リスクマネジメント委員会とは?正式名称と議事録の結論
結論からいうと、院内で「リスクマネジメント委員会」と呼んでいても、医療法施行規則で確認する名称は医療安全管理委員会です。委員会は月1回程度を基本に、重大な問題が発生した場合は適宜開催し、原因分析、改善策、周知、実施状況の確認・見直し、重要事項の管理者報告までつなげます。
この記事では、病院・有床診療所などで委員会実務を担うPT・OT・STや担当者向けに、正式名称との関係、開催頻度、議事録に残す項目、2026年改正のポイントを整理します。あわせて、会議記録に使えるA4 PDF・Excelテンプレートも配布します。
施設基準・委員会・記録の全体像を確認する
正式名称は「医療安全管理委員会」|院内名称との関係を確認する
最初に確認したいのは、院内で使っている会議名と、医療法施行規則上の委員会との対応関係です。医療法施行規則第1条の11第1項第2号で規定されている名称は医療安全管理委員会です。
一方、院内では「リスクマネジメント委員会」「医療安全委員会」など、独自の名称を使用している場合があります。その名称だけで同じ委員会と判断するのではなく、院内規程で医療安全管理委員会そのものなのか、下部組織なのか、別の会議体なのかを確認することが重要です。
なお、ここで扱う「施設基準」は診療報酬上の加算だけを意味するものではありません。医療安全管理委員会の設置・運用については、まず医療法施行規則と関連通知を確認します。
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| 施設・会議 | 制度上の確認 | 実務で確認すること |
|---|---|---|
| 病院 | 医療安全管理委員会の規定対象 | 委員会規程、構成員、開催方法、報告経路を確認する |
| 入院施設を有する診療所 | 医療安全管理委員会の規定対象 | 院内の会議名称と医療安全管理委員会との対応を確認する |
| 入所施設を有する助産所 | 医療安全管理委員会の規定対象 | 施設内の安全管理体制と委員会規程を確認する |
| 入院施設を有しない診療所 | 医療安全管理委員会に関する規定は適用されない | 委員会の有無だけでなく、施設に必要な安全管理体制を確認する |
| 院内の「リスクマネジメント委員会」 | 名称だけでは制度上の位置づけを判断できない | 院内規程で「医療安全管理委員会」との関係を確認する |
開催頻度と役割|月1回程度+重大な問題があれば適宜開催
医療安全管理委員会は、月1回程度の開催を基本とし、重大な問題が発生した場合には適宜開催することが示されています。毎月インシデント件数を読み上げるだけではなく、分析した内容を改善策とその後の確認までつなげることが委員会の役割です。
厚生労働省通知から実務上の流れを整理すると、議事録では調査・分析→改善策・周知→実施状況の確認・見直し→管理者報告の流れが追えるようにしておくと確認しやすくなります。

| ブロック | 委員会で確認すること | 議事録に残すポイント |
|---|---|---|
| 1.調査・分析 | 何が起き、どのような背景要因・構造的要因があるか | 事象、傾向、背景要因、分析結果を記録する |
| 2.改善策 | 組織として何を変更・実施するか | 改善内容、担当、期限、必要な様式や手順を残す |
| 3.周知・追跡 | 改善策をどう共有し、実施されたかをどう確認するか | 周知方法、実施状況、再確認日、必要な見直しを残す |
| 4.管理者報告 | 重要な検討内容として管理者へ報告すべき事項があるか | 必要な場合は患者への対応状況を含め、報告内容・報告日を記録する |
特に原因分析は、個人の責任追及を目的とするのではなく、客観的な事実から構造的な原因や背景要因を確認することが基本です。改善策を決めた後も、実施した事実だけで終わらず、同様の事故等の発生状況や関係部署の状況を確認し、必要に応じて見直します。
議事録は「担当・期限・次回確認」まで書く
議題名と検討内容だけでは、次回の委員会で改善状況を追いにくくなります。実務では、少なくとも決定事項、担当、期限、次回確認まで1セットにして残すと、継続的な見直しにつなげやすくなります。
| 項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 議題 | 転倒・転落に関する報告の傾向確認 |
| 分析 | 発生場面・時間帯・動作・環境などから共通する背景要因を確認する |
| 改善策 | 必要な評価、環境調整、手順、情報共有方法を決定する |
| 担当・期限 | 実施部署・担当者と期限を明確にする |
| 次回確認 | 実施状況と必要な見直しを次回委員会で確認する |
2026年4月改正|医療安全管理者と安全管理記録も確認する
2026年4月1日施行の医療法施行規則改正では、医療安全管理体制に関して医療安全管理者の配置と医療に係る安全管理に関する記録の整備が追加されています。
病院、入院施設を有する診療所、入所施設を有する助産所では、医療安全について知識を備え、責任をもって業務を行う者を医療安全管理者として配置します。医療安全管理者は、医療安全管理委員会が行う安全管理業務の支援などを担います。
すでに診療報酬の医療安全対策加算の施設基準に係る医療安全管理者を配置している場合について、厚生労働省の2026年7月27日事務連絡では、改正に対応するために別の者を新たに配置する必要はないと示されています。
また、病院等の管理者には医療に係る安全管理に関する記録の整備が求められます。委員会の議事録だけを作成して終わるのではなく、自院で必要となる安全管理記録と保存方法を、関連通知や院内規程とあわせて確認してください。
この記事では委員会運用を中心に扱います。
医療安全管理者の配置対象、兼務、役割などは、記事末の関連記事で詳しく確認できます。
