Finkelsteinテストとは|やり方だけでなく「何をしたか」を確認する
Finkelstein(フィンケルシュタイン)テストは、橈骨茎状突起周囲に痛みがあるとき、ドケルバン病を疑う評価で用いられる誘発テストです。ただし、Finkelsteinという名称で紹介される手技は資料によって記載が異なり、母指を手掌内へ握り込んで尺屈するEichhoffの手技と混同されてきた経緯があります。
そのため、評価では「Finkelstein陽性」とだけ記録するのではなく、母指をどう保持したか、手関節をどう動かしたか、どこに症状が再現したかまで残すことが重要です。この記事では、FinkelsteinとEichhoffの違い、陽性所見、診断精度研究の読み方、再評価しやすい記録方法を整理します。
先に結論
- Finkelsteinの手技は、資料によって記載に差があります。
- Eichhoffは、母指を手掌内へ握り込んだ状態で手関節を尺屈する手技として区別されます。
- 陽性は「どこでも痛ければよい」のではなく、橈骨茎状突起から第1背側コンパートメント周囲の症状再現を確認します。
- 記録ではテスト名だけでなく、肢位・誘導方法・疼痛部位を残します。
Finkelsteinのやり方|文献によって手技の記載が異なる
Finkelsteinテストを実施するときに最も重要なのは、特定の1手技を無条件に「唯一の正解」として扱わないことです。日本整形外科学会と原著・後続研究では、Finkelsteinとして記載される具体的な誘導方法に違いがあります。
日本整形外科学会では、母指を小指側へ牽引した際に橈骨茎状突起周囲の疼痛が強くなる方法をFinkelsteinテストとし、母指と一緒に手関節を小指側へ曲げて疼痛を誘発する方法を「フィンケルシュタインテスト変法」として区別しています。
一方、Wuらの2018年研究では、手関節を台の端に置き、まず患者自身に手関節を尺屈してもらったあと、検者が母指を把持して手掌内方向へ受動的に誘導する方法をFinkelsteinとして実施しています。
つまり、「Finkelstein」という名称だけでは、実際に行われた肢位や誘導方法を完全には特定できません。臨床で再現性を保つには、使用している資料や施設内の定義を確認したうえで、実際に行った方法を記録する必要があります。
FinkelsteinとEichhoffの違い|母指の位置と誘導方法を見る
FinkelsteinとEichhoffを区別するときは、名称よりも母指を誰がどう保持したか、手関節をどのように尺屈したかを見ると整理しやすくなります。

| 名称・資料 | 母指・手関節の扱い | 記録時のポイント |
|---|---|---|
| Finkelstein 日本整形外科学会 |
検者が母指を小指側へ牽引し、橈骨茎状突起周囲の疼痛増強を確認する | 母指をどの方向へ牽引したかを書く |
| Finkelstein変法 日本整形外科学会 |
母指とともに手関節を小指側へ曲げ、疼痛増強を確認する | 母指と手関節を同時に誘導したことを書く |
| Finkelstein Wuらの2018年研究 |
患者が手関節を尺屈したあと、検者が母指を把持して手掌内へ受動的に誘導する | 尺屈が能動か、母指誘導が受動かを残す |
| Eichhoff | 母指を手掌内に入れて他の指で握り込み、その状態から手関節を尺屈方向へ誘導する | 「母指握り込み位」で実施したことを書く |
とくに注意したいのは、母指を握り込んだ状態で尺屈するEichhoffの手技が、過去の文献や教材でFinkelsteinとして紹介されてきたことです。Elliottは1992年に、この記載上の混同が偽陽性につながる可能性を指摘しています。
したがって、カルテや申し送りでは「Finkelstein陽性」というテスト名だけで条件を共有するより、実際の肢位と誘導方法を簡潔に付記した方が再現性が高くなります。
陽性所見|橈骨茎状突起周囲の症状再現を確認する
Finkelsteinテストでは、誘導によって橈骨茎状突起から第1背側コンパートメント周囲に、対象者が普段感じている痛みと一致する症状が再現または増強するかを確認します。
ドケルバン病では、第1背側コンパートメントを通る長母指外転筋腱と短母指伸筋腱周囲に疼痛・腫脹・圧痛を認めることがあります。テスト前に疼痛部位を確認しておくと、誘発後に「同じ場所へ症状が出たのか」を比較しやすくなります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| テスト前の疼痛部位 | 橈骨茎状突起付近か、それ以外の母指・手関節部か |
| 誘発された部位 | 第1背側コンパートメント周囲に症状が再現・増強したか |
| 普段の症状との一致 | 日常生活で困っている疼痛と同じ場所・質か |
| 局所所見 | 橈骨茎状突起周囲の圧痛や腫脹を伴うか |
一方で、「手関節のどこかが痛い」「母指全体が痛い」といった所見だけでFinkelstein陽性と決めるのは避けます。疼痛部位が想定した領域と一致しない場合は、テスト結果を無理にドケルバン病へ結び付けず、疼痛部位の確認に戻ります。
結果の解釈|陽性だけでドケルバン病を確定しない
Finkelsteinテストはドケルバン病を疑う材料の1つですが、テスト単独で診断を確定するものとして扱うべきではありません。橈骨茎状突起周囲の疼痛・圧痛・腫脹、母指使用時の症状、発症経過などと合わせて解釈します。
また、テストの目的は「強い痛みを出すこと」ではありません。必要以上に大きく尺屈したり、母指を強く引いたりすると、対象としている部位以外にも疼痛が生じ、所見の意味が分かりにくくなることがあります。
評価中に強い疼痛が出た場合は、さらに刺激を加えて確認するのではなく、その時点の肢位・誘導条件・疼痛部位を記録します。再評価では、同じ条件を再現できることの方が、刺激量を増やすことより重要です。
感度・特異度|2018年研究の「100%」はそのまま一般化しない
Wuらは2018年に、FinkelsteinとEichhoffを無症状者で比較しました。Finkelsteinでは偽陽性が0手、Eichhoffでは8手にみられ、研究内で算出された特異度はそれぞれ100%、89%でした。また、Eichhoffの方が不快感も大きい結果でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 無症状者36人、72手関節 |
