心不全リハビリ評価ハブ|評価項目と順番・使い分け

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心不全リハビリ評価|まず状態を確認し、目的別に評価を選ぶ

心不全リハビリの評価では、NYHA・6 MWT・Borgなどを毎回すべて取るのではなく、まず増悪やうっ血を疑う変化がないかを確認し、そのうえで「何を判断したいか」に応じて評価を選ぶことが重要です。

このハブでは、増悪・うっ血確認 → 症状・活動度 → 運動耐容能 → 身体機能 → 運動中の反応 → 再評価の順に整理します。個々の尺度の採点や実施手順は各子記事へ分け、ここでは心不全患者を評価するときの全体像と使い分けを確認します。

心不全リハビリ評価を増悪・うっ血確認、症状・活動度、運動耐容能、身体機能、運動中の反応、再評価の6段階で示した図
図:心不全リハビリ評価は、状態確認から再評価まで6つの軸で整理します。

心不全リハ評価の順番|最初に「評価へ進める状態か」を見る

最初に決めたいのは、どの尺度を使うかではなく、運動耐容能や身体機能を評価できる状態かどうかです。その後に症状・活動度、運動耐容能、身体機能、実際の負荷への反応を目的別に追加すると、評価項目を増やしすぎずに整理できます。

心不全リハビリで評価する6つの軸と使い分け
順番 見る軸 主な評価・所見 判断すること 詳しく見る
1 増悪・うっ血 症状変化、体重、浮腫、呼吸状態、JVPなど 運動耐容能・身体機能評価へ進める状態か JVPの評価
2 症状・活動度 NYHA、SAS どの活動で症状・活動制限が生じるか NYHASAS
3 運動耐容能 CPX、6 MWT 運動に耐えられる能力と負荷への反応 6分間歩行テスト
4 身体機能 SPPB、歩行速度、バランス、握力など 心肺機能以外の身体機能低下が影響していないか フレイル評価の選び方
5 運動中の反応 Borg、症状、HR、血圧、SpO2など 実際の負荷が患者にとって適切か Borgスケール
6 再評価 同じ評価・同じ条件で比較 維持・増量・減量・相談のどれへ進むか 評価の最小セットと再評価

増悪・うっ血確認|運動耐容能を測る前に今日の状態を見る

心不全では、運動耐容能の数値を取る前に、前回や普段と比べて症状やうっ血所見が悪化していないかを確認します。体重変化、浮腫、呼吸状態、頸静脈所見などを単独で決め打ちせず、複数の情報を合わせて現在の状態を捉えます。

JCS/JACRの2021年改訂版ガイドラインでは、慢性心不全に対する全身的な運動療法の適応を考える場面で、少なくとも過去3日間に呼吸困難・易疲労性などの自覚症状や、浮腫・肺うっ血などの身体所見の増悪がなく、過度の体液貯留や脱水がない安定した状態であることが示されています。急性期や状態が変動している患者では、この条件を機械的に当てはめるのではなく、病期・治療経過・主治医指示・施設基準を踏まえて個別に判断します。

ここでの目的は、「JVPが高いから中止」と1項目だけで決めることではありません。今日は予定していた負荷評価へ進めるのか、評価内容を下げるのか、先に多職種へ共有するのかを判断する入口として使います。

症状・活動度|NYHAで全体を捉え、SASで生活場面を具体化する

症状・活動度の評価では、NYHAとSASの役割を分けて考えます。NYHAは心不全患者の身体活動制限を大きく層別化し、患者の状態を共通言語として共有するための基本的な評価です。

一方で、NYHAだけでは「具体的にどの生活動作から症状が出るのか」まで把握しにくい場合があります。そのような場面では、SASを使って症状が出現する活動強度を具体化すると、生活目標や運動処方へつなげやすくなります。

NYHAで全体の活動制限を捉え、必要に応じてSASで生活上の症状出現ラインを具体化すると整理すると、2つの評価を無理に競わせずに使い分けられます。

運動耐容能|CPXと6 MWTは同じ役割ではない

心不全の運動耐容能評価では、CPXと6 MWTの位置づけを分けることが重要です。JCS/JHFS 2025心不全診療ガイドラインでは、CPXは労作時呼吸困難・易疲労性の原因評価、予後評価、運動処方などに用いられ、実施可能な場合の重要な運動耐容能評価として位置づけられています。

