- 医療区分とは?療養病棟の疾患・処置の考え方|ADL 区分と“ズレない運用”に固定
- 医療区分の全体像:療養病棟の「医療的重症度」を 2 軸で整理する
- 評価の構造:疾患・状態( 1–3 )+処置等( 1–3 )+ ADL 区分( 1–3 )
- 疾患・状態に係る医療区分 1–3 のイメージ:患者像で掴む
- 処置等に係る医療区分 1–3 のイメージ:いま行っている“管理”で掴む
- 医療区分 × ADL 区分 × 入院基本料:点数より“患者構成”で見る
- PT・OT・ST が医療区分をどう活かすか:安全管理と共有の“共通言語”にする
- 現場の詰まりどころ:評価のばらつきと“根拠が残らない”問題
- よくある失敗:医療区分・ADL 区分がズレると何が起きる?
- 回避の手順:目的・根拠・条件を 5 分で揃えるチェック
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手:運用を整える → 共有の型 → 環境要因も点検
- 参考文献
- 著者情報
医療区分とは?療養病棟の疾患・処置の考え方|ADL 区分と“ズレない運用”に固定
療養病棟の医療区分は、「患者像(医療的な手のかかり方)」を疾患・状態と処置の 2 本立てで整理し、療養病棟入院基本料の評価につなげる仕組みです。現場で迷いやすいのは、評価票の細かい定義を暗記することよりも、どの情報を根拠に、誰が、いつ、どう更新するかが部署で揃っていない点です。
この記事では、①医療区分の全体像 → ②疾患・状態/処置の“イメージ” → ③ ADL 区分との関係 → ④よくある失敗と回避手順(チェック)までを、PT・OT・ST/看護/医事で共有できる形にまとめます。
療養病棟の区分を“運用でブレない”導線:総論(本記事)→ ADL 区分の付け方 → 施設基準の全体像の順で押さえると迷いが減ります。
- 続けて読む(各論):療養病棟 ADL 区分の付け方( 4 項目 × 0–6 点 )
- 制度・書類を横断して整理:制度・実務ハブ(報酬/書類/会議体)
医療区分の全体像:療養病棟の「医療的重症度」を 2 軸で整理する
医療区分は、療養病棟入院基本料の評価で使う医療的重症度の枠組みです。ポイントは、病名だけでなく「いま、現場がどれくらい医療資源を投入しているか」を、①疾患・状態と②処置等の 2 つに分けて捉えることです。
実務では、細かな定義を丸暗記するより、患者像(状態)と現に行っている管理(処置)を区別してメモできると、評価のばらつきが減ります。リハ職は「離床・負荷量を決めるためのリスク整理」と「チーム共有(記録)」に活かすのが目的です。
評価の構造:疾患・状態( 1–3 )+処置等( 1–3 )+ ADL 区分( 1–3 )
療養病棟の評価は、ざっくり言えば医療(状態と処置)と生活( ADL )の両輪です。医療区分は「状態」と「処置」に分かれ、ADL 区分はベッド上可動性/移乗/食事/トイレの 4 項目を合計して 3 区分に整理します。
ここでのコツは、点数表そのものよりも、判断の順序を固定することです。まず「状態像(疾患・状態)」、次に「管理(処置)」、最後に「生活負担( ADL )」へ。順序が揃うだけで、会話が噛み合いやすくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| ステップ | 見るもの | 現場での言い方(例) | ズレやすい点 | 揃えるコツ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 疾患・状態(医療区分) | 「病態として手がかかる」 | 診断名だけで決める | いま必要な監視・調整(頻度)まで書く |
| 2 | 処置等(医療区分) | 「管理として手がかかる」 | 処置“あり/なし”で雑に判断 | 実施中の管理の強度・継続性で整理する |
| 3 | ADL 区分 | 「生活(介助)負担が重い」 | できる/しているが混ざる | 評価条件(誰が・どこで・何を使う)を固定 |
疾患・状態に係る医療区分 1–3 のイメージ:患者像で掴む
