症例発表の経過表・グラフの作り方|リハ職向け

臨床手技・プロトコル
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症例発表の経過表は「時間軸×4つの情報」で整理する

症例発表の経過は、初期・中間・最終の数値を並べるだけではなく、「いつ、患者の状態がどう変わり、何を評価し、どのような介入や方針変更があったか」を同じ時間軸で対応させると伝わりやすくなります。基本となるのは、①患者の状態・活動、②評価・アウトカム、③介入・方針、④重要イベントの4つです。

経過が単純なら表、複数の出来事が連続するなら経過図、数値の推移そのものを見せたいならグラフを使います。大切なのは、すべてを載せることではなく、発表で伝えたい変化を理解するために必要な情報だけを残すことです。

症例発表の経過を整理するときの4つの情報
情報 確認すること 例
患者の状態・活動 実際に何ができるようになったか 歩行、移乗、更衣、食事、疼痛など
評価・アウトカム 変化を何で確認したか 10m歩行、TUG、FIM、各種評価結果など
介入・方針 その時期に何を行ったか 歩行練習、装具調整、環境調整、家族指導など
重要イベント 経過の解釈に影響する出来事 病状変化、転棟、転倒、方針変更、退院調整など
症例発表の経過整理フロー。発表テーマ、時間軸、載せる情報、経過表・経過図・グラフの選択順を示す図
症例発表では、先にグラフを作るのではなく、発表テーマ、時間軸、載せる情報、見せ方の順に整理します。

経過表・経過図・グラフは「何を見せたいか」で使い分ける

表・経過図・グラフのどれが優れているという決まりはありません。比較したい情報の種類によって使い分けます。前後の違いを確認したいだけなら表で十分なこともあり、複数の評価・介入・イベントが重なる症例では経過図のほうが理解しやすくなります。

症例発表における経過表・経過図・グラフの使い分け
形式 向いている場面 主に伝えられること
経過表 重要な時点を比較したい 評価値、ADL、介助量、方針の違い
経過図 複数の出来事を同じ時間軸で示したい 症状・活動・評価・介入・イベントの関係
グラフ 数値を複数回測定している 改善・悪化・停滞などの推移

たとえば、初回評価と退院前評価だけを比較する症例なら、無理にグラフを作る必要はありません。一方、歩行速度や疼痛などを繰り返し測定しており、途中の変化にも意味がある場合はグラフが役立ちます。

時間軸は「前・中・後」に固定しない

症例発表の時間軸は、その症例の変化を説明しやすい単位で設定します。「前・中・後」は使いやすい整理方法のひとつですが、すべての症例に当てはめる必要はありません。

症例発表で使える時間軸の例
時間軸 向いている症例 表示例
病日 発症後の経過が重要 第3病日、第10病日、第21病日
介入開始からの期間 リハビリ経過を中心に示したい 開始時、2週後、4週後
重要イベント 方針変更の前後を示したい 初回評価、装具変更、歩行自立、退院前
日付 実際の日程との対応が重要 6月1日、6月15日、7月1日

発症からの変化を示すなら「第○病日」、リハビリ介入後の変化を示すなら「介入開始○週」など、発表テーマに合う基準を選びます。途中で基準を変えると聞き手が追いにくくなるため、同じスライド内では時間軸を統一します。

経過表に載せる情報は発表テーマから逆算する

経過表にはカルテにある情報をすべて載せるのではなく、「この症例から何を伝えたいのか」を理解するために必要な情報を選びます。

たとえば「歩行自立に至った経過」が発表の中心なら、歩行能力、関連する身体機能、使用した補助具・装具、介助量、主な介入や方針変更を優先します。食事量や検査値などが歩行経過の解釈に関係しないのであれば、経過表へ無理に追加する必要はありません。

逆に、途中で発熱や疼痛増悪があり一時的に歩行能力が低下した場合、そのイベントを省くとグラフだけでは変化を正しく解釈できません。数値だけでなく、数値が変化した背景を理解するためのイベントも必要に応じて残します。