一方、CPXを実施できない場合には、6分間歩行距離による評価が予後評価や治療効果判定の選択肢になります。6 MWTは歩行というADLに近い動作で、最大能力ではなく一定時間の歩行耐容能を確認できる点が特徴です。

6 MWTを再評価に使用する場合は、距離だけを比べません。歩行路、声かけ、補助具、酸素条件などをそろえたうえで、症状や運動後の反応を合わせて確認します。

身体機能|6 MWTが低い理由を心肺機能だけで決めない

歩行距離が短いからといって、その原因がすべて心肺機能にあるとは限りません。高齢心不全患者では、下肢機能、筋力、バランス、歩行速度、フレイル・サルコペニアなどがADLや運動能力を制限している場合があります。

JCS/JHFS 2025心不全診療ガイドラインでは、フレイル・サルコペニアが疑われる患者や、CPX・6 MWTを実施できない患者に対して、SPPB、4m歩行、バランス機能などによる下肢機能評価が選択肢として示されています。握力も、全身の身体機能・筋力を簡便に捉える評価として位置づけられています。

そのため、6 MWTや日常歩行が低下している場合は、心肺機能の制限なのか、末梢の身体機能低下が大きいのかを分けて考えることが、その後の介入選択につながります。

運動中の反応|Borgは負荷調整のために使う

Borgは、CPXや6 MWTの代わりに運動耐容能そのものを測定する評価ではありません。歩行やエルゴメータなどを行ったときに、患者が負荷をどの程度きつく感じているかを確認し、運動強度や休憩方法を調整するために使います。

評価時はBorgだけを単独で見るのではなく、症状、心拍数、血圧、SpO2、表情や会話など、その患者で必要な情報と合わせて判断します。

また、「Borg○点」だけでは再評価しにくいため、どの尺度を用いたか、何を評価した値か、どの負荷・どの時点で確認したかをそろえておくことが重要です。息切れと下肢疲労など、評価対象を分けて確認する場合も、何について尋ねた値なのかを記録します。

再評価|尺度を増やすより、同じ目的・同じ条件で比べる

再評価では、毎回すべての評価を取り直す必要はありません。確認したい変化に応じて評価を選び、前回と比較できる条件をそろえることを優先します。

心不全リハビリの再評価でそろえる軸
確認したい変化 評価の例 比較するときのポイント
症状・活動制限 NYHA、SAS、生活場面 どの活動で症状が出るかを比較する
運動耐容能 CPX、6 MWT 同じ評価方法・測定条件で比べる
身体機能 SPPB、歩行速度、握力など 使用した条件や補助具をそろえる
日々の負荷反応 Borg、症状、必要なバイタル 負荷量と評価した時点を残す
増悪・うっ血 症状、体重、浮腫、呼吸状態、JVPなど 普段・前回からの変化を束ねて見る

評価結果は「改善した・悪化した」で終わらせず、次回の負荷を維持するのか、上げるのか、下げるのか、あるいは治療状況の確認や多職種への相談を優先するのかまでつなげます。

次の一手|評価項目が決まったら運動処方へつなげる

心不全リハビリでは、評価を増やすこと自体が目的ではありません。増悪・うっ血の有無、症状・活動度、運動耐容能、身体機能、実際の負荷への反応を整理したら、その結果を使って運動の種類・強度・時間・頻度を決めます。


参考文献

  1. Kitai T, Kohsaka S, Kato T, et al. JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure. Circ J. 2025;89(8):1278-1444. doi: 10.1253/circj.CJ-25-0002.
  2. 日本循環器学会, 日本心臓リハビリテーション学会. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版). 公式PDF
  3. American Thoracic Society. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. doi: 10.1164/ajrccm.166.1.at1102. PubMed: 12091180.
  4. Brown TM, Pack QR, Aberegg E, et al. Core Components of Cardiac Rehabilitation Programs: 2024 Update: A Scientific Statement From the American Heart Association and the American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation. Circulation. 2024;150(18):e328-e347. doi: 10.1161/CIR.0000000000001289. PubMed: 39315436.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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