疾患・状態の区分は、「病態そのものがどれくらい不安定か」「継続的な医療管理がどれくらい必要か」を整理する軸です。現場では、“病名”ではなく“いまの管理の濃さ”に注目すると、判断が揃いやすくなります。
リハ目線では、区分が上がるほど「離床前後の変化(バイタル/症状)」「ライン・チューブ」「急変の芽」を先回りで共有する価値が高くなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 区分 | ざっくり患者像 | 離床で増えやすいリスク | 共有しておくと効く 1 行 |
|---|---|---|---|
| 3 | 増悪・合併症の芽が多く、監視・調整が濃い | 循環/呼吸の破綻、せん妄、自己抜去 | 「離床前後で見る指標(BP/SpO₂/症状)と中止基準」を固定 |
| 2 | 安定しつつも、調整が必要で揺れやすい | 過負荷、起立性変動、疲労の蓄積 | 「負荷の上げ幅( 1 回量/頻度 )と再評価タイミング」を揃える |
| 1 | 慢性期の安定層。ただし基礎疾患は残る | 見逃しやすい増悪(容量負荷、感染など) | 「安定の根拠(直近の変化なし)と注意すべき兆候」を書く |
処置等に係る医療区分 1–3 のイメージ:いま行っている“管理”で掴む
処置等の区分は、「どれくらい侵襲的/継続的な医療管理が走っているか」を整理する軸です。療養病棟では、栄養ルート、呼吸管理、点滴・ライン管理、吸引などが実務上の論点になりやすいです。
リハ職は、処置の“有無”よりも、離床に影響する牽引・体位・負荷制限・観察項目を先に整理し、チームで同じ見方に揃えると安全性が上がります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 区分 | 管理のイメージ | リハで先に確認したいこと | 記録に残すと強い要素 |
|---|---|---|---|
| 3 | 侵襲度が高く、急変リスクが高い管理が走る | ライン固定、体位制限、離床前後の指標 | 「開始日/変更点/離床時の条件」と根拠 |
| 2 | 継続的な調整が必要で、状態が揺れやすい管理 | 負荷量の上限、症状の出方、翌日の反応 | 「今日の許容負荷」と「次回の再評価指標」 |
| 1 | 基本的な管理はあるが、比較的安定 | 見逃しやすい合併(脱水、感染、疲労) | 「悪化サイン」と「対応(中止・報告)」 |
医療区分 × ADL 区分 × 入院基本料:点数より“患者構成”で見る
療養病棟入院基本料は、医療区分(疾患・状態/処置等)と ADL 区分の組み合わせで評価が決まります。現場で役立つのは、「どのマスが何点か」を暗記することよりも、自病棟の患者構成がどこに偏っているかを把握し、看護・介護・リハの負担と運用(離床プロトコル、記録の型、カンファ頻度)を揃えることです。
ADL 区分( 4 項目 × 0–6 点 )の具体的な付け方と、点が割れやすい“判断のクセ”は別記事にまとめました。合わせて読む:療養病棟 ADL 区分の付け方( 4 項目 × 0–6 点 )
PT・OT・ST が医療区分をどう活かすか:安全管理と共有の“共通言語”にする
医療区分は、リハの可否を二分するための道具ではなく、チームで「何がリスクか」を揃えるための共通言語です。医療区分が高い患者ほど、離床や運動負荷を“やる/やらない”ではなく、どの条件なら安全かへ落とし込む価値が高くなります。
- 安全管理:離床前後で見る指標( BP / SpO₂ / 症状 )と中止基準を先に揃える
- 負荷設計: 1 回量・頻度・上げ幅を小さく刻み、再評価タイミングを固定する
- 共有:「どの変化が根拠で区分が変わったか」を 1 行で残す(監査・引継ぎに強い)
現場の詰まりどころ:評価のばらつきと“根拠が残らない”問題
医療区分で詰まりやすいのは、①グレー項目の解釈が部署で揃わない、②変更の根拠が記録に残らず引継ぎで崩れる、③ ADL 区分( 4 項目 )の条件が固定されず点が割れる、の 3 点です。ここは「知識」より「運用」の問題なので、回避手順を固定するのが早道です。
よくある失敗:医療区分・ADL 区分がズレると何が起きる?
