廃用症候群の評価とリハビリの実践

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廃用症候群の全体像と本記事の使い方

廃用症候群とは、不活動により筋・骨・循環・呼吸・代謝・認知が連鎖的に低下する状態です。(同義語:不動化症候群、デコンディショニング)

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廃用症候群は「不活動(臥床・安静)」を起点に、筋・骨・循環・呼吸・代謝・認知/情動まで連鎖的に機能低下が波及する状態です。本記事(見出し 3–12)は評価観点を体系化した構成です。本ブロックでは初期 72 時間の原則リスク層別化の考え方を先出しし、続く評価パートの“読みどころ”を明確にします。

まず押さえるべき 3 つの目的

  • 合併症を増やさない:誤嚥性肺炎・DVT・褥瘡・起立性低血圧の予防を最優先。
  • 早期離床と耐久性の回復:端座位許容 → 立位許容 → 歩行許容の順で段階的に。
  • 生活再建:退院後の生活行為(ADL/IADL)に直結する練習へ早期に移行。

初期 72 時間の原則(病棟想定)

  • 体位管理:2 時間ごとの体位変換、背上げ(30–60°)からの耐久確認、圧抜き。
  • 端座位トレーニング:短時間×複数回。RPE 11–13(“ややきつい未満”)で可。
  • ROM+静的〜軽動的収縮:関節拘縮と筋萎縮の同時予防(痛み最小)。
  • 呼吸ケア:深呼吸・咳嗽介助・下肢ポンプ運動で肺換気と静脈還流を促進。
  • 生活基盤:水分・排泄・鎮痛・睡眠・口腔ケアを整え、「休みすぎ」を作らない。

リスク層別化の目安(運動許容量の判断)

  • 低リスク:バイタル安定、酸素化安定、起立性症状(−)。端座位 → 立位へ進行可。
  • 中リスク:起立性低血圧や息切れあり。端座位反復+下肢ポンプ中心、立位は短時間から。
  • 高リスク:酸素化不安定、重度の疼痛/貧血/感染増悪など。ROM・呼吸介入とポジショニング優先。

この後(見出し 3–12)の読み方

各評価は「現状の許容量」と「合併症リスク」を同時に見極める目的で活用します。たとえば、バイタル・循環・呼吸で安全域を確認し、筋力/ROM/ADL/栄養/褥瘡介入の優先順位と頻度を決定します。評価が一通り終わったら、末尾の「介入の骨子・1 週間モデル」を参照して、当日からの実装へ繋げてください。評価全体の見取り図は評価ハブも参考になります。

廃用症候群とは

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廃用症候群とは、長期の臥床や不活動により引き起こされる身体機能および心身機能の低下を指します。

高齢者や長期入院患者にみられやすい症状であり、全身の機能であったり、生命予後にまで関係しています。

廃用症候群による影響は「筋・骨格系に及ぼす影響」「心・血管系に及ぼす影響」といったように様々ですが、大別すると以下のように分類することができます。

【廃用症候群が及ぼす悪影響】

  1. 筋・骨格系(筋力低下、関節拘縮、骨萎縮等)
  2. 心・血管系(起立性低血圧、運動耐容能の低下、血栓症や塞栓症のリスクの増大等)
  3. 呼吸器系(一回換気量低下、分時換気量低下、肺活量低下、機能的残気量の低下、肺炎の発症リスク増大)
  4. 消化器系(体重減少、便秘、食欲低下、低栄養等)
  5. 泌尿器系(尿路結石、尿路感染等)
  6. 精神・心理面(情緒の不安定化、抑うつ状態、意欲低下、認知症等)

