Phalenテストのやり方|陽性基準・保持時間と解釈

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Phalenテストとは|最大60秒で症状再現を確認する

Phalenテスト(ファーレンテスト)は、手関節を掌屈位で保持し、手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS)でみられる正中神経領域の症状が再現・増悪するかを確認する誘発テストです。代表的には手関節を十分に掌屈して最大60秒まで保持し、普段感じているしびれ・異常感覚が再現するかをみます。

ポイントは「60秒実施したか」だけではなく、何秒で・どこに・どの症状が出たかを記録することです。Phalenテスト単独ではCTSを確定できないため、病歴、症状分布、感覚・筋力所見などと組み合わせて解釈します。

Phalenテストの要点

  • 手関節を十分に掌屈し、最大60秒まで症状再現を確認する
  • 陽性の中心は、普段の症状と一致する正中神経領域のしびれ・異常感覚の再現または増悪
  • 手関節の局所痛だけでは陽性と判断しない
  • 「実施時間」と「症状が出現した秒数」を分けて記録する
  • 陽性・陰性だけでCTSを確定・除外しない

Phalenテストのやり方|最大60秒まで保持する

代表的なPhalenテストでは、両手関節を十分に掌屈し、手背を合わせた状態で最大60秒まで保持します。開始と同時に時間を計測し、正中神経領域に普段のしびれ・異常感覚が出現した場合は、その時点の秒数を記録します。

文献によって肘・肩の肢位や手関節角度の記載には差があります。そのため、再評価では「60秒」という時間だけをそろえるのではなく、手関節の肢位や実施方法もできるだけ同条件にすることが重要です。疼痛や可動域制限がある場合に、無理に最大掌屈へ押し込む必要はありません。

Phalenテストのやり方、陽性基準、陽性としにくい所見、解釈と記録を整理した図版
図:Phalenテストは最大60秒まで症状再現を確認し、出現秒数と症状分布を記録します。
Phalenテストの実施手順
手順 実施内容 確認すること
1 実施前の症状を確認する 普段のしびれ・異常感覚の部位、左右、時間帯を確認する
2 両手関節を十分に掌屈する 無理に押し込まず、検査可能な肢位を作る
3 手背を合わせて保持する 開始と同時に時間を計測する
4 最大60秒まで観察する 何秒で、どこに、どのような症状が出たか確認する
5 結果を記録する 肢位、出現秒数、症状分布、左右差を残す

陽性基準|普段の正中神経領域症状が再現するかを見る

Phalenテストでは、手関節掌屈によって普段の症状と一致する正中神経領域のしびれ・異常感覚が再現または増悪するかを中心に判定します。

典型的な正中神経領域は、手掌側の母指・示指・中指・環指橈側です。これらの領域へ放散する疼痛や異常感覚を伴うこともあります。一方で、手関節を曲げたことによる局所痛だけをPhalen陽性として扱うと、関節・腱など別組織由来の疼痛が混ざりやすくなります。

Phalenテストの所見と判定の考え方
所見 判定の考え方 次に確認すること
普段の正中神経領域のしびれ・異常感覚が再現または増悪 陽性所見として扱う 病歴や他のCTS所見との整合性
手関節の局所痛のみ Phalen陽性とは判断しにくい 疼痛部位、関節・腱由来の可能性
小指側を中心とするしびれ 典型的なCTSの分布とは一致しにくい 尺骨神経領域など他の原因
母指球部の明らかな感覚障害 典型的な手根管内病変だけでは説明しにくい より近位の正中神経病変などを含めて再評価
最大60秒まで典型症状の再現なし Phalenテストとしては陰性 陰性だけでCTSを除外せず、病歴・他所見を確認

30秒と60秒のどちら?|Phalenは最大60秒を基本に考える

Phalenテストの保持時間は、最大60秒まで観察する方法が代表的です。したがって、30秒で症状が出なかったことだけを理由に「陰性」とするのではなく、検査を継続できる条件であれば最大60秒まで症状再現を確認します。

一方、症状が15秒や30秒で明確に再現した場合に、陽性確認のためだけに無理に60秒まで保持し続ける必要はありません。重要なのは、「最大60秒まで観察すること」と「症状が何秒で出現したか」を分けて考えることです。

記録のポイント:「Phalen 60秒(+)」だけではなく、「18秒で右母指〜中指に普段のしびれ再現」のように、出現秒数と症状分布まで記録すると再評価しやすくなります。

解釈|Phalen単独では手根管症候群を確定しない

PhalenテストはCTSを疑ううえで利用される代表的な誘発テストですが、単独で診断を確定する検査ではありません。2023年のシステマティックレビュー・メタ解析では、Phalenテストの統合感度は0.57、特異度は0.67で、研究間にも大きなばらつきが報告されています。

そのため「陽性だからCTS」「陰性だからCTSではない」と二分するのではなく、症状の分布、夜間症状、感覚所見、母指球筋の筋力・萎縮、他の誘発所見などを組み合わせて判断します。

2024年のAmerican Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)の手根管症候群診療ガイドラインでも、病歴と複数の身体所見を組み合わせるCTS-6をCTSの臨床診断に使用できるとしています。Phalenテストは、そのような複数所見の中の1つとして位置づけることが重要です。

