心不全療養指導士の取り方【2026 年版】
このページでわかること:受験資格 → 年間スケジュール → 症例 5 例の作り方 → 勉強ロードマップ → 職種別の活かし方(最短で迷いを減らす)
心不全療養指導士は、日本循環器学会が認定する「心不全患者さんの療養支援に強い多職種」を育成する資格です。薬物療法やデバイスだけでなく、体重・食事・水分・塩分・運動・服薬・受診タイミングなど、再入院予防に直結するセルフマネジメントを、チームで支えられる人材が求められています。
本記事では、2026 年に初回受験を目指す医療職を想定し、受験資格と取得までの流れ、年間スケジュールの組み方、症例 5 例の作り方、勉強の進め方、そして職種別の活かし方を “長文化させず” 一気通貫で整理します。
向く人:心不全患者さんの「体重・塩分・水分・服薬・運動・受診判断」など、生活の意思決定を支える場面が多い人(退院支援、外来、在宅、地域連携)。
向かない人:心不全の関与が薄く、症例 5 例の材料(療養支援の介入)が残りにくい環境の人。まずは症例ログと連携の型を作ってからの方が、準備が進みやすいです。
心不全療養指導士とは?役割を 1 行で言うと
心不全療養指導士は、心不全の診療・治療を前提にしつつ、患者さんの生活に落ちる “行動” を多職種で整え、再増悪(再入院)を減らすための支援を実装する資格です。
「病棟で説明したはずなのに、家に戻ると続かない」「外来で体重が増えているのに受診が遅れる」など、療養支援のズレが起きるポイントを “チームの言葉” にして揃えられるのが強みです。
受験資格(チェックポイント)
受験資格は、国家資格の保有、日本循環器学会の会員(正会員・準会員)、心不全療養指導への従事、受験者用 e ラーニング修了、症例報告書 5 例の提出などが基本要件です。受験料(審査料)や支払期限も含め、年度ごとに条件を満たす必要があります。
細部は年度で更新されるため、必ず公式の受験資格ページで “最新の原文” を確認してください(本文末の参考リンクにまとめています)。
年間スケジュール(最短で迷わない並べ方)
ざっくりは「4 月から準備開始 → 7 月末までに e ラーニング → 8 月に受験料(審査料)対応 → 年末に筆記」という流れです。e ラーニングは “申込期限” と “受講期限” が別なので、後回しが一番の事故要因になります。
※表は横にスクロールできます。
| 時期 | やること | 詰まりやすい点 | 先回りの打ち手 |
|---|---|---|---|
| 4 月 | 学会入会/e ラーニング着手/症例ログ開始 | 入会と受講を “そのうち” にして忘れる | 4 月中に受講を半分まで進める(メモを残す) |
| 5〜6 月 | 症例ログを増やす/指導の型を試す | 症例が散発で、後から拾えない | 1 症例 10 分で書ける “最小ログ” を固定 |
| 7 月 | e ラーニング申込/受講完了(期限あり) | 申込期限・受講期限を過ぎる | 7 月上旬までに完了(余裕を残す) |
| 8 月 | 受験申請/受験料(審査料)対応 | 書類不備/支払期限の見落とし | 症例報告は 6〜7 月で “下書き完成” が安全 |
| 9〜11 月 | 筆記対策(弱点補強) | ガイドラインが重くて進まない | 講習の構成に沿って読む(最小範囲で回す) |
| 12 月 | 認定試験(筆記) | 直前に詰め込み過ぎて崩れる | “療養支援の判断” を症例で反復する |
取得までの 5 ステップ(やることを固定)
やることは多いように見えますが、分解すると 5 つです。ポイントは「症例 5 例」を最後に作るのではなく、早い時点で “材料” を貯めておくことです。
ここでは “やり方” を細かく書きすぎず、現場で回る最小手順に落とします。
| ステップ | やること | 完了の目印 | 失敗しやすい点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 日本循環器学会へ入会 | 会員登録が完了している | 年度の切り替わりで先延ばし |
| 2 | e ラーニング受講(修了証を取得) | 修了証を保存できている | 申込期限/受講期限の勘違い |
| 3 | 症例ログを “最小形式” で貯める | 候補 10 例以上が残っている | 思い出せるはずが、後から拾えない |
| 4 | 症例報告 5 例を作成・推敲 | 5 例すべてが “不備なく” 形になっている | バリエーション不足/介入が曖昧 |
| 5 | 筆記対策 → 受験 | 弱点が 3 つ以下に絞れている | 暗記に寄りすぎて実装が薄い |
e ラーニング+ガイドラインで回す勉強ロードマップ
勉強の中心は「e ラーニング」と「心不全診療ガイドライン」の 2 本柱です。最初から完璧を狙うと折れやすいので、講習の流れに合わせて “読む範囲を固定” し、症例に当てはめて判断の筋を作ります。
目標は “暗記” ではなく、「この患者さんのセルフケア行動をどう整えるか」をチームで説明できる状態です。
| 周回 | やること | ゴール | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 周目 | 講習を通して視聴し、用語と全体像をつかむ | “何が問われるか” が見える | 細部に深入りしない |