症例発表の経過表|重要な時点を横にそろえる

経過表は、比較したい時点を列にして、患者の状態・評価・介入を行ごとにそろえると読みやすくなります。以下は説明用の架空例です。

スマートフォンでは横スクロールで確認してください。

リハビリ症例における経過表の例
項目 第3病日
初回評価
第10病日
方針変更
第18病日
再評価
第28病日
退院前
歩行 歩行器・介助あり 歩行器・見守り 杖歩行へ変更 杖歩行自立
10m歩行 未実施 18.2秒 14.0秒 11.6秒
主な介入・方針 立位・歩行練習開始 歩行量を拡大 杖歩行練習へ移行 屋内移動を自主練習へ
重要イベント ― ― 補助具を変更 退院方針決定

この例では「初期・中期・後期」と機械的に分けず、評価や方針が変わった時点を列にしています。重要な節目が2つしかなければ2列でも構いません。逆に重要な変化が複数ある症例では、必要な時点を追加します。

経過図は「状態・評価・介入」を同じ時間軸に対応させる

経過図は、単独の数値よりも複数の出来事の時間的な関係を見せたい症例に向いています。

CAREガイドラインでは、症例の重要な出来事を時系列で示すtimelineが症例報告の構成要素として位置づけられています。また、2025年の『臨床神経学』では、経過図を作成する際に病日をそろえ、症候・検査・治療などを同じ時間軸上へ整理する方法が示されています。

リハビリの症例発表では、この考え方を患者の状態・活動、評価結果、介入・方針へ置き換えると整理しやすくなります。

リハビリ症例の経過図へ配置する情報の考え方
配置 内容 例
上段 患者の状態・活動 疼痛、歩行、ADL、食事など
中段 評価・アウトカム 歩行速度、TUG、評価尺度など
下段 介入・方針 練習内容、装具、環境調整など
時間軸 共通する基準 第○病日、介入開始○週など

経過図では、関連する項目を近くに配置し、同じ種類の情報は位置や書式をそろえます。重要ではない症状や評価値まで詰め込むと、時間的な関係が見えにくくなるため、発表テーマに関係する要素へ絞ります。

グラフは「数値の推移」が発表のメッセージになるときに使う

グラフは必須ではありません。複数回測定した数値があり、その推移を見せること自体に意味がある場合に使用します。

症例発表でのグラフ・表示方法の選び方
見せたいこと 向いている表示 例
複数時点の数値推移 折れ線グラフ 歩行速度、疼痛、運動耐容能
少数の時点を比較 表・数値表示 初回と退院前のTUG
介助量や段階の変化 経過表・段階表示 全介助→軽介助→見守り→自立
介入と数値変化の関係 経過図+必要なグラフ 装具変更と歩行速度の推移

折れ線グラフを使用する場合は、目盛線や装飾を増やしすぎず、何の数値がどう変化したのかを優先します。グラフの種類を増やすより、発表で説明する変化が一目で確認できることが重要です。

測定条件が途中で変わったら同じ数値として並べない

症例発表で特に注意したいのが、評価値は同じでも測定条件が変わっているケースです。条件が異なる数値をそのまま線でつなぐと、実際には比較できない変化まで連続した改善のように見えることがあります。

たとえば10m歩行で、初回は歩行器・軽介助、再評価時は杖・見守りだった場合、タイムだけを並べても同一条件の比較にはなりません。

測定条件が変わった場合の見せ方
状況 見せ方
補助具が変わった 各数値の横に歩行器・杖などの条件を明記する
介助量が変わった タイムと介助条件をセットで示す
酸素投与など治療条件が変わった 測定時の条件を注記する
実施方法自体が異なる 単純な前後比較として扱わず、条件変更を明示する

条件変更そのものが症例の重要な変化であれば、隠すのではなく経過表や経過図に入れます。数値だけでなく「どの条件で測定した値か」まで示すことで、聞き手が変化を正しく解釈できます。

