新人PTのリスク管理|介入前・実施中・実施後の確認ポイント

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新人PTのリスク管理は「介入前・実施中・実施後」で考える

新人PTのリスク管理で最初に身につけたいのは、正常値をすべて暗記することではなく、介入前・実施中・実施後で何を確認し、変化があったら次に何をするかを同じ順番で考えることです。血圧、脈拍、SpO2などの数値だけではなく、意識、呼吸、症状、表情、動作の変化、回復経過まで合わせて判断します。

この記事では、新人理学療法士向けにリスク管理の全体像を整理します。具体的な離床前チェック、中止基準、異常時対応、記録・報告方法はそれぞれ専用記事へ分け、ここでは「今どこを確認して、次に何を判断するか」が分かることを目的とします。

新人PTのリスク管理|介入前・実施中・実施後の確認順
場面 最初に確認すること 判断すること
介入前 直近の経過、指示、症状、意識、呼吸・循環、ライン・環境 予定どおり開始するか、負荷を調整するか、開始を見合わせるか
実施中 開始前からの症状、呼吸、循環、意識、動作の変化 継続するか、負荷を軽減するか、中断するか
実施後 症状の残存、バイタルの回復、疲労、動作、介助量 今回の負荷が適切だったか、次回何を変えるか
異常時 安全確保、症状、意識、呼吸・循環、回復経過 緊急対応が必要か、終了・再開のどちらか、誰へ報告するか
新人PTのリスク管理フロー。介入前は経過・指示・意識・症状・呼吸循環・ライン環境を確認し、実施中は状態の変化、実施後は回復を確認する。異常があれば安全確保、再評価、必要時の報告・相談へ進む。
図1 新人PTのリスク管理|介入前・実施中・実施後の確認フロー

図では確認の流れをまとめていますが、異常時の対応は実施後まで待つものではありません。介入前・実施中・実施後のどの段階でも異常を認めた場合は、安全確保と必要な対応を優先します。

また、患者ごとの主治医指示、疾患別ガイドライン、施設の開始・中止基準、個別の目標値を確認します。一般的な数値だけで「安全」「危険」と決めず、患者の状態と今回の変化を踏まえて判断することが重要です。

介入前|今日は予定どおり始めてよいか確認する

介入前の目的は、バイタルが正常範囲にあるかを確認するだけではなく、今日の患者さんに予定した介入を行える状態かを判断することです。そのため、前回から何が変わったか、実施条件に変更がないかを確認します。

介入前に確認したい5つの視点
順番 確認すること 新人PTが考えること
1. 直近の経過 発熱、疼痛、睡眠、食事、排泄、処置、検査、病状変化 前回と違うことがないか
2. 指示・注意点 安静度、荷重条件、酸素条件、禁忌、個別の中止条件 今日の介入範囲が決まっているか
3. 意識・症状 覚醒、会話、胸部症状、呼吸苦、めまい、悪心、倦怠感、疼痛 開始前から異常や普段との差がないか
4. 呼吸・循環 血圧、脈拍、SpO2、呼吸数、呼吸様式、顔色など 数値と症状を合わせて確認できているか
5. ライン・環境 点滴、ドレーン、酸素、カテーテル、補助具、床面、介助体制 安全に動き、安全に戻れる条件か

特に新人期は、測定した数値だけを見て開始判断をしやすくなります。しかし、同じ血圧やSpO2でも、患者さんの普段の値、疾患、酸素投与条件、症状、直前の活動によって意味は変わります。

また、測定条件をそろえることも重要です。血圧であれば測定時の体位や直前の活動、SpO2であれば酸素投与条件や測定状態などを確認すると、前回値との比較がしやすくなります。

離床前にどこまで確認するかを詳しく整理したい場合は、離床前チェックの確認項目で、直近の経過からライン・環境までの確認順をまとめています。

実施中|開始前から何が変わったかを見る

実施中は、その瞬間の数値だけではなく、開始前からどのように変化したかを確認します。患者さんが動けば、脈拍や呼吸などが変化すること自体はあります。重要なのは、その変化が介入内容に見合っているか、症状を伴っていないか、段階を進めてもよい反応かを考えることです。

実施中に確認したい5つの変化
視点 見ること 注意する変化
意識 反応、会話、理解、覚醒 反応低下、会話が成立しにくい、急な不穏
症状 胸部症状、呼吸苦、めまい、悪心、疼痛、強い疲労感 新しく出た症状、急な増悪、普段と異なる訴え
呼吸 SpO2、呼吸数、呼吸様式、会話、努力呼吸 酸素化の低下、呼吸仕事量や会話量の変化
循環 血圧、脈拍、脈の不整、顔色、冷汗 開始前からの大きな変化、症状を伴う変化
動作 ふらつき、支持性、介助量、反応速度 急な介助量増加、膝折れ、方向転換時の不安定化

