Finkelstein テストのやり方|Eichhoff との違いと記録例

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Finkelstein テスト|Eichhoff と混同せず記録まで整える

Finkelstein テストは、母指側手関節痛があるときに、ドケルバン病(第 1 背側コンパートメントの腱鞘炎)を疑うための誘発テストです。このページでは、Finkelstein と Eichhoff の違い、陽性所見の見方、痛みを出しすぎない手順、カルテに残しやすい記録例までを 1 つの流れで整理します。

この記事で決めるのは、「どの手技を Finkelstein として実施し、どこが痛ければ陽性と考え、どう記録するか」です。ドケルバン病の治療法や装具選択は深掘りせず、評価場面で迷いやすい “手順・陽性・記録” に絞って解説します。

いつ使う?|母指側手関節痛と把持時痛があるときに使う

Finkelstein テストは、橈骨茎状突起周囲に限局した痛みがあり、つまみ動作・把持・母指使用で症状が増えるときに有用です。最初からテストに入るより、痛みの部位を「橈骨茎状突起近傍」「母指 CMC 近傍」「手関節背側」などに分けておくと、陽性所見の解釈が安定します。

とくに母指 CMC 関節症や手関節由来の痛みが混ざると、尺屈時の痛みだけで陽性と判断しやすくなります。テスト前に「どこが痛いか」を 1 行で固定し、誘発後も同じ部位に痛みが再現されたかを確認してください。

手順|Finkelstein と Eichhoff を別物として扱う

Finkelstein は、検者が母指を把持し、手関節を尺屈方向へ段階的に誘導して痛みを確認する手技です。一方、Eichhoff は患者が母指を手掌内に握りこみ、その状態で尺屈する手技です。臨床では Eichhoff が Finkelstein と呼ばれることがあるため、記録では手技名だけでなく「受動」「握りこみ」の違いを残すと再現性が高まります。

Finkelstein テストと Eichhoff テストの違い
図:Finkelstein と Eichhoff の違いを整理
Finkelstein と Eichhoff の違い(成人・一般臨床)
項目 Finkelstein Eichhoff 臨床での扱い
母指の固定 検者が母指を把持する 患者が母指を握りこむ Finkelstein を標準にしやすい
誘導方法 受動的に尺屈へ誘導 握りこみ位で尺屈 急激な誘導は避ける
痛みの出方 比較的局所を確認しやすい 痛みが強く出やすい 偽陽性に注意する
記録のコツ 「検者把持で段階的尺屈」と書く 「母指握りこみ位で尺屈」と書く 手技名だけに頼らない

Finkelstein テスト記録シート PDF

Finkelstein と Eichhoff の混同を防ぎ、痛みの部位・誘発条件・左右差・補足所見を 1 枚で記録できる A4 シートを用意しました。印刷して、評価時のメモや再評価時の比較に使えます。

PDFを開く(ダウンロード)

陽性所見|橈骨茎状突起部の限局痛を主語にする

陽性は、尺屈誘導により橈骨茎状突起部から第 1 背側コンパートメント近傍の痛みが再現されることです。単に「手首が痛い」「母指が痛い」ではなく、痛みの部位が第 1 背側コンパートメント付近に一致するかを確認します。

母指 CMC 近傍痛、手関節背側痛、前腕遠位部の広い痛みが主役の場合は、Finkelstein 陽性と混ぜず、いったん部位特定に戻します。手関節・手部テスト全体での位置づけは 手関節・手部の整形外科テスト で確認できます。

Finkelstein テストの記録例(カルテ記載用)
記録項目 記載例 意図
条件 検者が母指を把持し、手関節を段階的に尺屈 Finkelstein の手順を明確にする
結果 右橈骨茎状突起部に限局痛再現(+) 陽性部位を主語にする
左右差 右(+)、左(−) 比較条件を残す
補足 母指 CMC 近傍痛は誘発なし 偽陽性を避ける

解釈|痛いほど陽性ではなく、部位が一致するかを見る

Finkelstein テストで重要なのは、痛みの強さよりも、狙った部位に痛みが再現されるかです。強く尺屈して痛がらせるほど評価精度が上がるわけではありません。むしろ、痛みが強すぎると CMC や手関節周囲の痛みが混ざり、結果の解釈が難しくなります。

文献では、Finkelstein は Eichhoff より偽陽性が少なく、特異度が高い可能性が報告されています。そのため、評価の標準手順としては Finkelstein を先に行い、Eichhoff は混同しやすい強刺激の手技として慎重に扱う方が安全です。

