GDS15の評価方法|実施・採点・カットオフの要点
心理・メンタル評価の全体像から確認する
GDS15(Geriatric Depression Scale 15項目版)は、高齢者の抑うつ症状を15の質問で確認するスクリーニング尺度です。合計点だけで診断するのではなく、抑うつの可能性を見逃さず、必要な問診や主治医・多職種への共有につなげるために使用します。
評価では、使用する日本語版と採点基準を確認し、実施条件をそろえることが重要です。本記事では、GDS15の実施手順、逆転項目、カットオフの考え方、記録例を整理し、設問文を含まないA4記録シートPDFも掲載します。
GDS15記録シートPDFをダウンロードする
記録シートは、実施条件、回答、合計点、背景情報、次の対応をA4用紙1枚にまとめるための帳票です。設問文は含まれていないため、使用するGDS15の質問票や手引きと併用してください。
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GDS15の評価方法|実施から連携までの流れ
GDS15は、実施前の状態確認から採点、記録、必要な連携までを一連の流れとして行います。点数を算出するだけで終わらせず、身体状態や生活上の変化と合わせて解釈することが重要です。
- 実施できる状態か確認する:意識、注意、質問理解、聴力、視力、疲労、疼痛などを確認します。
- 使用する質問票を確認する:質問文、採点キー、カットオフが確認できる質問票・手引きを用意します。
- 15項目に回答してもらう:使用する質問票の表現と実施方法に従い、原則として本人から回答を得ます。
- その場で採点する:各項目を0点または1点として、合計0〜15点を算出します。
- 背景と合わせて解釈する:疼痛、睡眠、食欲、薬剤変更、入院・転居などの状況を確認します。
- 必要な対応へつなげる:追加問診、主治医・多職種への共有、経過観察などを検討します。
- 条件をそろえて再評価する:評価目的と状態変化に合わせて再評価時期を設定します。

GDS15を実施する前に確認すること
実施前には、本人が質問を理解し、自分の状態を回答できるかを確認します。せん妄や意識変容が疑われる場合は、無理に実施せず、状態の安定と原因評価を優先します。
- 意識・注意:会話中に注意を保てるか、回答が大きく変動していないかを確認します。
- 質問理解:質問の意味と「はい/いいえ」の選択を理解できるか確認します。
- 聴力・視力:補聴器や眼鏡の使用状況を確認し、必要に応じて読み上げ方法を調整します。
- 身体状態:強い疼痛、呼吸苦、眠気、疲労、発熱などがある場合は実施時期を再検討します。
- 環境:周囲の人が回答を誘導しない、落ち着いた場所を選びます。
- 使用する版:質問文、採点方法、カットオフが確認できる質問票・手引きを用意します。
家族や介護者からの情報は重要ですが、本人の主観的な気分を尋ねる尺度であるため、代理回答を本人回答と同じ点数として扱わないようにします。
GDS15の採点方法と逆転項目
GDS15は、抑うつを示唆する回答を1点、それ以外を0点として合計します。合計点は0〜15点で、高いほど抑うつ症状が疑われます。
以下は、一般的に用いられる15項目版の採点キーです。実際の運用では、使用する質問票や手引きに記載された採点方法を優先してください。
※ 表は横にスクロールできます
| 区分 | 該当する番号 | 1点になる回答 |
|---|---|---|
| 逆転項目 | 1、5、7、11、13 | 「いいえ」 |
| 通常項目 | 2、3、4、6、8、9、10、12、14、15 | 「はい」 |
- 各項目は0点または1点で採点します。
- 採点後は、15項目すべてに回答があるか確認します。
- 無回答や判定困難な項目を、評価者の推測で補完しないでください。
- 質問文を独自に変更した場合は、標準化された条件と異なることを記録します。
- 実施後はその場で採点し、後からの転記による逆転項目の取り違えを防ぎます。
GDS15のカットオフは使用する日本語版で確認する
GDS15のカットオフは、対象者、目的、使用する日本語版によって異なります。「5点以上」を一律の診断基準として扱わず、使用している質問票・手引きと施設の運用基準を確認してください。