点が割れる原因は、評価票の細部を知らないからではなく、根拠の置き方と条件の固定が揃っていないからです。特に多い失敗は次の 3 つです。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 失敗(NG) | 何が困る? | OK(直し方) | 記録に残す 1 行 |
|---|---|---|---|
| 病名だけで医療区分を決める | 患者像が共有できず、変更理由が説明できない | 「いま必要な監視・調整(頻度)」を添える | 「本日まで〇〇の調整が継続(根拠:○○)」 |
| 処置“あり/なし”で雑に判断する | 離床条件が揃わず、安全管理が崩れる | 牽引・体位・負荷制限・観察項目を先に固定 | 「離床条件:○○、観察:○○、中止:○○」 |
| ADL が「できる/している」で混ざる | 点が割れて、介助量の見積もりがズレる | 評価条件(誰が/どこで/何を使う)を固定 | 「病棟で実施、介助者○、用具○、手順○」 |
回避の手順:目的・根拠・条件を 5 分で揃えるチェック
評価が割れる部署は、判断が難しいのではなく、判断の順序と根拠の残し方が人によって違うことがほとんどです。次の順番に固定すると、医療区分も ADL 区分も整います。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 順番 | やること | 見る情報 | 決める(固定する) | 残す一言 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 状態像を言語化 | 経過、バイタル推移、症状 | 「監視・調整が必要な点」を 1 つ | 「本日の主リスクは ○○」 |
| 2 | 管理(処置)を整理 | ライン、栄養、呼吸管理、吸引など | 離床条件(体位/牽引/観察/中止) | 「条件:○○、中止:○○」 |
| 3 | ADL 条件を固定 | 病棟での普段の介助 | 誰が/どこで/何を使う | 「評価条件を固定(○○)」 |
| 4 | 変更点の根拠を 1 行で残す | 状態変化、処置変更、ADL 変化 | “何が理由で”変わったか | 「○○のため区分見直し」 |
| 5 | 次回再評価を決める | 週次/月次、イベント時 | 再評価タイミング | 「次回:○○で再評価」 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 医療区分はどのくらいの頻度で見直しますか?
A. 実務では「月次の定期評価」+「状態変化(増悪・処置変更・ADL 変化)」のタイミングで見直す運用にすると安定します。ポイントは、見直しのたびに長文を書くことではなく、変更理由を 1 行で残すことです(例:「○○の増悪で管理強度が上がったため見直し」)。
Q2. 医療区分・ADL 区分と FIM/BI が一致しません。どれを優先しますか?
A. 目的が違います。医療区分・ADL 区分は療養病棟の評価(報酬の枠組み)に紐づく指標で、FIM/BI はリハ評価としての自立度指標です。臨床では、FIM/BI で“改善の方向”を見つつ、医療区分・ADL 区分で“いまの管理と介助負担”を共有すると、説明と運用が噛み合います。
Q3. グレー項目で部署内の判断が割れます。どう揃えますか?
A. 「誰が正しいか」ではなく、判断の順序(状態→処置→ADL)と根拠の置き方( 1 行)を標準化すると揃います。まずは代表症例 3 つだけでミニ勉強会を行い、「この場合はこう書く」の院内メモを作るのが早いです。
Q4. ADL 区分は“できる”で付けますか、“している”で付けますか?
A. 点が割れやすいので、部署で評価条件(誰が/どこで/何を使う)を固定してください。訓練室の“できる”をそのまま病棟の点に当てるとズレやすいので、病棟の普段の条件に寄せて整理し、必要なら「訓練での到達点」は別欄で共有する形が安全です。ADL 区分の具体的な付け方は、こちら( 4 項目 × 0–6 点 )にまとめました。
次の一手:運用を整える → 共有の型 → 環境要因も点検
- 運用を整える:施設基準ハブ(要件・委員会・加算を最短で整理)
- 共有の型を作る:SOAP の P の型(目的→介入→量・頻度→注意点→再評価)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