現場の詰まりどころ|混同・強刺激・部位ズレを先に潰す

Finkelstein テストで詰まりやすいのは、Eichhoff を Finkelstein と呼んでしまうこと、痛みを出しすぎること、痛む場所がズレているのに陽性として扱うことです。迷ったら、テストを増やすより、手順と記録をそろえる方が再評価しやすくなります。

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、個人の努力だけでなく、評価手順の共有、記録の型、相談できる環境の有無も影響します。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。

よくある失敗|手技名より手順を記録する

最も多い失敗は、Eichhoff の握りこみ手技を Finkelstein として記録してしまうことです。この場合、次回評価者が同じ条件で再現できず、痛みの変化も追いにくくなります。カルテには「Finkelstein 陽性」だけでなく、母指の固定方法と尺屈誘導の強さを短く残してください。

Finkelstein テストで起こりやすい失敗と修正ポイント
よくある失敗 なぜ問題か 修正ポイント 記録例
Eichhoff を Finkelstein と呼ぶ 手順が再現できない 受動か握りこみかを書く 検者把持で段階的尺屈
一気に尺屈する 痛みが強く出すぎる 段階的に誘導する 軽度尺屈で橈骨茎状突起部痛再現
痛む場所を確認しない CMC 痛や背側痛を混ぜる 部位を 1 行で残す CMC 近傍痛は誘発なし

回避の手順|5 分で条件をそろえる

評価で迷ったら、次の順に確認します。ポイントは、Finkelstein を “痛みを出すテスト” ではなく、“同じ条件で限局痛を再現するテスト” として扱うことです。

  1. 痛みの部位を確認する:橈骨茎状突起近傍か、CMC 近傍か、手関節背側か。
  2. 日常動作との一致を見る:把持、つまみ、母指外転で痛みが増えるか。
  3. Finkelstein を実施する:検者が母指を把持し、段階的に尺屈する。
  4. 陽性部位を確認する:橈骨茎状突起部の限局痛として再現されるか。
  5. 強すぎる場合は中止する:痛みの部位が崩れる前に条件を落として記録する。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Finkelstein と Eichhoff は何が違いますか?

Finkelstein は検者が母指を把持して受動的に尺屈へ誘導する手技です。Eichhoff は患者が母指を手掌内に握りこみ、その状態で尺屈する手技です。臨床では混同されやすいため、記録では手技名だけでなく「検者把持」「握りこみ」の違いを残すと安全です。

痛みが強い場合も続けた方がよいですか?

続ける必要はありません。痛みが強すぎると、橈骨茎状突起部の限局痛なのか、CMC や手関節周囲の痛みなのかが分かりにくくなります。段階的に誘導し、痛みの部位が確認できる範囲で止めて記録します。

陽性と書くときのポイントは何ですか?

「Finkelstein 陽性」だけで終わらせず、条件と部位を書きます。たとえば「検者が母指を把持し、段階的尺屈で右橈骨茎状突起部の限局痛再現(+)」のように書くと、次回評価で比較しやすくなります。

陰性でもドケルバン病を疑うことはありますか?

あります。症状の部位、把持やつまみでの増悪、腫脹、圧痛などと合わせて判断します。陰性だから除外と決めつけず、条件をそろえて再評価し、必要に応じて医師の診断や画像所見と照合します。

次の一手|手部評価の中で位置づける

Finkelstein テストは単独で完結させるより、手関節・手部評価の流れの中に置くと使いやすくなります。まずは親記事で他の手部テストとの位置づけを確認し、必要に応じて評価ハブで記録・再評価の型を整えてください。


参考文献

  1. Wu F, Rajpura A, Sandher D. Finkelstein’s Test Is Superior to Eichhoff’s Test in the Investigation of de Quervain’s Disease. J Hand Microsurg. 2018;10(2):116-118. doi:10.1055/s-0038-1626690
  2. Goubau JF, Goubau L, Van Tongel A, Van Hoonacker P, Kerckhove D, Berghs B. The wrist hyperflexion and abduction of the thumb (WHAT) test: A more specific and sensitive test to diagnose de Quervain tenosynovitis than the Eichhoff’s Test. J Hand Surg Eur Vol. 2014;39(3):286-292. doi:10.1177/1753193412475043
  3. Elliott BG. Finkelstein’s test: a descriptive error that can produce a false positive. J Hand Surg Br. 1992;17(4):481-482. doi:10.1016/S0266-7681(05)80280-3

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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