Durkan テスト|手根管圧迫で CTS を “確認 1 本” で固める
Durkan テスト(手根管圧迫テスト)は、手根管部を直接圧迫して正中神経領域のしびれ・疼痛を誘発し、手根管症候群( CTS )の可能性を絞るためのテストです。Phalen と同じく “入口” の検査ですが、Durkan は圧迫刺激なので、関節可動域や姿勢の影響が比較的少なく、臨床で条件を揃えやすいのが利点です。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1796937/))
本記事では、①適応(いつ使うか)→②手順(保持時間・圧のかけ方)→③陽性の書き方(記録の型)→④偽陽性の回避までを、現場でブレない運用に固定します。結論は、Phalen を “入口” に置くなら、Durkan は確認 1 本として最も迷いません。
いつ使う?| “分布+夜間” の仮説を短時間で確認する
Durkan は、正中神経領域(母指〜中指中心)のしびれ、夜間〜起床時の増悪、把持・つまみ動作での悪化などがあるときに、CTS の可能性を短時間で “確認” するのに向きます。逆に、頸部由来(神経根)や胸郭出口、尺骨神経障害など、分布が合わない場合は、誘発で痛みが混ざって解釈がブレやすいので、まずは分布を 1 行で要約してから実施します。
おすすめの並べ方は、①症状要約(分布+時間帯+増悪動作)→②感覚(正中/尺骨)→③ Durkan(確認)→④必要なら Phalen(補助)の順です。病歴と診察所見を統合して判断する、という前提は “合理的診察” のレビューでも強調されています。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10865306/))
手順| “保持 30 秒” を基準に、圧は “一定” にする
Durkan は、手根管部(屈筋支帯上)を指で圧迫し、正中神経領域の症状が誘発されるかを確認します。現場で最も崩れやすいのは、圧のかけ方(強すぎ/弱すぎ)と保持時間のブレです。まずは保持 30 秒を基準に固定し、同じ圧・同じ位置で左右差を取る運用にすると再現性が上がります。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1796937/))
| 手順 | やること | 観察ポイント | 中止目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 症状を 1 行で要約(分布+時間帯+増悪動作) | 正中神経領域か/尺骨領域が混ざっていないか | 評価前から強い疼痛 |
| 2 | 手根管部に一定圧を加える(屈筋支帯上) | “しびれ” と “局所痛” を分けて聴く | 急激な強い疼痛 |
| 3 | 保持 30 秒(必要なら 60 秒まで) | 出現までの秒数(例: 10 秒)を記録 | 冷汗・気分不良 |
| 4 | 左右差を同条件で確認 | 左右差が “分布” と一致するか | 再現性が取れない |
陽性の基準| “正中神経領域のしびれ” を主語にする
Durkan の “陽性” は、圧迫により正中神経領域のしびれ・疼痛が再現/増悪することです。ここで重要なのは、手根管部の局所の圧痛と、放散するしびれ(感覚異常)を混ぜないこと。局所痛だけを陽性扱いにすると、腱・関節由来の痛みが紛れて精度が下がります。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15162113/))
| 項目 | 記載例 | 意図 |
|---|---|---|
| 条件 | 手根管部を一定圧で圧迫、保持 30 秒 | 再現性の担保 |
| 結果 | 12 秒で母指〜中指のしびれ再現(+) | “何が” いつ出たか |
| 左右差 | 右(+)左(−) | 分布との整合 |
| 補足 | 局所圧痛のみはなし/尺骨領域のしびれはなし | 偽陽性の回避 |
解釈| Durkan は “確認 1 本” に向く:増やす前に揃える
CTS は、単一テストで確定させるより、病歴・分布・複数所見を統合して判断するのが基本です。合理的診察のレビューでも、病歴と診察所見の組み合わせで推定が変わることが示されています。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10865306/))
そのうえで、Durkan は Phalen と刺激が異なり、“確認 1 本” として追加しやすいのが強みです。近年のメタ解析でも、Durkan を含む複数の診察手技の感度・特異度が整理されていますが、現場で大事なのは “数値の暗記” より、条件を揃えて再現できるかです。 ([pmc.ncbi.nlm.nih.gov](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10446104/))
現場の詰まりどころ| “迷い” を 3 本で戻す
Durkan で詰まりやすいのは、①圧が強すぎて局所痛が主役になる ②保持時間がブレて再現性が落ちる ③陽性を介入に落とせない、の 3 つです。ここはボタン無しで、戻り道だけ用意します。
よくある失敗| “圧” と “記録” を揃えるだけで精度が上がる
Durkan の失敗で多いのは、「局所痛だけで(+)にする」「圧や位置が毎回変わる」「保持時間がその場でバラバラ」の 3 つです。対策は、しびれ(分布)を主語にする、保持 30 秒を固定、左右差は同条件、の 3 点に集約できます。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15162113/))
