ハフィングのやり方|痰を出すコツとACBTでの使い方

臨床手技・プロトコル
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ハフィングは「強く咳く」のではなく、痰を少しずつ上げる手技です

ハフィングは、口と喉を開いたまま息を吐き、気道分泌物を末梢から中枢へ移動させる方法です。ポイントは、強く何度も吐くことではありません。痰がまだ奥にあるときは小さめの吸気から長めに、痰が上がってきたら大きめの吸気から短めにハフし、最後に必要最小限の咳嗽へつなげます。

ACBT(Active Cycle of Breathing Techniques)では、呼吸コントロール(BC)、胸郭拡張運動(TEE)、強制呼出手技(FET)を組み合わせます。ハフィングはACBTそのものではなく、FETで用いる中心的な手技です。この記事では、ハフィングのやり方、痰の位置による使い分け、ACBTの中での使い方、中断・再評価の考え方まで整理します。

先に結論

  • 痰がまだ奥にある:小さめの吸気から長めのハフ
  • 痰が上がってきた:大きめの吸気から短めのハフ
  • 喀出できそう:必要最小限の咳嗽
  • 息切れや咳が増える:呼吸コントロールへ戻る

ハフィングのやり方は3ステップで考えます

ハフィングでは、咳のように声門を閉じて一気に吐き出すのではなく、口と喉を開いた状態で呼気流をつくることがポイントです。鏡を曇らせるように息を吐くイメージで行います。

  1. 楽に呼吸できる姿勢をとる:座位、前傾座位、セミファウラー位、側臥位などから、呼吸困難が増えにくい姿勢を選びます。
  2. 痰の位置に合わせて吸気量を決める:末梢側の痰を動かす場合は小さめの吸気、中枢へ上がった痰を動かす場合は大きめの吸気を使います。
  3. 口と喉を開いて息を吐く:腹部を使いながら「ハーッ」と息を吐きます。強く絞り出すのではなく、痰が移動する呼気流をつくります。

ハフィングは連続して繰り返すより、1〜2回を目安に呼吸コントロールへ戻り、息切れや咳を落ち着かせながら続けます。強すぎるハフィングは喘鳴や咳の連発につながり、かえって分泌物を移動させにくくなることがあります。

痰の位置に応じて「小さめ・長め」と「大きめ・短め」を使い分けます

ハフィングで最も迷いやすいのが、どのくらい吸って、どのくらい吐くかです。基本は、痰が末梢側にある段階では小さめの吸気から長めに、痰が中枢へ上がってきたら大きめの吸気から短めに使い分けます。

ハフィングを痰の位置に応じて低肺気量から高肺気量へ使い分け、最後に咳嗽へつなげる流れを示した図版
痰の位置に合わせて開始肺気量とハフィングの長さを変えます。図はハフィング部分の使い分けを簡略化したもので、ACBT全体は呼吸コントロール・胸郭拡張運動・FETで構成されます。
痰の位置に応じたハフィングの使い分け
痰の状態 吸気量 ハフィング 次の判断
まだ奥にある 小さめ 低肺気量寄りから長めに吐く 末梢側の痰を中枢へ移動させる
上がってきた 大きめ 高肺気量寄りから短めに吐く 中枢の痰を喉元へ近づける
喀出できそう 咳が成立する範囲 ハフを重ねすぎない 必要最小限の咳嗽で喀出する

痰がまだ奥にあるときは、小さめの吸気から長めにハフします

胸の奥に痰がある感じがする、呼気時の分泌物音がまだ遠い、ハフィングをしてもすぐ咳につながらない場合は、分泌物が末梢側にある可能性を考えます。

この段階では、肺を大きく膨らませて一気に吐くのではなく、小さめに吸ってから、口と喉を開いたまま比較的長くハフすることで、末梢側から中枢側への移動を狙います。

痰が上がってきたら、大きめの吸気から短めにハフします

分泌物音が上がってきた、喉元に痰を感じる、咳が出そうになってきた場合は、より中枢側へ移動してきた可能性があります。

この段階では、先ほどより大きめに吸い、短めのハフィングへ切り替えます。口元近くまで痰が上がったら、ハフィングを繰り返し続けるのではなく、必要最小限の咳嗽で喀出します。

ACBTでは、ハフィングをFETとして組み込みます

ACBTは「ハフィングだけを繰り返す方法」ではありません。呼吸を整える呼吸コントロール、換気を促す胸郭拡張運動、分泌物を移動させるFETを、患者の反応に合わせて組み合わせます。

呼吸コントロール(BC)

胸郭拡張運動(TEE)

呼吸コントロール(BC)

ハフィングを含むFET

呼吸コントロール(BC)

ACBTを構成する3つの要素
要素 役割 実施時のポイント
呼吸コントロール
BC
呼吸を落ち着かせる 肩や頸部の力を抜き、楽な呼吸へ戻す
胸郭拡張運動
TEE
深部への換気を促し、分泌物を動かしやすくする 深呼吸を無理に増やさず、患者の反応に合わせる
強制呼出手技
FET
分泌物を末梢から中枢へ移動させる 痰の位置に合わせてハフィングを使い分ける