このように廃用症候群は全身に影響を及ぼす恐ろしい病態であり、ADL や QOL の低下に直結しています。

廃用症候群への対応策としては、適切な廃用症候群の評価と効果判定に基づくリハビリテーションが重要となります。

バイタルサイン

廃用症候群の患者様を対象にリハビリテーションを実施する場合、バイタルサインの評価は必要不可欠となります。

廃用症候群では、循環血液量が低下、血管運動調節機能障害、心筋機能が低下していることにより、起立性低血圧、眩暈や失神症状を引き起こしやすくなります。

また、不動により下肢筋群の活動が低下することで、血液凝固能を亢進させ、静脈血栓が発生するリスクが増大します。

安全にリハビリテーションを実施するためには、バイタルサインの継続的なモニタリングが必要となります。

評価項目

廃用症候群に対してリハビリテーションを実施する場合に必要なバイタルサインの評価項目について解説します。

血圧

一般的に成人の血圧の正常値は以下の通りになります。

  • 至適血圧:収縮期血圧 120 mmHg 未満かつ拡張期血圧 80 mmHg 未満
  • 正常血圧:収縮期血圧 120 ~ 129 mmHg 未満かつ/または拡張期血圧 80 ~ 84 mmHg 未満

廃用症候群のリハビリテーションでは一般的な血圧管理に廃用症候群(高齢者)の特徴を併せて管理することが重要になります。

【廃用症候群(高齢者)の特徴】

  • 健常者より収縮期血圧が高い傾向がある
  • 健常者より血圧変動が大きくなる
  • 起立性低血圧が出現しやすいため、姿勢を変えた後の血圧の変動に注意する

脈拍

成人の脈拍の基準値は以下の通りになります。

  • 正常:60 ~ 100回 /分
  • 頻脈:100 回以上
  • 徐脈:50 回以下

成人の基準値に廃用症候群(高齢者)の特徴を併せて管理することが重要になります。

【廃用症候群(高齢者)の特徴】

  • 成人と比較して安静時の脈拍数が低い傾向にある(50 ~ 70 回 /分)
  • 合併症として、脈拍に影響を来たす疾患(心疾患、糖尿病、高血圧)を有する確率が高くなる
  • 歳を取るほど最大心拍数(220 – 年齢)が低下する
  • 心機能や体温調節機構の低下により、運動時の脈拍数上昇が顕著になる

呼吸数

成人の呼吸数の基準値は以下の通りになります。

  • 正常値:12 ~ 20 回/分
  • 除呼吸:12 回以下 /分
  • 頻呼吸:25 回以上 /分

成人の基準値に廃用症候群(高齢者)の特徴を併せて管理することが重要になります。

【廃用症候群(高齢者)の特徴】

  • 安静時から頻呼吸の傾向(16 ~ 24 回/分)
  • 肺の機能が低下し、呼吸が浅く早くなる
  • 運動時の呼吸数増加が顕著になる

体温

成人の体温の正常値は以下の通りになります。体温は個人差が大きい項目になるため、対象者ごとの平熱を意識してアセスメントすることが重要となります。

  • 正常値:36.0 ~ 37.0 ℃

【廃用症候群(高齢者)の特徴】

  • 基礎体温が低くなる(成人の時から −0.2℃程度)
  • 発熱時の体温上昇が緩徐になる
  • 体温調節機構の低下により環境温による影響を受けやすくなる

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)

成人の SpO2 の基準値は以下の通りになります。

  • 正常値:96 ~ 99 %
  • 呼吸不全:90 % 以下

【廃用症候群(高齢者)の特徴】

  • 基準値は上述の通りだが SpO2 は加齢とともに低下する傾向がある
  • 呼吸機能が低下している場合には、運動時に SpO2 が下がり幅が大きくなる

筋力

廃用症候群において筋力評価は得に重要な項目となります。その理由は、長期臥床や不活動によって筋力低下および筋萎縮は急速に進行するためとなります。基本動作や ADL の再獲得には一定以上の筋力が必要であり、筋力評価はリハビリテーションの土台となります。

長期臥床や不活動といっても、対象者の意識状態、全身状態、安静度の程度により筋力低下の進行率は異なります。一般的な目安としては 1 日に約 1〜 3 %、1 週間で 10 〜 15 %、1 ヶ月で約 50 % 程度の筋力低下が生じると考えられています。

