退院前訪問で使うスマホアプリ|家屋調査の計測・撮影・記録方法

臨床手技・プロトコル
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退院前訪問で使うスマホアプリ|目的別の使い分け

退院前訪問や家屋調査では、スマホの計測アプリ、カメラ、動画、メモ機能を使うことで、住環境と生活動作の情報を整理しやすくなります。ただし、計測アプリの数値は目安であり、住宅改修や福祉用具選定に必要な寸法は、メジャーなどの適切な器具で実測することが基本です。

この記事では、退院前訪問に関わるPT・OTなどの医療従事者に向けて、スマホ機能の使い分け、計測時の注意点、写真・動画の記録方法、個人情報管理、多職種への共有方法を解説します。特に「写真で十分か、動画が必要か」「どこを実測するか」「記録をどう退院支援につなげるか」という判断を整理します。

訪問全体の準備や持ち物については、退院前訪問指導の流れと持ち物で確認できます。

目的別に使い分ける5つのスマホ機能

家屋調査では、多くのアプリを準備する必要はありません。計測、写真、動画、マークアップ、メモの5つの機能を、確認したい情報に応じて使い分けます。

退院前訪問・家屋調査で使う5つのスマホ機能の使い分け。計測アプリは寸法の概算、写真は生活動線、動画は動作、マークアップは問題箇所、メモは申し送りに活用し、最終寸法はメジャーで実測することを示す図版
退院前訪問・家屋調査におけるスマホ機能の使い分け。スマホは記録・共有の補助として使い、住宅改修や福祉用具の判断に必要な寸法は実測します。

上の図版は、スマホ機能の役割を整理したものです。各機能を必ず使用するという意味ではありません。撮影の必要性、本人の状態、施設の情報管理規程を踏まえて選択します。

退院前訪問で使うスマホ機能と選択の目安
目的 使う機能 実務上の判断
幅・高さの概算 計測アプリ 重要な寸法はメジャーで実測する
生活動線の把握 写真 全体と問題箇所を記録する
動作の確認 動画 静止画では伝わらない場合に使用する
危険箇所の説明 マークアップ 矢印・実測値・判断を記載する
多職種への共有 メモ 場所・動作・対応を整理する

使い分けの基本:環境の位置関係は写真、動作の経過は動画、寸法の目安は計測アプリ、最終寸法はメジャーで確認します。撮影や保存が認められていない環境では、紙の記録や手書き図面などの代替方法を使用します。

計測アプリの使い方と実測が必要な場所

計測アプリは、廊下幅、玄関段差、開口部、浴室入口などの概算を確認する補助として使えます。ただし、アプリの表示値だけで通行可否や住宅改修の仕様を決めることは避けます。

iPhoneの「計測」アプリを使う場合

iPhoneには、カメラを利用して物体の長さや高さを概算できる「計測」アプリがあります。Appleの公式ユーザガイドでは、輪郭が明瞭で、端末から約0.5〜3mの位置にある対象物で使用すると、より適切な結果を得やすいと説明されています。

ただし、この距離は計測精度を保証する範囲ではありません。計測結果は概算値であり、住宅改修や福祉用具の適合を判断するための許容誤差を示すものでもありません。

  1. 施設で使用を認められた端末で「計測」アプリを開きます。
  2. 確認したい対象物の輪郭が分かる位置からカメラを向けます。
  3. 開始点と終了点を指定して概算値を確認します。
  4. 提案内容に影響する寸法は、メジャーなどで実測します。
  5. 記録には実測値、測定位置、必要な測定条件を残します。

アプリの測定結果は、端末、対象物、撮影距離、周囲の明るさ、端点の指定方法などによって変わります。特に敷居や段差のように端点が分かりにくい場所では、表示値をそのまま採用しないことが重要です。

水平器機能についても、傾きの目安を確認する補助として扱います。床面や手すりの施工精度、安全性の最終判定には、目的に適した測定器具や専門職による確認が必要です。

Androidスマホを使う場合の注意点

Android端末でも、機種やアプリによってはカメラを利用した計測機能を使用できます。ただし、iPhoneの「計測」と同じ機能が、すべてのAndroid端末に標準搭載されているわけではありません。

