心不全リハビリ評価ハブ|症状・耐容能・うっ血を順番で見る
心不全リハビリでは、運動量を増やす前に「今日の状態をどう判断するか」をそろえることが重要です。症状、活動度、運動耐容能、うっ血所見を同じ順番で確認できると、負荷設定・中止判断・再評価がブレにくくなります。
このハブでは、NYHA / SAS → 6 MWT + Borg → wet 所見 → 運動処方 → 再評価の順に、病棟・外来・心臓リハで使いやすい記事を整理します。まずは最小セットを固定し、生活目標へつなげることを目指します。
評価が回るほど、臨床の迷いと残業が減ります。評価 → 介入 → 再評価の型を先に整えたい方は、PT キャリアガイドの実務フローも確認しておくと整理しやすいです。
想定読者:心不全患者を担当する PT / OT / ST、病棟・外来・心臓リハで評価と運動処方を標準化したい方
得られること:症状・耐容能・うっ血を同じ順番で確認し、負荷設定と再評価につなげる型が分かります。
まず見る最小セット|症状・耐容能・うっ血を分ける
心不全リハビリの評価は、指標を増やすよりも「何を見ている評価か」を分ける方が実務で使いやすくなります。NYHA と SAS は日常生活での症状、6 MWT と Borg は負荷への反応、JVP や浮腫・体重変化はうっ血の確認として整理します。
最初からすべてを完璧にそろえる必要はありません。まずは、症状の段階、当日の状態、運動中の反応、終了後の回復を同じ記録欄に残せる形にすると、次回の負荷調整がしやすくなります。
5 分で回す|心不全リハ評価の順番
心不全リハビリでは、数字を単独で見るよりも「順番」で並べる方が安全に判断できます。症状の層別化、当日の状態、耐容能、うっ血、処方・再評価の順に固定すると、担当者が変わっても申し送りがしやすくなります。
- 症状の層別化:NYHAで日常生活の息切れを共有し、SASで症状が出る活動強度を確認する。
- 当日の状態確認:バイタル、体重変化、浮腫、呼吸努力、会話時の息切れ、起立時の反応を確認する。
- 耐容能の実測:6 MWTで距離・SpO2・症状を確認し、Borgで息切れと下肢疲労を分けて記録する。
- うっ血所見:体重、浮腫、呼吸状態に加え、必要に応じてJVPを同条件で確認する。
- 処方と再評価:強度・時間・頻度を小さく決め、同じ条件で反応を比較する。
安全管理|止める・下げる判断を先に決める
心不全リハビリでは、運動の可否をその場の感覚だけで判断すると、担当者ごとにブレが出ます。施設基準・主治医指示を優先したうえで、PT 側では「運動前・運動中・運動後に何を見るか」を固定しておくことが重要です。
| 場面 | 見逃したくない変化 | まずやること | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 運動前 | 呼吸苦の急増、会話困難、起座位依存、冷汗、顔面蒼白 | 体位、酸素条件、RR、SpO2、症状を確認する | 強度を下げる、延期する、医師・看護師と相談する |
| 運動中 | 症状増悪の持続、RR 上昇が戻らない、SpO2 低下、胸部症状 | 一旦停止し、同条件で再測定する | 短時間・低強度へ変更、必要時は中止する |
| 運動後 | 回復が遅い、翌日以降の疲労・息切れが強い | 時間、強度、休憩量を見直す | 次回は小さく回し、反応を再評価する |
症状と活動度|NYHA と SAS を並べて使う
NYHA は日常生活での症状の程度を共有しやすく、SAS は「どの活動強度で症状が出るか」を具体化しやすい評価です。ADL が自立していても生活が広がらない場合、NYHA だけでなく SAS を加えると、運動処方や生活目標に落とし込みやすくなります。
- NYHA 分類:日常生活での息切れ・活動制限を段階づける
- SAS:症状が出る活動強度を定量化し、処方につなげる
- 症状 × ADL の設計図:NYHA・mMRC・SAS・6 MWT をまとめて運用する
耐容能|6 MWT と Borg で負荷の幅を決める
6 MWT は、心不全患者の運動耐容能を実務で確認しやすい評価です。ただし、コース長、声かけ、折り返し、酸素条件、中止判断がそろっていないと比較が難しくなります。まずは手順を固定し、距離だけでなく症状と回復まで含めて記録します。
- 6 MWT の実施手順と評価:準備、標準手順、中止判断を固定する
- Borg スケール実務:息切れと下肢疲労を分けて記録する
- 呼吸困難スケール総論:mMRC は層別化、Borg は負荷調整に使う
うっ血評価|wet 所見は束ねて判断する
心不全では、同じ運動でも当日のうっ血状態によって反応が変わります。JVP、浮腫、体重変化、呼吸状態は単独で決め打ちせず、複数の所見を束ねて「今日は負荷を上げられるか、下げるべきか」を判断します。
JVP は難しく感じやすい評価ですが、体位角度、照明、観察側、首の脱力をそろえるだけでも経時比較しやすくなります。標準法が難しい場面では、座位簡便法で「見える/見えない」を追うだけでも、臨床の共有には役立ちます。
- JVP(頸静脈評価):標準法、座位法、HJR、記録シートを確認する
- 呼吸評価の基本:ベッドサイド観察と記録の型をそろえる
現場で使う記録シート
心不全リハビリでは、条件固定と前後比較ができると、評価の再現性が上がります。呼吸評価と JVP の記録シートは、必要な場面だけ拾って使ってください。
運動処方|小さく決めて反応で調整する
心不全リハビリの運動処方は、正解の数値を一度で当てるより、当日の状態で安全に回せる幅を作る方が実務的です。導入期は短時間・低強度・休憩多めで始め、反応が安定してから少しずつ上げます。