評価方法

代表的な筋力評価の方法として、以下の種類をあげることができます。

  • MMT (徒手筋力検査)
  • 握力測定
  • HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)

効果判定のポイント

  • MMT スコア(0 ~ 5 の 6 段階)
  • 握力の数値
  • HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)で測定した数値
  • 基本動作能力の変化
  • 座位や立位などの姿勢保持能力
  • ADL 能力の変化

筋力評価については、他の記事で詳しくまとめています!《【筋力と筋肉量の評価方法】ポイントを解説【四肢周径と筋力検査】》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 

関節可動域(ROM)

安静臥床および身体不活動により、関節周囲の皮膚や筋肉、靭帯等の軟部組織が変性し、関節可動域が縮小します。

関節可動域の評価が重要な理由は、廃用症候群では関節拘縮が早期に出現し、進行していくためになります。関節拘縮は二次的な機能障害を引き起こし、ADL を著しく制限する可能性があります。また、関節可動域の制限は疼痛や筋緊張の増加にもつながるため、早期からの評価と介入が必要となります。

評価方法

以下の項目に着目して評価を実施する必要があります。

  • 関節可動域(ROM)測定
  • 関節可動域制限の原因について
  • 疼痛の程度
  • 筋緊張の状態

効果判定のポイント

  • 関節可動域(ROM)の値の変化は?
  • 基本動作や ADL 実行時に関節可動域制限が阻害因子となっていないか?
  • 関節可動域制限の原因(痛みや筋緊張異常)に改善を認めているのか?

関節可動域については、他の記事で詳しくまとめています!《【関節可動域制限(関節拘縮)とは】8つのエンドフィール(抵抗感)》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 

呼吸機能

廃用症候群すなわち臥床期間が長期化すると、腹腔内にある臓器が横隔膜運動を妨げることになるため、機能的残気量(FRC)が減少し酸素運搬能を低下させます。

呼吸機能の評価が重要である理由は、長期臥床により呼吸筋力の低下や肺容量の減少が生じるためになります。加えて、痰の貯留リスクも高まり、誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高くなります。運動耐容能にも直接影響するため、包括的な評価が重要となります。

評価方法

以下の項目に着目して評価を実施する必要があります。

  • 呼吸機能検査(肺活量、1 秒率)
  • 運動耐容能の評価(6 分間歩行テスト)
  • 心肺運動負荷テスト(エルゴメーター)
  • 呼吸困難感の評価(Borg スケール)
  • SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)

効果判定のポイント

  • 呼吸機能検査値に改善を認めるか
  • 6 分間歩行テストにおける歩行距離、SpO2 の変化、呼吸困難の出現はどうか
  • 心肺運動負荷テストの結果はどうか
  • 日常生活における呼吸困難感の程度に変化はあるのか

循環機能

長期臥床、不活動の継続により衰えていくのは筋骨格系という印象があると思いますが、実は心臓や血管などの循環機能にも大きな影響が与えられます。

廃用症候群に至ると心臓の予備力低下に伴い、静脈還流量が減少します。すると心拍出量が減少し、運動耐容能が低下することになります。

また、深部静脈血栓症のリスクも高まるため、早期からの評価と予防的介入が必要です。

評価方法

  • 脈拍数、不整脈の評価
  • 体位による血圧の評価(臥位、座位、立位)
  • 末梢循環評価(足関節上腕血圧比、チアノーゼ)
  • 浮腫の評価

効果判定のポイント

  • 脈拍変動や不整脈の程度に改善を認めるのか
  • 起立性低血圧の程度が改善しているのか
  • 末梢循環動態に改善を認めるのか
  • 浮腫の程度は改善しているのか

リスク管理

  • 深部静脈血栓症の予防
  • 訓練中の自覚症状のアセスメント
  • 心負荷の適切な管理
  • 運動強度の調整

ADL(日常生活動作)