重点リスクとKPIは院内運用|法令上の固定件数ではない
委員会を運用する際に、重点リスクを絞ったり、KPIを設定したりする方法は有用ですが、「重点リスクを3〜5個にする」「結果指標とプロセス指標を必ず1つずつ置く」といった具体的な件数・組み合わせは、医療法施行規則上の固定要件ではありません。
そのため、公式の要件と院内運用上の工夫は分けて扱います。法令・通知に基づく委員会業務を満たしたうえで、自院の課題に応じて重点化や指標を追加する考え方が分かりやすいです。
| 区分 | 主な内容 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 法令・通知で確認 | 委員会の開催、調査・分析、改善策、周知、実施状況の確認・見直し、重要事項の管理者報告 | 院内規程と実際の運用が対応しているか確認する |
| 院内運用で設定 | 重点リスクの数、優先順位、担当、期限 | 施設の規模・事例・課題に応じて決める |
| 必要に応じて設定 | KPI、実施率、遵守率などの確認指標 | 改善策が実行されたか追跡するために活用する |
重点リスクを決めるなら「件数」だけで選ばない
重点化を行う場合は、インシデント件数だけでなく、影響度、再発性、背景要因、院内で改善可能な要素などを合わせて確認します。件数が少なくても影響が大きい事象がある一方、軽微な報告の繰り返しから改善すべき工程が見えることもあります。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 頻度・傾向 | 同様の事象が繰り返されていないか、増減や偏りがないか |
| 影響度 | 患者への影響や、重大化した場合のリスクが大きくないか |
| 背景要因 | 人だけでなく、環境、手順、情報共有、設備、勤務体制などに共通要因がないか |
| 改善可能性 | 手順変更、教育、環境調整、情報共有など組織として介入できる部分があるか |
A4 PDF・Excel|月次運用・改善記録シート
委員会で確認した内容をそのまま記録へつなげられるよう、「月次運用・改善記録シート」を作成しました。PDFは印刷して手書きする場合、Excelは施設名や項目を調整しながら運用する場合に使えます。
シートでは、法令・通知に沿った月次確認と、院内運用で決める重点議題・改善策を分けています。重点課題の件数やKPIについても、法令上の固定要件ではなく院内運用で設定する項目であることが分かる構成にしています。
リスクマネジメント委員会|月次運用・改善記録シート v3
法令・通知の確認、重点議題、決定事項、担当・期限、管理者報告、次回確認まで1枚で整理できます。
記録シートの使い方
- 会議前:施設名・開催日を入力し、院内の会議名と医療安全管理委員会との対応を確認します。
- 会議中:重点議題・背景要因・改善策を整理し、決定事項には担当と期限を設定します。
- 会議後:重要事項の管理者報告、次回確認事項、改善策の実施状況を追跡します。
Excel版には編集用の月次記録シートに加えて、根拠と使い方を確認できるシートを収載しています。施設独自の規程や様式がある場合は、自院の運用を優先して調整してください。
よくある質問
検索時に迷いやすい3点を整理します。
リスクマネジメント委員会は施設基準上の正式名称ですか?
医療法施行規則で確認する名称は医療安全管理委員会です。「リスクマネジメント委員会」という院内名称を使用している場合は、その会議が医療安全管理委員会そのものなのか、下部組織なのか、別会議なのかを院内規程で確認してください。
医療安全管理委員会は毎月開催しなければなりませんか?
厚生労働省通知では、医療安全管理委員会を月1回程度開催するとともに、重大な問題が発生した場合には適宜開催することが示されています。開催回数だけでなく、分析、改善策、周知、実施状況の確認・見直しまで継続して行える運用が重要です。
重点リスクを3〜5個に絞ったり、KPIを設定したりすることは必須ですか?
重点リスクを「3〜5個」にすることや、特定の形式でKPIを設定することは、医療法施行規則上の固定要件ではありません。重点化やKPIは、改善策を実行・追跡しやすくするための院内運用上の方法として、施設の状況に応じて設定してください。
次の一手|委員会全体と医療安全管理者を確認する
この記事では「リスクマネジメント委員会」という院内名称から、医療安全管理委員会の正式な位置づけと議事録の残し方までを整理しました。次は、施設全体の安全管理体制と、2026年改正で追加された医療安全管理者の役割を確認するとつながりが分かりやすくなります。
- 委員会・施設基準の全体像:医療安全委員会の施設基準と運用(総論)
- 2026年改正後の配置を確認:医療安全管理者の配置義務化|病院リハ部門がやること
参考文献
- 厚生労働省. 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号). e-Gov法令検索. 医療法施行規則. 2026年8月20日閲覧.
- 厚生労働省. 病院等における医療の安全を確保するための措置について. 医政発0331第72号. 2026年3月31日. 厚生労働省通知.
- 厚生労働省. 医療法施行規則の一部を改正する省令の公布等について. 医政発0319第1号. 2026年3月19日. 厚生労働省通知.
- 厚生労働省. 医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について. 医政地発0331第1号. 2026年3月31日. 厚生労働省通知.
- 厚生労働省. 医療法施行規則の一部を改正する省令等に関するQ&Aについて. 2026年7月27日事務連絡. 厚生労働省事務連絡.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

