リハビリ拒否時のカルテ記録例|状況別の文例・NG表現・書き方

制度・実務
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リハビリ拒否時のカルテ記録例【状況別6パターン】

リハビリを拒否されたときは、「拒否あり」だけで終わらせず、患者さんの訴え、確認した状態、実際に行った対応、次回方針を記録することが重要です。拒否の背景には疼痛、倦怠感、不安、予定との重複などがあり、単純に意欲の問題とは判断できません。

この記事では、PT・OT・STがカルテに応用できる状況別6パターンの記録例、NG表現の言い換え、拒否時に確認したい5項目を紹介します。本人の意思による拒否と医学的な理由による見送り・中止の違い、算定記録との区別、多職種共有のポイントも整理します。次の担当者が判断しやすい、簡潔で具体的な記録を目指します。

基本形は「拒否の事実・理由 → 状態確認 → 実際の対応 → 共有・次回方針」です。以下はすべて架空の記録例です。実際のカルテには、確認・実施した内容だけを記載してください。

リハビリ拒否時の状況別カルテ記録例6パターン
場面 カルテ記録例 記録のポイント
① 倦怠感・疲労 「今日は疲れているので休みたい」と発言あり。離床練習を希望されず、本日の介入は未実施。午後への時間変更を提案するも希望なし。次回、体調と疲労感を再確認する。 本人の訴え、再提案への反応、未実施の事実を残す。
② 疼痛 右膝痛(安静時NRS 6/10)の訴えあり、立位練習を希望されず。看護師へ疼痛状況を報告。本日の立位練習は未実施。次回、疼痛を再評価して介入内容を検討する。 疼痛部位・程度・報告先を具体化する。
③ 不安・恐怖 歩行練習の提案に対し「また転びそうで怖い」と発言あり。安全対策を説明したが、本人は実施を希望されず。本日の歩行練習は未実施。次回、本人と練習内容を再検討する。 不安の内容を本人の言葉で残し、意思を尊重する。
④ 理由を話さない リハビリ実施の希望を確認したところ「今日はやらない」と発言あり。理由を確認するも具体的な説明なし。時間変更を提案したが希望されず、本日の介入は未実施。 理由が分からない場合は推測で補わない。
⑤ 時間・内容の変更希望 訪室時、「今は休みたい。午後ならできる」と発言あり。午前の介入は見送り、午後への時間変更を調整することとした。変更後の実施可否は未確定。 一時的な見送りと終日の拒否を区別する。
⑥ 一部実施後の拒否 端座位保持練習中、「疲れたので終わりたい」と発言あり。本人の希望を確認して練習を終了。実施内容・時間は専用欄に記録。次回、疲労状況を確認して負荷量を調整する。 実施済みの内容と終了理由を分ける。

記録例にある疼痛評価、看護師への報告、時間変更の提案などは、実際に行った場合にのみ記載します。未実施の評価や報告を実施済みとして書いたり、予定段階の対応を完了したように記載したりしないことが重要です。

リハビリ拒否時のカルテ記録に必要な5項目。拒否理由、状態確認、対応、多職種共有、次回方針の流れと右膝痛による拒否時の記録例
図:リハビリ拒否時のカルテ記録を5項目で整理する方法。下段は架空の症例による記録例です。図中のバイタルサインは例示であり、拒否時に全例で測定することを意味しません。

図版の5項目は、記録を整理するための実務上の枠組みです。拒否された場合に、すべての項目を必ず実施・記載するという意味ではありません。患者さんの状態、実施した対応、院内の記録ルールに応じて必要な情報を残します。

また、リハビリを希望されない場合に、繰り返し説得することが常に適切とは限りません。患者さんの意思を尊重し、必要な説明や状態確認を行いながら、実施方法や時間帯を検討します。

リハビリ拒否時に残したい記録項目は5つ

拒否時の記録は、①拒否理由、②状態確認、③再提案・対応、④多職種共有、⑤次回方針の5項目で整理すると、判断に必要な情報を残しやすくなります。

この5項目は、公式に定められた一律の記録様式ではなく、実務で情報の抜けを減らすための整理方法です。すべての項目を毎回記載する必要はなく、実際の状況に応じて必要な情報を選びます。

リハビリ拒否時に確認したい5つの記録項目
項目 確認する内容 記載例
① 拒否理由 本人の発言、疼痛、不安、疲労、予定など 「疲れているため休みたい」と発言あり
② 状態確認 症状、疼痛、覚醒、呼吸状態など必要な項目 右膝痛あり、安静時NRS 6/10
③ 再提案・対応 時間変更、内容変更、説明、本人の反応 午後への時間変更を提案するも希望なし
④ 多職種共有 共有が必要な情報、共有先、共有内容 疼痛増悪について病棟看護師へ報告
⑤ 次回方針 再評価、介入方法、負荷量、相談事項 次回、疼痛を再評価して立位練習を検討

