土肥・アンダーソンの基準とは?
「どこで止めるか」を明確にし、患者さんを安全に守りながら効果的な刺激を与えるための臨床判断フレームです。本記事では“中止/注意/継続”の考え方を、要点の数値(事実)と現場運用のコツで整理します。なお強度設定は、既往・内服・症状・バイタルを総合して決定します。とくに β 遮断薬例では心拍単独の判断を避け、RPE・症状・血圧の推移を重視します(臨床導線はこちら)。
土肥・アンダーソン基準の要点(早見)
実施可否と途中中止の判断を「禁忌/即時中止/一時中断」に整理しました。数値は運用目安であり、個々の患者さんの背景(既往・内服・症状)と施設プロトコルを優先します。
| 判断区分 | 所見・指標 | 運用の目安 |
|---|---|---|
| 実施を見合わせる(禁忌) |
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本日は原則中止。主治医と再開条件をすり合わせ。 |
| 実施中に即時中止 |
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即時中止→座位安静→BP/HR/SpO₂再測→記録→指示受け。 |
| 一時中断・回復後に再開 |
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いったん中断し回復を待って再開。2 分安静で ±10% 以内に戻らなければ本日は中止または極軽労作へ。 |
- 薬剤配慮:β 遮断薬・抗不整脈薬では心拍反応が鈍く、RPE・症状・BP の推移を重視します。
- 不整脈:既知の持続性心房細動は施設方針と主治医指示に従い個別運用。新規/増悪や症状を伴う場合は医師へ即連絡。
- 連携テンプレ:判断に迷う/中止となった際は SBAR で主治医に連絡(本記事の FAQ 参照)。
中止・注意・継続の判断フロー(早見)
- 開始前評価:安静 BP / HR / SpO₂ / 体温、症状(息切れ・胸部不快・めまい・倦怠)、発熱・疼痛・感染兆候、服薬状況を点検し一次判定。
- 実施中モニタ:症状とバイタルの変化を観察。気になる所見があれば強度↓→姿勢調整→再評価。
- 中止条件:上表「即時中止」に該当、または意識状態の変化・SpO₂ 低下・顔面蒼白/冷汗など。
- 注意条件:軽度の症状や境界値。強度・時間・姿勢を調整し、改善なければ中止。
- 継続条件:症状安定・バイタル許容範囲内。段階的に負荷を上げるが、いつでも戻せる準備を。
実施前チェック|バイタル&症状
- 測定順:安静 BP → HR(脈の規則性) → SpO₂ → 体温 → 自覚症状。
- 起立性低血圧:疑う場合は臥位→座位→立位で段階的に再計測。補水・弾性ストッキング・降圧薬のタイミングも確認。詳しくは起立性低血圧の運用へ。
- 測定手順の標準化:詳解は血圧測定プロトコルを参照。
ダウンロード(運用ワークシート)
タップで直接ダウンロードできます(iPhone でも共有シートを介さず保存可)。
よくある質問(安全管理の番外編)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
「積極的なリハビリテーション」とは?
安全域を守りつつ、機能回復に必要な刺激を十分に与えることです。無理をすることではありません。目安は有酸素で RPE 11–13、症状やバイタルに変化があれば強度↓→姿勢調整→再評価。プレチェックや測定手順は血圧チェックの実践記事を参照。
「不整脈」とは?症状が出たときの具体対応は?
不整脈は心拍リズムの異常(期外収縮、心房細動、上室性頻拍など)の総称。動悸・胸部不快/痛み・めまい・息切れ・気分不良などがあれば即中止→座位安静→BP/HR/SpO₂ 再測→記録。強い症状や改善しない場合は主治医へ連絡。起立性低血圧が疑わしい時の段階的起立や補水などはこちら。
アンダーソン基準を活用した主治医連携(SBAR テンプレ)
S:〇〇様、リハ中に動悸と息切れ出現。
B:高血圧+β遮断薬内服。今朝 HR 60、BP 130/76。
A:アンダーソン「注意」→「中止」相当。脈不整、BP 96/58、RPE↑・顔面蒼白。
R:評価と指示の確認(再開条件、検査や処方調整の要否)。必要なら本日は中止し安静観察。
記録:発症時刻、症状、バイタル推移、介入内容、指示内容を残し、次回は低強度・短時間で再開条件を明確化します。


