- 頸静脈評価( JVP )と頸静脈圧:標準法・座位法・ HJR を “ブレない運用” に固定
- 配布 PDF(印刷してそのまま使える: JVP 記録シート)
- JVP でわかること:右房圧の “目安” と、単独で決めないポイント
- 準備(ここで 8 割決まる):体位・照明・首の脱力を固定する
- 標準法: 30–45° で “高さ( cm )” を測る
- 座位簡便法: “見える / 見えない” で高い所見を拾う
- HJR(腹頸静脈反射):陽性の取り方と “間違えやすい点”
- 呼吸で読む:吸気で低下しない JVP( Kussmaul 徴候 )
- POCUS 併用: “見えない” を埋める裏取り( IJV / IVC / VExUS )
- 所見 → 次アクション:離床・運動強度を “安全側に倒して” 決める
- 記録テンプレ:再評価がブレない “最小セット”
- 現場の詰まりどころ・よくある失敗(ここを潰すと一気に楽になる)
- よくある質問( PT 向け )
- 参考文献
- 著者情報
頸静脈評価( JVP )と頸静脈圧:標準法・座位法・ HJR を “ブレない運用” に固定
頸静脈評価( JVP )は、ベッドサイドで右房圧の目安をつかみ、うっ血( wet )の見逃しを減らすためのフィジカルです。難しいのは「知っているのに、条件が揃わず再現性が取れない」こと。本記事では、①準備(体位・照明・首の脱力)→②標準法( 30–45° )→③座位簡便法(見える / 見えない)→④ HJR / 呼吸反応→⑤ POCUS 併用まで、臨床で迷わない順番に整理します。
評価の全体像(評価→介入→再評価)を体系で整理したい場合は、評価記事をまとめたハブも併用してください:/hub-evaluation/。
配布 PDF(印刷してそのまま使える: JVP 記録シート)
現場で再評価がブレないように、体位角度・観察側・呼吸性変動・ HJR / POCUSまで 1 枚で記録できるシートを用意しました。印刷してそのまま使えます。
PDF をここでプレビュー表示する
JVP でわかること:右房圧の “目安” と、単独で決めないポイント
JVP は「頸静脈の血柱の高さ」を視診で捉え、右房圧(中心静脈圧)の目安を推定します。うっ血が強いほど高くなりやすく、経時変化(利尿・輸液・ NPPV 設定変更後など)を追うのに向きます。一方で、JVP は単独で診断を確定するものではありません。呼吸状態、浮腫、体重、 SpO₂、血圧、努力性呼吸などと束ねて整合性を取るのがコツです。
準備(ここで 8 割決まる):体位・照明・首の脱力を固定する
JVP がブレる最大要因は「条件のブレ」です。角度・光・首の緊張を固定できると、同じ患者でも所見が安定します。まずは次のチェックだけ揃えてください。
| 項目 | やること | よくある失敗 | 対策(型) |
|---|---|---|---|
| 体位 | 半坐位 30–45° を基本にする | 角度が毎回違う | ベッド角度を記録(例: 35° ) |
| 照明 | 斜光(横からの光)で “影” を作る | 真上の光だけで見えない | ペンライトを横から当てる |
| 首の緊張 | 顎を軽く引き、胸鎖乳突筋を弛緩 | 顎上げすぎで筋緊張 | 枕 / タオルで頸部を軽く支持 |
| 観察側 | 基本は右頸部(解剖学的に見やすい) | 左右が毎回混在 | 右が難しければ左も確認し、左右を記録 |
標準法: 30–45° で “高さ( cm )” を測る
標準法は、頸静脈の最上点を見つけ、胸骨角( sternal angle )からの高さ( cm )で表現します。まず「最上点(メニスカス)」を探し、呼吸で上下するかを確認します。
- 半坐位 30–45°、斜光、頸部リラックスを整える
- 頸部の静脈拍動(内頸 / 外頸)を視診で捉える(触れない)
- 最上点を見つけ、胸骨角からの垂直距離( cm )を目安で把握する
- 呼吸での変化(吸気で低下するか)もセットで観察する
| ポイント | 頸静脈( JVP ) | 頸動脈 |
|---|---|---|
| 拍動の見え方 | 二峰性に見えることがある(波形っぽい) | 強く単峰性になりやすい |
| 呼吸の影響 | 吸気で低下しやすい | 呼吸で変化しにくい |
| 圧迫の影響 | 軽い圧迫で消える / 変化しやすい | 消えない |
| 触診 | 基本は触れない(視診で取る) | 触れると拍動を明確に感じる |
座位簡便法: “見える / 見えない” で高い所見を拾う
肥満・短頸・筋緊張・照明条件などで標準法が難しい場面は多いです。その場合は「座位で鎖骨上に静脈拍動が見えるか」を先に見て、高い所見(うっ血)を拾うことを優先します。
- 座位で鎖骨上に明らかな静脈拍動が見える:高い可能性が高い(まず安全側に強度を落とす)
- 座位で見えない:低い / 正常の可能性はあるが、条件不十分もありうる(経時変化で追う)
HJR(腹頸静脈反射):陽性の取り方と “間違えやすい点”
HJR( abdominojugular reflux )は、右上腹部を持続圧迫し、JVP の上昇が持続するかを見ます。実施手順の要点は NEJM の手技解説が参考になります。
- 半坐位のまま、呼吸と表情を観察できる状態を作る
- 右上腹部を 10–15 秒、一定の圧で持続圧迫する
- JVP が上昇し、その上昇が持続するかを観察する
注意点は「頸動脈の拍動増大」との混同です。光の揺れ(波形)と呼吸での変化をセットで確認し、触診で判断しないようにします。
呼吸で読む:吸気で低下しない JVP( Kussmaul 徴候 )
通常、吸気で JVP は低下します。吸気でも上昇、または低下しない場合は Kussmaul 徴候を疑い、右心系の障害や拘束性心膜炎などの可能性を考えます。ここも「見える / 見えない」だけで終えず、呼吸でどう動くかを最低限セットで残すと、チーム連携が一気に楽になります。
