息切れスケール完全ガイド【mMRC×Borg】

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呼吸器系
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リハビリくん
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この記事の内容
  1. 息切れ(呼吸困難感)は疾患横断で QOL と予後に関わる重要症状です。
  2. 本ガイドでは、日常生活の息切れを捉えるmMRCと運動時の強度指標となる Borg(CR10/RPE)を中心に、臨床での役割、具体的な評価手順、運動処方への落とし込み、場面別の使い分け、記録・チーム共有までを理学療法士の視点で整理します。
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 9 月時点:193 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級

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息切れ評価の役割(何のために測るか)

息切れは活動量、身体機能、心理面に波及し、急性増悪の早期察知や介入効果判定にも直結します。

mMRC は日常生活での息切れ重症度を簡便に層別化し、Borg は運動時の主観的負荷を連続量として捉え、強度調整や中止基準の補助となります。

Two-wayで用いることで、普段の生活(mMRC)と運動場面(Borg)の両軸から症状の全体像を把握できます。

  • 使い分けの基本:安静~生活場面=mMRC
  • 運動・リハ介入中=Borg(CR10推奨)

いずれも同じ患者で継続測定し、値の推移と場面の文脈を併記することで解釈精度が上がります。

関連記事:呼吸評価の基本(PT向け)

mMRC/Borgの評価法(手順・カットオフ・注意点)

mMRC(改変MRC息切れスケール)
スコア 定義(患者説明用の言い換え)
0 激しい運動でのみ息切れ(全力運動のときだけ)
1 早歩きや坂道で息切れ(平地でも急ぐと苦しい)
2 同年代より遅れる/自分のペースでも立ち止まることがある
3 平地で約100 mまたは数分歩くと立ち止まる
4 外出が難しい/着替えでも息切れする

 

Borg CR10(呼吸困難の強さ:代表ラベル)
スコア ラベル 臨床での目安
0 なし 安静時の基準
0.5–1 とても弱い ウォームアップ直後など
2 弱い 軽い負荷で持続可
3 ややきつい 処方の下限目安
4–5 きつい 処方の中心〜上限目安
7 とてもきつい 中止・減弱を検討
10 最大 直ちに中止

使い方:mMRCは「普段の生活レベル」を層別化します。Borgは運動中の「いまの息切れ」を毎分または終了前 15 秒に確認し、呼吸と脚疲労を分けて聴取します(例:呼吸3/脚2)。

  • 手順のコツ:スケールの実物を提示し、ラベルを声に出して読み合わせます。理解度に応じて比喩(会話可能性、歌えるか等)も補助に使います。
  • 注意:β遮断薬内服や心不全、認知機能低下では主観と生体指標が乖離しやすいため、SpO2・呼吸数・回復所要時間を併記します。

関連記事:mMRC/Borgの使い分けと読み解き

運動処方への落とし込み(安全・効果の両立)

有酸素持久性トレーニングは、Borg CR10で 3 ~ 5(RPE 12 ~ 14 相当)を目安に持続可能な強度から開始し、症状・SpO2・回復所要時間を見ながら段階的に漸増します。

抵抗トレーニングは主要筋群を週 2 ~ 3 回、6 ~ 12 回 × 2 ~ 4 セット/50 ~ 80 %1RM をベースに、呼吸停止(バルサルバ)を避けつつ症状基準で調整します。高強度が難しい症例ではインターバル法(低強度挿入)や上肢エルゴ、段差昇降などで代替します。

中止・減弱の目安:胸痛、めまい、チアノーゼ、SpO2 < 88% 持続、Borg ≥7 の上昇が回復しない等。施設プロトコル・医師指示を優先してください。

関連記事:呼吸リハの運動療法とコンディショニング

場面別の使い分け(病棟・外来PR・在宅・周術期)

  • 急性期 ~ 回復期病棟:ADL 再開前後はmMRCの段差変化に注目。歩行訓練では Borg と SpO2 を併記し、歩行距離や休憩回数と紐づけて記録します。
  • 外来PR:初回評価に 6MWT やシャトルウォークを併用し、開始前後の Borg(呼吸・脚)と SpO2トレンドで処方を最適化。
  • 在宅・地域:家事・移動の具体的タスクに mMRC を対応づけ、セルフモニタリング用に Borg目安(3–5)と休憩ルールを配布します。
  • 周術期:術前は Borg 3 ~ 4 での持久力維持、術後は痛み/貧血を踏まえた低強度開始と段階的増加が基本です。

関連記事:呼吸困難感の評価と臨床活用

記録・チーム共有(書き方テンプレ)

例:「坂道での息切れが増悪。mMRC 3(先月2)。6MWT:380m、終点 Borg 呼吸5・脚3、最低SpO2 89%。処方:Borg 3 ~ 4 を目安に平地歩行 15 分× 2/日、間欠的休憩。家事分節化を OT と共有。吸気筋トレ再指導(週 5 日)。2 週後再評価。」

  • 最低限の併記:スケール値+場面(task)+生体徴候(SpO2等)+介入内容+次回計画。
  • 多職種連携:OT = IADL 分節化、ST = 呼吸同調・嚥下安全性、NS=酸素条件、RT/MD=薬剤・酸素・在宅機器。

関連記事:TUG(運動耐容能の周辺評価に)

まとめ

mMRC は日常生活での息切れ重症度を簡便に層別化し、Borg(CR10)は運動中の主観的負荷を連続量で把握できます。

両者を同一患者で継続測定し、SpO2・呼吸数・回復所要時間などの生体指標と併記することで、介入強度の最適化と安全性の担保が可能です。

病棟・外来 PR・在宅・周術期の各場面で、タスク具体化(坂道・階段・家事)と中止/減弱基準の共有を徹底し、チームで同じ言葉・同じ尺度を使うことが効果と再現性を高めます。

呼吸評価の基本(PT向け)
呼吸数・SpO2・呼吸パターンと運動負荷の見取り図を整理。

呼吸困難感の評価と臨床活用
mMRC・Borgの臨床応用と6MWT連携の実例を解説。

参考(主要ガイドライン・一次情報)

  1. Parshall MB, et al. ATS Statement: Mechanisms, Assessment, and Management of Dyspnea. Am J Respir Crit Care Med. 2012;185(4):435–452. PDF
  2. ATS Committee. Guidelines for the Six-Minute Walk Test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111–117. PubMedPDF
  3. Spruit MA, et al. ATS/ERS Statement: Pulmonary Rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med. 2013. PDF
  4. GOLD 2024 Pocket Guide. PDF
  5. Crisafulli E, et al. Measures of dyspnea in pulmonary rehabilitation. Multidiscip Respir Med. 2010. PMC
  6. Launois C, et al. The mMRC scale… Int J Obes. 2012. PMC
  7. Mytinger M, et al. Exercise Prescription…RPE 12–16. Cardiol Ther. 2020. PMC
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