※ 表は横にスクロールできます
| 基準 | 解釈 | 運用上の注意 |
|---|---|---|
| 0〜4点 | 一般的な区分では抑うつ傾向が低い範囲 | 症状や生活上の変化があれば、点数だけで除外しない |
| 5〜9点 | 一般的な区分では抑うつ傾向が疑われる範囲 | 追加問診、身体要因の確認、経過観察や共有を検討する |
| 10〜15点 | 一般的な区分では抑うつ状態が強く疑われる範囲 | 主治医・専門職への共有と詳細評価を検討する |
| 標準化されたGDS-15-J | 手引きでは6/7点がカットオフとして示されている | 市販版を使用する場合は、付属する手引きに従う |
カットオフは、抑うつ症状を持つ可能性がある人を拾い上げるための境界です。GDS15だけでうつ病の有無や重症度を確定することはできません。
希死念慮、自傷の可能性、著しい食欲低下、急激な活動性低下などが確認された場合は、合計点にかかわらず速やかに主治医や院内の担当者へ共有してください。
GDS15の結果は身体・生活背景と合わせて解釈する
高得点であっても、すべてをうつ病による変化と判断することはできません。得点に影響し得る状態と、日常生活への影響を並べて確認します。
- 身体症状:疼痛、呼吸苦、倦怠感、便秘、食欲低下など
- 睡眠:入眠困難、中途覚醒、昼夜逆転、日中の眠気など
- 薬剤:鎮静作用や抗コリン作用を持つ薬剤、薬剤変更の時期など
- 環境変化:入院、転棟、転居、家族との離別、役割の喪失など
- 認知・注意:認知機能低下、せん妄、質問理解の不安定さなど
- 生活への影響:離床、食事、セルフケア、交流、訓練参加などの変化
結果を共有するときは、「GDS15が高いからうつ病」と断定せず、「抑うつ症状が疑われ、活動や食事にも変化があるため、追加確認をお願いしたい」のように、点数、観察事実、相談目的を分けて伝えます。
GDS15の記録例|点数だけで終わらせない
記録では、合計点に加えて、実施条件、背景、生活への影響、次の対応を残します。再評価時に同じ条件で比較でき、他職種が次の行動を判断しやすくなります。
※ 表は横にスクロールできます
| 項目 | 記入例 | 記録のポイント |
|---|---|---|
| 実施条件 | 午前、病室、口頭、補聴器装用、疲労なし | 時間帯、場所、回答方法、補助具を記録する |
| 点数 | GDS15:7/15点 | 使用した質問票・版が分かる場合は併記する |
| 背景 | 疼痛NRS 6、前夜の睡眠3時間、薬剤変更あり | 点数へ影響し得る状態を簡潔に残す |
| 生活への影響 | 離床回数が減少し、自主練習を中断している | 観察できた活動・参加の変化を書く |
| 次の対応 | 主治医・病棟看護師へ共有し、身体状態安定後に再評価 | 誰に共有し、何を確認するかを明確にする |
記録例:GDS15 7/15点。午前、病室で口頭実施。補聴器装用、質問理解は可能。疼痛NRS 6、前夜の睡眠3時間。離床回数と食事摂取量が低下しているため、主治医・病棟看護師へ共有。疼痛と睡眠状態の変化を確認し、条件をそろえて再評価する。
再評価は時期よりも条件と目的をそろえる
再評価の時期をすべての対象者で一律に決めるのではなく、評価目的と状態変化に合わせて設定します。
- 急性の身体症状やせん妄が落ち着いたとき
- 疼痛、睡眠、薬剤などの影響条件が変化したとき
- 環境調整や心理・社会的支援の効果を確認するとき
- 活動量、食欲、交流、訓練参加などに変化がみられたとき
- 施設の評価計画や診療方針で再評価時期が定められているとき
経時比較では、時間帯、場所、読み上げまたは自己記入、補聴器・眼鏡の使用、身体状態などを可能な範囲でそろえます。点数の変化だけでなく、生活上の変化や支援内容も一緒に確認してください。
GDS15で起こりやすい失敗と対処法
実施上の失敗は、回答条件をそろえず、点数だけで判断したときに起こりやすくなります。
- せん妄が疑われる状態で実施する:注意や意識が変動している場合は解釈が難しくなります。状態の確認と原因への対応を優先します。
- 家族の回答を本人の点数にする:家族情報は補足として記録し、本人の自己評価と区別します。
