの誤解
| 誤解 | 正しい確認方法 |
|---|---|
| 退院直後だから医療保険 | 退院時期だけでなく、サービス種別と算定要件を確認する |
| 難病なら必ず医療保険 | 訪問リハと訪問看護の適用条件を分けて確認する |
| 訪問看護からの PT 訪問も訪問リハと同じ | 制度上は訪問看護として扱い、指示書・計画書・給付調整を確認する |
よくある質問
要介護認定がある場合、医療保険の訪問リハは利用できませんか?
原則として医療保険の C006 は算定できませんが、急性増悪等により一時的に頻回の訪問リハビリテーション指導管理が必要な場合には例外があります。個別の算定要件と期間を確認してください。
訪問看護ステーションから PT が訪問する場合は訪問リハですか?
一般的に訪問リハと呼ばれることがありますが、制度上は訪問看護の一部です。訪問リハビリテーション事業所のサービスとは、指示書、計画書、給付調整が異なります。
医療保険と介護保険の訪問リハは併用できますか?
単純に併用できるとは判断できません。要介護認定、サービス種別、医療保険の例外条件、同一期間の算定制限などを確認する必要があります。具体的な組み合わせは、主治医、ケアマネジャー、請求担当等と確認してください。
退院直後は医療保険の訪問リハになりますか?
退院直後という理由だけで医療保険になるわけではありません。要介護認定の有無、利用するサービス、医師の診療・指示、給付調整上の条件を確認します。
次の一手
保険選択の基本を整理したら、次は訪問リハ計画書の作成と、退院時情報の引き継ぎを確認しましょう。
訪問リハ計画書の記載方法を確認する:訪問リハ計画書の書き方
退院から在宅生活への支援を整理する:退院支援の進め方
参考文献
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 公式資料.
- 厚生労働省. 要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合. 告示.
- 厚生労働省. 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について. 令和8年3月27日保医発0327第4号・老老発0327第2号. 令和8年度改定資料「4.給付調整」.
- 厚生労働省. 訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等. 告示.
- 厚生労働省. 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について. 通知.
- 岡山県. 保険医療機関等の診療報酬算定資料集【医療保険と介護保険の給付調整を含む】. 令和8年6月更新版資料.
制度情報の確認日:2026年10月27日。実際の算定では、最新の告示・通知・疑義解釈および保険者等の取扱いを確認してください。
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
2022年4月に rehabilikun blog を開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験をもとに、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に役立つ評価・臨床・制度情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に、臨床での判断や実務に役立つ情報を整理しています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

