浮腫の評価方法|圧痕性浮腫1+〜4+と鑑別の要点
浮腫は、緊急性の確認、分布と経過、圧痕・皮膚所見、周径による数値化、鑑別と再評価の順に確認します。圧痕性浮腫の1+〜4+だけで原因や危険度を判断せず、急性・慢性、片側・両側、疼痛、熱感、呼吸症状などを組み合わせることが重要です。
この記事では、成人臨床で使いやすい浮腫評価の流れを親記事として整理します。圧痕性浮腫の代表的な判定、全身性・局所性の切り分け、周径測定、記録・再評価の要点に加え、評価条件をそろえるためのA4記録シートPDFも掲載しています。

評価ハブから全体像を確認する
浮腫評価は5つのステップで進めます
浮腫を認めたら、すぐに圧痕のグレードを付けるのではなく、最初に緊急性と分布を確認します。毎回同じ順序で評価すると、見落としを減らし、経時変化をスタッフ間で共有しやすくなります。
| ステップ | 確認すること | 主な目的 |
|---|---|---|
| 1.緊急性 | 急な片側腫脹、疼痛、熱感、発赤、呼吸困難、胸痛、急な体重増加 | 評価や介入を続けてよいか判断する |
| 2.分布と経過 | 片側・両側、急性・慢性、日内変動、体位による変化 | 局所性・全身性の方向性を整理する |
| 3.局所所見 | 圧痕、皮膚の色・温度・硬さ、疼痛、創傷、Stemmer徴候 | 浮腫の性状と関連所見を記録する |
| 4.数値化 | 周径、左右差、必要に応じた体積推定、体重 | 変化を客観的に追える状態にする |
| 5.鑑別と再評価 | 全身性・局所性の整理、原因検索、記録、相談・再評価 | 次の検査・対応・経過観察につなげる |
最初に確認する相談・中止のサイン
急な片側腫脹や呼吸症状などがある場合は、通常の浮腫評価や運動・圧迫を進める前に、医師・看護師への報告や院内基準に沿った対応を優先します。
- 急に出現した片側の腫脹
- 腫脹部の疼痛、熱感、発赤
- 突然の呼吸困難、胸痛、頻呼吸、酸素化の悪化
- 短期間の急な体重増加や全身状態の悪化
- 冷感、蒼白、チアノーゼなど末梢循環障害を疑う所見
- 発熱、創部の悪化、感染を疑う皮膚所見
これらの所見だけで原因を確定することはできません。ただし、深部静脈血栓症、感染、心不全増悪、末梢循環障害などを否定できないため、評価や介入を続けるかを先に判断します。
圧痕性浮腫1+〜4+は凹みの深さと回復時間で表します
圧痕性浮腫は、指で押したあとに残る凹みの深さや、元に戻るまでの時間を1+〜4+で表現します。ただし、深さ基準と回復時間基準には複数の方法があり、押圧時間や測定部位も完全には統一されていません。
以下は臨床で流通している代表的な目安です。自施設で採用している基準がある場合は、その方法を優先してください。
| グレード | 凹みの深さ | 回復時間 | 所見の表現 |
|---|---|---|---|
| 1+ | 約2mm | 速やかに戻る | 浅い圧痕が残る |
| 2+ | 約3〜4mm | おおむね15秒以内 | 1+より明瞭な圧痕が残る |
| 3+ | 約5〜6mm | 15〜60秒程度 | 深い圧痕が一定時間残る |
| 4+ | 約8mm | 2〜3分程度 | 著明な圧痕が長く残る |
※深さや回復時間は代表例です。評価法によって数値や表現が異なるため、使用した基準、測定部位、体位、押圧時間を記録してください。
圧痕のグレードは局所所見を表す方法です。3+や4+だから特定の疾患である、1+だから安全であるとは判断できません。発症経過、分布、疼痛・熱感、呼吸状態、体重変化、皮膚所見などと組み合わせて解釈します。
圧痕を確認するときの実施条件
再評価ではグレードそのものより、毎回同じ条件で確認できているかが重要です。押圧時間や測定部位が変わると、圧痕の深さや回復時間も変わる可能性があります。
- 体位:仰臥位、座位など、評価時の体位を記録する
- 測定部位:前脛骨部、足背、外果周囲など具体的に残す
- 押圧時間:自施設で定めた時間に統一して記録する
- 押し方:指腹を垂直に当て、毎回同じ方法で押す
- 評価内容:圧痕の深さ、回復時間、左右差を確認する
- 随伴所見:疼痛、熱感、発赤、皮膚の硬さなどを併記する
圧痕・Godet徴候・Stemmer徴候の詳しい見方は、圧痕とStemmer徴候の評価方法で整理しています。
浮腫は急性・慢性と片側・両側から整理します