| Finkelsteinの偽陽性 | 0手 |
| Eichhoffの偽陽性 | 8手 |
| 研究内の特異度 | Finkelstein 100%、Eichhoff 89% |
| 重要な限界 | ドケルバン病患者を対象にしておらず、感度を比較できない |
ここで重要なのは、「Finkelsteinの特異度は常に100%」と解釈しないことです。この研究はドケルバン病の患者群で診断精度を検証した研究ではなく、無症状者で両手技の偽陽性と不快感を比較したものです。
したがって、この結果から言えるのは「この研究条件では、Finkelsteinとして実施された手技はEichhoffより偽陽性が少なかった」という範囲です。臨床での陽性・陰性は、他の所見と統合して判断します。
記録方法|「Finkelstein陽性」だけで終わらせない
Finkelsteinは名称と手技の対応が資料間で揺れているため、記録ではテスト名よりも実際に行った条件を残すことが重要です。
最低限、次の3点を記録すると再評価しやすくなります。
- 肢位・誘導方法:母指をどう保持し、手関節をどう動かしたか
- 疼痛部位:どこに症状が再現・増強したか
- 普段の症状との一致:対象者が訴えている症状と同じか
| 記録の仕方 | 例 |
|---|---|
| 避けたい記録 | Finkelstein(+) |
| 母指牽引で実施した場合 | 右:母指を検者が把持し小指側へ牽引。橈骨茎状突起周囲に普段と同様の疼痛再現。 |
| Wuらの方法に近い場合 | 右:手関節を能動尺屈後、検者が母指を把持し手掌内方向へ受動誘導。橈骨茎状突起部痛を再現。 |
| Eichhoffを実施した場合 | 右:母指を手掌内へ握り込んだ状態から手関節を尺屈。橈骨茎状突起周囲に疼痛再現。 |
左右差を確認した場合は、同じ条件で比較したことが分かるように記載します。再評価時も同じ方法を使うことで、疼痛の有無や誘発される範囲の変化を比較しやすくなります。
よくある失敗|名称・刺激量・疼痛部位を混ぜない
Finkelsteinテストで起こりやすい失敗は、Eichhoffとの名称混同だけではありません。「何を陽性としたのか」が曖昧なまま結果だけを残すことも、再評価を難しくします。
| よくある失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 母指を握り込む手技を無条件にFinkelsteinと呼ぶ | 資料間で手技の対応がずれ、再現できない | 母指の位置と誘導方法を記録する |
| 痛みが強いほど陽性と考える | 刺激量による疼痛と病変部の症状を混同しやすい | 疼痛の強さだけでなく、部位と普段の症状との一致を見る |
| どこが痛んだか記録しない | 橈骨茎状突起以外の疼痛まで陽性に含めてしまう | 疼痛部位を具体的に残す |
| 陰性ならドケルバン病を除外できると考える | 単独テストだけで診断を判断することになる | 圧痛・腫脹・症状の出方など他所見と合わせる |
よくある質問
FinkelsteinとEichhoffは同じテストですか?
同じものとして扱わない方がよいです。Eichhoffは、母指を手掌内へ入れて他の指で握り込み、その状態で手関節を尺屈する手技として記載されています。一方、Finkelsteinは母指を検者が把持・牽引する方法などが記載されており、文献によって具体的な誘導方法に差があります。名称だけでなく実際の手技を確認してください。
Finkelsteinは痛みが出れば陽性ですか?
どの部位の痛みでも陽性とするのではなく、橈骨茎状突起から第1背側コンパートメント周囲に、普段の症状と一致する疼痛が再現または増強するかを確認します。疼痛部位が異なる場合は、その所見を分けて記録します。
特異度100%なら、陽性でドケルバン病と診断できますか?
できません。2018年研究の100%という値は、無症状者36人・72手関節を対象にした研究内で算出された値です。ドケルバン病患者を含む診断精度研究ではなく、感度も評価されていません。単独テストで確定せず、圧痛・腫脹・症状の経過などと合わせて解釈します。
強く尺屈して確認した方がよいですか?
強い刺激を加えること自体が目的ではありません。刺激が強すぎると対象部位以外にも疼痛が生じ、所見の意味が分かりにくくなります。症状が再現された時点の肢位・誘導条件を記録し、必要以上に負荷を増やさないようにします。
次に確認すること|手部評価の中でFinkelsteinを位置づける
Finkelsteinテストは、母指側手関節痛を評価する1つの手段です。疼痛部位からどの整形外科的テストを選ぶか、手根管症候群や母指周囲の評価をどう整理するかは、親記事の手関節・手部の整形外科テストでまとめています。
Finkelsteinを再評価するときは、テスト名だけをそろえるのではなく、母指の位置、手関節の肢位、誘導方法、疼痛部位を同じ条件で比較してください。
参考文献
- 日本整形外科学会. ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎). 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/de_quervain_disease.html
- Wu F, Rajpura A, Sandher D. Finkelstein’s Test Is Superior to Eichhoff’s Test in the Investigation of de Quervain’s Disease. J Hand Microsurg. 2018;10(2):116-118. doi:10.1055/s-0038-1626690
- Elliott BG. Finkelstein’s test: a descriptive error that can produce a false positive. J Hand Surg Br. 1992;17(4):481-482. doi:10.1016/S0266-7681(05)80280-3
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

