結論:摂食機能療法( H004 )は「対象・時間・記録」の 3 点で判断します
摂食機能療法( H004 )は、嚥下や摂食に課題がある患者に対して、計画書に基づいた個別の訓練指導を行った場合に算定する項目です。現場では「誰が対象か」「何分必要か」「どこまで記録すべきか」で迷いやすいため、まずは算定の骨格を押さえることが大切です。
特に実務で重要なのは、①対象患者の確認、②原則 1 回 30 分以上・脳卒中発症後 14 日以内は 15 分以上の扱い、③摘要欄と診療録の記載です。ここが曖昧だと返戻や確認の対象になりやすいため、本記事では請求前に見直したいポイントを整理します。
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| 確認項目 | 要点 | 実務メモ |
|---|---|---|
| 対象患者 | 摂食機能障害がある患者 | 脳卒中後遺症、顎・舌切除後、発達遅滞、 VF / VE で嚥下機能低下が確認された症例など |
| 実施者 | 医師・歯科医師、または指示下の ST ・看護師・准看護師・歯科衛生士など | PT / OT は医師指示下で「体位設定・自助具の評価設定」を行う場合に含まれます |
| 実施時間 | 原則 1 回 30 分以上 | 脳卒中発症後 14 日以内は、 15 分以上で区分 2 の算定対象になります |
| 必要書類 | 診療計画書、診療録 | 毎回の訓練内容、開始時刻、終了時刻を残します |
| 摘要欄 | 疾患名、治療開始日 | レセプト摘要欄への記載漏れは避けたいポイントです |
| 退院・転院時 | 患者・家族説明と情報提供 | 嚥下状態、誤嚥予防の食事内容、摂食方法の共有が必要です |
摂食機能療法( H004 )とは?
摂食機能療法は、摂食機能障害を有する患者に対し、症状に応じた診療計画書に基づいて訓練指導を行う項目です。単に「食事を見る」「介助する」だけではなく、間接訓練、直接訓練、体位や自助具の調整など、治療としての介入が求められます。
嚥下障害への介入は、評価と記録がセットで回って初めて質が上がります。評価全体の整理から見直したい場合は、評価ハブもあわせて確認しておくと、他のスケールや観察項目とのつながりを押さえやすくなります。
算定対象になる患者
留意事項通知では、摂食機能障害者として主に 2 つの考え方が示されています。 1 つ目は、発達遅滞、顎切除・舌切除術後、脳卒中などの後遺症によって摂食機能に障害がある患者です。臨床で多いのは、脳卒中後の嚥下障害や頭頸部手術後の経口摂取支援です。
2 つ目は、内視鏡下嚥下機能検査( VE )または嚥下造影( VF )で他覚的に嚥下機能低下が確認され、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できる患者です。つまり「食べにくそう」だけでは弱く、診断や評価の根拠をそろえておくことが実務上は重要です。
算定できる実施内容と時間の考え方
摂食機能療法として含まれるのは、個別に実施する嚥下訓練(間接訓練)、直接訓練、摂食時の体位設定や自助具の評価・設定です。反対に、口腔ケアのみ、あるいは専ら食事介助や食事観察だけを行うケースは、 H004 の中心的な訓練内容とはみなされません。
時間の考え方は大きく 2 つです。原則は 1 回 30 分以上で算定します。一方、脳卒中発症後 14 日以内の患者では、 15 分以上の摂食機能療法を行った場合に区分 2 を算定できます。ただし、この期間内でも 30 分以上実施した場合は区分 1 を算定できます。
| 区分 | 時間 | 対象 | 実務上のポイント |
|---|---|---|---|
| 区分 1 | 1 回 30 分以上 | 原則の算定 | 訓練内容と開始・終了時刻を毎回記録します |
| 区分 2 | 1 回 15 分以上 | 脳卒中発症後 14 日以内の患者 | 発症日を確認し、適用期間を外さないようにします |
摘要欄と診療録に何を書くか
請求実務でまず押さえたいのは、レセプト摘要欄と診療録で求められる記載が異なる点です。摘要欄には、疾患名と、その疾患に係る摂食機能療法の治療開始日を記載します。ここは最低限の必須項目なので、レセプト作成時のチェック項目に固定しておくと漏れにくくなります。
一方、診療録には、治療開始日だけでなく、毎回の訓練内容、訓練の開始時間、終了時間を記載します。さらに、計画書に基づいて介入し、医師が定期的な摂食機能検査をもとに効果判定を行う流れまで残しておくと、返戻予防だけでなく院内共有にも役立ちます。
| 記録場所 | 最低限必要な内容 | 実務のコツ |
|---|---|---|
| 摘要欄 | 疾患名、治療開始日 | レセプトチェック表に固定項目として入れておくと安定します |
| 診療録 | 訓練内容、開始時刻、終了時刻 | 「何をしたか」だけでなく、時間の根拠まで残します |
| 診療計画書 | 症状に応じた計画 | 評価結果と介入目的がつながる形にしておくと説明しやすくなります |
