ベースアップ評価料の特別事情届出書は「必要なケース」と「再提出」を先に固定すると迷いません
このページは、ベースアップ評価料における特別事情届出書について、制度の総論ではなく提出実務に絞って整理した記事です。検索で知りたいのは「特別事情届出書とは何か」よりも、どんなときに必要か / 様式 94 に何を書くか / いつ再提出になるか / 賃金改善計画書とどうつながるかであることが多く、そこを先に言語化すると担当者間の確認がかなり進めやすくなります。
公開済みの関連記事が「賃金改善計画書」「中間報告書」「実績報告書」「派遣職員の扱い」を扱うのに対して、本ページは特別事情届出書だけに絞った補助記事を担当します。まずは必要なケースを押さえ、その後に様式 94 の記載項目、再提出の考え方、提出前チェックへ進む流れで読むとズレません。
関連:ベースアップ評価料の賃金改善計画書2026|作成手順・提出時期・注意点
ベースアップ評価料の特別事情届出書 2026 とは
結論からいうと、特別事情届出書は、対象職員の賃金水準を引き下げた上で賃金改善を行う特例時に提出する書類です。通常の賃金改善計画書とは別に、特別な事情があることを説明するための届出書と考えると整理しやすいです。
単にベースアップ評価料を算定しているだけでは、この届出書は必要になりません。必要になるのは、事業の継続を図るために、ベースアップ評価料による賃金改善分を除いた賃金水準を引き下げる場合です。
特別事情届出書が必要なケース
いちばん大事なのは、必要になる条件を先に固定することです。特別事情届出書が必要なのは、事業の継続を図るため、対象職員の賃金水準を引き下げた上で賃金改善を行う場合です。つまり、「経営上の事情で賃金水準を下げる必要があるが、それでもベースアップ評価料に基づく賃金改善を行う」というケースで使う書類と整理すると分かりやすいです。
逆にいえば、賃金水準の引下げがない場合や、通常の賃金改善だけで回る場合は、特別事情届出書は不要です。ここを曖昧にしたまま進めると、計画書だけでよいケースと、追加で特別事情届出書が必要なケースが混ざりやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 確認したいこと | 考え方 | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 賃金水準の引下げがあるか | ある場合は要確認 | 通常の賃金改善だけなら不要になりやすい |
| 引下げの理由が事業継続か | 事業継続のための特例かをみる | 経営事情の整理を先に行う |
| 引下げ後も賃金改善を行うか | 行う場合は届出対象 | 計画書と別に特別事情届出書を準備する |
様式 94 に書く内容
様式 94 で中心になるのは、なぜ引下げが必要なのか、どのように引き下げるのか、今後どう改善する見込みか、労使の合意があるかの 4 点です。様式 94 の PDF でも、基本情報に続いて、必要がある状況、引下げ内容、改善見込み、労使合意の記載欄が並んでいます。
実務では、書式を開いてから考えるよりも、先に「状況」「引下げ内容」「見込み」「合意」の 4 区分で材料をそろえる方が速いです。記載欄を埋める作業ではなく、まず説明できる根拠をそろえるイメージで進めるとまとまりやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | 何を書くか | 先にそろえたいもの |
|---|---|---|
| 必要がある状況 | なぜ賃金引下げが必要か | 収支状況、経営上の事情 |
| 引下げの内容 | 期間、対象、金額など | 対象職員、引下げ幅、実施時期 |
| 改善の見込み | 経営・賃金水準の改善見込み | 今後の見通し、改善方針 |
| 労使合意 | 合意の時期と方法など | 協議記録、説明資料、合意確認 |
再提出が必要な場面
ここは見落としやすい論点です。地方厚生局では、年度を超えて対象職員の賃金を引き下げることとなった場合は、次年度に賃金改善計画書を提出する際に、特別事情届出書を再度届け出る必要があると案内しています。
つまり、1 回出して終わりとは限りません。賃金水準の引下げが翌年度にも続くなら、翌年度の計画書提出時にあわせて再提出が必要になります。実務では、この再提出の有無を年度末に確認しておく方が安全です。
賃金改善計画書との関係
特別事情届出書は、単独で完結する書類ではありません。実務では、賃金改善計画書とセットで考える論点です。通常の計画書だけで足りるケースと、計画書に加えて特別事情届出書が必要なケースを分けて考えると、役割が整理しやすくなります。
とくに年度をまたぐ場合は、次年度の賃金改善計画書提出時に再提出が必要になるので、計画書の更新タイミングと特別事情届出書の見直しタイミングをそろえておくと管理しやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 書類 | 役割 | 実務でみるポイント |
|---|---|---|
| 賃金改善計画書 | 当年度の賃金改善の進め方を整理する | 通常運用の主軸になる |
