- 身長・体重測定は「条件固定」で精度が安定します
- まず押さえる前提|誤差を減らすコツは「条件固定」です
- コピペで使える|身長・体重測定の記録テンプレ(最小セット)
- 身長の測り方|立位が難しいときの選択肢(優先順位つき)
- 体重の測り方|車椅子・ベッド・浮腫があるときの実務
- 「推定」「代替」を使うときの運用ルール(記録と共有)
- 現場の詰まりどころ|「測れない」を 30 秒で整理する判断フロー
- よくある失敗( NG )と対策( OK )|数値がブレる原因はだいたいここです
- よくある質問( FAQ )
- まとめ|測定条件を揃えるだけで、身長・体重は「使える評価」になります
- 次の一手|運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検
- 参考文献
- 著者情報
身長・体重測定は「条件固定」で精度が安定します
身長・体重は「栄養」だけでなく、「水分」「排泄」「治療(点滴・利尿・透析など)」の影響もまとめて反映するため、測り方がぶれると解釈が一気に不安定になります。まず大事なのは、完璧な値を 1 回取ることより、同じ条件で繰り返し取れる運用を作ることです。
本記事では、立位が難しい方、車椅子・臥床の方、浮腫や点滴で体重が揺れる方を想定し、測定の優先順位と代替策、そして記録ルールまでを 1 本にまとめます。
この分野をまとめて見る:栄養・嚥下ハブ(スクリーニング→計画→モニタリング)
関連(総論):身体計測(形態測定)まとめ|目的別“最小セット”と標準化
関連(各論):在宅で体重が測れないときの栄養評価|代替指標と記録の型
まず押さえる前提|誤差を減らすコツは「条件固定」です
身長・体重が「使えない数字」になる一番の理由は、測定条件が毎回変わることです。誤差をゼロにするのは難しくても、同じ条件で繰り返すだけで、経時変化( Δ )が読みやすくなります。
まず固定したいのは次の 4 点です。ここが揃うと「測り方の違い」ではなく「患者の変化」を見られるようになります。
- タイミング:朝食前/排泄後など、測る時刻と前後条件を揃える
- 衣類・付属品:服装、車椅子クッション、ブランケット、装具などを揃える(難しければ差分を記録)
- 機器:どの体重計/身長計で測ったかを揃える(病棟や機器が変わるとブレやすい)
- 姿勢・支持:立位か座位か、手すり把持や介助で荷重が抜けていないかを揃える
ここまでの 4 点(タイミング/衣類・付属品/機器/姿勢・支持)を固定できると、数値のブレが減り、経時変化が読みやすくなります。次に、同じ条件で回すための記録テンプレ(コピペ用)を置くので、まずはこれを使って運用を揃えてください。
コピペで使える|身長・体重測定の記録テンプレ(最小セット)
身長・体重は「正しい 1 回」より、次回も同条件で再現できるログが臨床判断に効きます。テンプレでは、上の 4 点に「付属品」と「背景(浮腫・点滴・排泄など)」を足して、誤解が起きにくい最小セット(6 つ)にしています。
使い方はシンプルです。下のテンプレをそのままコピペし、空欄を埋めるだけで「再現できる記録」になります。
| 区分 | テンプレ(コピペ用) | 記入例 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 体重(詳細) | 体重:___.__ kg(____法)/時刻:__:__/衣類:___/付属品:___/支持:___/機器:___/背景:___ | 体重:54.2 kg(車椅子体重計)/時刻:08:30/衣類:薄手上衣+ズボン/付属品:クッションあり・ブランケットなし/支持:背もたれ座位・手すり把持なし/機器:○棟 車椅子体重計/背景:点滴あり(維持)・利尿薬変更なし | 同条件で再測できる情報だけを残します。背景は「浮腫→点滴/利尿→排泄」の順で書くと迷いにくいです。 |
| 身長(詳細) | 身長:___ cm(実測/推定:____)/姿勢:___/制限:___/出所:___ | 身長:158 cm(推定:膝高より算出)/姿勢:座位/制限:伸張困難(円背・疼痛)/出所:当日測定 | 推定や代替を使う場合は、先頭で「推定」と明記します(実測と混ざるのが最大の事故です)。 |
