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息切れ評価の役割(何のために測るか)
息切れは活動量、身体機能、心理面に波及し、急性増悪の早期察知や介入効果判定にも直結します。
mMRC は日常生活での息切れ重症度を簡便に層別化し、Borg は運動時の主観的負荷を連続量として捉え、強度調整や中止基準の補助となります。
Two-wayで用いることで、普段の生活(mMRC)と運動場面(Borg)の両軸から症状の全体像を把握できます。
- 使い分けの基本:安静~生活場面=mMRC
- 運動・リハ介入中=Borg(CR10推奨)
いずれも同じ患者で継続測定し、値の推移と場面の文脈を併記することで解釈精度が上がります。
関連記事:呼吸評価の基本(PT向け)
mMRC/Borgの評価法(手順・カットオフ・注意点)
スコア | 定義(患者説明用の言い換え) |
---|---|
0 | 激しい運動でのみ息切れ(全力運動のときだけ) |
1 | 早歩きや坂道で息切れ(平地でも急ぐと苦しい) |
2 | 同年代より遅れる/自分のペースでも立ち止まることがある |
3 | 平地で約100 mまたは数分歩くと立ち止まる |
4 | 外出が難しい/着替えでも息切れする |
スコア | ラベル | 臨床での目安 |
---|---|---|
0 | なし | 安静時の基準 |
0.5–1 | とても弱い | ウォームアップ直後など |
2 | 弱い | 軽い負荷で持続可 |
3 | ややきつい | 処方の下限目安 |
4–5 | きつい | 処方の中心〜上限目安 |
7 | とてもきつい | 中止・減弱を検討 |
10 | 最大 | 直ちに中止 |
使い方:mMRCは「普段の生活レベル」を層別化します。Borgは運動中の「いまの息切れ」を毎分または終了前 15 秒に確認し、呼吸と脚疲労を分けて聴取します(例:呼吸3/脚2)。
- 手順のコツ:スケールの実物を提示し、ラベルを声に出して読み合わせます。理解度に応じて比喩(会話可能性、歌えるか等)も補助に使います。
- 注意:β遮断薬内服や心不全、認知機能低下では主観と生体指標が乖離しやすいため、SpO2・呼吸数・回復所要時間を併記します。
関連記事:mMRC/Borgの使い分けと読み解き
運動処方への落とし込み(安全・効果の両立)
有酸素持久性トレーニングは、Borg CR10で 3 ~ 5(RPE 12 ~ 14 相当)を目安に持続可能な強度から開始し、症状・SpO2・回復所要時間を見ながら段階的に漸増します。
抵抗トレーニングは主要筋群を週 2 ~ 3 回、6 ~ 12 回 × 2 ~ 4 セット/50 ~ 80 %1RM をベースに、呼吸停止(バルサルバ)を避けつつ症状基準で調整します。高強度が難しい症例ではインターバル法(低強度挿入)や上肢エルゴ、段差昇降などで代替します。
中止・減弱の目安:胸痛、めまい、チアノーゼ、SpO2 < 88% 持続、Borg ≥7 の上昇が回復しない等。施設プロトコル・医師指示を優先してください。
関連記事:呼吸リハの運動療法とコンディショニング
場面別の使い分け(病棟・外来PR・在宅・周術期)
- 急性期 ~ 回復期病棟:ADL 再開前後はmMRCの段差変化に注目。歩行訓練では Borg と SpO2 を併記し、歩行距離や休憩回数と紐づけて記録します。
- 外来PR:初回評価に 6MWT やシャトルウォークを併用し、開始前後の Borg(呼吸・脚)と SpO2トレンドで処方を最適化。
- 在宅・地域:家事・移動の具体的タスクに mMRC を対応づけ、セルフモニタリング用に Borg目安(3–5)と休憩ルールを配布します。
- 周術期:術前は Borg 3 ~ 4 での持久力維持、術後は痛み/貧血を踏まえた低強度開始と段階的増加が基本です。
関連記事:呼吸困難感の評価と臨床活用
記録・チーム共有(書き方テンプレ)
例:「坂道での息切れが増悪。mMRC 3(先月2)。6MWT:380m、終点 Borg 呼吸5・脚3、最低SpO2 89%。処方:Borg 3 ~ 4 を目安に平地歩行 15 分× 2/日、間欠的休憩。家事分節化を OT と共有。吸気筋トレ再指導(週 5 日)。2 週後再評価。」
- 最低限の併記:スケール値+場面(task)+生体徴候(SpO2等)+介入内容+次回計画。
- 多職種連携:OT = IADL 分節化、ST = 呼吸同調・嚥下安全性、NS=酸素条件、RT/MD=薬剤・酸素・在宅機器。
関連記事:TUG(運動耐容能の周辺評価に)
まとめ
mMRC は日常生活での息切れ重症度を簡便に層別化し、Borg(CR10)は運動中の主観的負荷を連続量で把握できます。
両者を同一患者で継続測定し、SpO2・呼吸数・回復所要時間などの生体指標と併記することで、介入強度の最適化と安全性の担保が可能です。
病棟・外来 PR・在宅・周術期の各場面で、タスク具体化(坂道・階段・家事)と中止/減弱基準の共有を徹底し、チームで同じ言葉・同じ尺度を使うことが効果と再現性を高めます。
関連記事
呼吸評価の基本(PT向け)
呼吸数・SpO2・呼吸パターンと運動負荷の見取り図を整理。
呼吸困難感の評価と臨床活用
mMRC・Borgの臨床応用と6MWT連携の実例を解説。
参考(主要ガイドライン・一次情報)
- Parshall MB, et al. ATS Statement: Mechanisms, Assessment, and Management of Dyspnea. Am J Respir Crit Care Med. 2012;185(4):435–452. PDF
- ATS Committee. Guidelines for the Six-Minute Walk Test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111–117. PubMed/PDF
- Spruit MA, et al. ATS/ERS Statement: Pulmonary Rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med. 2013. PDF
- GOLD 2024 Pocket Guide. PDF
- Crisafulli E, et al. Measures of dyspnea in pulmonary rehabilitation. Multidiscip Respir Med. 2010. PMC
- Launois C, et al. The mMRC scale… Int J Obes. 2012. PMC
- Mytinger M, et al. Exercise Prescription…RPE 12–16. Cardiol Ther. 2020. PMC