- MMT の Grade 4 と 5 の違い(結論)|判定がブレる原因は「固定・代償・抵抗」です
- なぜ Grade 4–5 はブレるのか|3 つの典型パターン
- 30 秒で迷いを減らす判定フロー(Grade 4–5)
- 抵抗のかけ方で差が出る|方向・タイミング・漸増の 3 ルール
- Grade 4 と 5 の判断基準|最大抵抗を言語化する
- 4+/5-(±)の使い方|乱発しない運用ルール
- 現場の詰まりどころ|判定が揃わない日の共通点
- 代表筋での迷いポイント 3 例(判定のコツ)
- カルテ記載テンプレ|Grade だけで終わらせない
- よくある失敗|Grade を下げる 5 つの落とし穴
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
MMT の Grade 4 と 5 の違い(結論)|判定がブレる原因は「固定・代償・抵抗」です
MMT の Grade 4 と 5 は、どちらも重力に抗して動かせるため、臨床で最も判定が揺れやすい帯です。結論はシンプルで、Grade 5 は最大抵抗でも崩れない、Grade 4 は中等度までは保てるが最大抵抗で崩れるです。差を曖昧にする主因は筋力差そのものより、固定不足・代償混入・抵抗のばらつきです。
本記事は Grade 4–5 の境界を手順化し、4+/5- の乱発を防ぐ運用、代表筋での迷いどころ、カルテ記載の残し方までを実装目線で整理します。まずは 30 秒フローを固定し、評価者間のブレを減らしましょう。
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まず深掘り:筋力評価の使い分け( MMT / HHD / RM )
なぜ Grade 4–5 はブレるのか|3 つの典型パターン
Grade 4–5 の判定が揺れるときは、筋力差よりも評価条件の揺れを疑います。特に①固定(近位固定)、②代償(体幹・関節運動)、③抵抗(方向・タイミング・漸増)の 3 点が不安定だと、同じ患者でも 4 と 5 が入れ替わります。
疼痛・可動域制限・恐怖心があると、出力そのものが抑制されて過小評価につながります。まずは「条件を揃える」ことが、判定を揃える最短ルートです。
30 秒で迷いを減らす判定フロー(Grade 4–5)
毎回同じ順で「確認→抵抗→判定」へ進むと再現性が上がります。以下をそのまま運用してください。
| 手順 | 見るポイント | OK(次へ) | NG(先に調整) |
|---|---|---|---|
| ① セットアップ | 肢位・関節角度・近位固定 | 再現できる姿勢が取れる | 固定が甘い/姿勢が崩れる |
| ② 代償チェック | 体幹回旋・肩すくめ・骨盤挙上など | 代償なしで主運動が出る | 代償が出ている(運動を作り直す) |
| ③ 抵抗は漸増 | いきなり最大にしない | 中等度→強へ段階的に | 急な抵抗で一気に崩れる |
| ④ 3 秒保持 | 保持できるか(崩れ方) | 最大抵抗でも崩れない= 5 | 最大で崩れるが中等度は保持= 4 |
| ⑤ 疼痛・恐怖 | 痛みで出力が止まっていないか | 痛みなく努力できる | 疼痛で抑制(条件変更や代替指標へ) |
抵抗のかけ方で差が出る|方向・タイミング・漸増の 3 ルール
Grade 4–5 の評価は抵抗の入れ方で結果が変わります。ルールは ①方向は運動方向の真逆、②保持ができてから抵抗、③必ず漸増です。特に「いきなり最大抵抗」は反射的な崩れや疼痛誘発を招き、再現性を落とします。
迷ったら「中等度抵抗で 3 秒保持できるか」を先に見て、その後に最大抵抗へ進めてください。これだけで 4 と 5 の境界が見えやすくなります。
Grade 4 と 5 の判断基準|最大抵抗を言語化する
Grade 5 は「評価者が加える最大抵抗でも肢位・運動が崩れない」状態です。Grade 4 は「中等度抵抗では保てるが、最大抵抗では崩れる」状態です。最大抵抗は力任せではなく、対象筋ラインに沿って漸増し、患者が抗し続けられる上限を探します。
崩れが筋力由来か、固定・代償・疼痛由来かを分けて解釈すると誤判定を減らせます。
4+/5-(±)の使い方|乱発しない運用ルール
± は便利ですが、定義が揃わないと評価者間で混乱します。± は例外運用にし、迷う場面は 4 または 5 に寄せて根拠を記載します。
| 表記 | 意味 | 使う条件 | 使わない条件 |
|---|---|---|---|
| 5- | 最大抵抗にわずかな崩れ | 固定・代償管理が十分で、最大でのみ軽く崩れる | いきなり最大抵抗/疼痛誘発で崩れる |
| 4+ | 中等度は確実、強抵抗で崩れる | 中等度保持が明確で、強抵抗でのみ崩れる | 代償混入/抵抗方向が不安定 |
| 4 | 中等度保持、最大で崩れる | 迷ったら 4 に寄せて記載で補う | ± の根拠が言語化できない |
現場の詰まりどころ|判定が揃わない日の共通点
「今日は 5、次の評価者は 4」というズレは、筋力差より運用差で起きることが多いです。特に、固定が甘いまま抵抗を入れる・代償を許容したまま判定する・疼痛を筋力低下と混同する、の 3 点が詰まりどころです。
代表筋での迷いポイント 3 例(判定のコツ)