| 体重(短縮) | 体重:___.__ kg/方法:[立位][車椅子][ベッド][リフト]/時刻:__:__/付属品:[同一][変化あり](___)/背景:[浮腫][点滴][利尿][下痢・便秘](___) | 体重:54.2 kg/方法:[車椅子]/時刻:08:30/付属品:[同一]/背景:[点滴](維持) | 忙しい日は短縮版で OK です。「付属品=同一/変化あり」だけでも、ブレの切り分けが速くなります。 |
| 身長(短縮) | 身長:___ cm/種別:[立位実測][臥位実測][推定]/姿勢:___/注意:[拘縮][円背][疼痛](___) | 身長:158 cm/種別:[推定]/姿勢:座位/注意:[円背](伸張困難) | 短縮版でも、種別(実測/推定)だけは必ず残します。 |
身長の測り方|立位が難しいときの選択肢(優先順位つき)
身長は「立位で測る」が基本ですが、痛み・円背・拘縮・起立性低血圧などで難しいことも多いです。重要なのは、無理に立たせることではなく、安全に測れる方法へ切り替えることです。
- 優先 1:立位実測(姿勢が取れて、安全に測れる場合)
- 優先 2:臥位実測(ベッド上で伸展が取れる場合)
- 優先 3:推定(膝高など、実測が困難な場合)
立位が難しいのに無理に測ると、体幹屈曲や膝屈曲が混ざって「短く出る」ことがあります。測定の目的が BMI 計算や GNRI などに繋がる場合ほど、方法(実測/推定)を明記し、次回も同じ方法で追える状態にしておくと安全です。
臥位で測るときのコツ(短く出やすい人の対策)
臥位でも、円背・股関節屈曲拘縮・膝屈曲拘縮が強いと、伸展が取れず短く出やすくなります。無理に伸ばすのではなく、制限(疼痛/拘縮)を 1 行で残すと、次回の比較が崩れません。
- 骨盤の後傾が強い場合は、可能な範囲で中間位へ
- 膝が伸びない場合は「膝屈曲位で測定」など条件を記録
- 痛みが強い場合は中止し、推定へ切り替える
体重の測り方|車椅子・ベッド・浮腫があるときの実務
体重は「測れる環境(機器)」と「付属品(車椅子・寝具など)」でブレやすい項目です。理想は、同じ曜日・同じ時間帯・同じ付属品で測ることです。
- 車椅子体重計:車椅子+付属品が固定できれば、運用が安定します
- ベッドスケール:離床できない時の第一選択(寝具・点滴などの条件を記録)
- 立位体重計:支持(手すり把持)で荷重が抜けないかに注意
「体重が測れない」日は、欠測を隠さず、欠測理由と代替指標(周径、浮腫、摂取量、機能など)をセットで残すと、判断が止まりにくくなります。
浮腫・点滴・利尿があるときの「読み違い」を防ぐ
浮腫や点滴があると、体重は「栄養」だけでなく「体液」の影響を強く受けます。ここで起きやすいのは、体重増加を「栄養が戻った」と解釈してしまうことです。背景(浮腫/点滴/利尿/排泄)を 1 行で残すだけで、読み違いが減ります。
- 浮腫の所見(下腿、仙骨部など)を簡単に添える
- 点滴量や利尿薬変更がある場合は「あり/なし」でよいので明記
- 排泄前後で変動が大きい人は、測定タイミングを固定する
「推定」「代替」を使うときの運用ルール(記録と共有)
身長・体重は、測れない状況があって当然です。大切なのは、測れないこと自体ではなく、推定値を“実測”として扱ってしまうことです。推定・代替を使う場合は、次のルールをチーム内の共通言語にします。
| 項目 | 最低限書くこと | 例 | 次回の改善ポイント |
|---|---|---|---|
| 身長 | 実測/推定、方法、姿勢 | 推定身長:膝高より算出(座位) | 拘縮の評価、別法の検討 |
| 体重 | 測定機器、条件(車椅子・寝具)、タイミング | 車椅子体重計、同一クッション、朝食前 | 条件固定、排泄後の測定へ |
| 欠測 | 測れなかった理由、代替指標 | 離床不可のため欠測。周囲径で経過観察 | ベッドスケール手配など |
現場の詰まりどころ|「測れない」を 30 秒で整理する判断フロー
ここは「読ませるゾーン」です。困ったときは、次の 3 つを順に確認すると、判断が止まりにくくなります。
- ① まずは失敗パターンを確認:よくある失敗( NG )と対策( OK )へ
- ② 記録が揃っているか確認:コピペ用テンプレ(最小セット)へ