浮腫の原因を考えるときは、全身性か局所性かだけでなく、急性か慢性か、片側か両側かを組み合わせます。分布だけで原因を断定せず、発症時期、症状、既往歴、薬剤、皮膚所見を合わせて確認します。
| 分布・経過 | 確認したい原因の例 | 併せて見る所見 |
|---|---|---|
| 急性・片側 | 深部静脈血栓症、感染、外傷、急性の静脈閉塞など | 疼痛、熱感、発赤、発熱、発症時期 |
| 慢性・片側 | 慢性静脈疾患、リンパ浮腫、術後・外傷後など | 皮膚硬化、色素沈着、既往歴、Stemmer徴候 |
| 急性・両側 | 心不全増悪、腎機能悪化、薬剤、急速な体液貯留など | 呼吸状態、体重、尿量、薬剤変更、全身状態 |
| 慢性・両側 | 慢性心不全、腎・肝疾患、低栄養、薬剤、静脈・リンパ系障害など | 日内変動、体位変化、呼吸症状、栄養状態、皮膚所見 |
全身性の原因でも左右差が目立つ場合があり、局所性の原因でも両側に生じる場合があります。「片側だから局所性」「両側だから全身性」と固定せず、鑑別の入口として使用してください。
圧痕・皮膚・Stemmer徴候を組み合わせます
pittingの有無だけでは、リンパ浮腫やその他の浮腫を確定・除外できません。圧痕、皮膚の硬さや肥厚、色調、温度、創傷、Stemmer徴候などを組み合わせて評価します。
- 圧痕性浮腫:押圧後に凹みが残る状態。深さと回復時間を記録します。
- 非圧痕性浮腫:押しても明らかな凹みが残らない状態。皮膚や皮下組織の硬化、肥厚も確認します。
- Stemmer徴候:足趾または手指背側の皮膚をつまみ上げにくい、あるいはつまめない所見です。
- 静脈系を疑う皮膚所見:色素沈着、静脈怒張、うっ滞性皮膚炎、潰瘍などを確認します。
- 炎症・感染を疑う所見:発赤、熱感、疼痛、発熱、創部の悪化などを確認します。
リンパ浮腫でも早期にはpittingを認める場合があり、線維化や脂肪組織の増加が進むと圧痕が目立たなくなることがあります。また、Stemmer徴候が陰性でもリンパ浮腫を完全には否定できません。
周径測定ではランドマークと条件を固定します
周径測定は、同じ位置を同じ条件で測ることで、浮腫の変化を数値として追う方法です。測定値だけでなく、ランドマーク、体位、時間帯、弾性着衣の使用状況などを記録します。
- 骨指標などのランドマークから測定位置までの距離を固定する
- メジャーを皮膚へ食い込ませず、毎回同じ張力で当てる
- 体位と時間帯をできるだけそろえる
- 左右を比較する場合は、同じ位置と方法で測定する
- 手術、外傷、麻痺、筋萎縮など、左右差へ影響する背景も記録する
- 弾性着衣や圧迫後に測る場合は、装着・除去からの時間を記録する
下腿最大周径だけでは、浮腫の移動や部位ごとの変化を捉えにくい場合があります。測定位置の決め方と記録方法は、浮腫の周径測定を標準化する方法で詳しく解説しています。
必要に応じて体積推定を併用します
複数部位の周径を測定している場合は、周径から四肢体積を推定する方法もあります。局所的な周径だけでは捉えにくい変化をまとめて確認できますが、測定間隔や計算方法を統一する必要があります。
計算方法は、周径から浮腫の体積を推定する方法で確認できます。
浮腫の記録は条件・所見・数値・変化を残します
「浮腫あり」「両下肢浮腫」だけでは、次回の評価者が同じ条件で比較できません。体位、部位、押圧条件、圧痕、皮膚所見、周径、随伴症状をセットで残します。
| 項目 | 記録内容の例 |
|---|---|
| 日時・条件 | 評価時刻、体位、安静時間、圧迫着衣の有無 |
| 分布 | 右・左・両側、足背・足関節・下腿・大腿など |
| 圧痕 | 測定部位、押圧時間、1+〜4+、回復時間 |
| 皮膚所見 | 発赤、熱感、硬化、肥厚、乾燥、創傷、浸出液 |
| 数値 | 測定位置、周径、左右差、体重 |
| 随伴症状 | 疼痛、息切れ、胸痛、倦怠感、尿量変化など |
| 前回との差 | 圧痕、周径、皮膚状態、症状の改善・悪化 |
| 対応 | 経過観察、医師・看護師への報告、介入の中止・変更 |
記録例
14時、端座位で評価。右足背から下腿遠位部に圧痕性浮腫を認める。前脛骨部を施設手順に沿って押圧し2+、左は1+。右下腿周径は外果上10cmで前回より1.0cm増加。右下腿に軽度熱感を認めるが、発赤・疼痛・呼吸症状なし。看護師へ周径増加と熱感を共有し、次回も同条件で再評価する。