グラフの変化と介入効果を同じ意味にしない

介入後に評価値が改善していても、それだけで「この介入によって改善した」とは断定できません。自然回復、治療、全身状態、練習量、環境変化など、同じ期間に複数の要因が関係している可能性があります。

症例発表では、経過表やグラフで「何が、いつ変化したか」を示したうえで、考察では「この時期にどのような要因が関係した可能性があるか」を分けて説明すると、結果と解釈が混同されにくくなります。

症例発表の経過スライドを作る手順

最初からPowerPoint上で情報を並べるより、先に時系列を整理してからスライド化すると抜けや重複を減らせます。

  1. 発表で伝えたい変化を1文で決める:「歩行自立までの経過」「装具変更前後の歩行変化」など、経過スライドの役割を明確にします。
  2. 時間軸を作る:病日、介入開始からの期間、重要イベントなどから症例に合う基準を選びます。
  3. 状態・評価・介入・イベントを並べる:まず情報を出し、その後に発表テーマと関係の薄い項目を削ります。
  4. 表・経過図・グラフを選ぶ:時点比較なら表、複雑な時系列なら経過図、数値推移が重要ならグラフを選択します。
  5. 測定条件を確認する:補助具、介助量、酸素投与などが変わっていないか確認し、必要なら注記します。
  6. 最後にメッセージを確認する:スライドを見たとき「何が変わったか」を短時間で読み取れるか確認します。

症例発表の経過表・グラフで多い失敗

読みにくい経過スライドは、デザインよりも情報の選び方と比較条件に問題があることが少なくありません。

症例発表の経過整理で避けたい例
失敗 問題 修正方法
評価結果を全部載せる 発表の主題が埋もれる 経過の説明に必要な評価へ絞る
時間軸がそろっていない 介入と変化の前後関係が分からない 病日や介入開始日など基準を統一する
測定条件を書かない 数値を比較してよいか判断できない 補助具・介助量など必要な条件を併記する
何でもグラフ化する かえって読み取りにくくなる 数値推移が重要な項目だけグラフ化する
改善=介入効果と断定する 結果と解釈が混同される 経過として確認できた事実と考察を分ける

よくある質問

症例発表では経過表とグラフのどちらを使えばよいですか?

前後や重要な数時点を比較するなら経過表、複数回測定した数値の推移を示したいならグラフが向いています。症状・評価・介入など複数の出来事を同じ時間軸で見せたい場合は経過図を検討します。

初回評価と最終評価だけでもよいですか?

発表テーマを説明できるのであれば問題ありません。途中の方針変更や病状変化が結論の解釈に影響する場合は、その時点も加えたほうが経過を理解しやすくなります。

補助具や介助量が途中で変わった場合、数値を比較できますか?

測定条件が異なるため、同一条件の単純な前後比較として扱わないほうが安全です。各時点の補助具・介助量などを明記し、条件そのものの変化も含めて経過を示します。

実際の日付と第○病日はどちらを使えばよいですか?

発症後の経過を示すなら第○病日、実際の日程との対応が重要なら日付が使いやすくなります。どちらを選んでも、同じ経過スライド内では基準を統一することが重要です。

次に確認したい記事

症例発表全体の組み立てから確認したい場合は、症例発表の作り方まとめで、導入から考察・結論までの流れを整理しています。

経過を整理したあとにスライド全体の見出しへ落とし込みたい場合は、症例発表スライド見出しテンプレを確認してください。


参考文献

  1. 平賀陽之. 経験した症例をまとめる:わかりやすく効果的なスライドの作り方. 臨床神経学. 2025;65(6):459-467. DOI
  2. 平賀陽之. 症例報告における効果的な図の作り方. 臨床神経学. 2025;65(2):150-156. DOI
  3. Gagnier JJ, Kienle G, Altman DG, et al. The CARE guidelines: consensus-based clinical case report guideline development. J Clin Epidemiol. 2014;67(1):46-51. PubMed
  4. Riley DS, Barber MS, Kienle GS, et al. CARE guidelines for case reports: explanation and elaboration document. J Clin Epidemiol. 2017;89:218-235. PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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