- ③ 記録の型をチームで揃える:GNRI 運用プロトコル(記録テンプレ)
よくある失敗( NG )と対策( OK )|数値がブレる原因はだいたいここです
身長・体重の運用が崩れるときは、原因が毎回違うように見えて、実はパターンが限られています。「次回、同条件で再測できるか」を基準に、NG を OK に置き換えます。
| よくある NG | 何が起きる? | OK(対策) | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 測定時刻が毎回バラバラ | 排泄・補液・食事で日内変動が混ざる | 曜日/時間帯/前後条件(朝食前など)を固定 | 時刻:08:30(朝食前) |
| 付属品が毎回違う(クッション等) | 小さな変化がノイズに埋もれる | 「同一/変化あり」を固定し、変化時だけ列挙 | 付属品:変化あり(クッション変更) |
| 支持で荷重が抜けている | 実測より軽く出る/再現できない | 支持条件を明記し、難しければ座位・臥位へ | 支持:手すり軽把持 |
| 推定値を実測として扱う | BMI 等の解釈が崩れる | 先頭に「推定」を必ず入れ、方法も書く | 身長:推定(膝高) |
| 浮腫・点滴を無視して体重を解釈 | 「栄養が戻った」と読み違える | 背景(浮腫/点滴/利尿/排泄)を 1 行で残す | 背景:下腿浮腫あり、点滴維持 |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1.テンプレは「詳細」と「短縮」、どちらを使えばいいですか?
基本は詳細ですが、忙しい日は短縮で十分です。短縮でも、方法(立位/車椅子/ベッド)と付属品(同一/変化あり)、身長の種別(実測/推定)だけは残すと、次回の比較が崩れません。
Q2.衣類や付属品を毎回厳密に揃えられません
厳密に揃えるのが難しい場合は、揃えられなかったことを記録に残します。たとえば「ブランケットあり」「クッション変更」など、差分が分かるだけで解釈が一気に安全になります。
Q3.推定身長を使うとき、最低限何を書けばいいですか?
推定であることと、推定法(例:膝高)だけで十分です。可能なら姿勢(座位/臥位)も添えると再現性が上がります。推定を実測扱いしないことが最重要です。
Q4.体重が測れない日は、何でフォローすればいいですか?
欠測理由を明記し、代替として「周径( MUAC / 下腿周径など)」「浮腫」「摂取量」「機能」のセットで経過を追うと判断が止まりにくいです。実務の型は、在宅の代替指標まとめも参考になります。
まとめ|測定条件を揃えるだけで、身長・体重は「使える評価」になります
身長・体重は、測り方がぶれると「使えない数字」になりますが、条件が揃えば「経時変化を読む武器」になります。まずは、タイミング・衣類・機器・支持条件の 4 点を固定し、立位が難しい場合は座位・臥位・推定へと安全に切り替えてください。
あわせて、コピペ用テンプレ(最小セット)で「次回も同条件で再現できるログ」を残すと、チームでの共有と再評価が一気にラクになります。
次の一手|運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検
- 運用を整える:PT の栄養スクリーニング運用プロトコル|10 分フロー
- 共有の型を作る:GNRI 運用プロトコル:病棟・在宅で回す手順と記録テンプレ【PT】
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. DOI: 10.1016/j.clnu.2018.08.002
- World Health Organization. Physical status: the use and interpretation of anthropometry. WHO Technical Report Series. 1995. WHO IRIS
- ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2022. ESPEN Guidelines
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


