褥瘡診療計画書の書き方|項目別解説

制度・実務
記事内に広告が含まれています。
B_InArticle_Body

褥瘡診療計画書の書き方|項目別解説と補助メモ

褥瘡に関する診療計画書は、様式を埋めること自体が目的ではありません。結論としては、危険因子 → 褥瘡の状態 → 対策 → 再評価の順で考えると、各欄が埋まりやすくなります。大事なのは、抽象語を増やすことではなく、誰が・何を・どの条件で・いつ見直すかが伝わる形にすることです。

このページで答えるのは、厚労省の「褥瘡対策に関する診療計画書」をどう書くかです。褥瘡予防の全体像を先に整理したい方は、褥瘡予防の基本フローを先に読むとつながりやすくなります。

まず確認|このページで扱うのは「厚労省の様式ベースの書き方」です

前提として、現場では施設ごとに体裁が多少違っても、考え方は厚労省の「褥瘡対策に関する診療計画書」に沿って整理しておくのが安全です。この記事では“似た紙を配る”のではなく、公式様式の各欄に何を書けば、次の介入と再評価につながるかを解説します。

公式様式を先に確認したい方は、厚労省の別紙様式 3を開いてから読むと、欄の意味がつかみやすくなります。

褥瘡診療計画書を埋める 5 分フロー
褥瘡診療計画書は「現在・過去の褥瘡 → 危険因子 → 褥瘡の状態 → 対策 → 再評価」の順で考えると、各欄がつながりやすくなります。

補助メモ(危険因子→計画文 変換メモ)

下の PDF は、正式様式の代用品ではなく、公式様式を埋める前に横に置いて使う補助メモです。危険因子欄に書いた事実を、そのまま対策欄の文に変換しやすいように整理しています。

「湿潤あり」「栄養低下あり」で止まりやすい場面や、頻度・条件・再評価を書き足したい場面で使うと、計画文が具体化しやすくなります。

PDF を開く(補助メモ)

プレビューを表示(タップで開く)

PDF が表示できない場合は こちら から開いてください。

5 分で埋める順番|迷ったらこの順で考える

埋まりにくいのは、最初から「対策」だけを書こうとするときです。おすすめは、① 現在・過去の褥瘡 → ② 日常生活自立度と危険因子 → ③ 褥瘡の状態 → ④ 対策 → ⑤ 再評価の順です。この順番にすると、原因と対応がつながりやすくなります。

文章量を増やすよりも、頻度・条件・担当・見直し日を先にそろえる方が、申し送りやカンファで使える計画書になります。

※スマホでは表を横スクロールできます。

褥瘡に関する診療計画書を埋める順番(最小セット)
順番 最小で書くこと 詰まりやすい点
1 現在・過去の褥瘡 現在の有無、過去の有無、部位 「あり / なし」だけで終わる
2 日常生活自立度・危険因子 体位変換、除圧、湿潤、栄養、骨突出、拘縮など 抽象語だけで根拠がない
3 褥瘡の状態 深さ、滲出液、大きさ、炎症 / 感染、肉芽、壊死、ポケット 長文にしようとして止まる
4 対策 除圧、体位変換、スキンケア、栄養、離床、支持面 方法だけで、頻度・条件・担当が抜ける
5 再評価・見直し 再評価日、カンファ日、変更時の共有先 再評価日が空欄のまま

現在・過去の褥瘡|最初に「今あるか」「以前あったか」を分ける

ここは簡単そうに見えて、後ろの欄に影響しやすい部分です。現在あるかどうかだけでなく、過去の褥瘡歴も短く残しておくと、再発しやすい部位や皮膚の弱さを共有しやすくなります。

少なくとも、現在の有無・過去の有無・部位はセットで考えるのがおすすめです。再発例なら「仙骨部に既往あり」など、部位まで残すと次の対策につながります。

日常生活自立度・危険因子|「なぜ起きるか」を短く言える形にする

この欄は、単にリスクが高いと書く場所ではありません。褥瘡が起こる背景を、体圧・ずれ・湿潤・栄養・活動のどこに重心があるかで整理する欄です。原因の当たりがつかめると、対策欄が埋まりやすくなります。

ポイントは、抽象語を避けて観察で言える事実を 1 つ添えることです。たとえば「低栄養あり」より「食事摂取量 6 割」「体重減少あり」の方が、次の行動につながります。

※スマホでは表を横スクロールできます。

危険因子欄で短くそろえたい視点
視点 ここで見ること 書き方の例
体位変換・除圧 自力で動けるか、介助が必要か、頻度が現実的か 自動体動乏しい、2 時間毎の体位変換要す
湿潤 尿・便失禁、多汗、浸軟、交換の遅れ 尿失禁あり、仙骨部の湿潤が続きやすい
栄養 摂取量、体重変化、栄養補助の有無 摂取量 6 割、栄養評価の確認要す
活動・離床 臥床時間、座位保持、前滑り、保持困難 座位で前滑りあり、長時間座位でずれ増強

褥瘡の状態|「次の介入が決まる」言葉を残す

褥瘡がある場合は、局所所見を長文で書く必要はありません。重要なのは、次に何を変えるかが決まる情報を残すことです。深さ、滲出液、大きさ、炎症 / 感染、肉芽、壊死、ポケットを短くそろえるだけでも、再評価しやすくなります。