| 2 周目 | 療養指導パートを重点的に読み、症例で言い換える | 説明が “生活の言葉” になる | 現場の指導と矛盾が出たら記録する |
| 3 周目 | 弱点のみ復習し、確認テストで穴を塞ぐ | 弱点が 3 つ以下 | 直前の詰め込みは避ける |
職種別:現場でどう活かせるか(1 画面)
| 職種 | 強み(役割) | 現場でやること(例) | 残すべき記録(最小) |
|---|---|---|---|
| PT | 運動を「生活行動」に落とす | 息切れ時の強度調整、活動量の増やし方、退院後の運動継続 | 運動量・自覚症状(息切れ/浮腫)・中止基準の共有 |
| OT | ADL/IADL で再増悪を減らす | 家事・入浴・外出の負荷調整、セルフモニタリング習慣の定着 | 生活場面の負荷・休憩の取り方・再発サインの気づき |
| 看護 | 症状評価と受診判断の軸を作る | 体重変化の見方、増悪兆候の説明、受診目安の合意形成 | 体重/血圧/症状の基準値・受診目安・理解度 |
| 薬剤師 | 服薬アドヒアランスを上げる | 服薬の意味づけ、副作用/飲み忘れ対策、相互作用の注意 | 服薬状況・副作用・自己判断中止の有無 |
| 管理栄養士 | 塩分/水分/栄養を行動に変える | 外食/調理の具体策、体重増加への対処、継続できる提案 | 塩分・水分の目標、実行度、つまずき点 |
上の表のどこを担当しても、目的は「再増悪を減らすセルフマネジメントの定着」です。
次は、詰まりやすいポイント(失敗)と回避の手順を先に押さえます。
現場の詰まりどころ(ここだけ先に潰す)
よくある失敗(上位 3 つ)
① e ラーニングを後回し:申込期限と受講期限を越えてしまうパターンです。4 月に着手して “半分まで” 進めるだけで事故が激減します。
② 症例が散らばって拾えない:後から 5 例を選ぼうとしても、介入の根拠や経過が思い出せません。最初から “最小ログ” で貯めるのが安全です。
③ 参考書より暗記に寄る:点数は取れても、療養支援の判断が説明できず伸びにくいです。症例で「自分ならどう指導するか」を言語化して補強します。
回避のチェック(最小で OK)
| チェック | OK の基準 | NG のサイン | 修正の一手 |
|---|---|---|---|
| 期限管理 | 4 月に着手し 6 月までに 7 割 | 7 月にまとめてやる | 視聴を “週 2 回 × 30 分” に固定 |
| 症例ログ | 候補 10 例以上が残っている | 候補が 5 例ギリギリ | 心不全 “合併” 症例も対象に含める |
| 症例の質 | 介入目的 → 実施 → 変化が説明できる | 経過が “出来事” の羅列 | 指導の意図を 1 行で書く癖をつける |
| 勉強法 | 弱点が 3 つ以下 | 全部不安で全部やる | 講習の順に “範囲固定” で回す |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
心臓リハビリテーション指導士とどちらを先に取るべきですか?
どちらが先と決まっているわけではありません。運動処方を広く体系立てて学びたいなら心臓リハビリテーション指導士が土台になります。一方で、生活全体を見据えた療養支援(体重・塩分・水分・受診判断)に軸足を置きたいなら心不全療養指導士が向きます。今の担当業務に近い方から着手するのが失敗しにくいです。
在宅や訪問が中心でも、取る意味はありますか?
あります。在宅では体重測定・食事・水分・運動・受診タイミングなど、セルフケア行動の質が再入院リスクに直結します。訪問看護・訪問リハ・訪問薬剤・訪問栄養などと連携し、生活の中で実行可能なプランに落とし込む力が強みになります。
症例数が少ない職場でも、症例報告 5 例は作れますか?
施設の “主病名” が心不全でなくても、心不全を合併している症例は候補になり得ます。大事なのは「心不全療養がどこに関わっていたか(体重、運動、食塩、水分、受診判断など)」を介入として言語化できることです。後から拾えないのが最大の失敗なので、最初から “最小ログ” を固定して貯めてください。
ガイドラインが難しくて挫折しそうです。効率的な読み方は?
最初から最後まで読もうとすると折れやすいです。e ラーニングの構成に沿って「講習で強調されていた章」を優先し、普段よく関わる場面(うっ血期、退院前、外来、在宅)だけ深掘りします。「この症例なら自分はどう指導するか」を軸に読むと、記憶に残りやすくなります。
資格を取っても給与や役職が変わらないかもしれません。それでも価値はありますか?
直接の待遇変化がないケースはありますが、心不全患者さんへの関わり方やチーム内での役割は変わりやすいです。カンファでの発言の質が上がり、患者さん・家族からの信頼にもつながります。資格そのものに加えて、過程で蓄積した症例経験とネットワークが “次の選択肢” を増やします。
次の一手(迷いを減らす行動)
- 運用を整える:準備を回す “最短フロー” を確認
- 共有の型を作る:詰まりやすい環境要因の点検(赤旗)
教育体制・人員・記録文化など “環境要因” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考リンク(公式)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