記録例は、診断を確定する文章ではありません。確認した事実、前回との差、実施した対応を分けて記載します。
浮腫評価記録シートPDF
体位、測定部位、押圧時間、圧痕、左右差、周径、皮膚所見、再評価内容をA4用紙1枚に整理できる記録シートです。施設内で使用する場合は、自施設の評価方法や報告基準に合わせてご利用ください。
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浮腫評価でよくある失敗
浮腫評価の誤差は、評価者の技量だけでなく、条件の不統一や記録不足によって生じます。前回値と比較するときは、同じ方法で測れているかを最初に確認します。
| 場面 | 避けたい方法 | 改善方法 |
|---|---|---|
| 圧痕 | 部位や押圧時間を記録せず、グレードだけを書く | 体位、部位、押圧時間、深さ・回復時間を残す |
| グレード | 3+や4+だけで原因や緊急性を決める | 発症経過、分布、症状、皮膚所見と合わせて判断する |
| 周径 | 毎回おおよそ同じ位置で測る | ランドマークからの距離を決めて記録する |
| 左右差 | 左右差だけで全身性浮腫を否定する | 急性・慢性、日内変動、全身症状も確認する |
| 非圧痕性 | pitting陰性だから浮腫なしと判断する | 硬化、肥厚、分布、Stemmer徴候なども評価する |
| 介入 | 原因や循環状態を確認せず圧迫する | 適応、禁忌、末梢循環、全身状態を先に確認する |
再評価では前回と同じ条件をそろえます
浮腫の変化を追うには、評価項目を増やすより、毎回同じ条件で測定することが重要です。圧痕、周径、皮膚状態、症状のうち、何を悪化・改善と判断するかを事前に決めます。
- 時間帯:午前・午後など評価時刻をそろえる
- 体位:臥位・座位・立位と安静時間をそろえる
- 測定位置:ランドマークと距離を固定する
- 圧痕条件:部位と押圧時間をそろえる
- 併用情報:体重、呼吸状態、尿量、薬剤、活動量も確認する
- 皮膚状態:発赤、熱感、創傷、浸出液、圧迫による皮膚障害を確認する
圧迫療法を開始・継続する場合は、圧痕や周径の変化だけでなく、疼痛、しびれ、冷感、色調、呼吸状態なども確認します。適応と安全管理は、圧迫療法の適応・禁忌・中止基準で確認してください。
浮腫評価に関するFAQ
各項目名をタップすると回答が開きます。
圧痕は何秒押せばよいですか?
押圧時間には複数の方法があるため、自施設で定めた方法に統一してください。再評価では、測定部位、体位、押圧時間を毎回そろえて記録することが重要です。
1+〜4+は深さと回復時間のどちらで判定しますか?
深さを中心とする方法と、回復時間を組み合わせる方法があります。使用する基準を明示し、異なる基準の数値を混在させないでください。グレードだけで原因や緊急性は判断せず、分布、経過、症状、皮膚所見と合わせて解釈します。
pittingが陰性ならリンパ浮腫ではありませんか?
pitting陰性だけではリンパ浮腫を否定できません。リンパ浮腫でも早期には圧痕を認める場合があり、線維化や脂肪組織の増加が進むと圧痕が目立たなくなる場合があります。皮膚の硬化・肥厚、分布、既往歴、Stemmer徴候などを組み合わせます。
周径が増えたら浮腫が悪化したと判断できますか?
同じ位置、体位、時間帯、測定方法で比較できている場合は、変化を捉える指標になります。ただし、測定位置のずれ、筋量、体位、圧迫着衣、活動量などでも値が変わるため、圧痕や皮膚所見、症状と合わせて判断します。
浮腫評価後の次の一手
この親記事で評価の順序を確認したら、患者の状態に応じて、圧痕所見、周径・体積、圧迫療法の子記事へ進んでください。すべての評価や介入を一度に行うのではなく、現在の疑問に必要な項目を選びます。
| 次に確認したいこと | 使用する記事 |
|---|---|
| 圧痕やStemmer徴候 | 測定条件と所見の読み方を確認する |
| 周径測定 | ランドマークと測定位置を標準化する |
| 体積推定 | 複数の周径値から四肢全体の変化を確認する |
| 圧迫療法 | 適応・禁忌・中止基準を確認する |
参考文献
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

