若手 PT・OT・ST 向け症例発表の作り方ガイド

キャリア
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この記事の目的と前提

本記事は、若手の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、院内勉強会や学会での 症例発表 をスムーズに準備できるように、「構成の型」と「スライド作りのコツ」をまとめるものです。珍しい症例を披露する場というより、評価から介入・結果までの 意思決定プロセスを共有する場 であることを前提に整理します。

症例発表の準備は、登録・認定 PT、生涯学習単位、キャリア形成にもそのままつながります。ここでは、明日から 1 症例をまとめられるように、若手がつまずきやすいポイントを具体例ベースで解説します。

症例発表をキャリアに活かす流れを見る( PT キャリアガイド )

症例発表で何を伝えれば合格ラインか

症例発表のゴールは、「珍しい症例を見せること」ではなく、評価 → 統合と解釈 → 介入 → 結果 → 次の一手 の筋道を、聞き手が追えるように示すことです。どこで悩み、どの情報を根拠に方針を決めたのかが伝われば、疾患や年齢にかかわらず価値ある発表になります。

持ち時間が 5 分であれば要点のみ、10〜15 分であれば評価や経過の細部まで触れられます。まずは「終わりから逆算」して、最後に何を持ち帰ってほしいか(例:誤嚥性肺炎が疑われたときの初動、褥瘡ハイリスク患者の評価フローなど)を 1 文で言語化しておくと、全体の構成がぶれにくくなります。

症例発表スライドの基本構成テンプレ

症例発表の構成は施設や学会で多少の違いはありますが、多くは次の流れに沿っています。まずはこの「型」をそのままなぞり、慣れてきたら自施設のルールに合わせて微調整していくと負担が少ないです。

① タイトル・背景・目的

タイトルは、疾患名だけでなく 課題と視点 を入れると伝わりやすくなります(例:「誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者に対する体位管理と嚥下訓練の工夫」など)。背景では、症例が自施設でどのような位置づけか(よく遭遇する/方針が悩ましい など)を 2〜3 行で示し、発表の目的を 1 文で明確にします。

② 評価:情報整理と問題リスト

既往歴・生活歴・身体機能・認知・嚥下・栄養など、評価項目をただ羅列するのではなく、「最終的な問題リストにどうつながるか」 を意識して選びます。スライド上は「評価一覧」と「問題リスト」を分けて表示し、特に重要な評価には下線や太字で印を付けると、聞き手も筋道を追いやすくなります。

③ 統合と解釈:仮説の立て方

評価結果から、どのような障害構造や活動・参加レベルの問題があるのかを整理します。「どの要因がボトルネックか」「この患者さんらしさはどこか」を 2〜3 個の仮説としてまとめるイメージです。ここが曖昧だと介入が散らばりやすくなるため、無理に難しい表現を使わず、平易な言葉で構いません。

④ 介入内容と経過

介入は「評価で立てた仮説に対する打ち手」として提示します。時期ごと(例:急性期 → 回復期 → 生活期)やフェーズごと(例:呼吸・循環の安定 → 体位管理 → 立位・歩行)に区切り、各フェーズの狙いと代表的な介入を 1〜2 行で示すと整理しやすくなります。経過は週単位・月単位など、施設の入院期間に合わせてまとめましょう。

⑤ 結果・考察・今後の課題

結果は、「数値」「動作」「生活」の 3 つのレベルで示せると理想的です。考察では、「うまくいった理由」「うまくいかなかった理由」「自施設で再現する際のポイント」を中心にまとめると、聞き手にとっての実務的な学びになります。最後に、今後のフォローや残された課題を 1〜2 点挙げて締めくくります。

評価結果とアウトカムの見せ方のコツ

症例発表では、評価の数値やスコアをどこまで出すか迷いやすいです。ポイントは、「前・中・後」の 3 点 に絞って変化を見せることです。介入前と退院時だけだと、途中でどのように変化したのかが分からず、介入の効果やタイミングが伝わりにくくなります。

数値とグラフはシンプルに 3 点でまとめる

歩行速度や FIM 、嚥下スクリーニングの結果などは、表よりも折れ線グラフや棒グラフにすると直感的に伝わります。ただし、色を多用しすぎると視認性が落ちるため、症例は 1〜2 色に絞り、比較対象(院内平均など)があれば別色で示す程度にとどめます。

PT・OT・ST で押さえたい代表的アウトカム

PT では、歩行速度、 6 分間歩行、バランス評価、 FIM などが代表的です。 OT では、 ADL ・ IADL スケール、作業遂行状況、福祉用具や環境調整の有無などが重要になります。 ST では、嚥下スクリーニング結果、食形態の変化、誤嚥性肺炎の再発有無、コミュニケーション手段の変化などがアウトカムとして有用です。

グラフ・表の NG 例を避ける

よくある失敗として、 1 枚のスライドに多くの評価項目を詰め込みすぎるケースがあります。文字が小さくなると、発表者自身も読み上げるだけになりがちです。「グラフは 1 スライド 1 本」「表は 3〜5 行 × 3 列程度」を目安にし、どうしても情報が多くなる場合はスライドを分割しましょう。