- 質問文を大きく言い換える:質問の意味が変わると標準化された結果と比較できません。使用する版の手引きに従います。
- 無回答を評価者が埋める:推測で0点または1点を付けず、回答できなかった理由を記録します。
- 5点以上を診断基準として扱う:カットオフは追加評価へつなぐ目安です。診断は医師による総合的な評価が必要です。
- 点数だけをカルテに残す:実施条件、背景、生活への影響、共有先まで記録します。
- 低得点なら問題なしと判断する:危険な訴えや急激な状態変化がある場合は、点数にかかわらず共有します。
GDS15についてよくある質問
各質問をタップすると回答が開きます。
GDS15は何点から陽性ですか?
一般的には5点以上を抑うつ傾向の目安とする区分が知られています。一方、標準化されたGDS-15-Jでは6/7点がカットオフとして示されています。使用する質問票・手引きと施設の基準を確認し、カットオフ以上の場合は追加問診や主治医・多職種への共有につなげてください。
GDS15だけでうつ病を診断できますか?
診断はできません。GDS15は抑うつ症状の可能性を確認するスクリーニング尺度です。結果は、本人への問診、身体状態、薬剤、睡眠、生活上の変化などと合わせて解釈し、必要に応じて医師による評価へつなげます。
口頭と自己記入のどちらで実施しますか?
使用する質問票や手引きで認められた方法に従います。視力低下、書字困難、疲労などがある場合は口頭で実施することがあります。再評価では、可能な範囲で前回と同じ回答方法を用いてください。
認知機能が低下している人にも使えますか?
質問を理解し、自分の状態を回答できる場合は使用を検討できます。ただし、認知機能低下が強い場合や、注意・意識が変動している場合は結果の信頼性が低下します。本人回答だけで判断せず、行動観察、家族・介護者情報、身体状態などを組み合わせて評価します。
再評価は何日後に行えばよいですか?
一律の間隔ではなく、評価目的と状態変化に合わせます。身体状態が安定したとき、疼痛や睡眠などの影響条件が変わったとき、支援後の変化を確認するときなどに、実施条件をそろえて再評価します。
GDS15評価後の次の一手
GDS15の点数を確認したら、結果を単独で扱わず、必要な追加評価と共有へつなげます。
参考文献
- Almeida OP, Almeida SA. Short versions of the Geriatric Depression Scale: a study of their validity for the diagnosis of a major depressive episode. Int J Geriatr Psychiatry. 1999;14(10):858-865. PubMed · DOI
- Mitchell AJ, Bird V, Rizzo M, Meader N. Diagnostic validity and utility of the Geriatric Depression Scale for depression in older adults: meta-analysis of GDS-30 and GDS-15. J Affect Disord. 2010;125(1-3):10-17. PubMed · DOI
- Yesavage JA, Brink TL, Rose TL, et al. Development and validation of a geriatric depression screening scale: a preliminary report. J Psychiatr Res. 1982-1983;17(1):37-49. PubMed
- 日本老年医学会. 老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale 15;GDS15). 資料を確認する
- 国立長寿医療研究センター. 高齢者のうつ予防. 公式資料を確認する
- 杉下和行, 杉下守弘, 朝田隆. 老年期うつの検査-15-日本版(GDS-15-J)の妥当性と信頼性. 検査情報を確認する
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

