令和8年度改定で療養病棟の医療区分2・3は4点変わりました
令和8年度診療報酬改定では、療養病棟の医療区分2・3について、感染症治療と特定処置の重複による医療区分3、非がん疾患の緩和ケア、小児の超重症・準超重症状態、療養病棟入院料2の6割要件が主な変更点です。診療報酬本体は2026年6月1日から施行されています。
特に注意したいのは、「医療区分2の項目が2つあれば医療区分3になる」という仕組みではないことです。本記事では、令和8年度の評価票に沿って、どの組み合わせで区分3になるのか、末期心不全・末期呼吸器疾患・末期腎不全をどう確認するのか、2026年10月1日以降の療養病棟入院料2で何を確認するのかを整理します。
2026年9月24日時点のポイント:令和8年3月31日時点で療養病棟入院料2を届け出ていた医療機関に対する「医療区分2・3が6割以上」の経過措置は、2026年9月30日までです。10月1日以降も療養病棟入院料2を算定する場合は、管轄する地方厚生(支)局の案内に沿って再届出の要否・必要様式を確認してください。
| 変更点 | 改定後のポイント | 確認する場面 |
|---|---|---|
| 処置等の重複 | 感染症治療に係る処置と、創傷治療・器具管理等を伴う一部の処置の双方に該当すると、処置等に係る医療区分3 | 肺炎・尿路感染症などと、褥瘡治療・中心静脈栄養・気管切開管理などが重なる患者 |
| 非がん緩和ケア | 末期呼吸器疾患、末期心不全、末期腎不全が、所定の条件を満たす場合に疾患・状態に係る医療区分2 | 疾患名だけでなく重症度・治療状況・症状コントロールの条件を確認 |
| 15歳未満の小児 | 超重症の状態は医療区分3、準超重症の状態は医療区分2 | A212の超重症・準超重症の状態に該当する小児患者 |
| 療養病棟入院料2 | 医療区分2・3の患者割合が5割以上から6割以上へ | 施設基準と2026年9月30日までの経過措置、10月1日以降の届出を確認 |

※図中では「末期呼吸不全」と要約していますが、医療区分・ADL区分等に係る評価票の公式項目名は「末期呼吸器疾患」です。実際の判定では評価票・評価の手引きの表記と定義を確認してください。
感染症治療+特定の処置に該当すると医療区分3になります
今回の医療区分見直しで最も迷いやすいのが、処置等に係る医療区分2の重複判定です。新しい評価票では、医療区分2の処置等をグループに分け、(1)感染症の治療に係る処置と、(2)創傷の治療に係る処置・器具の管理等を伴う処置の双方に該当する場合、処置等に係る医療区分3として扱います。
したがって、「医療区分2が2項目ある」というだけでは不十分です。(1)と(2)をまたいで該当しているかを確認する必要があります。
| 区分 | 主な項目 | 判定時のポイント |
|---|---|---|
| (1)感染症の治療に係る処置 | 肺炎に対する治療、尿路感染症に対する治療、発熱を伴う脱水の治療、発熱を伴う頻回の嘔吐の治療、発熱または嘔吐を伴う経腸栄養 | 感染症治療側のいずれかに該当しているか確認する |
| (2)創傷治療・器具管理等を伴う処置 | 一定条件の褥瘡治療、末梢循環障害による下肢末端の開放創、創傷・皮膚潰瘍等の治療、一定条件の中心静脈栄養、人工腎臓等、発熱を伴わない気管切開・気管内挿管 | (1)と同時に該当すると、重複判定による医療区分3を確認する |
一方、1日8回以上の喀痰吸引、頻回の血糖検査、密度の高い治療を要しない酸素療法、せん妄に対する治療、うつ症状に対する治療などは「その他の処置」に整理されています。これらと感染症治療が重なっただけでは、今回新設された重複判定によって医療区分3になるわけではありません。
判定の要点:「区分2+区分2=区分3」ではなく、感染症治療群(1)+創傷・器具管理等群(2)の組み合わせかどうかを確認します。
重複判定は患者例で確認すると分かりやすい
医療区分3になるか迷った場合は、「現在該当している2項目が(1)と(2)のどちらに属するか」を分けて確認します。以下は今回の重複判定を理解するための整理例です。
| 患者の状態・処置 | 組み合わせ | 新しい重複判定 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 肺炎の治療+条件を満たす褥瘡治療 | (1)+(2) | 医療区分3を確認 | 肺炎と褥瘡の双方が、それぞれ評価票の定義を満たしているか確認する |
| 尿路感染症の治療+発熱を伴わない気管切開管理 | (1)+(2) | 医療区分3を確認 | 尿路感染症の算定期間と、気管切開の状態を確認する |
| 肺炎の治療+密度の高い治療を要しない酸素療法 | (1)+その他 | 重複ルールだけでは区分3にならない | 酸素療法は別の医療区分3条件に該当していないかも確認する |
| 肺炎の治療+尿路感染症の治療 | (1)+(1) | 重複ルールだけでは区分3にならない | 感染症治療群内で複数項目に該当しているだけでは(1)+(2)にならない |