ADL 評価が重要な理由は、廃用症候群による機能低下が直接的に日常生活の自立度に影響を与えるためとなります。

また、ADL を評価を通じて具体的な目標を設定することが可能となり、効果的なリハビリテーション計画を立案することに繋がる可能性があります。

評価方法

効果判定のポイント

  • 評価スケールスコアの改善
  • 介助量の減少
  • 動作の質的改善
  • 生活範囲の拡大

転倒リスクの評価

転倒リスクの評価が重要な理由は、廃用症候群により筋力やバランス機能が低下し、転倒リスクが著しく高くなるためとなります。

転倒による骨折は新たな廃用症候群を引き起こす可能性があり、予防的評価と介入が重要となります。

評価方法

効果判定のポイント

  • バランス能力の向上
  • 歩行速度の改善
  • 転倒不安感の軽減
  • 安全な移動能力の獲得
  • 下肢の筋力強化、機能改善

予防的アプローチ

  • 環境整備の効果
  • 補助具使用の適切性
  • 転倒予防教育の効果

認知機能、精神機能

認知機能および精神機能の評価が重要な理由は、長期の不活動や環境の変化により認知機能の低下やうつ状態を引き起こすリスクが高まるためとなります。

リハビリテーションへの意欲や理解力は治療効果に直接的に影響するため、包括的な評価が重要となります。

評価方法

効果判定のポイント

  • 認知機能スコアの維持、改善
  • 意欲の向上
  • 抑うつ状態の改善
  • 社会的交流の増加

栄養状態

栄養状態の評価が重要な理由は、廃用症候群により代謝が低下し、筋タンパク質の分解が促進されるためとなります。

また、適切な栄養状態はリハビリテーションの効果を最大化し、廃用症候群からの脱却を図るうえで必要不可欠となります。

評価方法

効果判定のポイント

  • 栄養スクリーニングの結果
  • 体重や BMI の改善
  • 筋肉量の維持、増加
  • 血液データの改善
  • 食事摂取量の改善

栄養管理の効果

  • 創傷治癒への影響
  • リハビリテーション効果への影響
  • 全身状態への影響
  • 認知機能への影響

褥瘡発生リスク

褥瘡リスクの評価が重要な理由は、廃用症候群により皮膚の脆弱性が増し、長期臥床による圧迫で褥瘡が発生しやすくなるためとなります。

褥瘡は全身状態を悪化させ、生命予後にも直結する症状になります。褥瘡を発生させないためには対象者ごとに褥瘡発生リスクを評価し、適切な予防策を講じる必要があります。

評価方法

効果判定のポイント

  • リスクアセスメントスケールの得点は?
  • ベッドポジショニングによって体圧を分散することはできているのか?
  • 体圧分散マットレスは適切か(マットレスは固くないか、機能に問題はないか?)
  • 日々のスキンケアの実施状況に問題はないか?

廃用症候群のリハビリテーション:実装の骨子

ここでは、評価(見出し 3–12)を踏まえて、病棟〜在宅移行で使いやすい段階づけ・運動処方・注意/中止基準・1 週間モデルを提示します。施設基準や主治医指示に必ず従い、下記は実装の「たたき台」として調整してください。

離床プロトコル(例:3 段階)

離床レベルと介入の目標(例)
レベル 主目標 主介入 レベルアップの目安
Lv1:準備期 循環・呼吸の安定、端座位許容 体位管理、呼吸練習、ROM、足関節ポンプ、端座位 3–5 分×複数回 端座位で SpO₂ と HR が安定、起立性症状(−)
Lv2:立位獲得期 立位許容・移乗/歩行の開始 立ち上がり/移乗練習、短距離歩行、下肢筋トレ(RPE 11–13)、ADL 練習 立位 3–5 分許容、歩行で SpO₂・HR 安定、疲労が短時間で回復
Lv3:耐久性向上期 歩行距離と日中座位時間の拡大 連続歩行・段差、サーキット、家事動作、外来移行の準備 主観的疲労が軽度、日中座位 6–8 時間、合併症兆候(−)