ACBTの回数や実施時間は一律ではありません。分泌物量、呼吸困難、疲労、咳嗽能力、基礎疾患などに応じて個別に調整します。決められた回数をこなすことより、痰がどこまで移動したかと患者の反応を見ることが重要です。

うまくいかないときは「強さ・肺気量・戻るタイミング」を確認します

ハフィングで痰が出ない場合、回数を増やす前に実施方法を見直します。同じハフィングを強く繰り返すと、咳の連発や喘鳴、疲労につながることがあります。

ハフィングでよくある詰まりどころと修正
困る場面 確認すること 修正の考え方
すぐ咳になってしまう ハフが強すぎないか 力を弱め、口と喉を開いた呼気へ戻す
喘鳴が出る 強く絞り出していないか ハフィングを中断し、呼吸コントロールへ戻る
痰が上がらない 開始する肺気量が合っているか 末梢側なら小さめの吸気から長めのハフを試す
痰は上がったが出ない 同じ長いハフを続けていないか 大きめの吸気から短めのハフへ切り替える
疲れて続けられない ハフや咳を連続していないか 呼吸コントロールを挟み、介入量を減らす

呼吸状態が崩れたら、ハフィングを続けず再評価します

ACBTやハフィングには、すべての患者へ共通する単一の数値中止基準があるわけではありません。開始前の状態と比べて、呼吸困難、酸素化、循環反応、疼痛、咳嗽などが明らかに悪化していないかを確認します。

  • 呼吸困難が明らかに増悪した
  • 酸素化が開始前より低下し、休息しても回復しない
  • 新たな胸痛、めまい、顔色不良などを認める
  • 新たな喘鳴や胸部絞扼感が出現する
  • 咳が連発して呼吸を整えられない
  • 血痰・喀血が出現または増悪する
  • 疲労が強く、呼吸コントロールが成立しない

これらの変化があれば、まずハフィングを中断して呼吸コントロールや休息へ戻ります。改善しない場合や、新しい症状が出現した場合は、そのまま反復せず状態を再評価し、必要に応じて医師や呼吸管理に関わるスタッフへ相談します。

SpO₂についても一律の数字だけで判断せず、基礎疾患、酸素療法の有無、個別に設定された目標範囲、開始前からの変化を合わせて評価します。

記録は「どのハフで痰が動いたか」まで残します

記録では「ACBT実施」とだけ書くより、どの肺気量からのハフィングで痰が移動し、どの段階で咳嗽へつながったかを残すと、次回の再現性が高くなります。

記録で残したい4点

  • 実施姿勢
  • どの吸気量・長さのハフを使ったか
  • 痰の移動・喀出の有無
  • 呼吸困難や喘鳴などの反応

記録例:端座位でACBT実施。BC・TEE後、小さめの吸気から長めのハフで分泌物の中枢移動あり。大きめの吸気から短いハフへ変更後、咳嗽1回で喀痰あり。呼吸困難・喘鳴の増悪なく終了。

次回は、今回痰が動いた条件を再現しながら、分泌物量や疲労に応じてハフィングの回数や肺気量を調整します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ハフィングと咳は何が違いますか?

ハフィングは、口と喉を開いた状態で息を吐き、分泌物を末梢から中枢へ移動させるために使います。咳は、上がってきた痰を最終的に喀出するときに使います。最初から咳を連発するのではなく、ハフィングで痰を上げてから必要最小限の咳へつなげるのが基本です。

Q2. ハフィングは強く行うほど痰が出ますか?

強いほど効果的とは限りません。強すぎるハフィングは喘鳴や咳の連発につながることがあります。痰の位置に合わせて吸気量と呼気の長さを調整し、力任せに吐かないことが重要です。

Q3. ハフィングをしても痰が上がらないときはどうしますか?

同じ強さのハフィングを繰り返す前に、開始する肺気量を確認します。痰がまだ末梢側にあると考えられる場合は、小さめの吸気から長めのハフを使います。疲労や息切れが出ている場合は、呼吸コントロールへ戻して休息し、体位やACBT全体の組み立ても見直します。

次の一手


参考文献

  1. Herrero-Cortina B, Lee AL, Oliveira A, et al. European Respiratory Society statement on airway clearance techniques in adults with bronchiectasis. Eur Respir J. 2023;62(1):2202053. DOI: 10.1183/13993003.02053-2022
  2. Hill AT, Sullivan AL, Chalmers JD, et al. British Thoracic Society guideline for bronchiectasis in adults. BMJ Open Respir Res. 2018;5(1):e000348. DOI: 10.1136/bmjresp-2018-000348
  3. Wilson LM, Saldanha IJ, Robinson KA. Active cycle of breathing technique for cystic fibrosis. Cochrane Database Syst Rev. 2023;2:CD007862. DOI: 10.1002/14651858.CD007862.pub5
  4. Cambridge University Hospitals NHS Foundation Trust. Airway clearance: active cycle of breathing technique (ACBT). Version 8. Approved September 5, 2025. Accessed September 4, 2026. CUH patient information
  5. Leeds Teaching Hospitals NHS Trust. ACBT (Active Cycle of Breathing Techniques). Reviewed March 19, 2026. Accessed September 4, 2026. Leeds Teaching Hospitals patient information

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、臨床で判断・実践するための情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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