使用できる機能、対応機種、測定方法、精度はアプリや端末によって異なります。使用前に提供元の公式情報と対応環境を確認してください。

また、医療・介護業務で使用する場合は、アプリの利用規約、画像や測定データの保存先、外部送信の有無なども確認する必要があります。未確認のアプリを業務用端末へ独自にインストールすることは避けます。

iPhone・Android共通の原則:計測アプリは測定箇所を把握する補助として使用し、最終的な寸法は実測値で判断します。

住宅改修・福祉用具選定で実測する場所

重要なのは、すべての場所を測ることではなく、本人の生活動作と提案内容に関係する寸法を確認することです。

家屋調査で確認する寸法と動作への影響
場所 実測する項目 確認する動作
廊下・開口部 最狭部、扉の有効幅 歩行器・車椅子での通過、方向転換
玄関 段差高、踏み面、支持物の位置 昇降、履物操作、方向転換
トイレ 便座高、周囲の空間、支持物の位置 立ち座り、衣服操作、移乗
浴室 入口段差、浴槽縁高、洗い場の広さ 出入り、またぎ、洗体動作
寝室 ベッド高、移乗側の空間 起き上がり、移乗、介助者の動線

たとえば、廊下幅が十分に見えても、扉の開き方や家具の配置によって歩行器が接触することがあります。数値だけでなく、実際に使用する補助具の寸法、本人の動作、介助者の立ち位置を合わせて判断します。

手すりの設置位置や住宅改修の仕様は、本人の身体機能、支持方向、壁面の構造なども踏まえて検討します。アプリによる概算だけで設置位置を確定しないでください。

写真・動画・マークアップの記録方法

写真は環境の位置関係、動画は動作の経過、マークアップは問題箇所の説明に向いています。必要な情報が伝わる方法を選び、撮影量を増やすこと自体を目的にしないことが重要です。

写真は全体と問題箇所を組み合わせる

写真を撮影する場合は、生活動線が分かる全体写真と、問題となる箇所の近接写真を組み合わせると整理しやすくなります。

  • 全体写真:玄関から居室までの動線、家具配置、トイレや浴室の空間
  • 近接写真:敷居、段差、手すり候補位置、扉と補助具の干渉
  • 補足メモ:測定位置、実測値、問題となる動作

たとえば、トイレ入口の段差だけを近接撮影しても、どの位置にある段差なのか伝わらないことがあります。全体写真と組み合わせることで、進入方向や介助者の立ち位置も確認しやすくなります。

動画は動作の経過を共有する必要がある場合に使う

動画は、立ち上がり、方向転換、段差昇降、浴槽またぎなど、静止画では動作の変化を伝えにくい場合に有用です。

ただし、動画撮影を目的に危険な動作を再現させてはいけません。動作確認そのものの安全性を優先し、必要な介助体制を確保できない場合は実施を見送ります。

撮影する場合も、本人・家族への説明と必要な同意、施設の許可、保存・共有方法を確認したうえで、必要最小限の範囲に限定します。

マークアップは1枚1メッセージにする

マークアップは、写真に矢印や短い文字を加え、何を確認してほしいのかを明確にする方法です。

家屋調査写真へのマークアップ例
曖昧な記録 改善例
トイレが狭い トイレ右側400mm(実測)。方向転換時に右肘が壁へ接触。
段差あり 浴室入口段差80mm(実測)。退室時に右足先が接触。
手すりが必要 玄関昇段時に左手支持を探す。左壁の支持位置を検討中。
浴槽またぎが不安定 またぎ時に後方へ重心移動。用具使用時の動作を再評価予定。

上記の数値は記載方法を示す架空例であり、住宅改修の推奨寸法や安全基準ではありません。実際の記録には現地の実測値を使用します。

また、手すり候補位置を写真に示す場合は、検討段階であることを明記します。マークアップ画像だけで施工位置を確定したように見せないことが重要です。

撮影同意と個人情報管理|スマホ使用前の確認事項

退院前訪問でスマホを使用する際は、撮影の必要性、本人・家族への説明、端末の使用許可、保存先、共有先、保存期間・削除方法を確認します。

自宅内には、家族写真、郵便物、薬袋、書類、カレンダーなど、本人や家族の生活情報が含まれます。顔が写っていない写真でも、他の情報と組み合わせることで個人を識別できる場合があります。