評価者間一致を上げるミニ表(肩外転/膝伸展/足背屈)
| 対象筋 | 条件固定ポイント | 崩れの見方(4 と 5 の境界) | 記載語の統一例 |
|---|---|---|---|
| 肩外転 | 肩甲帯固定、体幹側屈を抑制 | 最大抵抗で肩すくめ/体幹側屈が出るなら 5 判定は保留 | 「中等度保持可、最大で代償出現」 |
| 膝伸展 | 座位姿勢を一定化、大腿固定 | 最大抵抗で骨盤後傾や大腿浮きが先行するなら条件再調整 | 「最大で肢位崩れ、代償先行」 |
| 足背屈 | 下腿回旋を抑え、足部主運動を確認 | 最大抵抗で股外旋/下腿回旋が先に出るなら代償混入 | 「主運動は保持、最大で回旋代償」 |
ポイントは、筋力低下そのものと代償先行を分けて記録することです。判定語をチームで固定すると、評価者間のズレが縮小します。
- 肩外転:肩すくめや体幹側屈が混ざりやすい。肩甲帯固定と代償排除を優先。
- 膝伸展:骨盤後傾・大腿の浮きで見かけの出力が変わる。座位姿勢と大腿固定を徹底。
- 足背屈:股関節外旋や下腿回旋で代償しやすい。足部主運動の確認を優先。
カルテ記載テンプレ|Grade だけで終わらせない
Grade 4–5 は数値だけだと経過が伝わりません。推奨は「Grade +条件+崩れ方」を 1 行で残す運用です。
- 例 1:MMT 4(中等度抵抗で 3 秒保持、最大抵抗で肢位崩れ。代償なし)
- 例 2:MMT 5-(最大抵抗でわずかに崩れるが保持可能。固定良好、疼痛なし)
- 例 3:MMT 4(疼痛により最大抵抗不可。条件調整後も出力頭打ち)
なお、MMT はベッドサイドで迅速に使える一方、境界帯(4–5)では定量性に限界があります。経時変化をより細かく追う場面では、筋力評価の使い分け( MMT / HHD / RM )を前提に、目的に応じて HHD の併用を検討すると判断が安定します。
よくある失敗|Grade を下げる 5 つの落とし穴
- 固定が甘く、関節が逃げる(筋力ではなく姿勢で崩れる)
- 抵抗方向がずれる(対象筋以外のラインで勝負してしまう)
- いきなり最大抵抗(反射的な崩れを誘発)
- 代償を見落とす(できているように見える)
- 疼痛・恐怖で出力が止まる(筋力低下と誤認)
よくある質問(FAQ)
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Q1. 迷ったら 4 と 5 のどちらに寄せるべき?
A. 基本は 4 に寄せ、根拠をカルテで明記します。5 は「最大抵抗でも崩れない」が明確な場面に限定すると、評価者間のブレが減ります。
Q2. MMT の 4+/5- はいつ使う?使わない方がいい?
A. 使用自体は可能ですが、施設内で定義を揃える前提です。迷う場面は 4 or 5 で記載し、条件と崩れ方を文章で補う運用が安全です。
Q3. 疼痛があるときはどう判定する?
A. 疼痛で出力が止まる場合、純粋な筋力評価になりません。肢位変更・抵抗量調整を行い、難しければ疼痛制限として記載し、経時比較で追跡します。
Q4. MMT の「最大抵抗」とはどの程度ですか?
A. 評価者の全力ではなく、対象筋ラインで漸増し、患者が抗し続けられる上限です。方向と固定が揃って初めて比較可能になります。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで全体像を確認する(全体像)
- 共有の型を作る:筋力評価の使い分け( MMT / HHD / RM )を確認する(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Fan E, Ciesla ND, Truong AD, et al. Inter-rater reliability of manual muscle strength testing in ICU survivors and simulated patients. Intensive Care Med. 2010;36(6):1038-1043. doi: 10.1007/s00134-010-1796-6(PubMed: 20213068)
- Wadsworth CT, Krishnan R, Sear M, Harrold J, Nielsen DH. Intrarater reliability of manual muscle testing and hand-held dynametric muscle testing. Phys Ther. 1987;67(9):1342-1347. doi: 10.1093/ptj/67.9.1342(PubMed: 3628487)
- Bohannon RW. Manual muscle testing: does it meet the standards of an adequate screening test? Clin Rehabil. 2005;19(6):662-667. doi: 10.1191/0269215505cr873oa(PubMed: 16180603)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