Phalenテスト陽性後に確認したい主な情報
確認項目 見るポイント
症状分布 母指・示指・中指・環指橈側を中心とするか
時間帯 夜間・起床時のしびれがあるか
感覚 正中神経領域の感覚低下があるか
運動所見 母指球筋の筋力低下・萎縮などがないか
他の誘発所見 Tinel徴候、手根管圧迫テストなどと整合するか
分布不一致 尺骨神経領域、頸部・神経根由来など別の原因を疑う所見がないか

陰性・判定保留|症状が出ない場合も条件を確認する

十分な掌屈位を保持して最大60秒まで典型的な症状が再現されなければ、Phalenテストとしては陰性と記録できます。ただし、単独検査の感度には限界があるため、陰性だけでCTSを除外しないことが重要です。

また、手関節の可動域制限、強い局所痛、術後などによって検査肢位を十分に作れない場合は、単純に陰性とせず「判定困難」「実施条件不十分」と記録します。この場合は、病歴・感覚所見や手根管圧迫テストなど、別の情報から仮説を整理します。

記録方法|条件・出現秒数・症状分布を残す

カルテでは「Phalen(+)」だけで終わらせず、どの条件で、何秒後に、どこへ、どの症状が出たかを残します。左右差は補助情報として有用ですが、左右差そのものが陽性基準ではありません。

Phalenテストのカルテ記載例
項目 記載例 目的
条件 両手関節掌屈、手背を合わせて最大60秒 次回の実施条件をそろえる
出現時間 右18秒で症状出現 再評価時の変化を比較する
症状分布 右母指・示指・中指に普段のしびれ再現 正中神経領域との一致を確認する
左右差 右(+)、左は60秒まで再現なし 主訴との整合性を補助的に確認する
補足 手関節局所痛なし、小指側への放散なし 非典型的な所見を区別する

記録例

Phalen test:両手関節掌屈・手背接触位。右18秒で母指〜中指に普段のしびれが再現(+)。左は60秒まで同症状の再現なし。手関節局所痛なし。

よくある失敗|時間だけで判定しない

Phalenテストで起こりやすい誤りは、30秒で症状が出なければ陰性とすること、手関節の局所痛を陽性に含めること、左右差だけで判断することです。検査時間よりも、普段の症状がどの分布に再現されたかを優先します。

Phalenテストで迷いやすいポイント
迷いやすい判断 修正ポイント
30秒で症状が出なければ陰性 実施可能なら最大60秒まで観察する
手関節が痛ければ陽性 正中神経領域の普段のしびれ・異常感覚が再現するかを確認する
右だけ症状が出ればCTS 左右差ではなく、病歴と症状分布を含めて解釈する
強く掌屈するほど検査精度が上がる 無理な強制掌屈は避け、再現可能な条件で実施する
Phalen陽性だけでCTSを確定する 病歴・感覚・運動所見・他の誘発所見と統合する

Phalenテストのよくある質問

Phalenテストは30秒と60秒のどちらで行いますか?

代表的な方法では最大60秒まで症状再現を観察します。30秒で症状が出なかっただけで陰性とせず、実施可能であれば60秒まで確認します。症状が途中で明確に再現した場合は、出現した秒数を記録します。

手関節が痛くなればPhalenテスト陽性ですか?

手関節の局所痛だけでは、典型的なPhalen陽性所見とは判断しにくいです。普段の症状と一致する正中神経領域のしびれ、異常感覚、放散する疼痛などが再現または増悪するかを確認します。

Phalenテストが陽性なら手根管症候群で確定ですか?

確定ではありません。Phalenテスト単独の診断精度には限界があるため、症状分布、夜間症状、感覚・筋力所見、Tinel徴候や手根管圧迫テストなどを組み合わせて判断します。

手関節の可動域制限がある場合はどうしますか?

無理に掌屈を強制すると、関節や軟部組織由来の疼痛が混ざりやすくなります。十分な検査肢位を取れない場合は「判定困難」または実施条件を記録し、病歴・感覚所見や手根管圧迫テストなど別の評価を組み合わせます。

次の一手|手部テストの中で位置づける

Phalenテストは単独で覚えるより、手関節・手部の症状からどの評価を選ぶかという流れの中で位置づけると解釈しやすくなります。


参考文献

  1. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Carpal Tunnel Syndrome: Evidence-Based Clinical Practice Guideline. Rosemont, IL: American Academy of Orthopaedic Surgeons; 2024. AAOS Clinical Practice Guideline
  2. Dabbagh A, MacDermid JC, Yong J, et al. Diagnostic Test Accuracy of Provocative Maneuvers for the Diagnosis of Carpal Tunnel Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis. Phys Ther. 2023;103(6):pzad029. doi:10.1093/ptj/pzad029
  3. Wipperman J, Penny ML. Carpal Tunnel Syndrome: Rapid Evidence Review. Am Fam Physician. 2024;110(1):52-57. American Family Physician
  4. Phalen GS, Kendrick JI. Compression neuropathy of the median nerve in the carpal tunnel. JAMA. 1957;164(5):524-530. doi:10.1001/jama.1957.02980050014005
  5. D’Arcy CA, McGee S. Does this patient have carpal tunnel syndrome? JAMA. 2000;283(23):3110-3117. doi:10.1001/jama.283.23.3110

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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