状態評価の整理では、DESIGN-R®2020の視点を意識しておくと、記録のブレが減ります。すべてを細かく書こうとするより、まずは主要項目を同じ順番で見ることが大切です。

※スマホでは表を横スクロールできます。

褥瘡の状態欄で最低限そろえるポイント
項目 最低限の見方 短い書き方の例
深さ どこまで損傷しているか 真皮まで / 皮下まで / 深部疑い
滲出液 量の多少 少量 / 中等量 / 多量
大きさ 長さ × 幅 2.0 × 1.5 cm
周囲・炎症 発赤、浮腫、熱感、感染兆候 周囲発赤あり、熱感なし
肉芽・壊死・ポケット 治癒の進みや妨げの有無 肉芽不良、壊死少量、ポケットなし

対策欄の書き方|「方法」だけで終わらせない

対策欄でありがちな失敗は、「除圧する」「観察する」「栄養に注意する」で止まってしまうことです。これでは、担当が変わったときに同じ行動を再現しにくくなります。

ここでは、誰が・どの条件で・どれくらいの頻度で・いつ見直すかまで書くのがポイントです。たとえば「2 時間毎、30° 側臥位、夜勤帯も実施、翌朝再評価」のように、具体策へ変換します。

※スマホでは表を横スクロールできます。

危険因子から対策欄へつなぐ考え方
危険因子 対策の方向 記載の例
自動体動乏しい 体位変換・除圧 2 時間毎に体位変換、夜勤帯も実施
座位で前滑りあり ずれ対策・座位調整 座位保持を再調整し、前滑り時は再配置する
尿失禁あり 湿潤対策・皮膚保護 失禁後は速やかに交換、皮膚保護を継続
摂取量低下 栄養管理との連動 摂取量を確認し、必要時は栄養管理へ共有

再評価・見直し|「いつ変えるか」を先に決める

計画書が回らなくなる大きな原因は、再評価日が空欄のままになることです。対策が正しいかどうかは、書いた時点では決まりません。だからこそ、いつ見直すかを先に入れておく必要があります。

おすすめは、次のカンファ日や翌日の確認時刻など、実際に見直せる日付を先に入れることです。変更があったら、その理由も短く残すと共有しやすくなります。

薬学的管理・栄養管理|空欄にしやすい欄こそ扱いを決める

この欄は、細かく書こうとして止まりやすい部分です。まずは「対応の必要なし」か「別の計画書で対応するか」を整理し、必要がある場合だけ要点を短く残す形でも運用しやすくなります。

特に栄養管理は、食事摂取量や体重変化など、危険因子欄とつながることが多いです。褥瘡対策の計画書だけで完結させようとせず、栄養管理計画書やチーム連携とどうつなぐかを決めておくと、現場で回りやすくなります。

現場の詰まりどころ(よくある失敗)

ここが詰まると、計画書が「書いたけど回らない」状態になります。ありがちな失敗を先に潰しておくと、回診・カンファ・申し送りが安定します。

先に確認:よくある失敗回らないときの戻し方

よくある失敗

  • 危険因子が「低栄養あり」「湿潤あり」など抽象語だけで終わる
  • 対策が「除圧する」「観察する」で止まり、頻度・条件・担当がない
  • 再評価日が空欄で、計画の更新タイミングが消える

回らないときの戻し方

  1. 危険因子に戻って、主因が何かを 1 つ決める
  2. 褥瘡の状態を短く書き直し、次に変える介入を 1 つに絞る
  3. 対策欄に頻度・条件・担当・期限を足す
  4. 再評価日と共有先を書き足す

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

正式な様式はどこで確認できますか?

厚労省が公開している「褥瘡対策に関する診療計画書(別紙様式 3)」を確認するのが基本です。施設によって体裁が違っても、まずは公式様式の項目に沿って考えると整理しやすくなります。

今回の PDF は正式様式の代わりに使えますか?

使い方は「代わり」ではなく「補助」です。今回の PDF は、危険因子欄の内容を対策欄の文章へ変換しやすくするための補助メモなので、正式様式を横に置いて使う想定です。

褥瘡がない患者にも、この計画書は使いますか?

使えます。褥瘡がない場合は、危険因子の評価と予防策を中心に記載すると、発生前の対策をそろえやすくなります。体位変換、除圧、湿潤対策、栄養などは、褥瘡ができる前に型を作るほど有効です。

薬学的管理・栄養管理はどこまで書けばよいですか?

対応の必要がないのか、別の計画書で対応するのか、褥瘡対策として共有が必要なのかを先に整理すると書きやすくなります。すべてを詳しく書くより、必要時に要点を残して連携につなげる考え方が実務では扱いやすいです。

次の一手


参考文献

  • 厚生労働省. 別紙様式 3 褥瘡対策に関する診療計画書. 公式
  • 一般社団法人 日本褥瘡学会. 褥瘡評価ツール 改定 DESIGN-R®2020. 公式
  • European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Emily Haesler, Ed. EPUAP/NPIAP/PPPIA; 2019. 公式
  • Bergstrom N, Braden BJ, Laguzza A, Holman V. The Braden Scale for Predicting Pressure Sore Risk. Nurs Res. 1987;36(4):205-210. PMID: 3299278
  • Sanada H, et al. Clinical wound assessment using DESIGN-R total score can predict pressure ulcer healing. Wound Repair Regen. 2011;19(5):559-567. PMID: 22092794

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました