理学療法士( PT )と作業療法士( OT )の違いは「支援の軸」。迷ったら 7 項目で比較する
結論からいうと、 PT は「基本動作を成立させる支援」、 OT は「生活行為を成立させる支援」に重心があります。現場では重なる場面もありますが、どこをゴールに置くかで評価・介入・記録の組み立てが変わります。
この記事では、理学療法士と作業療法士の違いを 7 項目で比較し、向いている人の考え方と見学・面接で見るポイントまで整理します。まず違いを短時間で把握したい人向けの記事なので、給料や国家試験の細かい比較は広げすぎず、進路判断に必要な論点へ絞ります。法令上の定義は 理学療法士及び作業療法士法( e-Gov )を参照してください。
まずは早見: PT と OT の違い( 7 項目 )
スマホでは表が横にスクロールできます。まずは違いが出やすい 7 項目だけ押さえると、見学や面接で聞くことが具体化しやすくなります。
| 比較項目 | PT(理学療法士) | OT(作業療法士) |
|---|---|---|
| 支援の軸 | 基本動作:起きる、立つ、歩く、移る | 生活行為:更衣、食事、家事、仕事、余暇 |
| ゴール設定 | 安全に動ける、移動できる、離床できる | 生活場面で「できる」が増える、役割に戻る |
| 評価の主戦場 | 筋力、バランス、移動能力、疼痛、耐久性 | ADL / IADL 、上肢機能、認知、環境、作業分析 |
| 介入の主戦場 | 運動療法、起立・移乗、歩行練習、離床支援 | 生活行為練習、道具調整、環境調整、復職・復学支援 |
| 強みが出る場面 | 転倒予防、移動能力改善、負荷量設計 | 家での再現性、片手動作、段取り、役割再獲得 |
| 記録・説明の観点 | 安全管理、動作指標、負荷量の根拠 | 生活目標、環境調整、手順変更の根拠 |
| 向いている人(例) | 動作を分解し、身体の変化を積み上げたい人 | 生活を具体化し、工夫で成果につなげたい人 |
7 項目をもう少し具体的に:違いが出るポイント
「 PT と OT は何が違うの?」が曖昧なままだと、見学や面接での質問が浅くなりやすいです。ここでは、現場で差が出やすい順に 7 項目を具体化します。
1)支援の軸: PT は「基本動作」、 OT は「生活行為」
PT は、起き上がり、立ち上がり、歩行、移乗など基本動作の成立に重心があります。 OT は、更衣、整容、食事、家事、仕事、趣味など生活行為の成立に重心があります。
同じ患者さんを見ていても、 PT は「安全に動けるか」、 OT は「その動きが生活で使えるか」という視点が前に出やすいです。
2)ゴール設定: PT は「動ける」、 OT は「暮らせる」へ寄せやすい
PT のゴールは「安全に歩ける」「介助量が下がる」など、移動や基本動作の改善で表現されやすいです。 OT のゴールは「更衣が自立する」「家で調理できる」「職場復帰に近づく」など、生活場面の再現性で表現されやすいです。
ここが曖昧だと、見学時に「同じことをしているように見える」ので、まずゴール文の違いを見るのがコツです。
3)評価: PT は移動・バランス、 OT は作業分析・環境
PT は筋力、関節可動域、バランス、疼痛、歩行速度、耐久性など、身体機能と動作を定量化して安全に負荷量を調整します。 OT は ADL / IADL を「なぜできないか」で分解し、上肢機能、注意、遂行機能、環境まで含めて評価します。
例えば「更衣ができない」でも、 PT は立位保持や疲労、 OT は衣服操作、段取り、片手動作、自助具や環境の観点が前に出やすいです。
4)介入: PT は運動療法と基本動作、 OT は生活行為の反復と調整
PT の強みは、運動療法、起立・移乗、歩行練習を安全に反復し、動作の質と量を設計することです。 OT の強みは、生活行為そのものを練習しながら、道具や環境を調整して「できる」を増やすことです。
チームでは、同じゴールに向かっても「 PT は動作の土台」「 OT は生活への落とし込み」という役割分担にすると整理しやすくなります。
5)強みが出る場面: PT は移動・離床、 OT は家での再現性
PT は、転倒リスク、離床、移動能力、体力低下への対応で強みが出やすいです。 OT は、退院後の生活、片手での実用動作、道具の工夫、役割再獲得など、生活への接続で強みが出やすいです。
とくに「家に戻ってからどうするか」を具体化するときは、 OT の視点が効きやすい場面が多いです。
6)記録・説明: PT は安全管理、 OT は生活目標の具体化が武器
PT の記録は、血圧、疼痛、負荷量、介助量、歩行距離など、安全と動作指標の整理が強みになります。 OT の記録は、生活目標、手順変更、道具や環境調整の根拠など、生活で使える形に落とす説明が強みになります。