| 褥瘡治療+発熱を伴わない気管切開管理 | (2)+(2) | 重複ルールだけでは区分3にならない | 創傷・器具管理等群内の重複であることを確認する |
なお、期間が定められている項目は、その期間内に該当している場合に限って重複判定へ使用します。たとえば尿路感染症に対する治療は連続14日間、発熱を伴う脱水は7日間、発熱を伴う頻回の嘔吐は3日間など、評価の手引きで項目ごとの期間が定められています。
末期心不全・末期呼吸器疾患・末期腎不全は条件を満たすと医療区分2です
令和8年度改定では、非がん疾患に対する緩和ケアを評価する観点から、末期呼吸器疾患、末期心不全、末期腎不全が疾患・状態に係る医療区分2へ追加されました。ただし、診断名があるだけで自動的に医療区分2になるわけではありません。
| 項目 | 主な確認条件 | 迷いやすい点 |
|---|---|---|
| 末期呼吸器疾患 | 適切な治療を実施していてもヒュー・ジョーンズ分類Ⅴ度に該当し、医療用麻薬等の投与によるコントロールが必要な状態 | COPDや呼吸不全という診断名だけでは判定しない |
| 末期心不全 | 器質的心機能障害があり、適切な治療を実施していても慢性的にNYHAⅣ度で、頻回または持続的な医療用麻薬投与またはその他の点滴薬物療法による苦痛・症状コントロールが必要な状態 | NYHAⅣ度だけを根拠に判定しない |
| 末期腎不全 | 適切な治療を実施していても慢性的にCKD重症度分類Stage G5以上で、腎代替療法が必要だが透析療法の開始・継続が困難であり、医療用麻薬等による苦痛コントロールが必要な状態 | Stage G5や透析困難という一条件だけで判定しない |
この3項目は「末期」という言葉だけで判断せず、重症度、適切な治療が実施されていること、苦痛・症状コントロールの必要性を評価の手引きと診療記録で確認することが重要です。
15歳未満の超重症児・準超重症児も医療区分2・3へ追加されました
医療的ケア児の受け入れを評価する観点から、15歳未満の小児患者について、A212「超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算」に規定する状態が医療区分へ追加されています。
| 状態 | 医療区分 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 超重症の状態 | 疾患・状態に係る医療区分3 | 15歳未満で、A212に規定する超重症の状態に該当するか確認 |
| 準超重症の状態 | 疾患・状態に係る医療区分2 | 15歳未満で、A212に規定する準超重症の状態に該当するか確認 |
成人患者へそのまま適用する項目ではありません。年齢条件とA212で定められる状態の双方を確認します。
療養病棟入院料2は医療区分2・3の割合が5割から6割へ引き上げられました
令和8年度改定では、療養病棟入院料2の施設基準について、入院患者に占める医療区分3と医療区分2の患者の合計割合が「5割以上」から「6割以上」へ引き上げられました。
これは個々の患者の医療区分を決める判定基準の変更とは別の論点です。患者ごとの医療区分を評価票で正しく判定したうえで、病棟全体として療養病棟入院料2の施設基準を満たしているか確認します。
2026年10月1日をまたぐ施設は要確認
令和8年3月31日時点で現に療養病棟入院料2を届け出ていた医療機関は、6割要件について2026年9月30日まで経過措置があります。地方厚生(支)局の令和8年度届出一覧では、10月1日以降も療養病棟入院料2を引き続き算定する場合は再届出対象とされています。自院の届出状況と管轄厚生局の最新案内を確認してください。
慢性期・療養病棟に関する令和8年度改定の全体像は、令和8年度診療報酬改定|慢性期・療養病棟の変更点で整理しています。
医療区分・ADL区分等に係る評価票は毎日評価します
療養病棟に入院する患者は、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いて毎日評価し、患者の状態像に応じて該当する区分へ記載します。その際は、一つだけ代表項目を選ぶのではなく、該当するすべての項目を記載します。
令和8年度に新設された重複判定では、評価票の「処置等に係る医療区分3」の項目3に該当した場合でも、それだけを記録して終了するのではありません。重複の根拠となった処置等に係る医療区分2のそれぞれの項目にも「○」を記入します。
| 確認 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 評価頻度 | 患者の状態を毎日評価する |
| 該当項目 | 該当するすべての項目へ記載する |
| 重複判定 | 医療区分3の項目3に加え、根拠となった医療区分2の各項目にも記載する |
| 期間制限 | 尿路感染症、脱水+発熱など、期間が設定されている項目は該当期間を確認する |