- 強度:Borgで息切れと下肢疲労を分けて確認する
- 時間:連続が難しい場合はインターバル化して総量を確保する
- 頻度:「できた日」ではなく「続いた週」を評価単位にする
- 様式:歩行・自転車・階段・ADL 練習を目的別に選ぶ
モニタリング|見る順番を固定する
心不全は日々の揺れが大きいため、モニタリングは同じ順番・同じ条件で記録するほど意味が出ます。運動前、運動中、運動後で見る項目を固定し、次回の処方に必ずつなげます。
| タイミング | 見るもの | 記録の型 | つなげ方 |
|---|---|---|---|
| 導入前 | 体位、酸素条件、RR、SpO2、息切れ | 条件を 1 行で固定して残す | その日の強度を安全側に決める |
| 運動中 | Borg、表情、会話、SpO2 変化 | 途中と終了時の反応を残す | 休憩、負荷調整、中止判断に使う |
| 運動後 | RR、SpO2、症状の回復 | 戻るまでの時間もメモする | 次回の時間・強度を微調整する |
再評価|いつ・何を・どう比べるか
再評価は、スケールを増やすよりも同条件で並べる方が強いです。節目では NYHA / SAS、日々は Borg と症状・バイタル反応、定期評価では 6 MWT を軸にすると、現場で回しやすくなります。
現場の詰まりどころ|心不全リハが回らない原因と直し方
心不全リハビリで迷いやすいのは、負荷設定、ADL とのズレ、wet 所見、呼吸評価の引き継ぎです。原因を分けて、次に何をそろえるかまで決めると、評価が運用に落ちます。
| 詰まり | 起きやすい原因 | 直し方 | 参照 |
|---|---|---|---|
| 負荷設定が毎回ブレる | 症状と耐容能が同じ枠で整理できていない | NYHA / SAS → 6 MWT → Borg の順で固定し、Borg は息切れと下肢疲労を分ける | 症状 × ADL / Borg 実務 |
| ADL は自立なのに生活が伸びない | 介助量だけで見て、症状が出る活動強度を見ていない | NYHA、SAS、6 MWT を並べ、生活目標を「できる」より「続けられる」に寄せる | SAS / 症状 × ADL |
| wet の変動で判断が揺れる | うっ血所見が個人技になり、条件固定ができていない | 体位角度、照明、観察側を固定し、JVP は単独ではなく複数所見で判断する | JVP |
| 呼吸評価が引き継がれない | 観察部位や記録順が固定されていない | 観察、SpO2 / RR、介入反応を同じ順番で記録する | 呼吸評価の基本 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
NYHA と SAS はどちらを優先して取るべきですか?
まずは NYHA で日常生活上の息切れ障害を共有し、次に SAS で症状が出る活動強度を確認すると処方につながりやすいです。節目では NYHA / SAS、日々は Borg と反応で回すと、評価負担を増やしすぎずに運用できます。
6 MWT は毎回やるべきですか?
毎回でなくて大丈夫です。日々は Borg、SpO2、回復時間などの同条件比較を優先し、節目で 6 MWT を入れる方が現場では回しやすいです。実施時はコース長、声かけ、中止判断を固定してください。
Borg は CR10 と 6–20 のどちらが良いですか?
どちらでも構いませんが、施設内で混在させないことが重要です。説明しやすさは CR10、心拍管理との相性は 6–20 が強みです。記録では「息切れ」と「下肢疲労」を分けると、次回の調整がしやすくなります。
JVP が難しい場合は何から整えれば良いですか?
まずは技術より条件固定です。体位角度、斜光、首の脱力、観察側をそろえます。標準法が難しい日は、座位簡便法で「見える/見えない」を追うだけでも、経時変化の共有に役立ちます。
次の一手|心不全リハを横断的に固める
心不全リハビリは、呼吸評価・運動耐容能・ADL 設計がつながるほど強くなります。次は以下の記事で、評価から運動処方への流れを固めてください。
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検の順で進めると、現場が回りやすくなります。
参考文献
- 日本循環器学会. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021 年改訂版). PDF
- American Thoracic Society. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. DOI: 10.1164/ajrccm.166.1.at1102 / PubMed: 12091180
- Brown TM, Pack QR, Aberegg E, et al. Core Components of Cardiac Rehabilitation Programs: 2024 Update: A Scientific Statement From the American Heart Association and the American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation. Circulation. 2024;150(18):e328-e347. DOI: 10.1161/CIR.0000000000001289 / PubMed: 39315436
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