| NG | なぜ起きる | まず直す 1 点 | OK 記録の型 |
|---|---|---|---|
| 局所圧痛だけで(+)にする | 痛みとしびれを同一視している | “しびれ(分布)” を主語に聴く | 母指〜中指のしびれ再現(+)/局所痛のみ(−) |
| 保持時間が毎回変わる | 運用の基準がない | 保持 30 秒で固定 | 保持 30 秒、 12 秒でしびれ(+) |
| 圧の位置・強さがブレる | “強いほど確実” の誤解 | 一定圧・同一位置を優先 | 一定圧で実施、左右差は同条件で確認 |
回避の手順/チェック| 5 分で “増やさず決める”
迷ったら、テストを増やすより “整理” です。下を上から埋めると、Durkan 1 本で判断が揃いやすくなります。
- 症状を 1 行で要約:分布(正中/尺骨)+夜間増悪の有無+増悪動作
- 感覚を分ける:母指〜中指(正中)と小指(尺骨)を分けて確認
- Durkan:保持 30 秒で固定し、出現までの秒数を記録
- 局所痛だけなら陰性扱いで戻る(部位・圧・条件を見直す)
- 必要なら Phalen を “補助” として追加し、所見が揃うか確認する
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Durkan が陽性なら、 CTS で確定していいですか?
確定はできません。CTS は病歴・分布・複数所見を統合して判断するのが基本です。Durkan は “確認 1 本” として有用なので、分布(正中神経領域)と一致しているか、左右差が同条件で再現できているかを重視してください。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10865306/))
局所が痛いだけです。これは陽性ですか?
局所圧痛だけでは解釈がブレやすいです。Durkan は “正中神経領域のしびれ(感覚異常)” が主語になります。局所痛のみなら、圧の強さ・位置・保持時間を揃え、分布が一致するしびれとして再現できるかを再評価します。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15162113/))
保持時間は 30 秒と 60 秒、どちらがいいですか?
現場運用としては 30 秒を基準に固定し、必要なら 60 秒まで延長するのがブレにくいです。重要なのは “あなたの現場の標準” を決めて、同条件で再現性を担保することです。 ([pubmed.ncbi.nlm.nih.gov](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1796937/))
Phalen とどちらを先にやるべきですか?
症状が典型(分布+夜間)なら Phalen を入口にして、Durkan を “確認 1 本” に置くのが迷いません。手関節の掌屈が作りにくい場合や、条件を揃えたい場合は Durkan 先行でも構いません。 ([pmc.ncbi.nlm.nih.gov](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10446104/))
次の一手|運用を整える→共有の型→環境も点検する
Durkan を “知っている” から “回せる” に変えるには、保持時間と記録の型を揃えるのが近道です。まずは同ジャンル内で 3 段だけ整えると、再現性が上がります。
- 運用を整える:評価の全体像(ハブ)
- 共有の型を作る:手関節・手部の整形外科テスト(親記事)
教育体制・人員・記録文化など “環境要因” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Durkan JA. A new diagnostic test for carpal tunnel syndrome. J Bone Joint Surg Am. 1991; 73(4): 535-538. PubMed: PMID 1796937
- D'Arcy CA, McGee S. The rational clinical examination. Does this patient have carpal tunnel syndrome? JAMA. 2000; 283(23): 3110-3117. doi:10.1001/jama.283.23.3110 (PubMed)
- MacDermid JC, Wessel J. Clinical diagnosis of carpal tunnel syndrome: a systematic review. J Hand Ther. 2004; 17(2): 309-319. doi:10.1197/j.jht.2004.02.015 (PubMed)
- Ozdag Y, et al. Sensitivity and Specificity of Examination Maneuvers for Carpal Tunnel Syndrome: A Meta-Analysis. (Open access). PubMed Central: PMC10446104
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