| 病名だけで決めない項目 | 末期呼吸器疾患・末期心不全・末期腎不全などは評価の手引きに定める条件まで確認する |
現行制度では「再評価予定日を設定して定期的に見直す」ことが医療区分評価の基本ではなく、日々の状態に応じて毎日評価票を更新することが基本です。院内で確認者や情報共有方法を定めることは運用上有用ですが、病棟カンファレンスや多職種合意を医療区分判定そのものの公式要件と混同しないようにします。
医療区分2・3を確認するときの順番
病棟での確認は、独自の「5ステップ判定」を作るより、公式の評価票と評価の手引きに沿って確認する方が制度変更にも対応しやすくなります。
- その日の疾患・状態、処置等を確認する
- 評価票で該当する項目をすべて確認する
- 期間制限がある項目は該当期間内か確認する
- 感染症治療群(1)と創傷・器具管理等群(2)の双方に該当していないか確認する
- 該当する区分と各根拠項目を評価票へ記載する
特に重複判定では、結果だけを「医療区分3」と記録するのではなく、何と何が重なって区分3になったのかを追える状態にしておくと、翌日の評価や申し送りでも確認しやすくなります。
令和8年度改定で注意したい4つの誤判定
今回の見直しでは、旧制度の感覚のまま判定すると「区分3への上げ過ぎ」と「新しい区分2の見落とし」の両方が起こり得ます。
| 誤りやすい判断 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 医療区分2が2項目あれば区分3とする | (1)感染症治療と(2)創傷・器具管理等を伴う処置の双方に該当するか確認する |
| 心不全・呼吸器疾患・腎不全なら区分2とする | 「末期」の項目ごとに定められた重症度、治療状況、症状コントロールの条件まで確認する |
| 重複判定の区分3だけ評価票に記載する | 区分3の項目3だけでなく、根拠となった医療区分2の各項目にも記載する |
| 決めた再評価日にだけ見直す | 医療区分・ADL区分等に係る評価票は毎日評価する |
よくある質問
Q1. 医療区分2の項目が2つあれば、医療区分3になりますか?
いいえ。令和8年度に追加された重複判定は、処置等に係る医療区分2のうち、(1)感染症の治療に係る処置のいずれかと、(2)創傷の治療に係る処置・器具の管理等を伴う処置のいずれかの双方に該当する場合です。同じグループ内で2項目に該当した場合や、「その他の処置」との組み合わせだけでは、この新しい重複ルールによる医療区分3にはなりません。
Q2. 肺炎の治療と酸素療法を行っていれば医療区分3ですか?
今回の重複ルールだけを理由に医療区分3とはなりません。肺炎は感染症治療群ですが、密度の高い治療を要しない酸素療法は「その他の処置」です。ただし、酸素療法自体が「密度の高い治療を要する状態」に該当する場合など、別の医療区分3の条件に該当しないかは個別に確認します。
Q3. 末期心不全と診断されていれば医療区分2ですか?
診断名だけでは判定できません。評価の手引きでは、器質的心機能障害、適切な治療を行っていても慢性的にNYHAⅣ度であること、頻回または持続的な医療用麻薬投与またはその他の点滴薬物療法による苦痛・症状コントロールが必要であることなどが条件とされています。
Q4. 療養病棟入院料2の6割要件はいつから確認が必要ですか?
令和8年度改定後の施設基準は医療区分2・3の合計が6割以上です。ただし、2026年3月31日時点で現に療養病棟入院料2を届け出ていた医療機関には2026年9月30日まで経過措置があります。10月1日以降も算定を続ける施設は、管轄する地方厚生(支)局の最新の届出案内を確認してください。
次の一手
慢性期・療養病棟の改定全体を確認する
医療区分2・3だけでなく、療養病棟入院料や慢性期リハに関する変更を横断して確認したい場合は、総論記事へ進んでください。
リハビリ関連項目を改定前後で横断的に確認する場合は、令和8年度診療報酬改定|リハ関連の確定差分も参照してください。
参考文献・公式資料
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について.2026.厚生労働省公式ページ
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定:療養病棟入院基本料の見直し.2026.個別改定項目
- 厚生労働省.医療区分・ADL区分等に係る評価票(療養病棟入院基本料)・評価の手引き.2026.公式資料
- 関東信越厚生局.令和8年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて.2026.公式案内
- 関東信越厚生局.基本診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定).2026.公式案内
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