個人情報の取扱いでは、撮影・取得、保存、第三者提供を区別することが重要です。撮影について説明し同意を得たことだけで、任意の端末への保存や外部事業者への提供まで認められるわけではありません。

撮影・保存・共有で確認する5項目

退院前訪問での撮影・保存・共有の確認事項
確認項目 確認する内容
撮影の必要性 写真・動画が必要か、実測値や手書き図面で代替できないか
説明と同意 撮影目的、対象範囲、利用目的、本人・家族への説明、必要な同意の取得方法
端末と保存 業務用端末の使用可否、個人端末の制限、自動クラウド同期、保存期間、削除手順
内部共有 退院支援に必要な職種、閲覧権限、施設が認めた共有方法
外部共有 ケアマネジャーや福祉用具事業者などへの提供目的、提供範囲、本人同意の要否、適用される法令・施設手続き

医療・介護関係事業者が個人データを第三者へ提供する場合は、原則として本人同意が必要ですが、法令に定められた例外や、委託・共同利用など第三者提供に該当しない取扱いがあります。

また、他の医療機関や介護サービス事業者との連携では、利用目的の公表状況や本人の意思、提供の目的などによって取扱いが異なります。すべての外部共有で個別の書面同意が必要と断定することも、退院支援に関わる相手なら無条件に共有できると考えることも適切ではありません。

実務では、個人情報保護委員会・厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」と施設の規程を確認し、必要な範囲・方法で共有します。

特に、本人の情報だけでなく、家族の顔や私物など第三者の情報が写り込む場合は、撮影範囲を調整するなどの配慮が必要です。

個人スマホとクラウド保存の注意点

スマホの写真は、端末の設定によって個人のクラウドサービスへ自動同期される場合があります。施設が認めていない端末、保存先、メッセージアプリ、クラウドサービスへの記録・共有は避けてください。

厚生労働省は、2026年6月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」を公表しています。医療情報を扱う端末・システムの安全管理では、同ガイドラインと施設の運用管理規程を確認します。

ただし、同ガイドラインは撮影同意や第三者提供の法的要件を単独ですべて定めるものではありません。個人情報の取得・利用・提供については、個人情報保護法と医療・介護関係事業者向けのガイダンスも確認する必要があります。

撮影できない場合の対応:写真や動画がなくても、手書き図面、実測値、動作観察記録を組み合わせて情報を共有できます。スマホの使用は必須ではありません。

退院前訪問でのスマホ活用フロー

スマホは、訪問前の準備から帰院後の記録までの流れに組み込むと活用しやすくなります。撮影や計測に時間を使いすぎず、本人の生活動作の確認を優先します。

訪問前から帰院後までの5ステップ

  1. 訪問前:確認したい生活動作を決め、撮影の必要性、同意、端末・保存ルールを確認する。
  2. 全体把握:玄関から生活動線を確認し、必要に応じて全体写真を残す。
  3. 重点確認:問題となる場所を絞り、提案に必要な寸法をメジャーで実測する。
  4. 動作確認:安全を確保して代表動作を観察し、必要時のみ短い動画を記録する。
  5. 帰院後:写真・実測値・動作所見を整理し、施設の規程に従って診療録やカンファレンスに反映する。

たとえば、トイレ移乗が主な課題であれば、玄関から寝室までのすべての場所を詳しく撮影する必要はありません。トイレへの動線、扉の有効幅、便器周囲の空間、本人の移乗動作など、判断に必要な情報を優先します。

スマホを使うこと自体が目的ではありません。必要な情報を安全に収集し、退院後の生活に向けた判断と共有につなげることが重要です。

スマホ記録を3行でまとめる方法と失敗への対策

退院前訪問後の記録では、写真や寸法を並べるだけでなく、生活動作への影響と次の対応を明確にします。

おすすめは「場所と実測値」「本人の動作・介助量」「次の対応」の3行で整理する方法です。これは公式の記録様式ではなく、多職種で情報を共有するための実務上の整理例です。