たとえばSpO2の数字だけを見続けていると、会話量の低下、努力呼吸、冷汗、ふらつきなどの変化を見落とすことがあります。反対に、1つの数値が普段と異なるだけで、ほかの情報を確認せずに原因まで決めつけるのも適切ではありません。

「数値」「症状」「動作」「開始前からの変化」をセットで見ることが、新人PTが最初に作りたい観察の型です。測定頻度は患者の状態、実施する負荷、個別指示、施設の運用に応じて調整します。

異常があったら|継続する前に安全確保と再評価を行う

実施中に普段と違う変化を認めた場合は、「もう少し続けて様子を見る」より先に、患者さんの安全を確保します。特に意識変化、胸痛、強い呼吸困難などを認める場合は、測定を繰り返して経過を見ることより、迅速な対応が優先されます。

緊急性が高い状態では、運動を直ちに中止し、安全な姿勢を確保したうえで、施設の急変対応手順に従って応援を要請します。意識や呼吸などを評価し、必要な救命処置につなげます。

直ちに急変対応を要する状態ではない場合も、自己判断で継続せず、次の順番で状況を整理します。

  1. 負荷を中断する:歩行や立位をいったん止め、転倒・転落を防げる姿勢を確保します。
  2. 症状と意識を確認する:胸部症状、呼吸苦、めまい、悪心、意識変化などを確認します。
  3. 必要なバイタルを再評価する:血圧、脈拍、SpO2、呼吸などを状況に応じて確認します。
  4. 回復経過を確認する:休息後に症状や数値がどう変化したかを確認します。
  5. 必要な相手へ共有する:緊急性、院内手順、患者固有の指示に沿って医師・看護師・先輩PTなどへ報告します。

この順番は、すべての項目を終えてから報告するという意味ではありません。報告や応援要請は、緊急性に応じて安全確保・再評価と並行して行います。

また、休息後に数値が元へ戻っても、それだけで再開できるとは限りません。症状の原因、回復経過、個別の中止・再開条件を確認する必要があります。

バイタル変化を認めた後の中止、再測定、前回比、報告までの具体的な流れは、バイタル変化の初期対応で詳しく整理しています。

実施後|元の状態へ戻ったかまで確認する

リスク管理は、歩行練習や離床が終わった時点では完了しません。実施後にどの程度回復したかまで確認すると、今回の負荷が適切だったかを次回へつなげられます。

実施後に確認したい項目と次回へのつなげ方
確認項目 見るポイント 次回につなげる視点
症状 息切れ、めまい、疼痛、疲労などが残っていないか 同じ負荷を繰り返せる条件か
バイタル 開始前と比べ、どの程度回復したか 負荷量や休息時間を調整する必要があるか
動作 終了時に介助量や安定性が悪化していないか 疲労で転倒リスクが上がる場面がないか
回復時間 休息後にどのくらいで落ち着いたか 次回の時間・距離・段階をどう調整するか

「20m歩けた」のような実施量だけでは、次回の安全な負荷設定には十分ではありません。どの条件で、何が変化し、どこまで回復したかをセットで残すと、別の担当者や病棟スタッフとも判断を共有しやすくなります。

また、終了直後には問題が目立たなくても、症状が残存していたり、回復が遅れていたりする場合があります。必要に応じて観察を継続し、病棟スタッフへ変化と注意点を申し送ります。

中止・再開基準は数値だけで決めない

新人PTがリスク管理を学ぶと、「血圧はいくつなら中止か」「SpO2はいくつまでならよいか」と数値を先に覚えたくなります。しかし、一般的な基準値だけですべての患者さんを判断することはできません。

日本リハビリテーション医学会の『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版』では、運動負荷を伴う訓練について、血圧変化、不整脈、意識障害、呼吸異常、胸痛などの状態別に判断の考え方が整理されています。

同ガイドラインでも、個々の患者への適用には、患者の状態や治療の利益・不利益などを考慮する必要性が示されています。

実務では、以下の情報を確認したうえで開始・継続・中止・再開を判断します。

  • 施設で定めた開始・中止・再開基準
  • 疾患・病期に応じたガイドラインやプロトコル
  • 主治医から示された個別指示・目標値
  • 患者さんの普段の値、症状、今回の変化

たとえば慢性呼吸器疾患で個別の酸素化目標が設定されている患者と、急性期で呼吸循環状態が不安定な患者では、同じSpO2の数値でも必要な対応が異なる場合があります。

そのため、新人期は「この数字なら必ず中止」と暗記するだけではなく、どの基準を根拠に判断しているのかを確認する習慣が重要です。数値基準に該当しなくても、新たな胸痛や意識変化などがあれば安全確保と必要な対応を優先します。

新人PTが迷いやすい4つの場面

リスク管理で難しいのは、明らかな急変への対応だけでなく、「続けられそうだが少し気になる」という場面の判断です。以下の4場面を分けて考えると、確認すべき情報が整理しやすくなります。