| 特別事情届出書 | 賃金引下げを伴う特例事情を説明する | 必要条件に当てはまるとき追加で提出する |
現場の詰まりどころ|ここで止まりやすい 4 点
現場で多いのは、必要条件に当てはまるのに不要と思い込む、引下げ内容の整理が曖昧、労使合意の記載が弱い、年度またぎの再提出を忘れるの 4 つです。制度の理解不足というより、必要条件と運用ルールの確認順が曖昧なことが原因になりやすいです。
特別事情届出書は、通常の計画書よりも「なぜ必要か」を説明する色が強い書類です。だからこそ、金額や時期だけではなく、状況・見込み・合意の 3 点をセットで整理しておく方が通りやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 詰まりどころ | なぜ危ないか | 先に決めること |
|---|---|---|
| 不要と思い込む | 必要ケースなのに届出漏れになる | 賃金引下げの有無を最初に確認する |
| 引下げ内容が曖昧 | 期間・対象・金額が説明できない | 引下げ内容を先に一覧化する |
| 労使合意が弱い | 記載の根拠が弱くなる | 合意時期と方法を整理しておく |
| 再提出を忘れる | 翌年度運用で抜けが出る | 年度またぎの有無を年度末に確認する |
提出前チェックリスト
提出前は、細かい文章よりも順番が大事です。まずは必要ケースか確認、様式 94 を準備、引下げ内容を整理、労使合意を確認、改善見込みを整理、再提出要否を確認の順で見ると、チェック漏れを減らしやすいです。
とくに、年度をまたぐかどうかの判断は最後まで残しがちです。次年度の計画書提出時期まで見据えて確認しておくと、再提出の抜けを防ぎやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 順番 | 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 必要ケースか確認 | 賃金引下げを伴う特例に当てはまるか |
| 2 | 様式 94 を準備 | 最新様式を使っているか |
| 3 | 引下げ内容を整理 | 期間、対象、金額が明確か |
| 4 | 労使合意を確認 | 時期と方法を説明できるか |
| 5 | 改善見込みを整理 | 今後の見通しが示せるか |
| 6 | 再提出要否を確認 | 年度をまたぐ賃金引下げか |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
特別事情届出書は誰でも必要ですか?
必要なケースは限られます。事業継続のため、対象職員の賃金水準を引き下げた上で賃金改善を行う場合に必要になります。
様式 94 には何を書きますか?
必要がある状況、引下げ内容、経営及び賃金水準の改善見込み、労使合意の状況などを書きます。先に 4 項目の材料をそろえると進めやすいです。
労使合意は必要ですか?
はい。様式 94 でも、賃金水準を引き下げることについて、適切に労使の合意を得ていること等について記載する欄があります。
年度をまたぐと再提出ですか?
はい。地方厚生局では、年度を超えて対象職員の賃金を引き下げる場合、次年度に賃金改善計画書を提出する際に特別事情届出書も再度提出する必要があると案内しています。
賃金改善計画書だけでは足りませんか?
賃金引下げを伴う特例に当てはまる場合は、計画書だけでなく特別事情届出書も必要です。通常運用と特例運用を分けて考える方が整理しやすいです。
次の一手
まずは、賃金引下げを伴う特例に当てはまるかを確認してください。そのうえで、状況・引下げ内容・改善見込み・労使合意の 4 点を先に整理すると、様式 94 の骨格が作りやすくなります。
続けて読むなら、ベースアップ評価料の賃金改善計画書2026|作成手順・提出時期・注意点で通常の計画書運用を確認すると、通常ケースと特例ケースの違いがつかみやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省. ベースアップ評価料等について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 東海北陸厚生局. ベースアップ評価料の届出について. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/r06baseup.html
- 近畿厚生局. 様式94(特別事情届出書). https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/r6-t94.pdf
- 北海道厚生局. ベースアップ評価料の施設基準等の届出について. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/hokkaido/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index_00012.html
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