拒否理由は4つの視点で整理する

拒否の背景を確認するときは、身体的要因、心理的要因、環境要因、認知・覚醒要因の4つに分けて考えると整理しやすくなります。

リハビリ拒否の背景を整理する4つの視点
分類 具体例 対応の方向性
身体的要因 疼痛、発熱、倦怠感、呼吸苦、めまい 必要な状態確認、負荷量の見直し、医師・看護師への相談
心理的要因 不安、恐怖、失敗体験、気分の落ち込み 本人の希望確認、説明方法や練習内容の調整
環境要因 検査、処置、面会、食事、睡眠不足 予定確認、時間変更、環境調整
認知・覚醒要因 理解困難、混乱、傾眠、覚醒状態の変化 普段の状態との比較、安全確認、多職種共有

この分類は診断基準ではありません。複数の要因が重なる場合もあります。特に急な覚醒低下や反応の変化がある場合は、本人の拒否と決めつけず、医学的な状態変化の可能性を確認します。

電子カルテの専用欄と重複させない

開始・終了時刻、実施内容、バイタルなどが電子カルテの専用欄に記録されている場合は、経過記録本文に同じ情報を機械的に繰り返す必要はありません。ただし、施設の記録ルールや必要な記載事項は確認してください。

拒否や中止の判断に関係する症状、通常と異なる所見、報告内容、方針変更などは、必要に応じて経過記録に残します。

記録の目的は文章量を増やすことではなく、次の担当者が判断の経過を追えるようにすることです。

NG記録は患者さんの訴えと観察事実に置き換える

リハビリ拒否時の記録では、「やる気なし」「拒否強い」「不穏」などの抽象的な表現だけで終わらせないことが重要です。医療者側の印象ではなく、患者さんの発言や実際に観察した行動を具体的に記載します。

リハビリ拒否時のNG表現と言い換え例
避けたい表現 具体的な記録例 改善ポイント
拒否あり 「今日は疲れている」と発言あり。離床練習を希望されず。 拒否の事実と本人の訴えを示す。
やる気なし 右膝痛の訴えあり、立位練習を希望されず。 意欲を決めつけず、確認できた理由を書く。
拒否強い 練習内容を説明するも「今日はやらない」と発言あり。 本人の発言と対応を具体化する。
不穏 訪室時、繰り返し起き上がろうとする行動あり。声かけに対し「帰りたい」と発言。 観察した行動と発言を分ける。
協力的でない 練習目的を説明したが、本人は実施を希望されず。 本人の意思を中立的に記載する。
本人希望なし 転倒への不安を訴え、歩行練習を希望されず。 確認できた不安の内容を残す。

「不穏」などの医学的表現が常に不適切という意味ではありません。必要な評価を行った場合でも、その判断につながった行動や状態を具体的に記録すると、他職種へ情報を伝えやすくなります。

拒否・体調不良・途中中止は分けて記録する

リハビリを実施できなかった場合でも、本人の意思による拒否と、医学的な理由による見送り・中止では、確認すべき内容が異なります。

特に呼吸苦、胸部症状、意識状態の変化、急激な体調悪化などがある場合は、拒否理由の聞き取りや再提案よりも、安全確認と必要な報告を優先します。

本人の拒否と医学的な見送り・中止の違い
場面 判断の中心 記録する内容
本人の意思による拒否 本人の希望、理解状況、拒否の背景 発言、確認した理由、提案内容、次回方針
体調不良による見送り 医学的な安全性、症状、実施可否 状態確認、見送り理由、対応、報告先
一部実施後の拒否 実施済み内容、本人の意思、終了理由 実施内容、時間、終了時の状態、次回方針
実施中の医学的中止 症状や所見、安全上の中止判断 中止時の状態、実施済み内容、対応、報告先

覚醒低下や急な状態変化は「拒否」として扱わない

呼名への反応低下、急な混乱、強い呼吸苦などを認めた場合は、単純な「リハビリ拒否」として処理しないことが重要です。

例えば、次のような記録が考えられます。

医学的な理由による未実施の記録例

訪室時、閉眼しており呼名に対する反応が乏しい。普段と異なる反応を認めたため、リハビリを開始せず病棟看護師へ速やかに報告。状態確認を優先し、本日の介入は未実施。

これは拒否の記録例ではなく、医学的な状態変化により介入を開始しなかった架空の記録例です。急変が疑われる場合は、院内の急変対応手順に従い、必要な観察・測定・応援要請・医師への報告などを速やかに行います。記録作成よりも患者さんの安全確保を優先してください。