新人PTが迷いやすい4場面と次の確認事項
場面 考え方 次に確認すること
開始前から普段と違う 予定した訓練をそのまま始めず、状態変化と開始条件を確認する 前回値、症状、直近の病状・処置、個別指示
数値は大きく変わらないが症状がある 数値が保たれていることだけを継続理由にしない 意識、呼吸、胸部症状、めまい、冷汗、動作変化
運動すると変化するが休むと戻る 回復したことと、同じ負荷を再開してよいことを分けて考える 症状、変化量、回復時間、患者固有の再開条件
数値も症状も目立たないが普段と違う 違和感を無視せず、前回との差を言語化する 何が、いつから、どの動作で変わったか

開始前から普段と違う場合

前回より血圧が低い、覚醒が悪い、呼吸苦が増しているなど、開始前から状態の変化がある場合は、予定した介入をそのまま進める根拠を確認します。

測定条件や直近の処置・薬剤変更、食事・水分摂取、排泄なども確認し、開始してよいか判断できない場合は担当医・看護師・先輩PTなどへ相談します。

数値は保たれていても症状がある場合

血圧やSpO2が大きく変わっていないことは、すべての異常を否定する根拠にはなりません。新たな胸痛、強い呼吸苦、意識変化などがあれば、数値の変化を待たずに対応します。

症状が軽く見えても、普段と異なる場合は活動をいったん中断し、症状の内容、発生した場面、経過を確認します。

休息後に数値が戻った場合

休息で脈拍や血圧が戻ったとしても、同じ運動を再開してよいとは限りません。運動中の症状、変化の程度、回復経過、患者固有の中止・再開条件を確認する必要があります。

特に判断に迷う場合は、負荷を再開する前に相談し、再開条件や負荷調整の方針を明確にします。

何となく普段と違う場合

「何となく元気がない」「いつもより動作が遅い」などの変化も、状態確認のきっかけになります。ただし、違和感だけでは共有内容が曖昧になるため、可能な限り具体化します。

たとえば、「前回は会話しながら歩行できたが、今日は数mで会話が途切れる」「前回より立ち上がりに必要な介助量が増えた」のように、前回との違いを行動や症状で説明すると相談しやすくなります。

新人PTのリスク管理でよくある失敗

新人期のリスク管理では、測定値を確認していても、その結果を介入判断につなげられないことがあります。重要なのは、数値を記録すること自体ではなく、状態変化に応じて次の行動を決めることです。

よくある失敗と修正の方向
失敗 問題 修正の方向
正常値だけを見る 普段との差や症状を見落としやすい ベースライン・症状・経時変化を合わせる
開始前だけ測る 運動への反応や回復が分からない 介入前・中・後で必要な観察と測定を行う
数値の再測定に集中する 急変時の安全確保や応援要請が遅れることがある 緊急性が高ければ安全確保と院内手順を優先する
休めば戻ったので同じ負荷を再開する 変化の原因や再開条件を確認していない 症状・回復・個別基準を確認して負荷を再設定する
実施できた内容だけ記録する 次回の安全条件を共有できない 変化・対応・回復・次回条件まで残す

また、安全に関わる迷いを自分だけで抱え込むことも避けたいところです。判断の根拠が確認できない場合は、無理に継続せず、どの情報が不足しているかを明確にして相談します。

最初の1か月は3つの型を身につける

新人期に最初からすべての疾患と中止基準を覚えるのは現実的ではありません。まずは、次の3つを毎回同じ順番で確認できる状態を目指します。

  1. 介入前・実施中・実施後で比較する:開始前の状態を把握し、動作中の変化と終了後の回復を確認します。
  2. 数値と症状・動作をセットで見る:バイタルだけでなく、表情、呼吸、意識、訴え、介助量の変化を確認します。
  3. 異常時は継続判断より安全確保を優先する:緊急性を見極め、必要な場合は速やかに中止・応援要請・報告を行います。

この型ができると、「何となく危ない」から一歩進んで、「開始前と比べて何が変わり、どこが判断に迷うのか」を先輩や多職種へ伝えやすくなります。

そのうえで、担当する患者さんの疾患別の注意点や具体的な中止・再開基準を学ぶと、知識を臨床判断へつなげやすくなります。

次の一手|具体的な中止基準と記録・報告へ進む

新人PTのリスク管理では、最初に「介入前・実施中・実施後」の確認順を身につけ、その後で具体的な中止・再開基準と報告方法を学ぶと整理しやすくなります。

次は、目的に応じて以下の記事を確認してください。

参考文献

  1. 日本リハビリテーション医学会リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン策定委員会, 編. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン. 第2版. 東京: 診断と治療社; 2018. 日本リハビリテーション医学会|診療ガイドラインのご案内
  2. 宮越浩一. リハビリテーション医療における安全管理. Jpn J Rehabil Med. 2021;58(3):242-246. doi:10.2490/jjrmc.58.242. J-STAGE

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、臨床・教育活動に取り組んでいます。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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