POCUS 併用: “見えない” を埋める裏取り( IJV / IVC / VExUS )
視診が難しいときは、ベッドサイド超音波( POCUS )で IJV / IVC の所見を補い、必要に応じて VExUS のような多部位評価で「うっ血」を客観化します。役割分担は、視診=連続モニタリング、POCUS=客観化の裏取りにすると運用が安定します。
所見 → 次アクション:離床・運動強度を “安全側に倒して” 決める
PT が必要なのは「診断」よりも、今日の離床・運動強度を安全に決める材料です。JVP は単独で決め打ちせず、呼吸・浮腫・体重・ SpO₂・血圧と束ねて “整合性” を取りにいきます。
| 所見 | 示唆 | まずやること | 運動の目安 |
|---|---|---|---|
| JVP 高い / 座位で明らかに見える | うっ血を疑う | 体位(頭高位)と呼吸負荷の軽減、バイタル再確認 | 強度を一段階下げ、短時間で反応を見る |
| HJR 陽性が持続 | 右心負荷 / 容量負荷の示唆 | 症状(息切れ・努力性)と SpO₂、血圧の確認 | 慎重化(増悪で中止→条件を揃えて再評価) |
| 吸気で JVP が低下しない | 右心系の問題を示唆 | 呼吸の観察を強化し、必要なら上申 | 無理に上げず、安全側で設計 |
| 所見が不整合(毎回違う) | 条件ブレ / 誤認の可能性 | 角度・光・首の緊張・観察側を固定し直す | 所見が安定するまで “攻めない” |
記録テンプレ:再評価がブレない “最小セット”
JVP は「数値」よりも、次回も同条件で再評価できる文章が価値です。最低限、体位(角度)と観察側、呼吸条件を残すだけで再現性が上がります。印刷運用は、上の配布 PDF を併用すると速いです。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 体位 | 半坐位 35°(ベッド角度) |
| 観察側 | 右頸部(必要なら左も) |
| JVP | 胸骨角+○ cm(目安)/ 座位で鎖骨上に可視(有 / 無) |
| 呼吸反応 | 吸気で低下(有 / 無) |
| HJR | 右上腹部 10–15 秒圧迫:持続上昇(有 / 無) |
| 併読 | RR / SpO₂ / 浮腫 / 体重 / 努力性呼吸(変化を 1 行で) |
現場の詰まりどころ・よくある失敗(ここを潰すと一気に楽になる)
JVP は “できる人” と “できない人” の差が、知識ではなく条件固定に出ます。ここでは頻出の詰まりどころを、対策までセットで整理します。評価の抜け漏れを減らすチェック運用を整えたい場合は、院内の型づくりの参考として使いやすい資料もあります:/mynavi-medical/#download。
| 詰まりどころ | 起きやすいミス | 対策(型) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 見えない | すぐ諦めて “評価不能” で終わる | 座位簡便法(見える / 見えない)→必要なら POCUS →経時変化を追う | 「座位で鎖骨上:有 / 無」を残す |
| 誤認 | 頸動脈を JVP と誤る | 呼吸の影響、軽い圧迫、波形っぽさで再確認 | 「呼吸で低下:有 / 無」を残す |
| 条件ブレ | 角度・光・首の緊張が毎回違う | 角度( ° )と照明、顎位を先に固定してから見る | 角度(例: 35° )を必ず書く |
| 解釈の飛躍 | JVP だけで運動可否を決め打ち | SpO₂ / RR / 浮腫 / 体重 / 血圧と束ねて整合性を取る | 併読所見を 1 行で添える |
よくある質問( PT 向け )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1.肥満や短頸で見えません。どうしますか?
まずは座位簡便法で「鎖骨上に見える / 見えない」を拾い、可能なら POCUS 併用で裏取りします。標準法に戻す場合は、角度( 30–45° )、斜光、顎位(軽い顎引き)を固定し、経時変化の追跡を優先します。
Q2.“何 cm 以上で高い” と言い切れますか?
厳密な数値は前提条件で変わるため、単発の cm で決め打ちせず、呼吸反応や HJR、浮腫・体重・呼吸状態と整合性を取るのが安全です。臨床では「同条件での変化(上がった / 下がった)」が意思決定に直結します。
Q3.HJR は痛がる方もいます。中止基準は?
痛み・呼吸苦・表情悪化が強い場合は中止し、安全確保を優先します。圧迫は一定圧で短時間( 10–15 秒)にし、実施できない場合は他所見(呼吸、浮腫、体重、 POCUS )で補完します。
Q4.運動中に JVP を見ていいですか?
運動中は観察条件が崩れやすいので、基本は「運動前後(同条件)」で比較します。運動中は症状・ SpO₂・血圧・ HR を優先し、悪化兆候があれば中止→条件を揃えて再評価、が安全です。
参考文献
- Assavapokee T, et al. Examination of the Neck Veins( NEJM Video in Clinical Medicine ). 2020. DOI:10.1056/NEJMvcm1806474 (リンク)
- Beaubien-Souligny W, et al. Development of the venous excess ultrasound( VExUS )grading system. 2020. PubMed
- JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure. Circulation Journal. 2025. DOI:10.1253/circj.CJ-25-0002 (リンク)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