| 効果判定 | 定期的な摂食機能検査に基づく判定 | VE / VF や臨床所見の変化をもとに再評価します |
摂食嚥下機能回復体制加算の要点
注 3 の摂食嚥下機能回復体制加算は、摂食嚥下支援チームなど多職種による対応で、摂食機能や嚥下機能の回復が見込まれる患者に対して共同で指導管理を行った場合に算定します。単独職種ではなく、多職種連携の体制と継続的な見直しが前提です。
開始時には、内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影の結果に基づいた摂食嚥下支援計画書を作成し、患者または家族へ説明・交付します。その後も月 1 回以上の VE / VF 、週 1 回以上のカンファレンス、計画書や食形態・摂食方法・口腔管理の見直しが求められます。
| 段階 | 必要事項 | 実務メモ |
|---|---|---|
| 開始時 | VE / VF に基づく摂食嚥下支援計画書の作成 | 患者・家族へ説明し、写しを診療録に添付します |
| 定期評価 | 月 1 回以上の VE / VF | 評価と計画の見直しがセットです |
| チーム介入 | 週 1 回以上のカンファレンス | 多職種で方針を共有し、役割分担を明確にします |
| 見直し | 食形態、摂食方法、口腔管理、計画書の修正 | 見直しの要点を診療録に記載、または写しを添付します |
現場の詰まりどころ
摂食機能療法は、介入そのものより「何を H004 として請求できるか」で詰まりやすい項目です。特に、口腔ケアや食事介助をそのまま訓練と捉えてしまうこと、診療録に時間が残っていないこと、摘要欄に治療開始日を書き忘れることは、実務で起こりやすい失敗です。
また、脳卒中発症後 14 日以内の特例は便利ですが、発症日確認が曖昧だと誤請求につながります。現場では「対象確認 → 実施内容確認 → 時間確認 → 記録確認」の順にチェックするだけでも、算定の安定性がかなり上がります。
| よくある失敗 | なぜ問題か | 回避策 |
|---|---|---|
| 口腔ケアのみで算定しようとする | 口腔ケアのみは H004 の中心的訓練とは言えません | 間接訓練・直接訓練・体位設定などの訓練内容を明確にします |
| 食事観察・介助のみで終わる | 専ら食事介助や食事観察は対象外です | 観察に加えて、訓練として何を行ったかを残します |
| 開始時刻・終了時刻の記録漏れ | 時間要件の根拠が弱くなります | 記録テンプレに時刻欄を固定します |
| 摘要欄に開始日を書き忘れる | レセプト上の必須情報が不足します | 摘要欄は「疾患名+開始日」で確認します |
| 区分 2 の適用期間を外す | 脳卒中発症後 14 日以内という条件があります | 発症日をカルテで確認し、請求前に再確認します |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
口腔ケアだけでも摂食機能療法を算定できますか?
できません。留意事項通知では、間接訓練・直接訓練・体位設定や自助具の評価設定などが示されており、口腔ケアのみの場合は対象外です。
食事介助や食事観察だけでも算定できますか?
専ら食事介助または食事観察を行うものは対象外です。訓練としての介入内容が必要です。
PT ・ OT でも実施できますか?
医師の指示の下で、 PT ・ OT が「摂食時の体位設定、自助具の評価・設定」を行う場合は、摂食機能療法に含まれます。
脳卒中発症後 14 日以内なら必ず区分 2 ですか?
いいえ。発症後 14 日以内で 15 分以上なら区分 2 の対象になりますが、同じ期間でも 30 分以上実施した場合は区分 1 を算定できます。
摘要欄に最低限何を書けばよいですか?
疾患名と、その疾患に係る摂食機能療法の治療開始日です。ここは請求時の必須確認項目です。
次の一手
まずは、自施設の記録様式で「訓練内容・開始時刻・終了時刻・治療開始日」が確実に残るかを確認してみてください。運用を整えるだけでも、請求の安定性とチーム内共有はかなり改善します。
参考文献
- 厚生労働省保険局医療課.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発 0305 第 6 号).2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686836.pdf
- 厚生労働省保険局医療課.疑義解釈資料の送付について(その 1 ).2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001678310.pdf
- 厚生労働省.令和 8 年度診療報酬改定について【医科全体版】.2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001693568.pdf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があります。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