診療録・申し送りに使う3行記録例

退院前訪問の3行記録テンプレート
項目 記載内容 記録例
1行目 場所と実測値 浴室入口段差80mm、浴槽縁520mm(いずれも現地実測)。
2行目 動作・介助量 浴槽またぎ時に右足先が浴槽縁へ接触し、後方からの介助を要した。
3行目 次の対応 浴槽台の適合と手すり候補位置を関係職種で検討する。設置位置は未決定。

上記は架空の記録例です。実際の診療録では、観察した動作、測定条件、介助内容、実施した対応を正確に記載してください。

たとえば、浴槽またぎを実際に確認できなかった場合は、「またぎ動作未実施」と記載します。実施していない動作を観察したように記録してはいけません。

また、実測値とアプリによる概算値を混在させず、必要に応じて測定位置や測定方法を補足します。住宅改修の候補位置については、検討中・適合確認済み・施工決定などの段階を区別します。

よくある失敗と回避策

スマホを使った家屋調査での失敗と対策
失敗 起きる問題 対策
写真を撮りすぎる 重要な情報が埋もれる 全体と問題箇所を優先する
数値だけ残す 動作への影響が分からない 実測値と動作所見を組み合わせる
アプリ値で判断する 寸法誤差が提案に影響する 重要箇所は実測する
撮影のために動作を繰り返す 転倒や疲労のリスクが高まる 安全な動作確認を優先する
保存先を確認しない 情報漏えいのリスクが生じる 使用端末・保存先・共有方法を事前確認する
撮影しただけで終わる 退院支援の判断に反映されない 3行記録へ整理して共有する

記録の質を高めるポイントは、写真の枚数や動画の長さではありません。どの環境で、どの動作に問題があり、何を調整する必要があるかが伝わることです。

よくある質問

質問をタップすると回答が開きます。

計測アプリだけで住宅改修の寸法を決めてもよいですか?

いいえ。計測アプリの表示値は概算として扱います。手すり設置、段差解消、福祉用具選定などに必要な寸法は、メジャーなどの適切な器具で実測してください。施工に関わる寸法や構造条件は、必要に応じて施工担当者などとも確認します。

退院前訪問では写真と動画のどちらを優先しますか?

生活動線や家具配置などの位置関係を共有する場合は写真、動作の経過や介助量の変化を確認する場合は動画が向いています。ただし、撮影が必要かどうかを先に判断し、同意と施設ルールを確認したうえで使用します。

個人スマホで家屋調査の写真を撮影してもよいですか?

施設の情報管理規程に従います。個人端末での撮影やクラウド保存を禁止している施設もあります。撮影への同意が得られていても、施設が認めていない端末や保存方法を使用してよいことにはなりません。

次の一手|スマホ記録を退院支援の判断につなげる

退院前訪問でスマホを使う目的は、情報を増やすことではなく、生活上の問題と必要な対応を分かりやすく共有することです。

まずは、確認する生活動作を決め、必要な場所を実測し、写真や動画を補助的に使います。帰院後は「場所と数値」「動作・介助量」「次の対応」の3行に整理し、多職種で共有してください。


参考文献・公式情報

  1. Apple. iPhoneで寸法を計測する. iPhoneユーザガイド. 参照日:2026年10月27日.
  2. Apple. 計測アプリ. App Store. 参照日:2026年10月27日.
  3. Apple. iPhoneを水準器として使用する. iPhoneユーザガイド. 参照日:2026年10月27日.
  4. 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版. 2026年6月.
  5. 個人情報保護委員会・厚生労働省. 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス. 2026年4月一部改正.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

2022年4月にrehabilikun blogを開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験をもとに、理学療法士をはじめとする医療従事者向けに、評価・臨床判断・実践手順に関する情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に活動しています。記事では、医学的根拠と実務上の判断を区別し、臨床で迷いやすい場面を具体的に整理することを重視しています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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