運動処方の考え方(FITT の目安)

  • 頻度:毎日(病棟は 1–3 セッション/日+自習)。
  • 強度:RPE 11–13 を基本。筋力は 10–15 回で限界になる負荷× 2–3 セット(疼痛・合併症に応じ調整)。
  • 時間:短時間×高頻度(5–10 分×複数回)から開始し、持続時間を漸増。
  • 種類:ROM/筋力(下肢重点)/起立・歩行/呼吸練習/ADL 練習を組み合わせる。

呼吸・循環ケアと合併症予防(要点)

  • 呼吸:深呼吸・咳嗽介助、必要に応じ排痰手技。座位での胸郭可動域改善。
  • DVT:足関節ポンプ、弾性ストッキング/IPC の適応確認、早期離床。
  • 褥瘡:体圧分散、2 時間ごとの体位交換、栄養・水分の確保。
  • 誤嚥:食形態・姿勢・一口量、口腔ケアと嚥下練習の併用。

注意・中止基準(例)

施設の中止基準に従うことを前提に、現場での判断材料の一例です。

  • 胸痛・新規の神経症状・失神/前失神、重度の呼吸困難。
  • SpO₂ が 90% を下回る、または安静比 4% 以上の持続低下。
  • 収縮期血圧が 200 mmHg 以上/90 mmHg 未満、または急激な変動。
  • 安静時 HR > 120 bpm、または不整脈の増悪。
  • 発熱・感染増悪・コントロール困難な疼痛・めまい/悪心の増悪。

1 週間モデル(例)

病棟での 1 週間モデル(例)
主な目標 介入例 セルフメニュー
Day 1–2 端座位許容・循環/呼吸安定 体位管理、端座位短時間×複数、ROM、呼吸練習 深呼吸、足関節ポンプ、上肢挙上
Day 3–4 立位許容・短距離歩行開始 立ち上がり/移乗、歩行 5–10 分、下肢筋トレ(RPE 11–13) 立位保持、STS 繰り返し、歩行練習(見守り下)
Day 5–7 耐久性・ADL 練習の拡大 連続歩行/段差、家事動作、サーキット、在宅準備 日中座位 6–8h、屋内歩行、簡単な家事動作

家族教育と自己訓練

  • 起居動作の介助量を段階的に減らす練習(安全第一)。
  • 日中座位時間の目安(例:初週 4–6 時間 → 以降 6–8 時間)。
  • 転倒・誤嚥・褥瘡の兆候チェックリストを共有。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

起立性低血圧がある患者さんは、どう進めれば良い?

まず座位耐久を短時間×高頻度で反復し、下肢ポンプ運動・弾性ストッキング/IPC の適応を確認します。体位変換時は段階的(臥位 → 半座位 → 端座位 → 立位)。水分・塩分・鎮痛・貧血などの全身管理を整え、立位や歩行はRPE 11–13から開始。症状が強い場合は座位中心で一時的に後退し、主治医と対応(昇圧薬等)を連携します。

運動中の SpO₂ と呼吸数はどの程度を目安にする?

一般に SpO₂ は90%未満への低下や安静比−4%以上の持続低下は中止のシグナル。呼吸数は安静時から急増し会話困難となる場合や呼吸困難感が強い場合は中止を検討。酸素療法中は処方流量の範囲内で実施し、増量の要否は医師/看護師と協議します。

DVT の既往や高リスク例での運動は?

診断・治療状況を必ず確認。抗凝固療法が安定し、医師が許可した範囲で早期離床を推奨します。疼痛部位の過度圧迫や強いマッサージは避け、足関節ポンプや歩行などの下肢運動で静脈還流を促進します。

家族が在宅でサポートできることは?

日中座位時間の拡大(例:6–8 時間)を目標に、短時間×高頻度の立ち上がり・歩行練習をサポート。浴室・トイレなどの環境整備、栄養・水分・口腔ケアの習慣化、転倒・誤嚥・褥瘡サインのチェックリスト活用が有効です。

参考文献

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