学生や就職前の段階では、「この職種は何を言語化しているか」を見ると違いをつかみやすいです。
7)働く場所:病院は重なるが、違いは「配属先」より「役割」で出る
PT も OT も、病院、クリニック、介護保険施設、訪問など幅広い場で働きます。だから「働く場所が違う」より、同じ場所で何を担当するかで違いが出る、と考えた方が実態に近いです。
ただし OT は上肢、生活行為、認知、高次脳、精神科、復職支援などで強みが出やすく、 PT は移動、離床、呼吸・循環、運動器で役割が見えやすい傾向があります。
現場の詰まりどころ:進路選びでよくつまずく 3 パターン
迷ったら、先に よくある失敗 と 選び方 3 ステップ を見比べてください。 OT 側の働き方をもう少し具体化したい場合は、作業療法士の仕事情報まとめもあわせて確認すると判断しやすくなります。
| 詰まりどころ | 起きる理由 | 対策(今日できる) |
|---|---|---|
| 「 PT も OT も同じに見える」 | 病棟では役割が重なる場面がある | 同じ患者さんで「目標文」と「記録の書き方」を見比べる |
| 「好きな疾患はあるが、職種が決められない」 | 疾患より支援の軸で違いが出る | 疾患ではなく「動作」「生活」のどちらに興味が向くかで考える |
| 「働き方がイメージできない」 | 仕事内容の言語化が足りない | 見学で「新人は何を評価し、何を記録し、何を説明するか」を質問する |
よくある失敗
よくある失敗は、「疾患で選ぶ」「雰囲気で選ぶ」「職場名だけで選ぶ」の 3 つです。脳卒中に関わりたいから PT、上肢が好きだから OT、と即決すると、実際には生活場面をどこまで扱いたいかが抜けてミスマッチになりやすいです。
また、見学で「優しそう」「忙しそう」だけで終えると、職種差が見えません。評価、介入、記録、家族説明のどこに重心があるかまで確認すると、判断しやすくなります。
迷ったらこれ: PT と OT を選ぶ 3 ステップ
「向き不向き」は抽象的になりやすいです。選び方は、支援の軸→働く場面→質問の順に落とすと早く決まります。
ステップ 1:好きな介入を「動作」か「生活」かで分ける
- 動作を分解して組み立てたい → PT 寄り
- 生活を具体化して工夫で成果を出したい → OT 寄り
ステップ 2:働きたい場面を 1 つ決める
急性期、回復期、生活期では、同じ職種でも求められる力が変わります。まずは 1 つの場面に絞ると、見学や実習で見るべきポイントが明確になります。
ステップ 3:見学・面接で聞く質問を 3 つだけ用意する
- 新人は「どの評価を、いつ、誰が見ますか?」
- 介入は「 1 日の優先順位をどう付けますか?」
- 記録は「何を書くと再現性が上がりますか?」
比較に使える A4 記録シート( PDF )
見学前後や進路相談の整理に使えるよう、 PT と OT の違いを比べてメモできる A4 記録シートを付けました。まずは PDF を開いて全体像を確認し、必要なら保存して使ってください。
PDF プレビューを開く
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. PT と OT は現場でどれくらい役割が重なりますか?
病棟や施設では重なる領域があります。ただし、重なり自体が悪いわけではありません。大事なのは「 PT は基本動作の土台」「 OT は生活での再現性」のように、同じゴールへ別角度から寄せることです。
Q2.どちらが向いているかを最短で見分ける方法はありますか?
「身体の変化を積み上げたいか」「生活を具体化して整えたいか」で考えるのが最短です。前者なら PT 、後者なら OT に寄りやすいです。迷う場合は、見学で目標文と記録の違いを見ると判断しやすくなります。
Q3.働く場所はどれくらい違いますか?
PT も OT も、病院、介護保険施設、訪問など幅広い場で働きます。違いは「場所」そのものより、同じ場所で何を主に担当するかです。就職先を見るときは、配属先の名前より、評価・介入・記録の内容を確認する方がズレにくいです。
Q4. ST と比べると、 PT / OT の特徴は?
PT / OT が主に「動く」「暮らす」を扱うのに対して、 ST は「話す」「聞く」「食べる」を扱う専門職です。脳卒中領域では連携場面も多いですが、この記事では PT と OT の違いを中心に整理しています。
次の一手
迷いを減らすなら、次は「全体像」→「就職先の見方」の順に固めると判断がぶれにくくなります。
参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