また、認知機能障害や失語症などにより意思を表現しにくい場合は、理解しやすい説明や適切な意思疎通方法を検討します。反応が乏しいことだけで拒否と判断しないようにします。

拒否時の経過記録と算定記録は区別する

患者さんへの訪室、声かけ、説明、再提案を行ったことと、疾患別リハビリテーション料の算定対象となる訓練を実施したことは同じではありません。

リハビリを実施していない場合、拒否対応の経過を記録したことだけを根拠に、疾患別リハビリテーション料を算定することはできません。

一部実施後に拒否された場合は、実際に提供した訓練内容・時間と、該当する算定要件を確認します。短時間でも実施すれば必ず算定できるという意味ではありません。

算定可否は、令和8年度診療報酬改定の医科点数表、実施上の留意事項、関連する疑義解釈などを確認し、判断が難しい場合は医事課や管理者へ相談してください。

拒否・中止・短縮・検査中断などの算定判断は、リハビリが算定できない日|拒否・中止・検査・外泊時の判断で詳しく整理しています。

拒否が続く場合は原因分析と方針変更を記録する

拒否が繰り返される場合は、毎回同じ定型文を記録するだけでなく、拒否が起こりやすい状況と、これまでの対応による変化を確認します。

重要なのは拒否の回数だけではありません。どのような条件で介入が難しくなり、何を変更したのかを残すことが、次回の介入判断につながります。

拒否が続く場合に確認したい情報と対応例
確認すること 具体例 対応の方向性
時間帯 午前中は眠気が強く、午後は覚醒している 実施時間の調整を検討する。
身体症状 離床時の疼痛や倦怠感が強い 症状の評価と負荷量の見直しを行う。
練習内容 歩行練習に不安がある 本人の希望を確認し、練習内容を再検討する。
説明・理解 練習目的が十分に伝わっていない 説明方法や意思疎通手段を見直す。
生活背景 睡眠不足、面会予定、生活習慣との不一致 関係職種と情報共有し、実施条件を調整する。

多職種共有では「誰に何を伝えたか」を残す

疼痛や発熱などの医学的な問題が疑われる場合は、必要に応じて医師・看護師へ相談します。睡眠や日内変動、服薬後の状態、生活背景などは、関係職種との情報共有が役立つ場合があります。

記録では、単に「報告済み」とするよりも、共有した相手と内容を簡潔に残すと、対応の経過が分かりやすくなります。

拒否が続く場合の記録例

午前の介入を3日連続で希望されず。本人より午前中の眠気について訴えあり。看護師へ睡眠状況を確認し、担当者間で午後への時間変更を検討する。

この例も架空の記録です。共有していない内容や、決定していない方針を実施済み・決定済みとして記載しないようにしてください。

よくある質問

リハビリを拒否された日は「拒否あり」だけでもよいですか?

拒否の事実は伝わりますが、理由や次回方針が分からない場合があります。確認できた本人の訴え、状態、対応などを必要な範囲で加えると、次の担当者が判断しやすくなります。

拒否理由が分からない場合はどう書きますか?

理由を推測して記載せず、本人の発言、確認した内容、実施の希望、対応を記録します。例えば「実施を希望されず。理由を確認するも具体的な説明なし」といった記載が考えられます。

拒否された場合も毎回バイタル測定が必要ですか?

拒否があったという理由だけで、すべての患者さんに同じ測定を一律に行うとは限りません。症状、病態、普段の状態、医師の指示、院内基準などから必要性を判断します。急な状態変化が疑われる場合は、安全確認と報告を優先します。

少しだけ実施して途中で拒否された場合は算定できますか?

実施した時間や内容だけでなく、該当する疾患別リハビリテーション料の算定要件を確認する必要があります。実施内容・時間・終了理由を正確に記録し、算定判断に迷う場合は医事課や管理者へ確認してください。

次の一手

リハビリ拒否時の記録では、「拒否あり」という結果だけでなく、患者さんの意思、確認した状態、実際に行った対応、次回の判断材料を残すことが重要です。

まずは部署内でよく経験する拒否場面を1つ選び、今回の記録例を参考に、誰が読んでも状況が伝わる書き方を共有してみてください。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 厚生労働省公式資料.
  2. 厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について. 通知・訂正資料掲載ページ.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

2022年4月にrehabilikun blogを開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験を経て、現在は療養病院に勤務しています。

脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に、PT・OT・STが臨床で活用できる評価方法、実践手順、記録・制度情報を発信しています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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