スライドの作り方と話し方のポイント

スライドの見た目と話し方は、聞き手の集中力に直結します。難しいデザインよりも、「1 スライド 1 メッセージ」 を徹底するだけで印象が大きく変わります。

1 スライド 1 メッセージを意識する

各スライドで伝えたいメッセージを 1 つに絞り、そのメッセージをタイトルに書きます(例:「歩行速度は介入 2 週目から改善」「嚥下訓練開始後に発熱回数が減少」など)。本文は箇条書き 3 行以内に抑え、詳細は口頭で補足すると、スライドが読み物になることを避けられます。

図・写真の使いどころと個人情報への配慮

体位ドレナージや歩容、嚥下姿勢など、動作やポジショニングを図や写真で示すと理解が深まりやすくなります。一方で、患者さんが特定されないよう、顔や名前、病棟名などが写り込まないように注意し、施設のルールに沿った撮影・利用許可を得ておくことが大切です。

読み上げない話し方とメモの作り方

スライドの文字をそのまま読み上げると、聞き手はスライドを読むことに集中してしまいます。発表者用のメモには、「強調したい要因」「次のスライドへのつなぎ」「質問されそうな点」を箇条書きしておき、スライドはあくまで「視覚的な補助」として使うイメージを持つと話しやすくなります。

PT・OT・ST それぞれの症例発表の視点

同じ症例でも、 PTOTST でフォーカスするポイントは少しずつ異なります。自分の専門性を意識してまとめることで、発表の軸がぶれにくくなります。

PT では、運動機能・バランス・歩行・呼吸・栄養などの変化を通じて、「どの要因に介入した結果、どの機能・活動が改善したのか」を示します。褥瘡リスクや誤嚥性肺炎リスクとの関係も整理できると、多職種にとっても理解しやすくなります。

OT では、 ADL ・ IADL 、作業活動、環境調整や福祉用具導入のプロセスが鍵になります。「評価で見えた生活上の困りごと」と「作業活動を通じたアプローチ」がどうつながったかを、写真や作業内容の具体例とともに示すと良いでしょう。

ST では、嚥下機能やコミュニケーション能力、誤嚥性肺炎や栄養状態との関わりが中心となります。 RSST や水飲みテストなどのスクリーニングに加え、食形態の調整や姿勢調整、口腔ケアや多職種連携による再発予防の流れを示すと、チーム全体の合意形成にも役立ちます。

よくあるつまずきとチェックリスト

症例発表の準備で若手がつまずきやすいのは、「情報の詰め込みすぎ」と「評価・介入・結果がつながっていない」ことです。発表前に、次のようなチェックリストで確認しておくと安心です。

症例発表前の最終チェックリスト(若手 PT・OT・ST 向け)
項目 確認ポイント OK / 修正
ゴール 聞き手に持ち帰ってほしいメッセージが 1 文で言語化できているか
評価 評価項目が「問題リスト」と 1 対 1 で対応しているか
介入 仮説に対する介入内容がフェーズごとに整理されているか
アウトカム 数値・動作・生活の変化が「前・中・後」の 3 点で示せているか
スライド 1 スライド 1 メッセージになっているか(文字量やフォントサイズは適切か)

チェックリストは印刷して書き込みながら確認すると、次の症例でも流用しやすくなります。院内でフォーマットを共通化しておくと、経験年数に関係なく一定の質を保ちやすくなります。

働き方を見直すときの抜け漏れ防止に。見学や情報収集の段階でも使える 面談準備チェック( A4 ・ 5 分)職場評価シート( A4 ) を無料公開しています。印刷してそのまま使えます。ダウンロードページを見る

おわりに

症例発表は、「評価 → 統合と解釈 → 介入 → 再評価」という臨床のリズムを磨く練習の場でもあります。今回紹介した構成テンプレとチェックリストを使いながら、まずは 1 症例を丁寧に振り返り、次の患者さんへの関わり方やチーム連携の質を少しずつ高めていきましょう。

あわせて、将来の働き方や学び方を整理したいときは、面談準備チェックと職場評価シートも活用してみてください。現職で学び続けるのか、環境を変えるのかを検討する際にも、「今の学びがどこにつながっているか」を可視化する助けになります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問

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教育体制に不安があるとき、転職はいつ検討すべきですか?

症例発表や勉強会の機会が少ない、指導者がいないなど、学びの環境に不安があるときは、いきなり退職を決めるのではなく、まずは「今の職場でできる工夫」と「外部資源の活用」を 3〜6 か月ほど試してみるのがおすすめです。そのうえで、どうしても改善が難しい場合は、教育体制や症例経験が得られる職場への転職も選択肢になります。

チェックすべきポイントや具体的な相談の流れは、理学療法士のキャリアガイド(職場を見直すサイン集)で詳しく解説しています。今の不安が「一時的なものか」「環境要因か」を整理する材料として活用してみてください。

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